彼は FastCompany の記事は読む価値あるし、(タイトルは釣りっぽいが)その議論は概ね正しい、と認める。生成 AI がどんどんコーディングに利用されるようになり、でも AI はミスを犯すので、QA(品質保証)チームの重要性が増すというわけだ。もちろん生成 AI の信頼性はこれから上がるに違いないが、バグ取りの問題はなくならないので、テストとデバッグの重要性が増すのは間違いない。
それにバグというのは、些細なポカミスだけではない。仕様を誤解するのもバグだし、顧客のニーズを満たさない仕様を正しく実装してもそれはダメだ。仕様を AI に読み込ませることもできるが、顧客が本当に望んでいることまで AI に分かるのか?
セキュリティも問題だ。AI はファジングテストに向いてそうだし、ゲームをプレイする AI が「チート」を発見することもある。それでも、テストが複雑になるほど、ソフトウェアをデバッグしているのか、テストをデバッグしてるのか分からなくなる。デバッグがコードを書くことの倍は難しいからだ。
それにプログラミングを巡る文化の問題もある。ルキダスがかつて働いていた会社では、QA に配属されるのはどちらかというと降格を意味し、優秀だけどチームとうまく働けないプログラマーが回される傾向にあった。その文化は変わっただろうか? それを AI に任せるとして、文化はどう変わるか。
そもそも、いくら QA を優先しても、解決すべき問題を十分に理解しないプログラマーは問題を解決できないという普遍的な問題は変わらない。それにプログラマーがコーディングに費やす時間は、全体の20%に過ぎない。その20%の時間を AI が半分にしたとしても、それは重要ではあるが革新的とまでは言えない。生成 AI が(解決すべき問題を理解して)テストの質を落とすことなくテストを書く助けとなれば、それは大きな前進となろう。
そして、SF が文字通り受け取られすぎと感じることあります? という問いに対して、チャールズ・ストロスが、今の AI バブルがまさにそれ、AI というアイデア全体が世俗的な終末論の宗教と化してしまったと吐き捨てていて、これには笑ってしまった。そうそう、彼はまさにテック富裕層の SF 的妄想をクソミソに批判してたんだよね。
ネイト・シルバーといえば統計学者として知られ、FiveThirtyEight を立ち上げて選挙の予想を行い、2008年のアメリカ大統領選挙でほぼすべての州の勝者を予測したことで一躍名をあげ、翌年には TIME の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている。そして、上記の『シグナル&ノイズ』を刊行したあたりでその名声は頂点を迎えた。
しかし、2016年の大統領選挙でドナルド・トランプの勝利を予測できず、威光に陰りを見せた。彼が立ち上げた FiveThirtyEight が New York Times ブランドに入ったあたりまでは追っていたが、2013年には ESPN に買収されてたのね。そして、2018年には ESPN から ABC のニュース部門に移ったが、2023年に行われたレイオフで、創始者の彼も追い出されてしまった。
しかし、現時点での最新作『The Boy Named If』が何の留保も言い訳もなく素晴らしくて、もはや大ベテランの域に達した彼の優れた新作を享受できる幸福をリリース時に感じたものだ。上記の紹介文を読み、自分がちゃんと聴いていないアルバムがいくつもあるのを再確認したし(しかし、彼ほどの人でもストリーミング配信されてないアルバムがあるのな)、あんまりピンとこなかったアルバムについても紹介文を読むことで再聴するよい機会を得られた。ありがたいことである。
ジョン・カーペンター(製作、監督、脚本、音楽など)とダン・オバノン(脚本、出演、編集など)がタッグを組み、卒業制作として6万ドルという超低予算で撮り、1974年に公開された映画『ダーク・スター』が、『エイリアン』などその後の SF 映画にいかに影響を与えたかについて、公開50周年を機にふりかえる記事である。
誰か教えてよー、とまたしても思ってしまった。この本の反応を見ようと書名を Google 検索したのだが、今そうして検索しても上位10~20くらいが Amazon をはじめとする商業サイトばかりで、なかなか個人の感想に行きつかない……という話は、少し前に誰かはてな匿名ダイアリーあたりに書いてなかったか。