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技術書典5で販売した『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版の取り扱いをBooth.pmでも開始

技術書典5において、達人出版会ブースで販売した『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版について、Booth.pm の達人出版会BOOTH支店でも取り扱いを開始した。

経緯については23日に書いた通りである。こちらのほうが達人出版会STORES支店より安そうだが、それは送料別のためらしく、結果的には STORES.jp のほうが安くなるらしい。ユーザの利用環境で都合がよいほうを選んでいただけると幸いである。

7月22日

ポール・グリーングラスの新作が Netflix で配信という話はこないだ書いたが、早速観たので新作映画として感想を書いておく。

ご存知の通り、本作は2011年に起きたノルウェー連続テロ事件を題材とするものである。

この監督の作品らしく、冒頭から政府庁舎爆破、そしてウトヤ島における銃乱射を淡々と描いていく。『ブラディ・サンデー』のような映画になるのかなと思っていたのだが、犯人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが69人を射殺後逮捕されるまでが143分の上映時間の最初の30分で、そこからほぼ映画一本分の時間になる。

つまり本作は、「7月22日」そのものというよりは「7月22日の後」を主に描いた映画なのである。テロ実行の描写も怖いのだが、主眼はその後にある。

犯人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクの不敵さが予想通り印象的だったが、彼から指名されたために脅迫を受けながら彼の弁護をする羽目になる人権派の弁護士をはじめ、この事件はいろんな人の人生を大きく揺るがす。その最たるものが事件の被害者なのは言うまでもないが、五発の銃弾を受け、脳に銃の破片が残ったままになってしまう被害者ビリヤルの苦悩が特に心を震わせる。彼がウトヤ島で語った多様性の重視は犯人の銃弾により蹂躙されてしまう。その彼が現実に立ち向かい、なんとか犯人に一矢を報いようとする姿にワタシは涙を流した。ポール・グリーングラスの映画を観て泣く日が来るとは……。

さて、ここから映画本体の感想から少し離れた話、主に Netflix Japan への文句を書かせてもらう。

本作において、ビリヤルと同じく事件の被害者である少女が物語上重要な役割を果たすのだが、彼女は事件で姉妹を亡くしている。

さて、「姉妹」と書くと、二人以上亡くしたと思わない? でも、実際には一人なのである。

どういうことかというと、英語の台詞では sister としか言わないのを律儀に「姉妹」と訳され続けるためである。しかし、おそらく彼女も実在の人物がモデルだろうから、亡くなったのが「姉」か「妹」かは調べればすぐに分かるのではないか。それぐらいのリサーチを Netflix Japan の字幕制作者に求めるのは過度の期待だろうか?(以上について、ワタシが勘違いしていたら申し訳ない)

Netflix Japan については、宇野維正さんの苦言に乗っかる形で文句を書かせてもらっているが、ネット企業なのに SNS 利用が微妙なのはなんでだろう?

映画ポスターのデザインの変遷から映画産業の発展の歴史をひも解く本が面白そうだ

株式会社トランネットのオーディション課題に面白そうな本があがっている。

Selling the Movie: The Art of the Film Poster

Selling the Movie: The Art of the Film Poster

世界の映画産業の発展は、映画の宣伝用ポスター抜きには語れない。最初にハリウッドに映画スタジオが誕生した映画創成期の1910年代から2000年代までを年代順に10年ごとに区切り、創造的かつ商業的な観点から各国の映画ポスターを紹介する。ポスターのデザイナー、スタイルの変遷、政治とイデオロギーの影響、商業がポスターの発展に果たした役割など、ポスターを通して様々な面から映画産業の歴史をひも解く一冊。

オーディション課題概要

洋画のポスターが日本版はデザイン変えすぎ話は定期的で映画ファンの間で話題になるが、映画のポスターというのは、この本の原題にあるように、何より映画を売り込むためのものであり、それがどのように発展変化してきたかというのは興味深い題材である。来年には邦訳が出そうなので楽しみである。

著者の Ian Haydn Smith という人は知らなかったが、かの 1001 Movies You Must See Before You Die の第7版(asin:1438050062)の編集もやってる人ということは、映画の分野でそれなりに信頼のおける人なのだろう。

3年前に紹介したドローン本の邦訳『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』が出ていた

この記事を見て驚いた。今からおよそ3年前に『The Black Box Society』の著者が勧めるドローン本が気になると紹介したドローン本の邦訳が7月に出ているのを知った。

ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争

ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争

原書が出てから結構経つので邦訳はもう無理かと思っていたが、「日本ではじめての《ドローンを「哲学」する》本」という宣伝文句を持つユニークな本は、そう簡単には古びないということか。

版元である明石書店のページを見ると、新聞にも複数書評が出ている。

イカームーブメントの文脈でドローンに注目が集まった時期があるが、これはそうした視点の本とは一線を画すもので、ドローンがもたらす戦争の変容を扱っているのだからなかなかハードである。

アメリカ国立標準技術研究所による「本当にブロックチェーンを使うべきか」チャート

ブロックチェーンを使うべきかどうか判定するチャートで、面白いものを作る人もいたもんだと思ったら、これアメリカ国立標準技術研究所(NIST)が公開している Blockchain Technology Overview の42ページからの抜粋なんですな。

NIST がこんな文書を公開してたのか! しかし、このチャートは、ブロックチェーンがやたらといろんな分野や用途で引き合いに出されるのに対する、本当にそれにブロックチェーン使う必要あるか? という警鐘なんでしょうね。

さて、NIST によれば、以下の6つの質問にすべて Yes でないとブロックチェーンを使うべきではないとのこと。

  • 一貫した共有データ格納が必要か?
  • 二つ以上の実体がデータを提供する必要がある?
  • データ記録は、一度書き込まれれば、更新されたり削除されることはない?
  • 機密の識別子がデータ格納に書き込まれることは絶対ない?
  • 書き込みアクセス権のある実体は、誰がデータ格納を管理すべきか決めるのに苦労している?
  • データ格納へのすべての書き込みの不正開封防止ログが欲しい?

NIST の文書全体を読んでないので、訳がおかしかったらごめんなさい。以上の質問について、No の場合にどのソリューションがよいかは原文を読んでくだされ。

「ブロックチェーン信仰」が揺らぎ始めたとか日本では「ブロックチェーン」は過度な期待とかいろいろ言われているが、過度に期待して合ってない用途に使ってもそりゃ幻滅するよね。

ネタ元は Four short links

ブロックチェーン技術の未解決問題

ブロックチェーン技術の未解決問題

技術書典5で販売された『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版の販売をSTORES.jpで開始

技術書典5において、達人出版会ブース『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売した件については既にお伝えしている(その1その2)。

その特別版だが、STORES.jp の達人出版会STORES支店で取り扱いを開始したので、ここでも告知させてもらう。高橋さんによると、達人出版会STORES支店はもう少し修正が加わる見込みとのこと。

まぁ、このように紙書籍版の販売をできるということは、つまりは、技術書典5において完売しなかったということでもある。そうした意味で、高橋さんに大変申し訳ないので、紙版を手元に欲しい方で技術書典に参加できなかった方は、これを機会に買ってもらえると大変ありがたいです。

実は、既に Booth.pm での販売を準備していて、一週間前からそれに合わせてブログを更新できるようにしていたのだが、いつまで経っても準備中のままなので、カッとなって(?)STORES.jp での取り扱いを始めたとのこと。Booth.pm での取り扱いを開始したら、またこちらでも告知させてもらう。

ポール・グリーングラスが2011年のノルウェー連続テロ事件(とその後)を描く『7月22日』が10月10日にNetflixで配信開始

『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』、そして『キャプテン・フィリップス』とずっとポール・グリーングラスの映画を観てきたが、正直この人の映像作品は必ずしも好みでなかったりする。

が、町山智浩さんの紹介で彼の新作が、2011年のノルウェー連続テロ事件を題材にしたものと聞いて、これは彼向きの題材だと思ったので興味が湧いた。

Netflix 製作とのことだが、たまむすびでは町山さんは公開日を明言してなかったが、Netflix のページを観ると、10月10日配信開始とあるではないか!

なんか映画の世界も、いきなりニューアルバムをミュージシャンが自らの SNS 上のアナウンスし、ストリーミングサービスで配信開始という音楽の世界に近づいているのだろうか。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド展「The Velvet Underground Experience」が今月より開催&ニコの晩年を描く映画『Nico, 1988』

調べものをしていて、The Velvet Underground Experience のことを知ったのだが、今月10日よりニューヨークのブロードウェイでヴェルヴェット・アンダーグラウンドの回顧展があるとのこと。

調べてみたら、NME Japan に「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに」という記事が出ていた。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのウェブサイトによれば、展覧会では「6つの映像作品と350枚以上の写真、1000以上の品々、アンディ・ウォーホルによってデザインされたバナナのアートワークの世界観をVRで体験することのできる特設スペース」を楽しむことができるという。

また、展覧会の開催期間中には「コンサートや特別な催し、レクチャー、ポップアップ・インスタレーション、ファッションとのコラボレーション、芸術作品の展示、上映会、パフォーマンス、講習会」なども開催されるという。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに | NME Japan

これは見たいな……さすがに日本までは来ないだろうし。

そういえば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド関連のニュースというと、ニコの晩年を描いた Nico, 1988 という映画が作られており、批評家の評価は高いようだ。こちらは日本公開されるかなぁ。

それにしても、ニコが死んで30年になるんだな。

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Gamergateの被害者にもなったフェミニストメディア批評家が、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちを描く新刊『History Vs Women』

調べものをしていて、Anita Sarkeesian の新刊が今日発売になるのを知る。

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

Anita Sarkeesian は、フェミニストの立場からゲームに登場する女性キャラはいかにして性の対象として描かれているかを論じてきたメディア批評家で、その流れで Gamergate 事件に巻き込まれてしまう。

Gamergate については、ワタシも「邪悪なものが勝利する世界において」で少し触れているが、事件についてのもうちょっと詳しい話は、八田真行の「オルタナ右翼とゲーマーゲートの関係」を読むのがよいだろう。

その Anita Sarkeesian の新刊(共著)は、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちについて書くものとのこと。タイトルは、女性が歴史の中で過小評価されてきたことへの反抗なのだろう。

今年『世界を変えた50人の女性科学者たち』(asin:442240038X)という趣旨が近い本の邦訳が出ているが、『History Vs Women』のほうは対象は科学者に限らない。25人の中に "Japanese novelists" が入っているようだが誰だろう。樋口一葉

このエントリを書くために調べていて、Anita Sarkeesian と同じく Gamergate の被害者だった Zoe Quinn も昨年本を出しているんだね。これは完全に見逃していた。

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

「いかにして Gamergate が私の人生を(ほぼ)破壊したか、そして私たちはいかにしてオンラインヘイトとの戦いに勝利できるか」という副題がすべてを物語っている感じですね。

ジェイミー・バートレット『The People Vs Tech』の邦訳『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』が出ていた

あたたたた、ジェイミー・バートレットの『The People Vs Tech』は、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」でも取り上げており、くだんの「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」の中でも引き合いに出していたのだが、邦訳『操られる民主主義』が先月に出ていたのか。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で原書をリンクしちゃったのは痛恨である。一応調べたはずなのに。

原書が出たのが今年4月で、それから半年も経たずに翻訳が出たのはかなり早い部類ではないか。版元の草思社も、これは売れると踏んだのだろう。

「技術書典5」で販売される『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版に収録される書き下ろし技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」について

10月8日に開催される技術書オンリーイベント「技術書典5」において、達人出版会ブースにて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売すること、そしてそれに新作技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」を収録することは昨日書いた

その「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」だが、このケッタイなタイトルは、映画『裏切りのサーカス』の原作であるジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』のもじりである……って、どこがや!

なかなかタイトルが決まらず難儀し、高橋征義さんが「プラットフォーマー・政府・ネット原住民 地球最大の決戦」というタイトルを提案したのはここだけのヒミツである。

さて、今回の文章を書くきっかけとなったのは、今年の8月に某社の編集者より『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』を基にした書籍の執筆について打診されたことだったりする。

正直、ワタシはそのプランに懐疑的だったのだが、編集者とやりとりをするうちにワタシも徐々に乗り気になり、だったらこの2年間のフォローアップとなる新作文章を書かなければならないな、と実に2年ぶりに技術コラムを書く気になったのである。

昨年『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の電子書籍化の作業をしながら、そうした文章を書く気にはまったくなれなくて、書いたのはボーナストラック「グッドバイ・ルック」だけだった。

それはともかく、ワタシが久方ぶりにやる気になったのに、その直後からくだんの編集者からのメールがぱったりなくなった。まぁ、正直企画会議を通るとは思わなかったので別にいいのだけど、ダメならダメでその旨をメールで伝えるくらいしてもいいのではないか。

この編集者が属する出版社については、武士の情けで名前は特に秘すが、翔泳社である。

さて、せっかく2年ぶりに技術コラムを書く気になっていたのに、それを発表する場がなくなって困っていたところ、達人出版会高橋征義さんから声をかけていただき、「技術書典5」で販売される特別版に収録することになったという次第である。

しかし、高橋さんもこんな常軌を逸した長さの文章を送りつけられるとは思ってなかったのではないか。一年前に原稿用紙換算で150枚超の「グッドバイ・ルック」をいきなり送りつけられたときほどではないにしろ、ため息の一つでもつかせてしまったかもしれない。

それくらい長くなったのは、何よりこの2年間を埋めるためというのが一番で、とにかく書きたい話はすべて詰め込んだ結果である……のだけど、それでも書き残した話に後になって気付くのだから困ったものである。

一つは「監視資本主義(surveillance capitalism)」というタームについて入れるつもりだったのに入れ損ねた。この言葉については以前にも触れたことがあるが、この言葉の発明者であるハーバードビジネススクールの元教授 Shoshana Zuboff のこの言葉を書名にした本が出ることについて触れるべきだった。

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

もう一つは GDPR について、ニコラス・カーの「EUGDPRGoogleFacebook に縛りたいのだろうが、これに本格的に対応する人的リソースを持つ GoogleFacebook の監視資本主義の強化にしかつながらないだろうよ。残念!」という見立てを入れ込むのを忘れていた。

あと、この文章は冒頭で知的財産戦略本部の検討会議について書いているが、中間とりまとめができず延長になったのはご存知の通りだが、それより前に脱稿したので、話がその前までとなっている。またそれと関連して、中国のようなネット監視についても触れているが、Googleエリック・シュミット元 CEO が「今後は中国とそれ以外の2つのインターネットが存在するようになる」と語った話も入れきれなかった。

あと decentralized なウェブを目指す動きとして、ちょうどティム・バーナーズ=リーが手がける Solid がニュースになっているが、これも前から知っていたのに入れきれなかった。

それでもとにかく長い文章になってしまったのだけど、「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で書いたことと似たことを、ワタシと同い年の中川淳一郎さんが「ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る」で書いている(実は先月、とある追悼会で中川さんをお見かけしているが、ワタシのことなんか知らんだろうな、と弱気になってしまい声をかけられなかった)。

そうなのだ、本稿冒頭で「インターネット老人会」と述べたが、ネットを特別視すること自体がオッサン・オバサンの表れなのかもしれない。若者はもはやインターネットもリアルも同じものと捉え、水道や電気、ガスと同様の扱いをしもはやネットに夢は求めていない。

ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る (3/3) - ねとらぼ

それでは「技術書典5」にお越しの方は、どうか達人出版会ブースで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版をよろしくお願いします。

クワイエット・プレイス

ひと月以上映画館から足が離れていたのだが、とても評判の良いホラー映画と聞いて公開初日に観に行った。

ワタシはかなりビビりで、ホラー映画でよくある「ドン!」という衝撃にビクっとなりやすく、映画館で観ると恥ずかしい思いをしてしまう。本作でもそれが数か所あって、参ったよ。

ワタシは一人で郊外のシネコンで観たのだが、リア充っぽい5人くらいの男女が2、3組ぞろぞろとやってきて、彼らの話声や食べ物をがさごそやる音が気になっていた。が、最後のクライマックス時には場内が完全に無音になっており、それくらい観客を引き込む映画ということですね。

主役の夫婦は実生活でも夫婦とのことで、妻役の人はどこかで見たと思ったら、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で観ていたか。

いや、本当によくできていたと思う。例によって家族の物語なのだけど、長女の設定がうまかった。妻役がどうしようもなく絶体絶命の立場に陥るのだが、それをどう逃れられるか、伏線の組み立て方が巧みなのだ。というか、あんな能力の偏った生命体だったら、あそこまで人類滅亡近くまで追いやられることなんかない気もするが、この手の映画にそれを言っちゃいけないでしょう。

ただその妻役を窮地においやるアレが最後近くにもう一度くらい物語のフックになるかと思いきや、そうならなかったのが少し不思議だったな。

ビースティ・ボーイズの回想録が今月刊行される

ビースティ・ボーイズの生存メンバーであるアダム・ホロヴィッツ(アドロック)とマイケル・ダイアモンド(マイクD)による回顧録が今月出るんだね。

Beastie Boys Book

Beastie Boys Book

Beastie Boys Book (English Edition)

Beastie Boys Book (English Edition)

表紙の若い3人の写真にグッとくる。書籍の詳細は公式サイトを当たってくだされ(Ad-block が入ったブラウザで見ると、真っ白になるが……)。

590ページにもおよぶボリュームで、今だと Kindle 版のほうが圧倒的に安いですな。まぁ、さすがに来年あたり邦訳が出ると思うけど。

Sounds of Science

Sounds of Science

マイクロソフトがMS-DOS v1.25とv2.0のソースコードをGitHub上で公開のニュースで思い出す心温まる話

MS-DOSソースコード公開自体は2014年に実現しているが、当時はオープンソースライセンスは付与されてなかったのではないか。今回は MIT ライセンスだし、何より公開先の GitHubマイクロソフトに買収されていたりする。これは2014年にも予想できなかった未来である。

ワタシは昔「マイクロソフトは、Windows 98 SEをオープンソースとして公開すべきだ」という文章を訳しているのだが、10年後くらいに実現したりして(笑)。

MS-DOS 2.0というとワタシが真っ先に思い出すのは、かつて「暗く、苦々しく、悲しい話にこそワタシは惹かれる」で紹介した、ポール・アレンが『ぼくとビル・ゲイツマイクロソフトイデア・マンの軌跡と夢』で書いていた、MS-DOS 2.0 の開発に心血を注いでいた当時の話である。

 あれは一九八二年、一二月の終わり頃だった。ビルのオフィスの前まで来ると、ビルとスティーブが何やら熱心に話し込んでいるのが聞こえた。私は立ち止まってしばらく聞いていた。話の主旨はすぐにわかった。二人は、私のこのところの働きの悪さに対して不満を持っていて、私のマイクロソフト株の所有比率を下げようとしていたのである。彼ら自身や他の株主に追加のストックオプションを発行し、私の所有比率を下げる、という考えだ。話の様子から、その時急に思いついたわけではなく、しばらく前から考えていたことも明らかだった。
そのまま聞きつづけることもできず、私は中に飛び込んでいって叫んだ。「なんてことだ! 信じられないよ! 君たちがどういう人間なのか、よくわかったよ。もうおしまいだな」二人に向かって話してはいたが、私の目は、まっすぐビルを見ていた。まさに決定的な場面を見られた彼らは、何も言えずに黙り込むだけだ。そして、彼らに言い返す暇を与えず、私は回れ右をしてその場をあとにした。

ビル・ゲイツは、闘病中の共同創業者を労うどころか、彼の影響力を下げようとスティーブ・バルマーと密談していたのです。ポール・アレンはそれでも遠慮してか書いてませんが、ロバート・X・クリンジリーによれば、二人はアレンが死んだらどうしようというところまで話し合っていたようです。

心温まる話である。

ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト アイデア・マンの軌跡と夢

ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト アイデア・マンの軌跡と夢

過去の白人罵倒ツイートで炎上したサラ・ジョンの逆襲『ゴミのインターネット』

ひと月ほど前になるが、Verge が Sarah Jeong という人が3年前に出した『The Internet of Garbage』を再掲していて、この新版は電子書籍としても再度リリースされている。

The Internet of Garbage (English Edition)

The Internet of Garbage (English Edition)

「ゴミのインターネット」といっても、ワタシが以前取り上げた IoT 絡みの話ではない。こちらはオンラインハラスメントについての本である。

ここで種明かしをすると、著者の Sarah Jeong は韓国生まれのジャーナリストで、ニューヨークタイムズ編集委員に任命された直後、過去に行っていた白人を罵倒するツイートが掘り起こされ炎上した人である。

ニューヨークタイムズは彼女を擁護し、その地位を辞すことはなかったのだが、彼女は自分がかつて出したオンラインハラスメントを主題とする電子書籍の新版を(今回の騒動を受けて)再刊することで、逆襲に転じたというわけである。さらなるアップデートを行う予定もあるようだ。

ふーむ……過去のツイートを(文脈抜きで)掘り起こし、それを理由に職を奪われるようなことはないほうがよいとワタシも思う。少し前のジェームズ・ガンのような例があるだけに。しかし、Quinn Norton の事例を考えると、彼女が「韓国系」でなく「白人」で、侮蔑する対象が「白人」でなく例えば黒人などのマイノリティであったら、彼女は擁護されただろうか、と割り切れない気持ちにもなるのも正直なところである。

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