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ブレイディみかこさん、八重洲本大賞、毎日出版文化賞特別賞、Yahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、ブクログ大賞エッセイ・ノンフィクション部門受賞おめでとう

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』特設サイト)が、第2回八重洲本大賞第73回毎日出版文化賞特別賞Yahoo!ニュース 本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞第7回ブクログ大賞エッセイ・ノンフィクション部門……と、いったいいくつとるんだよというくらい受賞していてめでたい。

代官山蔦屋書店の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の POP が著者よりワタシに捧げられているのだが(笑)、それについては以下のエントリを参照いただきたい。勝手に「友情出演」を主張するワタシの相手をしてくれてありがとうございます。

それにしても福砂屋の紙袋が再現されているのが感動的で、それだけあの制服が渡される場面がよかったということでしょう。この POP を作られた代官山蔦屋書店の宮台由美子さんもツイートされている。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ここまできたら、菊地凛子さんとケン君が親子役で共演した『ラスト・サマー』のソフト化とか実現したりして。

さて、以下は意地汚い、虎の威を借る宣伝パートである(宣伝のためにブログやってるんでね!)。

ブレイディみかこさんに「ボーナストラックの長編エッセイに泣きました」と言わしめたワタクシの『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』もよろしくお願いします!

テック企業が哲学者を雇うべき理由 あるいは(バイトテロの無知がもたらす予期せぬ教育的効果)

八田真行のツイート経由で知った記事だが、GoogleFacebookマイクロソフトDeepMind、OpenAI といった企業は哲学者を雇うべきと主張する記事である。なんでテック企業に哲学者が必要なのか?

この記事の著者である Tobias Rees は The Transformations of the Human プロジェクトのディレクターを務める人類学者なのだが、その彼から見るとテック企業の人間理解が現実に即していないとのこと。

それはつまり、何をもって人間は人間足るのか、人間のみが持ちうる知性とは何なのかという命題につながる。そこで人工知能(AI)や機械学習について考える場合、人間には知性があるが機械にはないとか、生物のみが意識を持ち思考や理解ができるとか、自然と人工物には明確な区別があるとか決めてかかるのは危ういわけである。むしろ、自然と人工物、人間と機械の連続性が見えてきたのではないか。

昨今の AI の進歩は遠大な哲学的問題であり、AI のラボやテック企業は、人間や我々をとりまく世界について新しい概念を生み出す哲学の研究所を持つべきなんじゃないの、というのが著者の見立てである。

まぁ、上記の著者が手がけるプロジェクトに水を引っ張りたいという思惑が間違いなくあるわけだが、philosophy + art + engineering という見出しなど狙いは分かるし、GoogleFacebook に代表されるテック企業のアルゴリズムが我々をどれだけ支配しているかというのも大分知れ渡ったし。

さて、以上の主張は、今週の日本語圏のインターネッツ界隈では、著者の意図とは少しずれた形で受容されるのかもしれない。

そう、東大バイトテロ事件の「大澤昇平」なる超新星のおかげで。

今回の自称「東大最年少准教授」の発言の何がマズかったかについては、明戸隆浩氏の「東大情報学環大澤昇平氏の差別発言について」を読んでいただくとして、その独善性の可能性を疑う批判性を持つことなくアルゴリズムに思考を委ねてしまう危険性について、当人の意図せず教育的なサンプルになったのではないだろうか。

それにしても、炎上商法の片棒を担ぐ気はないので、最初に文章を紹介した Tobias Rees の新刊を紹介してこのエントリを終わりとする。

After Ethnos

After Ethnos

After Ethnos (English Edition)

After Ethnos (English Edition)

ひっかかるところはあれどもプリンスの回顧録が無事出てよかった

この記事を読み、遅ればせながらプリンスの回顧録が刊行されているのを知った。

確かにこの記事に書かれる話は分かる。いくら生前プロジェクトが始動していたとしても、著者クレジットがプリンス一人なのはおかしいし、その共著者が白人というのも引っかかる人は多いだろう。

その死後もプリンスについての逸話についてはいろいろ聞くが、彼が黒人としての権利意識を強く持ち、同胞を empower しようとしていたことは間違いない。それならなぜという気もするのだが、彼の周りに執筆者として適切な人がいなかったというのも彼の不幸の一つなのかもしれない。

とはいえ、彼の名前がクレジットされた回顧録が刊行され、おそらくは来年には邦訳が出るだろう。その道筋がついたことはよいことだと思うわけである。

The Beautiful Ones

The Beautiful Ones

  • 作者:Prince
  • 出版社/メーカー: Spiegel & Grau
  • 発売日: 2019/10/29
  • メディア: ハードカバー

The Beautiful Ones (English Edition)

The Beautiful Ones (English Edition)

  • 作者:Prince
  • 出版社/メーカー: Spiegel & Grau
  • 発売日: 2019/10/29
  • メディア: Kindle

[2019年12月8日追記]:2020年4月に邦訳が刊行される。

プリンス回想録 The Beautiful Ones(仮)

プリンス回想録 The Beautiful Ones(仮)

  • 作者:プリンス
  • 出版社/メーカー: DU BOOKS
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア:

ランドール・マンローの『ホワット・イフ?』文庫化&新作『ハウ・トゥー』邦訳刊行に驚く

いやぁ、これはすごい。

xkcd でおなじみランドール・マンローの書籍第一作『ホワット・イフ?』が二分冊で文庫化されるというのもちょっとした驚きだが、彼の新作の邦訳『ハウ・トゥー』が出るというのに何より驚いた。

後者の原書については「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2019年版)」だが、原書の刊行は今年の9月である。「これも面白そうなので来年あたり邦訳出るでしょう」とワタシは書いたが、どんなに早くとも来年の夏以降だと思っていた。

それが来年1月という、原書刊行からそんなに間を置かずに邦訳が出るということは、それだけランドール・マンローの本にセールスポテンシャルがあるとみなされているということなのだろう。

『ハウ・トゥー』の「バカバカしくて役に立たない暮らしの科学」という副題がそのあたりのカギなんでしょうかね。

ホワット・イフ? Q1: 野球のボールを光速で投げたらどうなるか (ハヤカワ文庫NF)

ホワット・イフ? Q1: 野球のボールを光速で投げたらどうなるか (ハヤカワ文庫NF)

ホワット・イフ? Q2: だんだん地球が大きくなったらどうなるか (ハヤカワ文庫NF)

ホワット・イフ? Q2: だんだん地球が大きくなったらどうなるか (ハヤカワ文庫NF)

ハウ・トゥー:バカバカしくて役に立たない暮らしの科学

ハウ・トゥー:バカバカしくて役に立たない暮らしの科学

アイリッシュマン

土曜夜に少し離れたところにあるシネコンまで車を飛ばして観た。

あと数日したら Netflix で観れるのにバカじゃないかと言われそうだが、『ROMA/ローマ』が映画館で観てすごく良かったというのもあり、監督や主演陣全員が全員70代後半、日本でいうところの後期高齢者であり、特に20年以上ぶりに実現したマーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロの黄金コンビの新作を観れるのもこれが最後かもと思うと、やはり映画館で観ておくべきと考えた次第である。

映画館で観れることがほとんど宣伝されていない、変則的な上映作品をレイトショーで誰が観るのかと思っていたら、前列に年輩と思しき方が何人もいて、こちらは Netflix など知らん、という層だろうか。

というわけで、Netflix 配信前の映画なので、未見の方はご注意いただきたい。

マーティン・スコセッシはワタシにとってもとても大きな存在である。が、彼が得意とするマフィア映画は、ワタシにとって生理的に苦手だったりもする。何よりもいきなり銃で撃ち殺されるのが怖い、とこうやって文章にするとバカみたいだが、本当のことだから仕方がない。

この手の映画はワタシに緊張を強いるということだが、しかも本作は3時間半というベラボウな上映時間である。さらには(Netflix での配信前提なので)『ディア・ハンター』や『2001年宇宙の旅』みたいにインターミッションもない。これは神経的な疲労だけでなく、ワタシの膀胱的にも無茶としか言いようがない。膀胱がエンドゲームどころの騒ぎではない。

しかし、終わってみれば尿意など問題ではなかった。3時間半という上映時間、冗談抜きでそういうのをまったく忘れさせてくれる映画だった。見事な作品なのは間違いない。まぁ、予想通りバンバン人が撃ち殺されて、ワタシはそのたびに強張ったわけだけど、一番緊張したのは銃でなく、車のあの場面だったかな。

てらさわホークさんが、スコセッシの映画の登場人物を狂人、悪人と、彼らとの付き合いのなかで神経をすり減らす苦労人の三種に分類していたが、それに倣うなら、本作では狂人が全米トラック運転組合の委員長だったジミー・ホッファを演じるアル・パチーノ、悪人がマフィアのボスのラッセル・ブファリーノを演じるジョー・ペシ、そして苦労人が本作の主人公たるフランク・シーランを演じるロバート・デ・ニーロになる。

本作では(主に主人公に殺されなかった)登場人物についてもいちいちその最期についてキャプションが出て、それがまた見事に頭に銃弾を3発ぶちこまれたり、爆死させられたり、懲役100年くらったりと悪い奴らばかりなのだが、その中でも主人公はまぁバンバン人を殺すし、ジミー・ホッファは酒を飲まなくても狂っている。

本作でも丁寧に説明してくれるのだけど、ホッファについての事前知識があったほうが良いのは間違いない。往年の作品におけるデ・ニーロ、『グッドフェローズ』におけるジョー・ペシがそうであるように、スコセッシの映画では「狂人」がもっとも輝いており、それは本作も同様だった。アル・パチーノがホッファを演じることで、久方ぶりにスクリーンで本領を発揮してくれた。

しかも、ジミー・ホッファはホテルの同じ部屋で寝るくらい主人公のフランク・シーランを信頼していて、つまりはパチーノとデ・ニーロが全然豪華でない普通のホテルの部屋で、ベッドに腰かけて会話するところまで観れるのだ。最高じゃん。

本作の制作はかなり難航したことで知られる。スコセッシとデ・ニーロの黄金コンビがマフィアの映画を撮るのになんで制作費で苦労するの? 別に SF 映画撮るわけでもないのにと不思議だったのだが、上記の通り後期高齢者たちのキャストたちの若い頃を演じさせるための特殊効果のためと知って驚いたものだ。

それが効果を発揮しているかというと……割とどうでもよかった。結局はデ・ニーロが気張って中年期を演じているようにしか見えなかった。ワタシはデ・ニーロが、パチーノが、ペシが存分に演じる姿を観たいのだ。やはりスコセッシの映画に久方ぶりに登場のハーヴェイ・カイテルの見せ場が一つくらいしかなかったのは残念だったが、その点においてワタシが観たいものを見せてくれる映画だったのだから文句はない。

というか、いくら役者の外見を映像の特殊効果で若く見せられたとしても(ワタシはそこまで成功してないと思うが)、演出のテンポが老人仕様なのは隠しようがない。本作を観ると、MTV 世代の技法を取り入れながら真っ向勝負し、さらにはチャカチャカしたカット割りだけで主人公の麻薬中毒に観客を巻き込む演出をした『グッドフェローズ』って本当にすごい映画だったんだなと再確認したりもした。

本作と『グッドフェローズ』は違う。一緒にすんなと言われるだろう。確かにその通りだ。本作では、主人公がさんざん悪いことをやらかして逃げおおせた『グッドフェローズ』の先にある、悪いことをした奴らの老境まで描かれている。特に主人公の娘に対する悔恨は胸を迫る……と書きたいが、それほどでもない。

本作において、主人公、ラッセル・ブファリーノ、そしてジミー・ホッファの妻たちも画面に登場する時間自体はそれなりにあるのだが、彼女たちの人格が彼らに尊重される場面は皆無である(主人公の離婚と再婚など台詞一行で片付けられる)。スコセッシが意図したかは分からないが、本作もまた「有害な男らしさ」が必然的にもたらすものについての映画でもある。

なんか辛いことばかり書いてしまった。ペシとデ・ニーロが会話する場面で『ゴッドファーザー』のテーマ曲っぽい旋律が流れるはやりすぎだと思ったが(もしかしてテーマ曲そのもの?)、スコセッシが監督し、デ・ニーロが主役を張るマフィア映画の傑作をまた観ることができた。『グッドフェローズ』や『カジノ』を映画館では観なかったワタシがずっと望んできた映画を、しかもこれだけ力の入った作品をしっかり観れてワタシは満足である。ワタシの家のしょぼいテレビでも再見するつもりだ。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その29

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、9月に国立国会図書館サーチに登録されている話まで書いたが、国立国会図書館オンラインに書誌詳細ページができているのに今さら気づいた。

これを見ると、東京本館と関西館の両方に収蔵されているんだね。二冊納本してくださった達人出版会に感謝である。

さて、少し前に『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(asin:4479393196)や『症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る』(asin:4796524207)などの著書で知られるヤンデルさんのツイートに『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』の名前が挙がっていて驚いた。

とても嬉しい話である。感想も書いていただけるとさらに嬉しいのだが、そこまでは期待すまい。

かげやまさん (id:algernon3141) が、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』を参考文献に挙げてくださっている。具体的には、「テクノロジースタートアップは経済的不平等に貢献しているか?」ですね。

ワタシの本、文章が何かを考えるヒントというか材料になるなら、ワタシの文章に好意的/批判的問わず、それだけでありがたいことである。どんどん踏み石にしていただきたい。

ウィキペディアの共同創始者ジミー・ウェールズがFacebook対抗の広告のないSNSを立ち上げ

Wikipedia の共同創始者ジミー・ウェールズが、WT:Social というソーシャルネットワークサービスを立ち上げている。

今さら SNS を始めるからには、既存のサービスと違いがあるはずで、それはやはりビジネスモデルになる。Facebook などと違い、広告モデルに依存しない、というか広告自体を入れない方針を謳っている。しかし、広告なしでどうやって運営できるのか? Wikipedia と同じく寄付に頼るとのこと。

記事を読むと、これはジミー・ウェールズが一昨年フェイクニュース打倒を目指して立ち上げたクラウドファンディングのニュースサイト WikiTribune のスピンオフといえるプロジェクトのようだ。

Wikipedia の現在の成功にジミー・ウェールズという人が果たした役割はもちろんとても大きなものがあると思うが、その後は Google に対抗する検索エンジンをぶちあげたが失敗に終わるなど失敗も少なくない。ソーシャルネットワークというと10年以上前には Wikia でそちら方面に色気を見せたこともあり、ニュース分野と合わせてずっと進出したい分野だったのかもしれない。

サイトは先月から始まっているようで、既におよそ5万ユーザを集め、入会待ちが2万8人いるらしいが、当然ながら既存のビッグプレイヤーの足元にも及ばない。果たして本当にまともな競争相手になれるかというと難しいだろう。

ワタシが知る限り日本語圏で唯一このニュースを報じている Financial Times の記事の邦訳に、「当然、私が望んでいるのは5万人でも50万人でもなく、5000万人、5億人だ」というウェールズの強気な発言が引用されているが、前述の Wikipedia 後のお世辞にも成功していないプロジェクトを見ると、本当かねと思ってしまう。

ネタ元は Slashdot

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

イーサリアム本の決定版となるであろう『マスタリング・イーサリアム』邦訳がオライリーから出る

今月末に『マスタリング・イーサリアム――スマートコントラクトとDAppの構築』オライリーから刊行される。

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

ワタシがこれの原書を初めてブログで取り上げたのは、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)」で、そのときに刊行時期を「今年の秋」、つまり2017年秋と紹介していたので、邦訳出るまでえらく時間がかかったものだと思い込んでいたのだが、実はそうではない。

オライリー本家の原書紹介ページを見ると、原書が刊行されたのは2018年12月で、元々の刊行予定より一年以上遅れたことになる(なんで?)。それから一年経たずに邦訳が出るのだから、こちらはかなり頑張った部類だと思う。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』において論じられる非中央集権的、分散的なウェブを考える上でブロックチェーン技術、Ethereum が有望視されている話は「付録A インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」にも書いている。

なんといっても著者に(ワタシも「初心者向けBitcoinガイド」を訳している)Andreas Antonopoulos と Ethereum 自体の共同創始者の一人である Gavin Wood が名前を連ねており、またこの日本語版は日本のコミュニティの全面的なバックアップによって完成したらしいので、これは日本における Ethereum 本の決定版になるのだろう。

平民金子さんの初の単著『ごろごろ、神戸。』が来月出るぞ!

かねてより告知されていた、平民金子さん(id:heimin)の待望の単著『ごろごろ、神戸。』が遂に来月発売になる。

ごろごろ、神戸。

ごろごろ、神戸。

この本は、SUUMOタウンへの寄稿「ごろごろ、神戸」、神戸市広報課のウェブサイトに掲載された連載「ごろごろ、神戸2」「ごろごろ、神戸3」を中心としながら、大幅な加筆と大量の書き下ろし原稿を含むようである。

これについて、著者の平民金子さんは以下のようにツイートしている。単なる連載の書籍化とはまったく違うという強い意志が伝わる。

「狂気の書き直しと書きおろし」という文句の後に引き合いに出すのがはばかられるが、万が一平民金子さんの連載を未読の方は、ワタシの紹介エントリを参考にとっかかりにしていただけると幸いである。

これを書いた後だが、4月に開催された平民金子展「ごろごろ、神戸。」(とトークイベント)、そして7月の岸政彦『図書室』刊行記念トークイベント「ごろごろ、大阪・神戸」にもワタシは出向いているのだが、そこで手に入れたもろもろを合わせたものともまったく違ったものになっているようで楽しみである。

平民さんと実際にお会いしたのは4月が初めてだが、ネットで知り合ってから、長らく同じ時間を別々に生きてきたそちらのほうが重要である。平民さんが書くように、それは「ようわからん関係性」としか言いようがないが、その間ワタシの中で平民さんに対する信頼が失われたことはない。

こうも書けるかもしれない。はてな文化圏から生まれた書き手は何人もいるが、『ごろごろ、神戸。』はその最後の大物の単著である、と。

日本人の「知の巨人」好きすぎ問題――書名から日本版「知の巨人」一覧をざっと挙げてみる

これ以前から思っていたことなのだが、日本人って「知の巨人」みたいに権威を祭り上げて、その人の専門分野でない領域まで意見を頼りがちなところあるよね。

さすがに「知の巨人」扱いされた人の一覧と格付けまとめまでは無理だが、その第一歩として、書名に「知の巨人」の文句があるものを人物別に集めてみた。基本的に「知の巨人」は他称なので、本の帯文にこの文句がある場合も含めてみた。ただし、条件に合っても、一冊で何人も対象になる本は(リストが発散するので)外した。

ワタシの世代では、この呼称を意識したのは立花隆あたりか。個人的には、この人が「知の巨人」っておかしいだろと思う人もいるが、そういう個人の好みはここでは置く。以下、生年順。

アイザック・ニュートン(1643-1727)

イングランドの自然哲学者、数学者、物理学者、天文学者神学者

コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人 (丸善コミックス)

コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人 (丸善コミックス)

荻生徂徠(1666-1728)

江戸時代中期の儒学者、思想家、文献学者。

知の巨人 荻生徂徠伝 (角川文庫)

知の巨人 荻生徂徠伝 (角川文庫)

木村蒹葭堂(1736-1802)

江戸時代中期の日本の文人画家、本草学者、蔵書家。

木村蒹葭堂―なにわ知の巨人

木村蒹葭堂―なにわ知の巨人

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 思文閣出版
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 大型本

グスタフ・フェヒナー(1801-1887)

ドイツの物理学者、哲学者、心理学者。

生命(ゼーレ)の哲学: 知の巨人 フェヒナーの数奇なる生涯

生命(ゼーレ)の哲学: 知の巨人 フェヒナーの数奇なる生涯

  • 作者:岩渕輝
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2014/01/25
  • メディア: 単行本

横井小楠(1809-1869)

日本の武士、儒学者

南方熊楠(1867-1941)

日本の博物学者、生物学者民俗学者

南方熊楠 - 日本人の可能性の極限 (中公新書)

南方熊楠 - 日本人の可能性の極限 (中公新書)

柳田國男(1875-1962)

日本の民俗学者、官僚。

テクストとしての柳田国男―知の巨人の誕生

テクストとしての柳田国男―知の巨人の誕生

生田長江(1882-1936)

日本の評論家、翻訳家、劇作家、小説家。

知の巨人: 評伝生田長江

知の巨人: 評伝生田長江

折口信夫(1887-1953)

日本の民俗学者、国文学者、国語学者

折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)

折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)

和辻哲郎(1889-1960)

日本の哲学者、倫理学者、文化史家、日本思想史家。

ピーター・ドラッカー(1909-2005)

オーストリア生まれの経営学者。

知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営

知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営

ドナルド・キーン(1922-2019)

アメリカ合衆国出身の日本文学者、文芸評論家。

司馬遼太郎(1923-1996)

日本の小説家、ノンフィクション作家、評論家。

吉本隆明(1924-2012)

日本の詩人、評論家。

吉本隆明の下町の愉しみ (青春新書INTELLIGENCE)

吉本隆明の下町の愉しみ (青春新書INTELLIGENCE)

大林太良(1929-2001)

日本の民族学者。

生き物文化誌ビオストーリー〈第8巻〉特集 知の巨人、大林太良の世界 神話の道 生き物たちの宇宙

生き物文化誌ビオストーリー〈第8巻〉特集 知の巨人、大林太良の世界 神話の道 生き物たちの宇宙

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 生き物文化誌学会
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本

渡部昇一(1930-2017)

日本の英語学者、評論家。

一冊まるごと渡部昇一 (知の巨人の遺した教え)

一冊まるごと渡部昇一 (知の巨人の遺した教え)

「知の巨人」の人間学 -評伝 渡部昇一

「知の巨人」の人間学 -評伝 渡部昇一

  • 作者:松崎 之貞
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2017/10/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

立花隆(1940-)

日本のジャーナリスト、ノンフィクション作家、評論家。

立花隆の正体―“知の巨人”伝説を斬る

立花隆の正体―“知の巨人”伝説を斬る

  • 作者:朝倉 喬司
  • 出版社/メーカー: リム出版新社
  • 発売日: 2003/12/01
  • メディア: 単行本

柄谷行人(1941-)

日本の哲学者、文芸批評家。

荒俣宏(1947-)

日本の博物学者、図像学研究家、小説家、収集家、神秘学者、妖怪評論家、翻訳家。

橋本治(1948-2019)

日本の小説家、評論家、随筆家。

おいぼれハムレット (落語世界文学全集)

おいぼれハムレット (落語世界文学全集)

佐藤優(1960-)

日本の外交官、作家。

現代に生きるファシズム (小学館新書)

現代に生きるファシズム (小学館新書)

ニュートンから佐藤優までと書くとなんだそれはという話だが、何かしらの傾向も見えてくる。まずはっきり言えるのは、書名や帯文に「知の巨人」の文句が入るようになったのは、圧倒的に2010年代に入ってからである(上に挙げた25冊中17冊)。一方で、もっとも古い例は1994年6月1日刊行の『コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人』で、これの編集者はどこまでこの文句に意識的だったのだろうか。

[追記]近藤正高さんから、「知の巨人」はそもそも南方熊楠の代名詞として言われ出したんじゃないかという指摘があった。

調べてみると、南方熊楠についても条件に合う本を見つけたので、彼もリストに加えた。

文庫もないのに――2010年代の終わりに文化系はてなユーザーの本で文庫化されたものをまとめてみる

一月ほど前に以下のツイートをした。

このツイート自体は、1973年組の星である堀越英美さんの『女の子は本当にピンクが好きなのか』の文庫化を祝うものである。

女の子は本当にピンクが好きなのか (河出文庫)

女の子は本当にピンクが好きなのか (河出文庫)

しかし、ふと「単著もないのに」という煽り文句を思い出したついでに、はてなユーザの本で文庫になったものはどれくらいあるだろうかと調べてみた。

ゼロ年代には「新書バブル」なんて言葉もあったと記憶するが、おかげでいろんな人が単著を出す可能性が広がったのは間違いない。

しかし、例えば子供の頃から新潮文庫の100冊といったものになじんできた人間からすれば、「文庫本」にはまた違った重みがあるのである。まぁ、「重み」は大げさだが、2008年2009年に単著を出したはてなユーザをまとめたワタシが、10年後に文化系はてなユーザーの本で文庫になったものをまとめてみようと思った次第である。

条件としては、今もはてなブログにアカウントがあり2018年以降にブログを更新をしている人(故人は除く)、はてなブログはてなダイアリー)を始めたときには単著がなかった人に限らせてもらう。あと「単著もないのに」に対応する以上(?)単著の文庫本だけを対象とする。あと、文庫となると小説が明らかに多いので、小説に関しては三冊までの紹介とする。

以下、50音順。

雨宮まみid:mamiamamiyaWikipedia

50音順で並べたら、雨宮さんの名前が最初にくる。

このエントリを書く準備にあたり、自分が書いた彼女の追悼文をリンクしようとしてはてなブログを検索して、それが出てこないのに混乱してしまったが、それが『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のボーナストラック「グッドバイ・ルック」に含まれているからだった。

文庫ではないが、12月刊行予定の『わたしの好きな街: 独断と偏愛の東京』(asin:4591164829)に雨宮さんの「都会と下町、まるで違う二つの顔を持つ街「西新宿」」が収録される。

女子をこじらせて (幻冬舎文庫)

女子をこじらせて (幻冬舎文庫)

石井てる美id:gotoshin_terumiWikipedia

東京大学を卒業して新卒入社したマッキンゼー・アンド・カンパニーからワタナベエンターテインメント所属のピン芸人に転身された異色のキャリアを持つお笑いタレントだが、この方のインタビューを読んでひどく感心した覚えがある。

伊藤計劃id:ProjectitohWikipedia

伊藤計劃さんが亡くなられて、今年で十年になる。新しい読者は、彼がはてなダイアリーをやっていたことを知らない人が多いのだろう。

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

大野左紀子id:ohnosakiko

大野さんもこうしたエントリの常連であるが、現在は Forbes Japan の連載「シネマの女は最後に微笑む」で健筆を奮っている。

荻上チキ(id:seijotcpWikipedia

今では何より「荻上チキSession-22」のメインパーソナリティーとして知られる荻上さんだが、思えば氏と知り合って随分になる。しかし……そもそもワタシは荻上さんにお目にかかったことってあったっけ? と考えて思い出せないのが恐ろしい。

彼女たちの売春 (新潮文庫)

彼女たちの売春 (新潮文庫)

  • 作者:荻上 チキ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/10/28
  • メディア: 文庫

高世えり子(id:eriko_takaseWikipedia

高世えり子さんがこのリストに入るのは少し不思議な気がするが、上記の条件で見ると合致するようなのだ。現在は cakes で連載「理系クンの日々アップデート育児」をされている。

理系クン (文春文庫)

理系クン (文春文庫)

ちきりん(id:ChikirinWikipedia

ずっと彼女のブログは読んでいるが、現在までブログ執筆の更新ペースがほとんど変わらないのはやはりなかなかできることではない。彼女の著書で文庫になっているのは三冊で、小説を除けばもっとも多い。

未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる (文春文庫)

未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる (文春文庫)

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)

  • 作者:ちきりん
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2014/08/09
  • メディア: 文庫

戸部田誠(id:LittleBoy

てれびのスキマ(戸部田誠)さんの文章は、cakes などで読ませてもらっているが、この5年間くらい毎年途切れず新刊が出ているのはすごい話である。

葉真中顕(葉真中顕のブログWikipedia

いまや罪山罰太郎id:tsumiyama)といっても通じないだろうが、『凍てつく太陽』(asin:4344033442)が第21回大藪春彦賞第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)のダブル受賞を果たした2019年は、葉真中顕さんにとって飛躍の年となったに違いない。

彼の著作ではデビュー作の『ロスト・ケア』を読んでこれはヤラレタと思ったが、その後の作品も読まないといけない。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)

  • 作者:葉真中 顕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

  • 作者:葉真中 顕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/03/09
  • メディア: 文庫

コクーン (光文社文庫)

コクーン (光文社文庫)

  • 作者:葉真中 顕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫

pha(id:phaWikipedia

少し前に「ザ・ノンフィクション」の「好きなことだけして生きていく 前編~元ニートの再々再々出発~」「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」が放送されているが、残念ながらワタシは住んでいるところの関係で観れていない。

pha さんも40代になり(ようこそ)、シェアハウスを解散し、一人暮らしを始めるという転機を迎える。これから彼が書くものがどう変わるのか/変わらないのか、やはり興味がある。

しないことリスト (だいわ文庫)

しないことリスト (だいわ文庫)

  • 作者:pha
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫

なお、共著も対象とするならば、円堂都司昭さん(ENDING ENDLESS 雑記帖 @『ディズニーの隣の風景』 by 円堂都司昭)、栗原裕一郎さん(id:ykurihara)、そして速水健朗さん(id:gotanda6)の3人が著者に名前を連ねる『バンド臨終図巻』があるし、栗原裕一郎さん(第二子誕生おめでとうございます)には別の共著もある。

石原慎太郎を読んでみた - 入門版 (中公文庫)

石原慎太郎を読んでみた - 入門版 (中公文庫)

こういうリストには抜けがあるものなので、お気づきの方はご指摘ください。

テクノユートピアニズムの闇をえぐるアンドリュー・マランツの『Antisocial』が面白そうだ

こないだ Rebuild.fm で森田創さんが、また Facebook で八田真行さんがアンドリュー・マランツAntisocial という本を取り上げているのを見て、この本についての記事を以前読んだような……と記憶を辿り、New Yorker の記事を思い出した。

日本語訳もあるので、そちらを読んでいただければ、この本の内容はだいたいつかめると思う。そうか、アンドリュー・マランツは New Yorker の記者なんだね。

この本の推薦者にジャロン・ラニアーが名前を連ねているのが象徴的だが、Facebook に代表されるテクノユートピアニズムを信奉する巨大テック企業らによるソーシャルメディアが民主主義を破壊したと糾弾する本は、それこそ前回のアメリカ大統領選挙以降のトレンドなのだけど、この本はジャーナリストによる一つの決定版なのかもしれない。

著者が TED2019 で行った著書の内容を要約する講演があるのだが、現時点で残念ながら日本語字幕は付いていない。

いずれにしても、これは邦訳が出るべき本でしょう。

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

ジャネル・シェインの新刊が説くAIのキテレツさとブラックボックスなAIの危険性

ジャネル・シェイン(Janelle Shane)というと、やたらと AI にヘンなことをさせてそれが日本語メディアでも記事(参考:ねとらぼGIGAZINEギズモード・ジャパン)になる AI Weirdness の人という印象があるのだが、その彼女が AI についての本を書いたとな。

You Look Like a Thing and I Love You

You Look Like a Thing and I Love You

今の AI の成果ってかなりキテレツなのに過大評価しがちだし、ブラックボックスアルゴリズムに人間の生活に支配されることに警戒しないといけないよねということだが、メレディス・ブルサード『AIには何ができないか』もそうだが、こういう本が出だしたということなんでしょうね。

やはり彼女も TED2019 で著書の内容を要約する講演を行っている(残念ながらこの動画にもまだ日本語字幕が付いていないが)。全体的に話の内容が古いのではないかという疑念が頭をもたげるが、写真からテンチを識別するよう AI に学習させたら人間の指を選択するようになった話など笑ってしまう。

ネタ元は Slashdot

クロサカタツヤさんの初の単著『5Gでビジネスはどう変わるのか』が今週出る

ワタシ的には『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第67回で大変お世話になった(参考:その1その2)クロサカタツヤさんの新刊『5Gでビジネスはどう変わるのか』が今週刊行される。

5Gでビジネスはどう変わるのか

5Gでビジネスはどう変わるのか

5Gでビジネスはどう変わるのか

5Gでビジネスはどう変わるのか

調べてみたら、意外なことにクロサカタツヤ名義の単著はこれが初めてなはずである。主題的に今とても求められているトピックなのは間違いないし、クロサカタツヤさんが書くのだから凡百のネット記事な解説本ではないだろう。これは期待の新刊である。

内容紹介を見ると、5G の【黎明期+ピーク期】が今年までで、来年からは【幻滅期】という認識なのが氏らしいと思う。しかし、【安定期】に入るのは2026年からなのかぁ……。

あなたが『シャイニング』について知らないかもしれない25のこと

今月末に日本でも映画『ドクター・スリープ』が公開になるが、Netflix で傑作「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」を作ったマイク・フラナガンの監督作なので、ワタシも楽しみにしている。

『ドクター・スリープ』は言うまでもなく『シャイニング』の続編なのだけど、スタンリー・キューブリックによる映画版は原作者スティーヴン・キングから厳しい批判を受けるなど毀誉褒貶の激しい作品である。映画版についてあなたが知らないかもしれない25のことが記事になっている。

正直、誰でも知っとるわい、というのも多いのだけど、あっと驚く話もあったりする。

  1. キューブリックは『シャイニング』を作る前からホラー映画に関心があった(『エクソシスト2』のオファーがあったため)
  2. 映画『シャイニング』は、1952年にキューブリックが携わったテレビシリーズ Omnibus のあるエピソードがインスピレーションになっている
  3. キューブリックはキングが書いた脚本を読みもしなかった
  4. それなのにキューブリックはキングに質問をしている(朝の7時にキングに電話をかけた有名な話)
  5. 『シャイニング』にはキューブリックの家族が何人も参加している
  6. キングはキューブリックの脚色に「失望」した(これは上記の通り有名ですね)
  7. キューブリックは『シャイニング』のロケーション撮影に参加していない(冒頭の空撮ですね)
  8. 原作では217号室だった部屋が、映画では(オーバールック・ホテルの外観に使用された)ティンバーライン・ロッジの要請で(ホテルに存在しない)237号室に変更されている
  9. 映画に登場する「All work and no play makes Jack a dull boy」は各国でいろんな風に翻訳されている(紹介されているドイツ語版、スペイン語版、イタリア語版、どれも誤訳に思えるのだけど……)
  10. 上記の「All work~」をキューブリック自らが全部タイプしたという噂がある
  11. 映画でPlaygirl誌がこっそり映っている
  12. ダニー役を演じたダニー・ロイドは『シャイニング』が唯一の出演作ではない
  13. ダニー・ロイドは『シャイニング』がホラー映画と知らずに演技していた(彼に恐怖を与えないように、キューブリックが彼を守っていた)
  14. ジャック・ニコルソン「やぁぁぁ、ジョニーだよ」の台詞はアドリブ
  15. ニコルソンはあるシーン全体の脚本を書いている
  16. キューブリックシェリー・デュヴァルの関係はよくなかった(というか、デュヴァルの役柄に合わせてキューブリックが故意に彼女に辛く当たった)
  17. ディック・ハローラン役は(『博士の異常な愛情』で一緒に仕事をしていた)スリム・ピケンズにオファーされていた
  18. オーバールックホテルは、空間的な視点で見ると映画と矛盾する
  19. セットの多くが、撮影の終わり頃に起きた火事で焼け落ちた
  20. 雪の中で迷路の追跡場面のために900トンの塩が要った(あれ塩だったのか!)
  21. 映画の制作に5年を要している
  22. 原作とも違う、独自のエンディングが存在する(参考:シャイニング幻のエンディング
  23. 前作『バリー・リンドン』はキューブリックにとって最も商業的に失敗した映画(だったため、『シャイニング』は当てる必要があった)
  24. 『シャイニング』は多くの陰謀説を生み出すことになった
  25. 『シャイニング』の最も有名なファンサイトの運営者は、後に『トイ・ストーリー3』の監督になった(し、『トイ・ストーリー3』は『シャイニング』へのオマージュがいくつかある)

最後のマジか!

個人的な話だが、少し前に人と『ドクター・スリープ』の話になり、相手は『シャイニング』を観てないというので、DVD を貸すよと安請け合いしたのだが、自分のコレクションを見て、『シャイニング』の DVD を持たないのに気づいた! なんてこったい。でも、『シャイニング』は Netflix で観れるというので事なきをえた。

そういえば、同じくキング原作マイク・フラナガン監督作の『ジェラルドのゲーム』もやはり Netflix で観れるね。

皆さんも『ドクター・スリープ』公開を前に『シャイニング』を観直してみるのはいかがでしょう。

シャイニング [Blu-ray]

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