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『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その35

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、カタパルトスープレックスをいつも楽しく読ませてもらっているなかむらかずやさんが note に書評を書いてくださった。ワオ!

note.com

ワタシがこの電子書籍の元となった連載をしていた頃、海外で自身のスタートアップで奮闘されていたなかむらさんのような方から「yomoyomoさんはそのような当時の雰囲気をしっかりと捉えて、記事としてまとめています」と書いていただけるのは光栄である。

「特に印象的だったのが第42章のポール・グレアムの経済的不平等について」とのことで、これは「テクノロジースタートアップは経済的不平等に貢献しているか?」である。

日本のメディアの悪いところに、一度評価されたものがずっと棚上げになり、それがおかしくなってもそれをちゃんと批判されない(から、正しく「再評価」もできない)ところがあるとワタシは思っている。それは例えばポール・グレアムといった IT 系の偉人にも言えることで、この場合は彼が変節したのではなく、以前と主張は変わらないのだけど、それを受け取る側の潮目が変わったことはちゃんと示しておきたいとあえて書いた文章なので、それを評価していただいたのは嬉しい。

そうそう、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のバーナストラック「グッドバイ・ルック」について、たつをさんからコメントをいただいている。

たつをさんはワタシより一年年長であり、達人出版会高橋征義さんと同じく、いくつかの面でこうありたいと思うワタシにとってのお手本のような方なのだけど、ことこれに関してはワタシが「近未来」を先に体験してしまったということか。ただ、「グッドバイ・ルック」は書く内容を意図的にかなりコントロールしており、身内の半ば不条理コントのような尋常でないはた迷惑な行動など、単に読み物の面白さだけ求めるなら絶対入れた話をほぼ完全にオミットしているので、実際はもっとグチャグチャになりうる、とは言っておきます(笑)。

というわけで、まだまだ書評や感想などお待ちしております。

コリイ・ドクトロウが『監視資本主義(の時代)』の問題点を語る

www.theguardian.com

ここでも何度も紹介している(その1その2Netflix ドキュメンタリー『監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影』だが、電子フロンティア財団などデジタルフリーダム関係の仕事でも知られるSF作家のコリイ・ドクトロウが、インタビューで問題点を指摘しているので紹介しておきたい(そういえば、Wired でも批判的なレヴューが出てましたな)。

このインタビューの最初にテック企業の従業員の多くも自分たちの仕事に疑問を持ち始めているという話をドクトロウはしているのだが、そこで『監視資本主義』に登場するテック大企業の元従業員を引き合いに出されたところ、放蕩息子のたとえ話を引き合いにしながら皮肉っぽく答えている。

優れた批評家の Maria Farrell が「テック界の放蕩息子」って呼んでるやつですね。放蕩息子の話で重要なのは、放蕩息子自身が苦しんだから彼は救済されるという点だと彼女は言ってます。しかし、この種のテック界の放蕩息子たちが経験したのは、悲しいと思っただけでしょう。

テック界の人たちはそれ以外の人たちの声に耳を傾けていなかった、ダナ・ボイドのような人類学者は警告していたのに連中はそれを無視してきたという話をドクトロウは続けるのだが、『監視資本主義』については以下のように手厳しい。

『監視資本主義』の問題の一つに、信じられないくらい天才のテック企業の連中が機械学習を使って心をコントロールする方法を考え出したと主張してることがあります。それが問題で、ハンドスピナーを売りつけるマインドコントロール術がおじさんをレイシストにすべく乗っ取られたというわけですが、もう一つ可能性があります。それは連中の主張がゴミだということです。連中は販売資料で誇大宣伝してるだけで、実際に人々をシニカルに、怒りっぽく、辛辣で、暴力的にしたのは公共圏における独占と腐敗の広がりが原因なんです。つまりここで問題なのは、テック企業のツールが悪用されたことではなく、それらのツールが開発された構造が本質的に腐ったもので、今も腐りつつあることなんです。

つまり、ドクトロウはソーシャルメディアが人々の心を支配し操っているというマインドコントロール的ストーリーに懐疑的で、問題はテック大企業の独占と腐敗にあると考えている。

これは Netflix ドキュメンタリー『監視資本主義』に対する批判だが、(このドキュメンタリーにも出演している)ショシャナ・ズボフ『監視資本主義の時代』に対しても同様の批判をしていて、それをズバリ「監視資本主義を破壊する方法」というタイトルの大長文を発表している。

onezero.medium.com

いつまで経ってもショシャナ・ズボフ『監視資本主義の時代』邦訳が出ないものだから、ドクトロウのこの文章を勝手翻訳して公開してやろかとか思ったりしたのだが、これがまたすごく長いんでねぇ。

ドクトロウのこの Guardian のインタビューは、彼の新作 Attack Surface の宣伝が目的だが、この本は邦訳も出た『リトル・ブラザー』(asin:4152091991)シリーズの最新作である。これのオーディオ版をめぐって Amazon の市場支配に反旗を翻したり、有名ブログ Boing Boing から離脱したり、相変わらず忙しい人で、そういう話についても取り上げようと思いながらできずにいたので今回は取り上げさせてもらった。

というか、ショシャナ・ズボフ『監視資本主義の時代』いつになったら出るんだよ!

ネタ元は Slashdot

Attack Surface

Attack Surface

  • 作者:Doctorow, Cory
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: ハードカバー

Attack Surface (English Edition)

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Apacheソフトウェア財団はOpenOfficeの20周年を祝っている場合ではないだろう

blogs.apache.org

OpenOfficeソースコード公開20周年を祝う記事であるが、これを伝えるスラドの記事でも指摘されているように、OpenOffice は長らく開発が停滞しており、よくそんな状態で祝えたものだと言われても仕方ない。

しかも、おそらくはこのタイミングに合わせてだろうが、Document Foundation から OpenOffice に対する強硬な公開書簡が公開されている。

blog.documentfoundation.org

機能的に凌駕する後継プロジェクトがあることを OpenOffice はユーザに周知しろというなかなかすごいメッセージで、要はお前らとっくに開発止まってるんだから、後進に道を譲れというわけ。

この文章中にあるメジャーリリースのタイムラインの図を見れば主張は一目瞭然だけど、以下のくだりなどなかなか辛辣である。

Apache OpenOffice がいまさら古ぼけた 2014年からの4.1ブランチをメンテしたいというなら、確かにそれもレガシーユーザには重要なんでしょう。しかし、新規ユーザを助けることこそ、2020年の今一番やる責任があることです。新しいユーザに OpenOffice を基盤としながらも、それよりずっとモダンで、いまどきで、専門サポートがあり、ユーザが求めるたくさんの追加機能を備えたものがあることを知らせましょうよ。

それが LibreOffice なのは言うまでもない。

ワタシも経験上分かるのだけど、Microsoft Office が入っていないマシンで Office 文書の閲覧と編集をやる必要がある場合、「OpenOffice を入れればいい?」と名前が出るのはたいてい OpenOffice で、そのたびに一応ワタシも「LibreOffice のほうがいいですよ」と訂正するのだけど、一般には未だに OpenOffice知名度のほうが高いという現実がある。

そして、それはもはや有害かもしれず、佐渡秀治さんも書くように Document Foundation の主張は「現状を見ればごもっともとしか言いようがない」というところか。以下のツイートも参考になる。

長らく待った『ブロックチェーンと法』邦訳が来月出るぞ!

yamdas.hatenablog.com

ブロックチェーンと法の関係についての本が面白そうと紹介したのが2018年6月で、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2019年版)で取り上げたときに成原慧さんから邦訳の情報を教えていただいたのだが、それからもだいぶ間があって、来月弘文堂からようやく『ブロックチェーンと法』が刊行される。

なかなかの難産とお見受けするが、これはまさに「国家の法は〈暗号の法〉を飼いならせるか」という問題を探求する、ちゃんと邦訳が出るべき本だと思うので喜ばしいことである。

1990年の初来日時にキース・リチャーズが語ったエリック・クラプトン、ストーンズの代表曲の実際の作者、そして"Start Me Up"製作秘話

www.udiscovermusic.jp

旧聞に属するが、ローリング・ストーンズが1989年にアトランティック・シティで行ったライブを収録した『Steel Wheels Live – Atlantic City, New Jersey』がリリースされた。

このときのツアーを収録したライブ盤は過去にも出ており、特筆すべき内容ではないのだが、このアトランティック・シティでのライブには、トレーラー映像にも出てくるようにエリック・クラプトンが客演しており、昔キースがこのときのことをインタビューで語っていたな……と思い出したので、1989年から15年くらい読者だった rockin' on をひっぱりだす「ロック問はず語り」を久しぶりにやろうと思う。

ただし、今回引用するのは rockin' on ではなく、雑誌 CUT の1990年5月号のキース・リチャーズのロングインタビューで、要は東京ドームで10回公演を行ったストーンズの1990年初来日時のものだ。インタビュアーは渋谷陽一

このインタビューでエリック・クラプトンのことが語られるのは、1969年に初期のバンドリーダーだったブライアン・ジョーンズの脱退後、ミック・テイラーが加入したときのことを振り返るくだり。

それと同時にやっぱりミック・テイラーは当時の若手っていうか、売りだし中の連中の中じゃ一番腕が立つ奴だったからね、それがデカかった。既にある程度、名が通っちゃったような連中は避けたかったんだよな。エリック(・クラプトン)なんか『何で僕じゃないわけ? 何で?』ってゴネてさ、実際、未だにあいつ、ゴネてるんだけど(笑)。この間もアトランティック・シティで一緒に共演して、『昔の仲間付き合いに戻ってみてどんな気分だい?』って訊いてみたら、『言っとくけどなぁ、僕はね、いつだってここにいたかった』なんて言うんだ。だから『そりゃあ、悪かったなぁ』って言ってやった(笑)。でもよ、あいつが有名になり過ぎたんだから、しょうがなかったんだよな。

ジェフ・ベックもそうだけど、やはりクラプトンはサイドマンで満足する人ではなくて、ストーンズに加入していてもうまくはいかなかったろう。クラプトンもそれは自分で承知してただろうが、思わず言いたくなったんだろう。

さて、このインタビューでは、ストーンズの代表曲は「ジャガー&リチャーズ」のどちらが実際に書いたのかという質問に、キースは「こりゃ楽な質問になったな(笑)」とこのときツアーのセットリストで答えているので一覧表にしてみる。

曲名 作者 YouTube
Start Me Up キースのリフにミックの歌詞 YouTube
Bitch 音楽的には半々で歌詞は殆どミック YouTube
Sad Sad Sad ミック YouTube
Undercover of the Night ミック YouTube
Tumbling Dice 基本的にキース YouTube
Miss You ミック YouTube
Ruby Tuesday 丸ごとキース YouTube
Play with Fire 二人の共作 YouTube
Dead Flowers ミック YouTube
Rock and a Hard Place 基本的なアイデアはミック YouTube
One Hit (To the Body) キース YouTube
Mixed Emotions キースが殆ど作ってミックが歌詞を埋め込んでいった YouTube
Honky Tonk Women 基本的にはキースだが二人で結構手を入れた YouTube
Midnight Rambler 基本的にキースの曲にミックの歌詞 YouTube
You Can't Always Get What You Want 同上 YouTube
Can't Be Seen キース YouTube
Happy 基本的にキース YouTube
Paint It Black キースが冗談のつもりで作った曲にミックの歌詞 YouTube
2000 Light Years from Home 二人の共作 YouTube
Sympathy for the Devil そもそもはミックの曲だが今の形になるまでに半々に YouTube
Gimme Shelter キース YouTube
It's Only Rock 'n Roll (But I Like It) ミック YouTube
Brown Sugar 実はミック YouTube
(I Can't Get No) Satisfaction キース YouTube
Jumpin' Jack Flash キース YouTube

飽くまでキースの証言であることに注意いただきたい。YouTube のリンクは、ほぼ全曲ローリング・ストーンズの公式チャンネルにある動画から選んだ……って、おいおい、"Satisfaction" は、かつてキースが「相手の頭をぶん殴るには、やっぱりギブソンよりフェンダーなんだよな。完璧だぜ、あれは。テレキャスターのカーブほど首筋にピッタシはまるもんはないって」とインタビューでノリノリで語っていた、ステージに乱入した客をキースがギターでぶん殴る映像やんか(笑)。

さて、この回答の中で、1981年の全米ナンバーワンのヒットになった代表曲 "Start Me Up" について語っている話がちょっと面白いので紹介したい。

これはそもそもレゲエ・トラックだったんだよね。テイクを何と50回、レゲエ・バージョンで録ったんだ。でも、何をどうやってもつまんねぇんだ。で、その内、皆が御存知のロックンロール・バージョンを一回だけ録って、それからもう20回、レゲエ・バージョンをやったんだなあ(笑)。ははっ、そして五年間、御蔵入りになっていたと。それですっかり忘れてたところに、『刺青の男』を作るんで作品を探してたら、あれが出てきたというわけなのさ。時にしてね、現場じゃそれがいい曲なのかどうかさっぱりわからないことがあるんだよな。

50回、20回という回数は誇張が入ってるかもしれないが、"Start Me Up" はワタシが初めて聴いたストーンズの曲で、最初聴いたときキースのあの美すら感じる不滅のリフがギターに聞こえなくて、これキーボード? と思った思い出の曲であり、未だにストーンズの曲では "Gimme Shelter" などと並んでもっとも好きなので、ともあれロックンロール・バージョンを録ってくれたことに感謝したい。

さて、そもそも今回なんでこのキースのインタビューを取り上げようと思ったのか。ライブ盤の話は一種の言い訳だったりする。

今回リリースされたライブや初来日公演の頃、1943年生まれのミックもキースも確か46歳なんですね。そして、ワタシは少し前に47歳の誕生日を迎えている。つまり、このときのキースの年齢をワタシは超えているのに気づいて、とうとうこの日が来たかと思ったわけだ。

上記の通り、ワタシが初めて聴いたストーンズは1981年の "Start Me Up" だが、当時はバンド名も知らなかったし、洋楽を聴くようになった頃、ミックとキースの不仲の影響でストーンズの活動は停滞していた。このときの『スティール・ホイールズ』がワタシが初めて買ったストーンズの新譜であり、初めて観たライブが初来日公演のテレビ放送だった。

それから30年経ってまだストーンズの活動が続いているというのがすごいのだけど、ともかくあの頃高校生だったワタシからすると、当時既にストーンズはザ・大御所であり、ミックにしろキースにしろ十分ジジイ視してたのが、あのときのキースの年齢を自分は超えたんだなぁ……

Steel Wheels Live [DVD+2CD]

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刺青の男

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スティール・ホイールズ

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『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の(今度こそおそらく)最終版を公開

達人出版会において『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のバージョン1.1.3が公開。サポートページにも反映。

少し前にKindle版公開と特別版(紙版)セールを告知したが、今回ははっきりいってほとんどの読者には影響しないものである。具体的には、本編に変更点はない(だから Kindle 版の更新はない)。

実は、ボーナストラック「グッドバイ・ルック」が以前の更新時にダウングレードしていて、公開後に反映した誤記の修正がロールバックしてしまっていた。とはいえ、それは数か所なので気づいた方はいないと思う。

それならば今回の更新が無意味かというとそうではなかったりする。今回「グッドバイ・ルック」が epub ファイルだけでなく PDF ファイルとしても提供されるようになった。

その背景には、マイクロソフトの Edge ブラウザが epub ファイルの読み込み対応を終了してから、epub ファイルを閲覧するメジャーな手段である calibre では(おそらく縦書きなのが災いして)「グッドバイ・ルック」が正しく閲覧できない問題があった。

実はその問題は calibre 5.0 で解決したようなのだが、達人出版会のほうで PDF 版も一緒に配布することにしたという次第である。

この PDF 版が二段組で、なんだか自分が大層なものを書いたようでちょっとたじろいだのだが――

お分かりだろうか。二段組 PDF ファイルで50ページなのである。こんな分量の原稿を内容の予告なしに高橋征義さんにいきなり送りつけたワタシはおかしいし、(最初ドン引きしただろうに)粛々と対応してくださった高橋さんには感謝しかない。

解説を書いてくださった arton さんに「そのくらいあの特典(ボーナストラック)はすごかった」、堺屋七左衛門さんに「これだけでお金を払っても良いくらいだ」id:pho さんに「こんなの途中で読むのやめられないしずるい。本編はこっちだったのか」と書かしめ、そしてブレイディみかこさんを泣かせた「グッドバイ・ルック」だが、読んだ人からどうしてこれ単体で note なりで課金しないのかと言われたことがある。いくつか理由があるのだけど、それをするつもりは未だない。これは電子書籍『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の読者にとってのボーナストラックなのである。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も紙媒体、電子書籍などで複数のバージョンが存在するので、収録章数、ボーナストラック「グッドバイ・ルック」、2018年秋に執筆した付録「インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」の収録について表にまとめておく。

バージョン 媒体 収録章数 ボーナストラック 付録 価格(税込)
達人出版会本家版 電書 50 770円
Kindle 電書 50 × 770円
技術書典5特別版 42 × 1000円

それではどうか『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』をよろしくお願いします。読んだ方は感想をウェブに書いていただけるとありがたいです。

AIとのペアプログラミングは可能だろうか?

www.oreilly.com

ここでも何度も取り上げている(その1その2その3)O'Reilly Mediaのコンテンツ戦略担当副社長マイク・ルキダスが、また AI とプログラミングについて興味深い文章を書いている。

AI による開発支援というと「AI 支援付き開発」を謳うマイクロソフトVisual Studio IntelliCode が浮かぶが、それよりさらに進んで AI とのペアプログラミングは可能かという話である。

ルキダスがまず指摘するのは、多くの AI システムについて、我々が AI を「神託(oracle)」みたいに見ていること。つまり、人間が入力を入れたら、AI が答えを出力してくれる、みたいな。しかし、そうした片方向の情報モデルには問題が多く、例えば医療分野で AI の導入が進まないのも、医師はメンツを AI に潰されることを恐れるからという側面がある。

我々に必要なのは機械と対話する機能なのだけど、そのユーザインタフェースがまだないとルキダスは書く。別に完璧なインタフェースが必要なのではない。すべての情報を把握しているわけではない環境下において、インテリジェントな(人工知能の)パートナーとその解決策を探求する機能があればよいのだ。何か試してみて、それでダメなら第二、第三のソリューションを試してみるような。

エクストリーム・プログラミングやその他のアジャイルな方法論で最も重要なのは片方向でないことだった。これらの方法論は、何か作ったら顧客からのフィードバックを取り込んで改良するイテレーションを重視した。

ルキダスは、ソフトウェア開発者と顧客の共同作業に、上に書いた「神託としての AI」の先にあるものを見ている。つまり、我々に必要なのは AI にコーディングの指図をされることじゃなくて、AI の提案を人間のプログラマが磨きをかけ、両者が解決策に向けて協力するような双方向の情報モデルである。

そのソリューションはおそらく IDE に組み込まれるだろう。プログラマがやりたいことを、不正確で曖昧な英語でざっと記述することで始める。AI はその解決策がどんなものになるか、おそらくは疑似コードみたいなスケッチでそれに応える。それを受けてプログラマは、豊富なコード補完機能(つまりそう、GitHub とかそうしたものにあるすべてのコードを学習したモデルに基づく)を使って実際のコードを埋めて書き継ぐわけだ。

こうして訳してみると、Visual Studio IntelliCode が GitHub にあるコードを機械学習している話も連想するわけだが、重要なのは人間のプログラマと AI の双方向的な共同作業、つまりはペアプログラミングの可能性である。AI はまだバグを検知して修正するのはあまり得意ではないが、何かおかしいときにプログラマに注意を促すのはとても得意とルキダスは見ている。

これは機械とのペアプログラミングだろうか? たぶんそうだろう。代理人よりも共同作業者に近い形で機械と協力している。プログラマにとってかわることじゃなくて、プログラマをより良いものにし、より迅速で効果的なやり方で仕事をするのが目的になる。

これはうまくいくだろうか? 私には分からないが、我々はこういうものをまだ作っていない。今こそそれにトライするときだ。

これは少なくともコーディングの自動化より面白そうな試みに思えるが、果たしてプログラマと AI のペアプログラミングは実現するのだろうか?

オープンソースのパラドックス、そしてHeisenbugについて

antirez.com

インメモリデータベース Redis の開発者として知られる antirez さんの文章だが、「オープンソースパラドックス」とは何か?

誰かも言うように、最高のコードは本来他のことをやるべきときに書かれる。それは例えば、作家は一銭の金にもならない小説に取り組むことで最高傑作を書くようなものである。プログラマというものは、業務時間に愚劣で退屈で無意味と感じるプロジェクトよりも、オープンソースのサイドプロジェクトのほうによりエネルギーを注ぎ込みがちである。

オープンソースは、半年だかでキャンセルされる可能性のある大企業の仕事とは違い、本当にその人がやりたいこと、ソフトウェアがどういうものであるべきか、とにかく楽しみのすべてであったり、場合によってはコーディングで怒りを覚えることの反映なのだ。

だからそのソフトウェアのユーザが声をかけてくるのは、そのコードのある部分がダメだからで、それについて何かしたいと協力したいと思っているわけだ。これはとても手のかかることだが、ユーザが作者にお金を払わないからといって侮辱しているとは考えてはいけない。お金の問題ではないのだ。そうしたいと思えば作者はバグや寄せられる文句をシカトしてかまわない。別に契約を結んでいるわけじゃないからだけど、文句を言うユーザは作者を助けようとしているのであって、作者と同じものに関心があるのだ。それはソフトウェアの品質であり、完成度である。

ソフトウェアのデザインはその作者のみが決めるべき事項であって、それに合わないと判断すれば pull request や提案を却下する資格がある。とはいえ、オープンソースを書いていて、ユーザの要求に気分を害するなら、その時点であなたの仕事は何かしらオフィスワークに近づいていると考えたほうがよいかもね、という話である。

このあたり、今夏に開発の一線から離れることを表明したこの著者の心境が反映されているように思うのだが、ワタシがこの文章で気になったのは、本筋から離れるが以下のくだり。

And you want it to rock, to be perfect, and you can’t sleep at night if there is a fucking heisenbug.

The open source paradox - <antirez>

heisenbug ってなんだ? と調べたら、Wikipedia 英語版に Heisenbug というページができている(日本語版では「特異なバグ」)。

要はヴェルナー・ハイゼンベルク不確定性原理にひっかけた、デバッガで追おうとしても再現しないような「不確定性バグ」のことを指す。

『ブレイキング・バッド』のファンとしては、もしかしてこの単語もこのドラマの影響で生まれたものじゃないかと思ったが、本棚の『ハッカーズ大辞典』を調べたらちゃんと項目がありました(参考:heisenbug)。ワタシが知らなかっただけで昔からある言葉なんですな。

ネタ元は Hacker News

データ第一な世界を疑う技術を説く『Calling Bullshit』がタイムリーで面白そうだ

www.forbes.com

Forbes で知った Calling Bullshit という本が面白そうだ(公式サイト)。

著者は生物学的、社会的ネットワークによる情報の流れを研究する進化生物学者Carl T. Bergstrom と、Datalab の共同創始者であるデータサイエンティストの Jevin D. West で、この二人がこの本で、誤情報やフェイクニュースが蔓延するメディア環境において、今では威嚇的にエビデンスとして使われるデータの「でたらめ」を見分け、正しく疑う姿勢と技術を身につけようと説く本である。

書名に Bullshit という単語があることで、どうしてもデヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』を連想してしまうが、あれとは違った主題とはいえ、かなり威勢が良さそうで面白そうだ。ただ Forbes の書評ではソースの提示が十分ではないことが批判されているのに注意ね。

この本の推薦者を見ると、ソール・パールマッタージョージ・アカロフポール・ローマーといったノーベル賞受賞者が名前を連ねていてのけぞった。このブログでおなじみの人では『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』のキャシー・オニールの名前もあるよ。

いずれにしてもとても今どきな本であり、これは邦訳出てほしいね。

2021年にF・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』がパブリックドメイン入りするのか!

www.longislandpress.com

F・スコット・フィッツジェラルドの代表作『グレート・ギャツビー』が2021年にパブリックドメイン入りするという記事である。

まだパブリックドメインになってなかったの? と驚く人もいれば、そんなのとっくに知ってましたけど? という人もいるだろう。

ワタシ的には、バズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『華麗なるギャツビー』公開当時、「なぜギャツビーはパブリックドメインでないのか?」という文章を翻訳しており、感慨深いものがある。

要するに、『華麗なるギャツビー』は2021年1月1日までアメリカ国民には本当の意味で自由にならない――それも著作権保護期間がまた延長されなければの話だが。

なぜギャツビーはパブリックドメインでないのか?(Why Isn't Gatsby in the Public Domain? 日本語訳)

このときはじめてワタシも『グレート・ギャツビー』が2021年にパブリックドメイン入りするのを知ったわけだが、これを訳した2013年には、2021年なんてえらく遠い先のことに思えたものだった。全然先じゃん、と。

しかし、時蠅は矢を好むように時間は過ぎるもので、気が付いたらその「えらく遠い先」はすぐ先にきていた。

そして、その作者F・スコット・フィッツジェラルドが亡くなって、もうすぐ80年になるのである。彼の後半生はお世辞にも恵まれたものとはいえなかったが、素晴らしいことに『グレート・ギャツビー』など彼の作品は名声を保っている。

そのパブリックドメイン入りにより、また『グレート・ギャツビー』が新たな作品としての命を花開かせればいいなと思う。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

華麗なるギャツビー [Blu-ray]

華麗なるギャツビー [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/05/02
  • メディア: Blu-ray

TENET テネット

『ルース・エドガー』を観たとき、また映画館通い再開かと思っていたのだが、その後新型コロナウィルスの第二波とやらのせいで劇場からまた足が遠のいてしまい、再び3か月以上間が開いてしまった。

本作はそうした意味で、また映画館で映画が観れるぞというハリウッドの希望の象徴となった。ワタシも、劇場公開にこだわるクリストファー・ノーランの執念に応えるつもりで IMAX シアターで鑑賞してきた。のだが、公開初日の金曜日は仕事の都合で行けず、翌日、奇しくも映画館が全席販売を再開する日の鑑賞となってしまった。案の定前後左右座席の予約は埋まっており、出向いたシネコンの人の多さにしばらく入るを躊躇してしまったくらい。コロナ怖い……。

さて、本編上映が終わって劇場を後にしていると、前を歩く二人組のおっさん同士で「あれ分かった? オレ全然意味分からんかったわ。時間返してほしいわ」とボヤいていて微笑んでしまった。安心しろ、ワタシも大して分かんなかったから!

いやー、それにしても早川書房から出ているようなハード SF をガチでハリウッド大作にしたクリストファー・ノーランは頭おかしいね。しかも、小説なら描写で済ませられる時間の順行と逆行が交差する場面を映像で表現する必要があるわけで、今そんなことやろうとするの彼だけじゃないか。

ノーランは、前作『ダンケルク』でも同時期の三つの異なる時間軸を一本の映画にまとめあげていたが、時間の逆行を描く点で出世作メメント』を連想させるし、最後、タイムアタック! なクライマックスは、やはり『インセプション』に近い感触があった。ただ、ガチな SF という意味で『インターステラー』のように観るべき映画ではなく、むしろノーランの『007』シリーズ、すなわちスパイアクションへの偏愛という視点で観るべきだし(マイケル・ケインの登場場面が『キングスマン』になりかけるのに笑った)、騙し合いという意味で意外にも『プレステージ』を思い出したりした。

というわけで、一度観ただけではとてもじゃないがワタシには本作を十分には理解できなかった。時間の逆行という無茶なものをガチで表現しているのだから、それを恥ずかしいとは思わないが、ロバート・パティンソンのリュックのポケットから出ている赤いケーブルの意味とか、本作のポイントについて、あれはどういう意味ですか? ここの場面を説明してください、とか『テネット』クイズを出されたら、かなりの低得点をたたき出してしまいそう(前述のケーブルについては、昨日友人から SMS で教えてもらった。そういえばロバート・パティンソンをあまり評価してなかったのだけど、本作での彼は良かったね)。

さて、本作のラストで、とある名作映画の、やはり映画史上に残る名ゼリフがもじって引用される。わけ分かんねーな、と主人公たちのやりとりを観ていたワタシはそこでホロリとなってしまった。そして自分は「映画に甘い」と思った。

「映画に甘い」とは、映画自体が好きというのもあるし、そうした過去の名作の引用にグッときてしまうところも含まれる。そして何より映画には映画にしかできない表現があり、映画にはテレビドラマとは違った何かがあると当然のように思い込むロマン主義(?)でもある。「ピークTV」という言葉ももはや過去のものとも言われるが、それでもこうした考え方は明らかに時流に合ってないし、有害とすら言えるかもしれない。

ともあれ、そういうロマンには大前提としてデカいスクリーンが必要である。ワタシの部屋の貧相な40インチ液晶テレビではダメなのだ。だからノーランが劇場公開にこだわったのは理解できるし、そのロマンを引き受け、しかも「大枠の理屈は分かるが、これおかしいだろ」としか言いようのない題材を、ジャンボ機を丸ごと建物に突っ込ませるなどまでして押し切ったという点で、ワタシは『テネット』を、そしてノーランを肯定したい。

観ている間はひたすらエキサイトするけど、終わってみると何も残らないところまで含めてノーランの映画らしいし、何度も書くけどいろいろ分かんなかったけど。

ジャロン・ラニアーの本業(?)のバーチャルリアリティ本の邦訳が出ていたのか

www.netflix.com

先日も「ケンブリッジ・アナリティカ告発本の真打クリストファー・ワイリー『マインドハッキング』と「監視資本主義」の行方」で紹介した Netflix ドキュメンタリー『監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影』公式サイト)を遅ればせながら観た。

まぁ、予想通り/期待通りの内容だった。GoogleFacebookTwitter などのテック大企業で実際にサービス開発を担った人たちが何人も登場して語る一方で、彼らの発言を理論的に整理する役割として、『Zucked』のロジャー・マクナミー『監視資本主義の時代』のショシャナ・ズボフ『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』のキャシー・オニールと並んでフィーチャーされていたのが「バーチャルリアリティの父」ジャロン・ラニアーである。

『監視資本主義』を観た後、気になって調べたら、ワタシが4年以上前に紹介した本の邦訳『万物創生をはじめよう』がこの夏刊行されていたのを今更知った。

この本は、ラニアーの「VRの父」としての本業(?)寄りの仕事になる。(『監視資本主義』でも紹介されてた)アンチソーシャルメディア本しか翻訳されないのはあんまりだろと思っていた人間としては嬉しいのだけど、Amazon を見ても刊行から3か月経って1つもユーザレビューがついてない。ちゃんと届くべき読者層に宣伝が届いていないのではないだろうか? 他人事ながらいささか心配になる。

これは宣伝だけど、ワタシの『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も連載第1回目はジャロン・ラニアーの本を取り上げた「インターネットによる中流階級の破壊をマイクロペイメントが救うか」だったという縁もあり、彼のことは気になるのですよ。

スティーブ・ジョブズの愛読書30冊

mostrecommendedbooks.com

少し前から話題になっているサイトで、各界の著名人が薦める本を集積している。最近イーロン・マスクが勧める「読んでおくべき11冊の本」とかネットニュースでも取り上げられている。

news.slashdot.org

この Slashdot のストーリーで、ビル・ゲイツスティーブ・ジョブズの推薦本の比較が行われている。

読書家として知られ、そのインプットについてちゃんとこまめに文章を書いているビル・ゲイツは必然的に数が多すぎるので、ここでは30冊と紹介するのにちょうどよいサイズ感のスティーブ・ジョブズのほうを取り上げたい。

mostrecommendedbooks.com

いろんな分野の本を網羅するビル・ゲイツと比べると、スティーブ・ジョブズのほうは嗜好性がはっきり出ていて、らしい気がする。

それにしても、禅やら瞑想やら神秘主義やらスピリチュアル系な本がリストの相当割合を占めるところがこの人ならでは。

それにしてもシリコンバレー人種って本当にアイン・ランド好きよねぇ。

同じバーで収録された二本のミュージックビデオ

大したネタではないのだけど、最近公開されたばかりの二つのミュージックビデオが同じバーで収録されているという話。

前者は長崎をベースに活動するミクスチャーバンド UPPER YARD の新曲(SpotifyApple Music)、後者は長崎発のアイドルユニット MilkShake の新曲である(SpotifyApple Music)。いずれの曲も好きです、ハイ。

というわけで、共通するのは長崎ということなのだけど、これに気づいたのは MilkShake のプロデューサーである唐川真さんからのインプットがあったから。

この二つの PV の収録現場となったバーの店名はここではあえて書かないが、ワタシも一度くらい行ったことがあるはずなのだけど、確かな記憶がないのだからどうしようもない。

ジョン・クリーズが創造性、モンティ・パイソン、ポリコレについて語るインタビュー

『モンティ・パイソンができるまで』に続くジョン・クリーズの新刊は、ズバリ Creativity と題した創造性をテーマとする本で、その刊行を受けていくつかインタビューを受けている。

www.newyorker.com

新刊のテーマである創造性について、クリエイティブであるためには、クリエイティブな思考でないといけない。クリエイティブなムードに身を置く必要がある。それをどうやって実現するか? クリエイティブなムードとは、本質的に遊び心に満ちている。なんで子供はごく自然に遊べるのか? 子供は誰が夕食を作るか心配する必要がない。つまりは、日々の責任だね、とのこと。

創造性を尊敬するコメディアンの先達から学んだのかと問われ、例としてデヴィッド・フロストの名前をインタビュアーが挙げると、すかさずクリーズ先生はピーター・クックの名前を挙げて訂正している。本当にクックを尊敬しているんだなぁ。

面白いのは、インタビュアーが数年前にエリック・アイドルに聞いた、彼がジョージ・ハリスンと友達になって、モンティ・パイソンにおける自分が、ビートルズにおけるジョージ・ハリスンと同じ「free-floating radical(気ままな過激派?)」な役割を果たしていたと気づいた話を受けた、クリーズ先生の言。

私はポール・マッカートニーに共感するよ。だってジョン・レノンはちょっともてはやされ過ぎに思うし、マッカートニーに八つ当たりする人もいた。グループではエリックが一番一緒に仕事がしやすかった。彼は物事を諦めることができたから。一方でとても仕事が難しかったのはテリー・ジョーンズだった。彼はあらゆることに強い信念があって、彼の物の見方を変えることなどできなかったから。で、グレアム・チャップマンはどのみち人の話なんて聞いてなかったし。テリー・ギリアムにいたってはその場にいなかった。で、マイケル・ペイリンは、衝突するのが嫌いなものだから、誰にでも同意するばかりでね。

少しマイケルに辛辣だが、この後、「マイケルと私は自然な友達だし、どのみちずっと友達でいるだろう」とも言っている。ギリアムがその場にいなかったというのは、彼がグループの中で単独でアニメーション作りを行っていたから。

今年1月に亡くなったテリー・ジョーンズとジョンの対立はよく知られているが、このインタビューでも創作過程において二人の対立は生産的だったか、有害だったかと聞かれ、はっきり有害だったと答えている。が、『ライフ・オブ・ブライアン』の監督としての仕事を phenomenal と讃えている。『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』においても、テリーJの監督も最高だった、テリーGは画作りには長けていたが、コメディーの撮影という点でテリーJのほうが優れていた、とのこと。

インタビューでは、クリーズ先生の代表作『フォルティ・タワーズ』の(一時的な)配信取り下げについても突っ込んで聞いている。これは登場人物のゴーウェン少佐がNワードを口走る場面があるからだったんですね。

当然ながらというべきか、クリーズ先生はポリティカルコレクトネスについて良い感情を持ってないようだ。

ポリティカルコレクトネスに関係するあらゆることが、コメディというものの誤解だと私は感じる。コメディは完璧な人間とは無縁のものだ。コメディとは人間の弱点、弱さに関するものなんだ。

この件については、昨年の「ロンドンはもはや英国ではない」発言も引き合いにしながらいろいろ聞かれており、クリーズ先生も応戦しているが、近年の筒井康隆に重なる感があって苦しいというのが正直なところ。

それはともかく、クリーズ先生の新刊も邦訳が出るといいなぁ。

Creativity: A Short and Cheerful Guide

Creativity: A Short and Cheerful Guide

  • 作者:Cleese, John
  • 発売日: 2020/09/03
  • メディア: ハードカバー

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