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WirelessWire Newsブログ更新(ソーシャルネットワークの黄昏、Web 2.0のふりかえり、そして壊れたテック/コンテンツ文化のサイクル)

WirelessWire Newsブログに「ソーシャルネットワークの黄昏、Web 2.0のふりかえり、そして壊れたテック/コンテンツ文化のサイクル」を公開。

今回はタイトルも長いが、文章自体もとんでもなく長くなってしまった。

今回の文章は、某所における高橋征義さんの「そういう「Web 2.0のふりかえり」、あるいは「Web 2.0大反省会」から始めた方が地に足のついた議論になりそうだとは思います」という書き込みを見たところから始まったものである。

しかし、これだけ長文を書いても「Web 2.0のふりかえり」としては全然足らず、入れたかった話はいくらでもあるのだから難儀な話である。例えば、ジョナサン・ハイトの「Meta がどう言い張ろうとも」という副題が添えられた「そう、ソーシャルメディアは民主主義を弱体化している」とか。

あと、この夏季休暇中に、刊行とほぼ同時に購入したがちゃんと読んでなかった梅田望夫ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』を初めてちゃんと読んだのだが、この文章にはさすがに(間接的にしか)入れ込むことができなかった。

車から収集したデータはどこに送られているのか?

themarkup.org

これは労作というかインターネット時代の調査報道である。

もはや車もネットにつながるのは当たり前になりつつあるが、そういうコネクテッドカーから収集されたデータは誰の手に渡っているのか、The Markup はその37の企業を特定している。その公開先が GitHub なのが今どきというか、ニュースサイトも当たり前のように GitHub にアカウント持ってないといかんのだろうな。

問題は、車から収集したデータの販売や使用に関する規制がほぼない中で、そのデータがどんな形での収益化に使われるか、またその際、車の利用者のプライバシーはちゃんと守られるのか、だろう。

問題の37社だが、TomTom のような位置情報技術に基づくナビゲーションを提供するところ、AT&TT-Mobile など通信事業者、あと保険会社や自動車メーカーなどはそうだよななという感じだった。この記事では車両データハブや車載テレマティクスといった分類もある。個人的には Sirius XM のような衛星ラジオサービスもこの分野のプレイヤーなのにちょっと意外さを感じた。

こういう記事を見てどうしても思ってしまうのだけど、この37社のうち、日本車にサービスを提供しているところはあるのだろうか? ワタシが知らないだけで、GM による OnStar みたいな日本車メーカーによるサービスが既に稼働しているのだろうか?

ネタ元は Schneier on Security

インターネット・アーカイブのLive Music Archiveが開始20周年とな

blog.archive.org

インターネット・アーカイブLive Music Archive が20周年を迎えたことを祝している。その URL から推察される通り、etree.org コミュニティに端を発し、2002年7月に Jonathan Aizenブルースター・ケールにライブの録音音源のアーカイブをもちかけた。ケールも乗り気だったので、彼は etree.org コミュニティに「永久無料の無制限のストレージ、無制限の帯域幅」の提供をもちかけたところ、「とても信じられないが、本当にそれが可能なら、それは我々の夢そのものだ」が返事だったそうな。そうして始まった、と。

このライブ音楽コレクションについては、10年前に「Internet Archiveで音楽を楽しむ初歩のガイド」というエントリを書いたときも紹介しているが、やはりもっとも充実しているのはグレートフル・デッドで、Dead & CompanyPhil Lesh and Friends など派生バンドのライブ音源も大変な数になる。

そしてデッド関係以外でも、String Cheese IncidentTedeschi Trucks Band などアメリカのジャム系バンドが優勢だが、それ以外でも Mogwai など強いし、メジャーどころでもこの人たちの音源もこんなにあるのかと調べると驚くと思います。

yamdas.hatenablog.com

そういえば一年前にはこういうエントリを書いているが、インターネット・アーカイブはFMラジオ番組アーカイブも相当なもので、音源だけでも本当にすごいよねぇ。しかも、権利関係大丈夫かよと言いたくなるところも(笑)。

そうそう、元エントリではこのアーカイブに特に貢献の大きかった人たちの名前が挙げられているのだが、その中に(現在は Chia の CEO である)Bram Cohen の名前があるのが目を惹いた。おそらくはこのためにコードを書いたとかではなく、BitTorrent の存在自体が貢献だったということなのかな。

アンドルー・ペティグリーらの図書館の歴史を語り尽くす本が面白そうだ

blog.archive.org

そうそう、インターネット・アーカイブといえばもうひとつあった。インターネット・アーカイブは、本に関するオンライン講演を最近毎月行っており、そこで知った本をブログで紹介しようと思いながら機会を逃していた。

それが The Library: A Fragile History なのだが、古代から現在のデジタル時代までの図書館の歴史をたどる本好きにはたまらない本とのこと。

このインターネット・アーカイブでの講演だが、最初のほうでブルースター・ケールが登場してこの本の魅力を勢いよく語っていて、世界的に有名な図書館は当然として、そうでないものを含め、図書館の多様な歴史について語る本ということのようだ。

この本の副題に Fragile という単語が使われているが、一日で破壊されてしまった図書館もこの本では紹介されているとのことだが、図書館の蔵書は往々にして時とともに失われてしまうが、図書館というコンセプトは驚くほど強靭であることを訴える本みたいですね。著者の一人アンドルー・ペティグリーには『印刷という革命』の邦訳もあり、図書館の歴史本を書くのも納得である。今回の本も邦訳出ないかねぇ。

あとこの本では貴重な写本をめぐって行われた犯罪も扱っているって、これは映画『アメリカン・アニマルズ』で描かれた事件も入るんだろうな。あれは犯罪の当事者本人が出演していて驚いたものだ。

アンソニー・ボーディンが説く初めて行く都市でレストランを探す方法「ネットでオタクを怒らせる」

www.esquire.com

この2013年公開の記事は Boing Boing 経由で知ったが、この記事で世界的なセレブ料理人、フードジャーナリストだったアンソニー・ボーディンが説く、初めて行く都市で食べる店を探す方法が面白い。

アンソニー・ボーディン自身は、初めてある都市に行く場合、早朝にその街の中央市場に出向き、そこの人が買い、食べるものを観察し、その街では何がおいしいか見極めるようにしているそうだが、続けて違うやり方も紹介している。

初めて行く都市で行く店を見極めるもう一つのやり方に、ネットでオタクを怒らせるというのがある。掲示板のあるグルメの集まるウェブサイトにアクセスする。例えば、クアラルンプールに行くとしよう――マレーシアの掲示板に、最近マレーシアに行って世界最高のルンダンを食べたと言って、ある店の名前を出せば、うっとおしいグルメたちが大挙して怒りのリプライをよこし、その店はクソで、行くべきお店を教えてくれるというわけだ。

つまり、「クアラルンプールでおいしいルンダンを食べたいんですが、どこがおすすめですか?」みたいな普通の質問は興味をひかないが、間違った意見を使ってより良いお店の情報が釣れるということですね。

Boing Boing のマーク・フラウエンフェルダーは、この手法が「インターネットで正しい答えを得る最良の方法は、質問をすることではない。そうでなく間違った答えを投稿することだ」という「カニンガムの法則」に近いと書いている。

ただし、Wiki の父であるウォード・カニンガム自身は、「私は間違った答えを投稿して答えを得ることなんて勧めてないからな!」と「カニンガムの法則」を否定しているのでご注意あれ。

アンソニー・ボーディンが悲劇的な死を遂げたのが2018年で、昨年彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画 Roadrunner: A Film About Anthony Bourdain が作られ、コロナ禍で大ヒットとなったという話は聞いたが、日本公開はかなわなかったのか。

恥さらし文章「ある「パソコンの大先生」の死」に寄せられたありがたいコメントの数々

wirelesswire.jp

先月末にこれの原稿を送付したところ、WirelessWire News 編集長から、文章の最後で「読者からのダメ出し」を募集しては、と提案をいただいた。

正直、そのときは重大問題が解決しておらず(実は今もそうなんだけど……)肉体的にも精神的にもかなり疲弊していたのだが、ここぞとばかりにワタシの攻撃的マゾヒズムが発動して、辛辣なコメントでもどうぞどうぞというマインドセットになり、その提案に乗ることにした。かくして「あなたからのダメ出し」が募集された。

8月6日に編集長より読者からのコメントを送っていただいたのだが、読んでみるとほぼすべて温かいコメントばかりでこちらが恐縮してしまった。コメントくださった皆様、ありがとうございます。

それをここで紹介しようと思ったが、考えてみればその了承を得ていないわけで、ここでの引用は止めておき、以下は公開の場での反応のみ紹介させてもらう。

text.baldanders.info

ブログでワタシの文章を取り上げたものとなると、Spiegel さんのくらいしか見つけられなかったところにもブログの退潮を実感して悲しく思う。

hayabusa9.5ch.net

エゴサーチして5ちゃんねるのスレッドでも取り上げられているのに気付いたが、ワタシの文章を実際に読んだとおぼしきコメントが見当たらないので、参考にならない。

はてなブックマークでいただいた反応では以下のありがたいコメントが代表的なところか。

あと、Twitter でいただいた反応の主なところもリンクしておく。

最後にこれだけツイートを埋め込みさせてもらったのは、いただいた反応の中で、このツイートに対してだけは唯一「GAFAMが嫌いとは一言も書いてません。あとローカルアカウントでのセットアップ方法はリンクしてますよ」とリプライさせてもらったのだが、無反応でなんだかなーと思ったから。

「自業自得」「同情の余地は全くない」という評価には、何の文句もございません。

オープンソースのセキュリティ:デジタルインフラは砂上の楼閣に築かれている?

www.lawfareblog.com

ブルース・シュナイアー先生のブログ経由で知った記事だが、これが掲載されている Lawfare の名前は以前取り上げていた

この記事が論じるのはオープンソースが抱えるセキュリティの問題であり、ワタシもこれについては「Apache Log4jの脆弱性とともに浮かび上がったオープンソースのメンテナの責任範囲の問題」などで取り上げている。この記事の著者の Chinmayi Sharma は、オープンソースの主な受益者であるソフトウェアベンダーの多くが、自分たちが利用する OSS プロジェクトに貢献するインセンティブがないフリーライダーであることをまず挙げる。このインセンティブの問題に対する制度的な対応が必要というわけですね。

ここで引き合いに出されるのはやはり、Apache Log4j脆弱性「Log4Shell」だが、脆弱性の発見から半年以上を経ても、Log4Shell の影響を受ける約30億台のデバイスのうち60%がパッチ未適用のままらしい。他にも Apache Struts の脆弱性に起因する Equifax の情報流出Atlassian Confluence のゼロデイ脆弱性といった例を引きながら、オープンソースは遍在し、もはや公共政策上でも欠かせないデジタルインフラだが、それに脆弱性があれば(プロプライエタリソフトウェアのようにその顧客だけにとどまらず)広範囲に影響を及ぼしてしまうことを指摘する。

その上で著者は、問題はコードの品質ではなく(それについてはプロプライエタリなコードと同等以上の品質は高く、米国が技術革新において優位に立つことができたのはオープンソースのコードのおかげとまで著者は認めている)、コードを保護する機関がないことだと書く。

やはりここで問題になるのは、上でも挙げたフリーライダー問題。著者は道路や橋といった公共財が使いすぎに弱いことをオープンソースに当てはめてて、ちょっとうーんと思ってしまうが、OSS プロジェクトの人気が高まるほどそのサポートは強化されなければならないのに実際はそうでないというのはそうなのだろう。

オープンソースプロジェクトの30%はメンテナが一人しかいないが、それを利用する企業にはオープンソースを改善するインセンティブがないという「傍観者効果」が起きている。オープンソースプロジェクトは、上流への貢献と持続的なメンテナンスのためのリソースを希求しているが、道路や橋に税金が投入されているようにオープンソースも支援されるに値すると著者は主張している。

ソフトウェアのサプライチェーンで最も弱いところは無責任なソフトウェアベンダーになるが、なんでベンダーはオープンソースのセキュリティ対策を本腰を入れないのか? その理由というか構図についてもこの記事ではいろいろ書かれているが、上で書いたインセンティブの問題があるのは間違いない。

これに対し、最近では連邦取引委員会が Log4Shell の対応パッチの適用が遅い企業を強制措置をかますなど、政府がオープンソースのセキュリティ問題に介入する姿勢を見せつつある。著者はその一環としての SBOM(Software Bill Of Materials:ソフトウェア部品表)を評価するが、それだけでは不十分と断じる。SBOM 自体は脆弱性情報と直接的にリンクするものではないので、その運用にはそれを読み解く能力が必要になるが、標準フォーマットも決まってないじゃないかというわけ。

オープンソースコミュニティも当然セキュリティの問題は把握しており、Open Source Security Foundation(OpenSSF)は、既に米国政府とミーティングの機会を持つなど連携しながらオープンソースのエコシステムの保護に注力しているし、オープンソースプロジェクトに無料のセキュリティ監査サービスを提供する Open Source Technology Improvement Fund(OSTIF) も成長を続けている。

しかし、オープンソースコミュニティ自体、必要なリソースと最低限のセキュリティ対策を要求する影響力を持っていない。最近、PyPI が重要なプロジェクトに対し、二要素認証を義務化をアナウンスしたが大きな反発をくらった。つまり、善意であれオープンソースコミュニティ単独でセキュリティ基準の引き上げを達成するのは難しい。

著者は、もはや公共財の性質を持つオープンソースを維持する制度的構造を構築する必要があると訴える。そして、それ自体は目新しい主張ではない。それには効率的な資源配分を確保し、最低基準を課すことが必要になるが、果たしてそれをオープンソースプロジェクトに適用するのはうまくいくかねというのがワタシの感想になる。

あとオープンソースソフトウェアと一言で言っても、開発や利用のされ方はそれぞれなのに、この文章はあまりにひとまとめにしすぎではないかいう不満もある。が、OpenSSF や OSTIF の話はこの文章を読んで初めて知ったので、そうした意味では有益だった。

あと、今年春に「デジタル世界における信頼構築のために今考えるべき「新たなサイバー社会契約」」というエントリをワタシも書いているが、サイバーセキュリティのため官民はもっと密接に連携にしなければならないというクリス・イングリス国家サイバー局長の主張の射程にもこの話は含まれるよな、と思った次第。

サイバー軍拡のいきつく先を描く『サイバー戦争 終末のシナリオ』が刊行されていた

www.hayakawabooks.com

これは面白そうだと読むうちに、これって今年はじめに書いた「もはや世界を終わらせかねないサイバー軍拡競争の最前線」で紹介した This Is How They Tell Me the World Ends の邦訳じゃん! と思いあたった。

原書は今年2月にハードカバーが出ており、それから半年足らずでの邦訳刊行なのだから、スピード出版と言えるだろう。上下巻で5000円を超えるなかなかのボリュームに少したじろぐが、それだけの価値があるとハヤカワは踏んだわけで、こないだ紹介したジェームズ ネスター『BREATH──呼吸の科学』もそうだが、こういったノンフィクションも早川書房が持っていってしまうんだなぁ、という感慨がある。

『サイバー戦争 終末のシナリオ』は、このような筆者の問題意識に見事に応えてくれた。著者のパーロースがエピローグで述べているように、本書の焦点はまさに「人」に当てられているからであり、他の「サイバー戦争本」と一線を画しているのはまさにこの点である。

【8/3(水)発売】見えない「サイバー戦争」はどこで行われているのか? 小泉悠氏による新刊解説を特別公開|Hayakawa Books & Magazines(β)

技術ドリブンのサイバー戦争本よりは開口が広い本ということか。

しかし、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2022年版)」で取り上げた洋書で、最初に邦訳が出たのがこれになるとはまったく予想してなかったな。

シド・バレットの描いた絵をはじめて見た……

boingboing.net

初期ピンク・フロイドの中心人物だったが、薬物や精神的な問題のため離脱を余儀なくされた「クレイジーダイヤモンド」シド・バレットが絵を描いていた話は何かで読んだ覚えはあるが、彼のその分野の作品を見たことはなかった。

なので、1960年代初頭から、その最晩年(!)にいたるまでの彼の作品を一望する動画には驚いた。

多彩な絵を描いていたんだな! しかし、1971年の絵の後、21世紀初頭まで制作年がほぼ10年置きくらいになってしまうのは悲しい。21世紀、つまり彼の晩年になると点数が増えるのだが、これはどういう精神面の変化だったんだろうな。

改めて Wikipedia 日本語版のシド・バレットのページを読むと、デヴィッド・ボウイが「膨大な数のバレットの絵画作品をコレクションしている」こと、その死後に実妹がインタビューで、シド・バレットが「美術史に関する研究書の執筆に傾注していた」ことを語ったらしいが、本当かしら。

そういえば、昨年には彼の全詩集が出ている。これの邦訳はさすがに期待できないかな。

Amazon のページのレビューで、「Opelがエンジニアの書き間違いで、本当はOpalというタイトルだったという事実」にはワタシもビックリ! 車の名前ではなく、オパールだったわけだが、ひどい間違いをやらかしたものだ。

近年「元奨励会三段」による評価の高い将棋本が多い

奨励会三段(指導棋士四段)の石川泰さんの『将棋 とっておきの速度計算―逆転負けを減らす5つのパターン―』が第34回将棋ペンクラブ大賞において技術部門の大賞を受賞したということで、おめでとうございます。

将棋の技術書というと、昔はプロ棋士が書くのが当たり前で、稀に特異な(あるいは革新的な)戦法を得意とするアマ強豪が書く例も少数ながらあったが、近年は元奨励会会員の方が書き、高く評価される技術書がいくつもあるように思う。

これはかつてより奨励会のレベルが上がったこともあるだろうし、プロ棋士になれなくても YouTube などでユニークな将棋についての見方を示すのが可能になったことはワタシ程度でも思いつくが、このあたり事情を知るインサイダーに解説してほしいところ。

奨励会は壮絶に厳しいところで、そこに飛び込んだ人たちの多くは、プロになれずに退会を余儀なくされる。そのあたりの悲哀については、大崎善生『将棋の子』(asin:B00LP6RWUY)というもはや古典に近い作品もあるくらいだが、退会後も将棋と関わりながら収入を得る道筋ができたのはとても良いことに違いない。

さて、石川泰さん以外にも元奨励会三段の書いた棋書というと、あらきっぺさん『現代将棋を読み解く7つの理論』『終盤戦のストラテジー』もロジカルと評判が高い。

そして、元奨励会三段というともう一方、KAI将棋教室甲斐日向さん『「駒得する」「駒損しない」 中終盤を有利に進めるための必須スキルを伝授』が先月出ている。

こうしてみると、マイナビ出版には感謝しないといけないな。

ワタシが知るのは以上のお三名だが、元奨励会三段で技術書を出されている方は他にもいるかもしれない。

ワタシも一応段位だけは将棋アマ三段だが、瞬間風速で資格を得ただけの話で、厳密にはアマ二段と名乗るのも心もとないくらい。はっきりいって、平成どころか昭和の将棋しか指せないロートルである。ワタシもこうした棋書を読んで将棋の感覚を令和にアップデートすべきなのだろう。

[追記]Kozo Kamada さんにご指摘いただいて気づいたのだが、鈴木肇さんも条件に合致する。ワタシ自身、エルモ囲いをたまさか利用するのに申し訳ありませんでした。

WirelessWire Newsブログ更新(ある「パソコンの大先生」の死)

WirelessWire Newsブログに「ある「パソコンの大先生」の死」を公開。

前回の更新時、「次回の WirelessWire 原稿はひと月後といかない可能性が高く、最悪一回飛ばしになるかもしれない」と書いたが、なんとか7月中にあげることができた。

超絶的な恥さらし文章だが、伊藤祐策さんを差し置いて「パソコンの大先生」を名乗って申し訳ない。

しかし、まさにこの文章に書いた事態となり、大変なことになってしまった……というか問題の多くは解決しておらず、現在進行形だったりする。そのような状態なので、次回の原稿は一月後といかないかもしれない。

なお、冒頭に引用しているガブリエル・ガルシア=マルケスの短編だが、本当はもう少し後のひどく暗いくだりを引用したかったのだが、趣旨を理解してもらえないかもしれないと思いなおして分かりやすい箇所を引用した。

実際に「愛の彼方の変わることなき死」を読んだ方ならお分かりだろうが、これは一種のギャグである。

ウィキペディアの「長期にわたり荒らし行為を行っている利用者リスト」が面白い

boingboing.net

この記事を読んで、Wikipedia長期にわたり荒らし行為を行っている利用者リストを管理しているのを初めて知った。

これを見ると、音楽に関するページに架空の情報を執拗に追加しようとする人や、軍用機に関して出典なしに好き勝手書こうとするなどいろんな人がいるんだな、そしてそれをよくここまでリスト化したものだと呆れてしまう。Boing Boing の記事タイトルにある「哀れなスーパーヴィランの名簿」というたとえに苦笑い。

……と思ったら、このページ日本語版もあるな。はてなブックマークを見ると、ワタシが知らなかっただけで、10年以上前から一部では有名なページらしい。

日本語版は逆時系列かつアルファベット順のため、(本文執筆時点で)リストの一番上に名前が載っている人が「自称「禁煙ファシズムと戦う会代表」の小谷野敦」で、思わず「うっ」と声をあげてしまったよ……まさかこんなところで著名な方の名前にでくわすとは。

『AMETORA』のデーヴィッド・マークスの新作は「社会階級とファッション」がテーマ

whyisthisinteresting.substack.com

思い切り旧聞に属するが、今年の1月に Boing Boing 経由でこの記事を知り、かの『Whole Earth Catalog』が日本の雑誌文化に影響を与えていたなんて面白い話じゃないか! とこのブログで紹介しようかと思ったが、よく読んだらこれはデーヴィッド・マークス『AMETORA(アメトラ) 日本がアメリカンスタイルを救った物語』(asin:4866470054)からの抜粋じゃないかと気づいたことがあった。

少し前に、まったく別口でまた『AMETORA』のことが引き合いに出されている記事を読み、そういえばこれの著者は今何しているのだろうと調べてみたら、新刊 Status and Culture が来月出るのを知った。

これは現代社会におけるアイデンティティがどのように形成されるか、文化がどのように機能するのか、人間の行動様式の変化と定着についての本のようだ。

さらに調べてみると、著者の W. David Marx の面白いインタビュー記事「W. デーヴィッド・ マークスと朝食を」を見つけた。

第一作が日本を舞台にし、また現在まで住んでいるのもあって、日本についてのコメントは的確としか言いようがない。

単にもう若者がいない。それに金もない。2000年頃から所得が下り坂なんだ。僕は2004年にブログを始めてから、日本が衰退して終末を迎えるとしか思えなくなった。僕の理論だと、日本のファッションや音楽があれほど素晴らしかったのは、末端に至るまで潤沢な資金が注がれたから。80年代のバブル経済が金の爆発だとしたら、90年代はセンスの爆発だった。そこから2000年代の消費トレンドを見ると、「うわ、もう誰も何も買ってない。一体どういうことなんだ?」って感じだったよ。表参道へ行っても「これじゃ無理だ。こんな調子じゃやっていけない」と思わずにはいられなかった。

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/culture-ja/breakfast-with-w-david-marx

そして、彼は続けてこう語っている。

ひとつ僕が予測できなかったこと、僕の大きな誤算だったのは、外国人旅行者の増加。特にアジアからの旅行者が増えたおかげで、そういう場所が生き延びる資金が入ってきたんだ。

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/culture-ja/breakfast-with-w-david-marx

この記事には日付がないので、このインタビューがいつ行われたものか分からないのだが、その望みの綱の「外国人旅行者の増加」も、ご存じの通り、コロナ禍で全部吹っ飛んでしまった。このインタビューは、そのコロナ禍前の観光都市東京の雰囲気も伝わる。

そして、このインタビューで新刊の内容についても語っている。

ポップ カルチャーの一般理論を説明して、消費者が購入する商品を決めるときの基本原則と消費者の決定が集合してトレンドが生じる流れを、段階を追って検証するつもりなんだ。ドイツの社会学ゲオルク・ジンメル(Georg Simmel)が早くから解明していたのは、人との違いを表すためだけじゃなくて、自分がなりたいと思う人と同じになるために、ファッションが機能すること。ジンメルの時代には、ファッションは社会経済的な階級と結びついていたんだ。

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/culture-ja/breakfast-with-w-david-marx

現代では、ファッションが関連するのは単に階級だけじゃない。その上、幅がある。すごく模倣的な人もいれば、すごく個性的な人もいるけど、全員がその振れ幅のどこかに存在してる。そういう差異化/同調化の法則を拡大すると、ポップ カルチャーの仕組みも説明できるんだ。僕がやろうとしてるのは、それを使って、あらゆる法則を系統的に説明すること。数学の証明のパロディみたいだけど。

https://www.ssense.com/ja-jp/editorial/culture-ja/breakfast-with-w-david-marx

著者は新刊について、トム・ヴァンダービルト『ハマりたがる脳──「好き」の科学』に近いと語っている。

今回の新刊は、日本は舞台とはなっていないと推測されるが、果たして邦訳は出るのでしょうかね。

ジェームズ ネスター『BREATH──呼吸の科学』が既に出ていた

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2021年版)で取り上げた James Nestor『Breath』の邦訳が『BREATH──呼吸の科学』として6月に出ているのをいまさら知った。

原書の刊行は2020年5月で、COVID19 のパンデミックより前に書かれた本だが、この2年あまり、我々は図らずもこの「呼吸」の重要性を思い知ったわけである。

ワタシ自身、この本が扱う現代病の(少なくとも)ひとつを抱えており、本書の内容は他人事ではないのである。

こういうノンフィクションも、当たり前のように早川書房が持っていくようになったなー。

もっとも影響力の大きい25のミュージックビデオ

www.yardbarker.com

もっとも影響力の大きい25のミュージックビデオを紹介するページで、ありがちな企画といえるが、1980年代という MTV の時代にティーンエイジャーだったロック年寄り的にはこういうページは読んでしまうわけである。

誰もが取り上げるマイケル・ジャクソンやマドンナといったビッグネームのビデオはシカトさせてもらい、それ以外でいくつか取り上げておく。

まずはボブ・ディランの "Subterranean Homesick Blues"。

これが作られた当時、ミュージックビデオ、プロモーションビデオという概念自体あったのかも分からないが、紙に書かれた歌詞をどんどん見せていく手法は斬新で、多くのパロディを生んだ元祖に違いない。

次はバグルスの "Video Killed the Radio Star"(ラジオスターの悲劇)。

今これを単体で見てもなんとも思わないが、MTV の開局時にこの「ビデオがラジオスターを殺した」というタイトルの曲が一番最初に流れたというのはあまりに象徴的というか出来すぎである。

お次はトーキング・ヘッズの "Once in a Lifetime"。

日本人的には、このビデオのバックに竹の子族の映像が流れ(デヴィッド・バーンのダンスに影響を与え)ているのに目がいくが、トーキング・ヘッズニュー・オーダー、そしてユーリズミックスこそ、1980年代一貫して優れたビデオを作り続けた3大バンドとワタシは思うのよね。

お次はハービー・ハンコックの "Rockit"。

この曲は、このエントリの下で名前が出てくる OK Go のダミアン・クーラッシュの人生を変えた曲なのだけど、この曲のヒットにビデオの果たした役割も大きかったろう。

80年代最高のビデオ作家ゴドレイ&クレームの作品でリスト入りしているのはこれだけかな。

続いてはダイアー・ストレイツの "Money for Nothing"。

この曲には何重にも皮肉がある。この曲はマーク・ノップラーとスティングの共作だが、スティングが歌う "I want my MTV" というフレーズは MTV 開局時のキャッチフレーズで、この曲自体 MTV 批判だったりする。しかし、その曲が MTV アウォードで「ビデオ・オブ・ジ・イヤー」賞をとってしまったという第一の皮肉。そして、いまこのビデオを見ると、当時斬新と言われたコンピュータアニメーションが全然すごく見えないという第二の皮肉。

そして、第三の皮肉として、今ではこの曲のオンエア自体が論議を呼ぶこと。なぜか?

上でこの曲は MTV 批判と書いたが、曲の歌詞は家電を配達する労働者の視点から書かれている。そして、その中で faggot という単語が複数回出てくる。この単語があるため、現代イギリスでもっとも人気のあるクリスマスソングである "Fairlytale of New York" のオンエアが近年問題となる話は、北村紗衣さんの文章に詳しい。

"Fairlytale of New York" に登場する faggot は、北村さんが解説するように、この曲が書かれた当時のイギリスでは同性愛者に対する差別的な表現では必ずしもなかったのが議論をややこしくしているのだが、それより前に発表された "Money for Nothing" における faggot は、はっきり同性愛者差別的な用法だとワタシは考える。

しかし、である。ワタシ自身はそれでもこの曲は(オンエアするなら)そのままオンエアすべきと考える人間である。つまり、1980年代の労働者階級の人間が、MTV に出てくるヘアメタルのバンド(一説にはモトリー・クルーがモデルとされる)を見て、「なんだぁ、この長髪の連中は。カマ野郎かよ」と悪態をつく感じをリアルに表現しているからだ。

まぁ、自分のそういう価値観が多数派ではないのは理解していますが。

さて、続いてはピーター・ガブリエルの "Sledgehammer"。

このビデオについてはおよそ10年前に書いており、基本的な考えは変わっていないが、当時「史上最高のビデオ」と判で押したように言われたこのビデオも、さすがに同じように言う人は少ないだろう。それはこの数十年の映像技術の進歩が大きいが、それでもこのビデオの持つ不気味さは今なお新鮮さを保っている。

ここからは1990年代で、ニルヴァーナの "Smells Like Teen Spirit"。

以前何かでこのビデオの監督の話を読んだことがあり、最初チアリーダーをはじめエキストラはいかにもつまんなそうにして、後半ノッてくる感じにしたかったのだが、この曲を流すと皆が恐ろしくエキサイトしてしまい、監督はメガホンで「お前ら静かにしろ!」と叫びまくらなければならなかったという。

昨年、デイヴ・グロールがこの曲の印象的なイントロのドラムの元ネタがディスコなのを明かして話題になりましたね。

続いてはビースティ・ボーイズの "Sabotage"。

このリストでは、この曲とウィーザー"Buddy Holly" という2曲のスパイク・ジョーンズの監督作が選ばれているが、のちに Directors Label の元にまとめられる監督の作品(asin:B0000TXOHWasin:B000AC8OVK)では、ジョーンズの作品しか入ってないのはこのリストのダメところ。

そして、ワタシ的にはスパイス・ガールズの "Wannabe" は外せませんね。

冗談や皮肉ではなく、ワタシはこのビデオが今でも大好きである。

このビデオは厳密には一発撮りではないが、その範疇で優れているというのもあるし、いま見ると問題になるところを含め、デビュー当時のスパイス・ガールズの狂気をとてもよく表現しているからだ。

そして、最後は OK Go の "Here it Goes Again"。

「もっとも影響力の大きいミュージックビデオ」リストの最後が2006年で終わるのに文句がある人もいるだろうが、OK Go のこれは今見ても素晴らしいと思う。

まぁ、ワタシは今でも彼らのもっとも優れたビデオは製作費がほとんどかかっていない "A Million Ways" だと思うが、一発撮りビデオで一躍有名になってしまったため、その後のビデオ制作のハードルが上がりまくり、バンドもそれを逃げずに果敢に挑戦したのはアッパレな話だと思う。

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