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中傷投稿を受けて株式会社はてなに発信者情報開示請求したがシカトされている話(追記あり、解決済)

https://anond.hatelabo.jp/20220731211220anond.hatelabo.jp

「ある「パソコンの大先生」の死」に寄せられたありがたいコメントの数々は一通り紹介させてもらったつもりだったが、元文章の公開から数日後にはてな匿名ダイアリーに書かれたこの文章のことは、つい最近まで気づかなかった。

反応のひとつとして取り上げなかったのは申し訳ないことであり、自分を戒めるためにウェブ魚拓をとらせてもらった。

強いて言えば「低学歴」で「犯罪者」という2点だけだろうか?
それ以外は特にダメ出しはないけど、その2つは一生治せないと思うと不憫ではある。

強いて言えば2点だけ

個人的に、自分が属する理工系に関しては(他の分野は知りません)、日本の大学であれ最低修士でないと学歴とか言えないよなと以前から思っており、そうした意味で、大学を学卒でそのまま就職した自分が「低学歴」呼ばわりされることには特に文句はない。

ただ、元文章「ある「パソコンの大先生」の死」に犯罪と認定される行為の記載はなく、またワタシには(少なくとも本文執筆時点まで)過去に懲役、禁錮交通違反以外の罰金の刑罰(または執行猶予)を受けた経歴、いわゆる「前科」もないので、「犯罪者」という記述は端的に中傷であり、名誉権を侵害するものと考える。

最初、これを書いた人はワタシを誰かと取り違えているのかとも思ったが、実際はそんな大層な話ではなく、ワタシに対して以前から憎悪を抱いている人が書き捨てたものなのだろう。

自分がいろんな人に嫌われていると再確認できるのは、図に乗るのを戒めるのにはよいのだけど、「人に悪意を持たれるということは、その理由のいかんにかかわらず、それだけで己には不快なのだから、しかたがない(芥川龍之介「戯作三昧」)」と嘆息するばかりである。

ワタシとしては謝罪広告など名誉回復措置の要請をお願いしたいし、改正プロバイダー責任制限法の施行を前にどの程度の記述なら開示が認められるか後学のために知りたいのもあり、9月25日に株式会社はてなのカスタマーサポートのメールアドレス(cs@hatena.ne.jp)に、発信者情報開示を請求するメールを送信した。

それから本文執筆時点まで一週間経つのだが、株式会社はてなから何の返信もない。これはまったく予想外の応対で、かなり驚いてしまった。請求を認めるかはともかく、普通「請求を受け付けました。これから処理を開始します」メール一本くらい返さないか?

このまま放置されたままとなり、たまたまくだんの匿名ダイアリーを見かけた人が、yomoyomo ってヤツは犯罪者らしいと鵜呑みにしてそれを他者に伝えたりして、いつの間にかそれが定評になるのも困るので、本件を公表させてもらった次第である。

[2022年10月03日追記]:本エントリ公開後、はてなサポート窓口法務関連対応チームよりメールがあり、当方からの請求メールが届いていないとのことである。当方のメーラーでは当該メールは送信済となっており、にわかには信じがたいが、それを株式会社はてなと争っても意味がないので、再度請求を行った。

[2022年10月06日追記]:本日、はてなサポート窓口法務関連対応チームより発信者情報が開示された。またそれに先立ち、はてな匿名ダイアリーの元投稿者より謝罪のメールをいただいている。その内容を鑑み、また問題の投稿が既に削除されているのを考慮して、謝罪を受け入れ、状況に変化がない限りにおいて賠償請求の手続きを行わない旨を元投稿者には回答した。

「マージ」を成功させたイーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリンが初の著書『Proof of Stake』を出していた

www.wired.com

Ethereum の「Proof-of-Work(PoW)」から「Proof-of-Stake(PoS)」ブロックチェーンへの移行、通称「Merge(マージ)」は先月無事完了した。

この影響でGPUを用いた仮想通貨マイニングが儲からなくなったという報道もあるが、批判が強かった消費電力の削減になれば素晴らしいに違いない。

マージの完了を受けてイーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリンが Wired のインタビューを受けているが、その中で彼が初めての著書 Proof of Stake を出していたのを知った。副題を見ても、彼のここまでの活動の集大成というか読み物としてのイーサリアム本の決定版になるのではないだろうか。

しかし、自主出版ならともかく、Proof of Stake をズバリ書名に冠した本を大手出版社から出したのはすごい度胸だ。当然、ヴィタリック・ブテリンはマージに自信があっただろうが、PoS への移行が大失敗に終わり、その直後の刊行になっていた可能性も一応はあったわけで。

著者のヴィタリック・ブテリンと名前を連ねる編者の Nathan Schneider の名前には見覚えがあったので自分のブログを検索したら、「【邦訳期待】(Wiredの)BackChannelチームが選出した2017年最高のテック系書籍11選」でこの人がやはり編者を務めた Ours to Hack and to Own を取り上げていた。うん、この人が編者なら、しっかりした内容の本になっているのが期待できる。

『Proof of Stake』の推薦者を見ると、「バーチャルリアリティの父」にして、アンチソーシャルメディア本も出しているジャロン・ラニアーが、この本並びにヴィタリック・ブテリンを讃えているのが目を惹いた。イーサリアムのことは好意的に見ているのか。

今頃すごい勢いでこの本の邦訳が進んでいるのではないかと推測する。

今も開発が継続しているオープンソースのWikiソフトウェアは何があるか

少し前に仕事場のローカルに立てている、今や主力でなくなったウェブサーバに久しぶりにアクセスしたら、WikiPukiWiki なのに懐かしくなってこれまた久しぶりに公式サイトを見てみた。すると、今年バージョン1.5.4がリリースされており、開発は継続しているのに少し感動した。

かつてはそれこそ雨後の筍のごとく開発されていた Wiki ソフトウェア(エンジン、クローン)だが、Wiki が広義の開発環境の一つに統合されているのもあり、単体のソフトウェアとして今も開発が続いているところはだいぶ少なくなった印象がある。

果たして今も開発が継続しているオープンソースWiki ソフトウェアに何があるか、ざっと調べてみた。

具体的には、WikipediaComparison of wiki software に名前があるもので(それくらいの知名度があり)、オープンソース、なおかつ安定最新版が2022年中にリリースされたものである。

これは少し厳しい基準かもしれないが、もう今年も10月だしねぇ(早い……)。Wikipedia の情報が古いところもあり、だいたい以下の感じになる。

ソフトウェア名 最新版リリース日 ライセンス 言語
BlueSpice MediaWiki 2022-01-20 GPLv3 PHP
BookStack 2022-09-20 MIT PHP
DokuWiki 2022-07-31 GPLv2 PHP
Foswiki 2022-03-28 GPLv2 Perl
MediaWiki 2022-06-30 GPLv2 PHP
PhpWiki 2022-01-24 GPL PHP
PmWiki 2022-09-25 GPL PHP
PukiWiki 2022-03-30 GPLv2 PHP
Tiki Wiki CMS Groupware 2022-03-02 LGPLv2.1 PHP
Wiki.js 2022-05-23 AGPLv3 JavaScript
XWiki 2022-08-29 LGPL Java

というわけで、PukiWiki を含めて10個程度になるが、これを少ないとみるか、結構残っているとみるか。

この中で世界的にもっとも利用者が多いのは、Wikipedia でも利用されている MediaWiki に違いないが、それを除けば日本ではやはり PukiWiki だろう。この中で新興勢力と言えるのは、ワタシも2年前にブログで取り上げた Wiki.js ですかね。

プログラミング言語では、ウェブアプリなので PHP が圧倒的に優勢なのは予想通りだが、Python で書かれたものが皆無なのは意外だった。

そういえば今から20年前(!)、『Wiki Way コラボレーションツールWiki』刊行を受けて、ワタシは日本発の wiki クローンリスト日本発の wiki クローンリスト2を書いているが、そこで取り上げた中で今も開発が継続しているのは、PukiWiki を除けば WiLiKiGitHub)だけのようだ。

NPRの名物企画「Tiny Desk Concerts」が1000回を迎えていた

旧聞に属するが、アメリカの公共放送(正確には公共放送用の番組制作を行う)NPR の名物企画といえるライブシリーズ Tiny Desk Concerts が1000回を迎えたことを祝う動画を公開している。

2008年に始まった、NPR のオフィスの一角を使ったライブシリーズだが、押しも押されぬメジャーどころから新人までとても幅広い多彩な顔ぶれのライブが見られる。

音楽好きな人それぞれに好きな回があると思うが、ワタシは変化球というか反則かもしれないが、パンデミックにより Tiny Desk (Home) Concert だった時期のデュア・リパを挙げたい。

なぜかというと、実はワタシ、これを観て一気に彼女のファンになったんだよね。

切り裂きジャックに殺された5人の女性の人生をたどる『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』とその著者の次作『悪い女たち』

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2021年版)」で最後に紹介したのが、切り裂きジャックに殺された5人の女性の人生にスポットライトを当てた『The Five』だった。正直、邦訳は難しいかと思っていたが、『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』の邦題で先月青土社から出ていたのを知る。

前にも書いたが、ワタシも切り裂きジャックの被害者は全員娼婦という話をずっと鵜呑みにしていたくらいで、130年以上ものあいだまったく顧みられなかった被害者の5人の女性たちの人生に光を当てる本であり、「鎮魂と告発のノンフィクション」という文句が熱い。

原著者のハリー・ルーベンホールドの次作は、彼女の公式サイトにはまだ情報はないが、彼女が手掛けたポッドキャストと同じ名前を冠した本になりそう。このパターン最近多いね。

Amazon のページには「Coming in summer 2022」とあるが、実際には来年春の刊行になりそう。『The Five』と同じくこれまで顧みられなかった女性の人生を取り上げる本になりそうで、『Bad Women』というズバリな書名に著者の強い意志を感じる。

WirelessWire Newsブログ更新(メディアとしてのメタバースのメッセージを(ニコラス・カーが底意地悪く)読み解く)

WirelessWire Newsブログに「メディアとしてのメタバースのメッセージを(ニコラス・カーが底意地悪く)読み解く」を公開。

前回ほどではないが、今回も随分と長くなってしまった。

メタバースといっても Meta だけがプレイヤーではないのは承知しているし、「メタバースの地政学」「メタバース時代の人間の価値」など掘ってみたい論点はいくつもあるが、とてもではないが網羅はできない。

メタバースについて書いてるのにこの話がないのはおかしい!」とお思いの方は、ぜひご自身で書いてください。

今回はニコラス・カーの文章を取り上げたが、彼の新刊の話を聞かない。『ネット・バカ』、『オートメーション・バカ』『ウェブに夢見るバカ』、に続いて『メタバース・バカ』、あるいは『AIバカ』といった本を期待してしまうが、もしかするともうリタイアモードなのかもしれない。

ランドール・マンローが『ホワット・イフ?』続編の新刊をギークらしい方法で宣伝する

news.slashdot.org

ランドール・マンロー、あるいは xkcd のほうが通りがよいかもしれないが、ともかく彼の『ホワット・イフ?』の続編 What if? 2 が今月刊行されている。

新刊が出ると、著者はその宣伝のためのツアーを行うものだが、ランドール・マンローはそれ以外にもポッドキャストに出たり、アニメ動画を作ったり、新刊にまつわるもろもろをネタにしたマンガを描いたり、新たに寄せられた科学に関する質問に答えたり……って、うーん、それくらい普通のプロモーション活動に思えるんだけどなぁ。

ともかくランドール・マンローの科学本なんだから面白いに違いないし、この新刊も前作同様早川書房から邦訳が素早く出るんだろうな。そうそう、彼の『ハウ・トゥー』も今年文庫化されていたんだった。

2022年は「イーロン・マスク本」の年だった

タイトルで勝手に2022年を総括してしまったが、実は今年はたくさんの「イーロン・マスク本」が出ているのだ。その中にイーロン・マスク自身が書いたものは一つもなく、他の人がイーロン・マスクにかこつけて書いた(あるいは編集した)本ばかりなのである。

電子書籍オンリーのものを除いても、2022年には以下の5冊の「イーロン・マスク本」が出た(出る)。

まずは IBC パブリッシングの英語学習上達用のラダーシリーズの一冊だが、つまりはもはや彼はこうしたシリーズに入る「現代の偉人」の一人ということなのだろう。

続いて『イーロン・マスクの面接試験』だが、これは別に Tesla の入社試験の話がメインではないのにちょっとひどいのではないだろうか。著者の旧作『ビル・ゲイツの面接試験』(asin:4791760468)にひっかけた邦題だが、『GAFAの面接試験』だとパンチが弱いものだから人名をあてたかったのだろう。そして、その人名が今はイーロン・マスクなんでしょう。

思えば、かつてはスティーブ・ジョブズの名前を書名に冠したビジネス本が多く出ていた。そのジョブズが亡くなって今年で10年になるわけで、『イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズを超えたのか』という本が出るということは、そうしたビジネス書の王座(?)が、ジョブスからイーロン・マスクに受け継がれたということなのかもしれない。

今や世界でもっともリッチな人になったイーロン・マスクが、我々のような下々の人間とは別の経済、別のルールを生きていることは少し考えれば分かりそうなものだが、『イーロン・マスク流「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』のような「イーロン・マスクの仕事術に学べ!」な本はビジネス書として需要があるんでしょうな。

これは来月刊行予定の本だが、おいおい、これの著者って、上であげた『イーロン・マスク流「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』の著者と同じ人じゃない。二月連続で同じ人を題材とする本を刊行ってすげぇな!

これだけ見ると、かつての「ビル・ゲイツ」「スティーブ・ジョブズ」にあたる存在が2022年現在「イーロン・マスク」ということになるのだが、彼の快進撃は果たしていつまで続くのだろうか。

[2022年10月06日追記]:さすがに5冊で打ち止めと思って本エントリを書いたのだが、11月にもう一冊出るのを知った。

同じ出版社からスティーブ・ジョブズジェフ・ベゾスマーク・ザッカーバーグの本も出るようで、イーロン・マスクもこの並びに入る存在ということなのだろう。

[2022年11月02日追記]:大変申し訳ありません。2022年中にまだイーロン・マスク本が出るのに気づいてしまいましたので、再度追記させていただきます。これで全7冊になります。

ミシェル・ザウナー(ジャパニーズ・ブレックファスト)の『Hマートで泣きながら』が来月出る

yamdas.hatenablog.com

ジャパニーズ・ブレックファストのことは、昨年の『Jubilee』で初めてまともに認知し、一気に好きになった。その彼女が本を出していて、アメリカでベストセラーリストに載った話も紹介済だが、そこでワタシは以下のように書いている。

映画ができた頃には、日本での彼女のプレゼンスもずっと上がり、邦訳も期待できるんじゃないかな。

(ニューカマーのみから)2021年ベストアルバムを10枚選んでみた - YAMDAS現更新履歴

彼女の本に映画化の話があることに触れているが、逆に言うと、その映画版が公開されるくらいの話題にならないと邦訳は出ないんじゃないかと考えていたわけですね。

しかし、来月に集英社クリエイティブから『Hマートで泣きながら』が出るのを知る。

近年は海外ミュージシャンが書いた本もなかなか邦訳されないのを考えると貴重に思えるのだが、これが現在のジャパニーズ・ブレックファストの勢いなのだろう。素晴らしい。

せっかくなんで、最近の彼女の動画をいくつか紹介しておく。

ジミー・ファロンのレイトショーに出演しているが、彼女が5年前に "Jimmy Fallon Big!" という曲を出していることにまず触れるわな(笑)。その後、本の映画化の話もあるが、彼女が脚本書いてるみたいね。第一の目標はグラミー賞をとること、とキッパリ言ってるのは潔いよね。

Vorge でファッション紹介をやっていて、そんな需要もあるのかと少し驚く。

7月に開催された Pitchfork Music Festival 2022 におけるライブ映像だが、ウィルコのジェフ・トゥイーディーとデュエットしている。ジェフ・トゥイーディーが可愛く見える(笑)。

百花

以下、ストーリーの核心部分に触れますので、未見の方は気を付けてください。

川村元気プロデュースの映画はいくつも観ていて、その中には好きなものも確かにあるが、はなから観る気になれないものが大半である。その彼が初めて監督をすると聞いても食指は動かないのだけど、宇野維正のMOVIE DRIVERを聞いて、これは観ておこうと気が変わった。当然ながら、原作は未読である。

確かにこれはよくできている。最初から原田美枝子演じる主人公の母親、そして菅田将暉演じる主人公それぞれの登場に長回しが適度に使われており、画面に引き込まれる。

題材的にどうしても昨年の『ファーザー』を連想してしまうが、やはり認知症を扱うことで生じるホラー要素は、本作では映像の反復で表現されており、一方で『ファーザー』にはない謎解きの要素もある。

本作はなにより原田美枝子さんが素晴らしい。特に彼女の中年期の場面が良い……と思っていたら、完全に油断していて、ワタシも遭遇したあるイベントの場面には、かなりショックを受けてしまった。

本作は100分少しの上映時間で、間延びしたところがないのも好感が持てる。しかし、本作の謎解きの要素である「半分の花火」が明らかになるあたりがあまりに安易というかテキパキやりすぎていて、どうしようもなくダメだと思った。

母親に「半分の花火が見たい」と言われた帰りの車中で、主人公の妻があっさり「これだよ」と見つけるのもなんだが、その次の場面はいきなりその花火大会に、主人公と母親の二人が出かけている。主人公の母親はばっちり和服姿だが、認知症で施設にいる人を外に連れ出すのって、息子でもそれなりの手続きを要するのではないか? 夜中まで連れ出して、あの僻地にありそうな施設にはいつ戻れるのか? 老親の介護をしたことがある人間なら、いくつも疑問が浮かぶし、そういう面倒をクリアする描写は、謎解きの「溜め」としても必要なものでもないか。それがないので、「半分の花火」の真相が分かるラストにしても、ぼけっとしてたら見えました、という少し間抜けな感じになっており残念だった。

ワタシがNetflixで観たドラマをまとめておく(2021年秋~2022年夏編)

yamdas.hatenablog.com

およそ一年前に2年分のまとめを書いたが、今回から(Netflix の契約が続けばだが)だいたい一年ごとにやっていこうかと思う。

基本的に新しく見始めたものだけ取り上げ、シーズン継続のたびに書かないが、今回も例外がある。

ザ・チェア ~私は学科長~(Netflix

えーっと、大嫌い。

主役のサンドラ・オーはともかく、それ以外の登場人物の多くがそれぞれ不愉快。特にビル・ドブソン役のジェイ・デュプラス、妻を亡くしたショックから立ち直れない自堕落キャラなのはいいが、そう言いながらずっと主人公に言い寄ってるの、お前なんなの? 彼のマスクの甘さなどで、なぜか好感の持てる人物と描きたいようなのが意味分からん。

このドラマに出てくる年寄りの教授連はいずれも向上心に欠けるだけでなく、(ときに違法なやり方で)若い人間の足を引っ張ることが多いのに、最終的にこの人が主人公の後釜になるのって、その人の性別以外何があるんでしょうか?

キャンセルカルチャーや新世代の教育方法を肯定したいのかどうなのか、実に腰が据わってない。ゴミですね。


真夜中のミサ(Netflix

いやぁ、これはすごかった。

マイク・フラナガンNetflix ドラマはずっと追ってきたが、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』とは違った意味で衝撃を受けた。

これは彼のとてもパーソナルな作品であり、信仰の理不尽さを掘り下げている。本作では悪役に分類される登場人物の「奇跡をえり好みはできないのです!」という言葉の禍々しさたるや。

マイク・フラナガンの次作はポーの『アッシャー家の崩壊』が原作みたいだが、そりゃ見ますよ。

イカゲーム(NetflixWikipedia

あまりに話題になったドラマなのでワタシも観たが、確かにこれは面白かったし、よくできていると思った。ただ、後半になって海外からの「ゲスト」が登場したあたりでたるんだ感じはあった。オ・イルナムの脱落に涙したが、最後にあんな展開が待っていたとは……

先日もエミー賞ドラマ・シリーズ部門の主演男優賞と監督賞を受賞していたが、本作はとにかく話題になったので、それについて書かれた文章をいろいろ読んだ。その中では、辰巳JUNKさんの「『イカゲーム』考察:韓国経済とキリスト教」が特に参考になった。


地獄が呼んでいる(NetflixWikipedia

イカゲーム』に続いて話題の韓国ドラマを観たわけだが、これはかなーりイヤなところをえぐってくるドラマである。個人的にはあまり好きな作品ではないのだけど、本作の重要な要素にネット社会の風刺があり、それに成功しているのは間違いない。

ドラマの前半と後半で主人公が変わるのが新鮮だった。


平家物語公式サイトNetflixWikipedia

考えてみれば、Netflix でアニメもいくつか観ているのに、このシリーズでちゃんと取り上げていないものがあったかもしれない。

たまたま今年の大河ドラマと題材的に重なるため、例えばこのアニメを見ながらその前の週に見た大河ドラマを思い出し、「おいおい、平家はあんな奴らに滅ぼされるのか」と思ったりと妙な具合だった。

評判通りの出来だったが、ワタシ自身がアニメをあまり観ないというのもあってか、そこまではのめりこまなかった。本作の主人公は徳子なんですね。

地球外少年少女(公式サイトNetflixWikipedia

本作は前後編で劇場公開もされているので、この枠に入れてよいものか分からないが、ワタシは全6回のドラマシリーズとして観たので。

これはかなり面白かったし、かなり没入して観ることができた。

近未来の宇宙を舞台にしたアニメとしてとてもよくできている。しかし、そこに登場する企業イメージがすべて現在のそれの意匠の翻案であり、「未知」を見せる姿勢を放棄しているという意味で退嬰的で、それはクライマックスで発せられる「日本製だから過剰品質」というセリフにもあらわれており、ワタシもこれには鼻白んだ

今、私たちの学校は...(NetflixWikipedia

学園もの×ゾンビ……これが面白くないわけないだろ! と思ったら、本当に面白かった。ゾンビの動きを特徴的に見せる演出の妙もあった。

学園ものだから当然恋愛要素を含むのだけど、正直、今どきそんな古臭い描写するんだ、とちょっと呆れたところもあった。例えば、イ・ナヨンがギョンスを死に追いやる直前、二人を見守る男子陣のセリフとか。

また本作では、そのイ・ナヨンの描写には強いミソジニーを感じた。

おっと、ちょっと待っていただきたい。だからワタシは本作をダメだと言いたいのではない。誤解を恐れずに言えば、その逆だ。ミソジニーといえば、『イカゲーム』のハン・ミニョの描き方についても女性蔑視という批判があったのを思い出す。

こういうことを書くと刺されるだろうが、『イカゲーム』にしろ本作にしろ、女性の登場人物の描写にあるミソジニーは、確実にドラマの面白さに貢献している。これについては、ベンジャミン・クリッツァーさんが村上春樹について書いていた文章を思い出した。

 そもそも、村上作品のミソジニー性は欠点ではなく、作品の価値を成り立たせるプラス点だ。結局のところ、(1)世の男性は多かれ少なかれミソジニー的な認識を抱えて生きているのであり、(2)男性が女性に対して抱くミソジニー的なステロタイプはある面での「事実」を多かれ少なかれ反映している。(2)がある限りはいくらジェンダー論が力を得たところで(1)がなくなることはないだろうし、そして優れたフィクションであれば(1)と(2)の両方の「リアルさ」を描くことができるものだ。村上作品はその点でのリアルをきちんと描けているのであり、だからこそこれほどにも多くの男女からの支持をいまだに得られているのだろう

『ドライブ・マイ・カー』(+『マディソン郡の橋』) - THE★映画日記

イカゲーム』にしろ本作にしろ、この点で「リアルをきちんと描けている」「優れたフィクション」とワタシは評価するわけです。

逆に言えば、ミサンドリーが物語を推進する原動力になり、面白さに確実に貢献している作品があるのも(認めたくない人は多いだろうが)厳然たる事実だろう。それに感情的な好き嫌いが喚起されるのは避けられないにしろ、ワタシはミソジニーミサンドリーが感じられるというだけで作品自体を否定はしたくない。

本作については、続編も可能な終わり方になっていたが、個人的にはそれはイヤだな。


国民の僕(Netflix

ウクライナのゼレンスキー大統領が出演している、というかこのドラマのおかげで彼は大統領になれたといえるドラマなわけだが、Netflix で配信されると聞けば見てみようとなったが、正直すごく詰まんなかった。

初回を見ただけで、字幕に漢字の誤記がいくつも気づき、Netflix の字幕の質がヤバいという話をしみじみ実感してしまったが、このドラマに関しては、字幕の誤記だけでなく訳もおかしいのが散見されるという話も小耳に挟んだ。ただ、そこまで確認するところまで行く前に、最初の3話を見たところで、現実のゼレンスキー大統領にはっきり肩入れしているワタシですらもういいやと離脱した。

リンカーン弁護士NetflixWikipedia

マシュー・マコノヒー主演の映画版を未見。そもそもこのタイトルだけ見て、「エイブラハム・リンカーンが弁護士だった時代の活躍を描く歴史ドラマ」と思い込んでたくらいだが、評判に押されてみてみた。

これは切れ味がよくて面白かったです。やはり、法廷ドラマはアメリカ的よね。

サンドマンNetflixWikipedia

恥ずかしながら、ニール・ゲイマンの原作は未読だったりするので、そちらとの比較はできないのだが、これはよくできている。でも、物語が主人公の活躍からではなく、主人公が人間に囚われるところから始まったのには、これでいいのかしらと思っちゃった。

原作を読んでいないので、果たしてシーズン1で原作をどこまで網羅できたか、何シーズンくらい可能なのか分からないが、これはしっかり映像化として完結してほしいですね。


ベター・コール・ソウル(公式サイトNetflixWikipedia

一度取り上げたドラマについては取り上げない方針だが、これは書かざるをえない。

『ブレイキング・バッド』はワタシにとっても特別なドラマだったので、そのスピンオフってどうよという懐疑的な気持ちがあったのだが、これはこれで『ブレイキング・バッド』とはまた違った意味で自分の中で大きな作品になっている。

というか、あの史上最高のドラマと言われた『ブレイキング・バッド』よりもこちらのほうが好きかもしれないくらい。

あとはどれくらいしっかりした完結を見せてくれるかでしょうね。

ワタシがこれまでNetflixで観てきたドラマをまとめておく - YAMDAS現更新履歴

あれから3年、遂にこのドラマは完結した。「しっかりした完結」どころではない、『ブレイキング・バッド』とはまた違った、見事なフィナーレだった。

ブレイキング・バッド』も始まりから想像もつかない地点までたどり着いての終焉だったが、本作も(『ブレイキング・バッド』の前日譚という準拠枠にも関わらず)とんでもないところまでたどり着き、まさか『ブレイキング・バッド』の先まで描いて終わるとは思わなかったな。

最終シーズンにおける、もはやテレビドラマ/映画の二分法を超えた手法で描かれる、ゆったりとした展開ながらソウルたちを締め上げていく前半、そして恐ろしいカタルシスがもたらされる後半、いずれも完璧だった。そして、最終回において何度も登場するタイムマシンの話から浮かび上がる「後悔」のコンセプトが重かったし、正直この終わり方でよかったと(このドラマにはヘンな表現になるが)心が暖まるものがあった。

ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』を最初からゆっくり観直せる日が来るといいな。

ウィキペディアに「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」がまとめられている

boingboing.net

Wikipedia 英語版の「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」をまとめたページを取り上げている。しかし、よくこんな項目作ったものだ。日本語版に対応するページは、さすがにまだない。

そういえば昨日、「ロシア実業家、遺体で発見 今年9人目の不審死や自殺」という記事を見たばかりだが、このウィキペディアのページには本文執筆時点で13人の名前が挙がっている……って、件の記事が伝えるイバン・ペチョーリン氏の後にも Vladimir Nikolayevich Sungorkin 氏が亡くなっているのな!

記事にもあるように、ロシア国営エネルギー大手のガスプロムや、ロシアの民間石油・ガス最大手のルクオイル関係者が多いのは、果たして何を意味するのだろうか。

それにしても不審な死を遂げすぎだろう……公式発表の死因が本当のケースもあるのだろうが、もしそうでない場合、この人の死因は実はこうだった、といった真相は何年後くらいに明らかになるものなんでしょうな。

a16zが提唱するNFT向け「Can’t Be Evil」ライセンスとクリエイティブ・コモンズのNFTに対する見解

a16zcrypto.com

旧聞に属するが、Andreessen Horowitz がクリエイティブ・コモンズに影響を受けた NFT 向けのライセンスを提唱している。

それが “Can’t Be Evil”ライセンスとのことで、これは Google の非公式社是「Don't be evil」のもじりであり、Web 3 周りで見かけるフレーズという印象がある。

やはりこれは NFT の利用促進が第一の目的には違いないが、ネーミングにしても NFT 周りに高まる反感を和らげたいという意識もあるのかなと思う。

今回“Can’t Be Evil”ライセンスとして策定されたのは6種類のライセンスだが(そのうちの一つが CC0)、クリエイティブ・コモンズのライセンスと同様に、それで何が自由にできて、商用利用や修正改変など何を(許諾なしに)やっちゃダメか明確にする表も掲載している。知財専門の弁護士と協力して作られたもののようで、それなりにしっかりしたもののようだ。

creativecommons.org

今回の a16z の動きを受けてというわけではないだろうが、Creative CommonsCC と NFT に関する FAQ を修正したよとアナウンスしている。NFT に関係して CC ライセンスを適用しようと考える人は、まずはこれを読んでみるとよいということだろう。

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」で取り上げた本の邦訳が2冊出ていた!(アゲインスト・デモクラシー、因果推論の科学)

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」で取り上げた本の邦訳が最近2冊出ていたのを知って驚いたので、紹介しておく。

まず、一冊目。ジェイソン・ブレナン『アゲインスト・デモクラシー』の邦訳が勁草書房より先月出た。以前に Twitter で告知されていたので分かってはいたが、めでたい。上巻下巻併せて相当な値段となるが、それでも出す価値のある本だろう。

この本は、日本における危険思想研究の第一人者、人間的な好き嫌いはまったく別としてその仕事に常に敬意を払っている八田真行さんが紹介していて知った。

英国におけるブレグジット、米国におけるトランプ大統領の誕生といったあたりで醸成された、「民主主義ってもう機能してないんじゃね?」という疑問にクリアヒットする本だったわけだが、個人的にはこの状況だけ見て安易に権威主義を推す人をまったく信用しない。それはそれとして、時代はもうネオ封建主義、テクノ封建主義なんじゃね? というところまできており、2022年の今もアクチュアリティがある本なのではないでしょうか。

さて、もう一冊はジューディア・パールとダナ・マッケンジー『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』である。こちらは出たばかり。

人工知能分野を含む計算機科学における大物の本なので、すぐに出るだろうと思っていたら2022年にようやくである。『マスターアルゴリズム』ほどではないが、随分待たされたことになるが、逆に言うとこれはそう簡単には古びない本なので、ちゃんと邦訳が出てよかった。

マイケル・ペイリンが北朝鮮に続いてイラクの旅行記を本にした(し、テレビ番組にもなる)

www.themichaelpalin.com

英国本国ではもはや「モンティ・パイソン」というより「旅行番組のプレゼンター」として著名なマイケル・ペイリンだが、「発見!北朝鮮の歩き方」北朝鮮に旅したのが数年前、もう80歳近くで旅行番組も引退なのかなと思っていたら、今年3月にイラクに行っていた。

旅行から戻ってすぐに書籍執筆を強いられたって老人虐待じゃないかとも言いたくなるが、その本 Into Iraq がちょうど今日刊行される。

Into Iraq

Into Iraq

Amazon

北朝鮮に続いて物騒な国を選んだものだと思ったが、イラクは人間文明の発祥の地あたりでもあるんだよな。いずれにしてもお達者でなによりである。

これまでの旅行と同様に、本を書くだけではなくテレビ番組になるわけが、北朝鮮のときと同じく Channel 5 で9月20日から3回に分けて放送されるとのこと。

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