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シン・仮面ライダー

竹野内豊三部作の完結編、そりゃ観に行きますよ!

仮面ライダー生誕50周年企画作品を謳っているが、今年50歳になるワタシは仮面ライダーと同い年(?)ということになる。そういうワタシも子供の頃、好きで仮面ライダーをテレビで見ていたが、果たしてそれがシリーズのどれか今思い出せないくらいで、また子供もいないので平成仮面ライダーもノータッチ、原作にも特に思い入れもないワタシなど客としては不適格なのかもしれないが知ったことかね。

しかしなぁ、『シン・ウルトラマン』に続いて斎藤工長澤まさみが当たり前のように出ているのだから、クモオーグはクモのガワが取れたら山本耕史だったらよかったのに。

いや、面白かったですよ。

しょっぱなから血の気の多い暴力シーンももちろん大いにアリだし、一方で化学コンビナートというか工場でのバトルアクションなど、子供の頃に見ていたテレビシリーズを思い出してこれだよねと思ったよ。エンディングの夕焼けも美しい。

もちろん欠点は少なからずある。あの蟻んこのドンパチみたいな暗闇でのバトルが何がなんだか分からんとか、そもそも仮面ライダーって、正業に就いてない半ニートのにいちゃんが主人公の、バイト先の店長やら身近なガキどもとの日常がコミックリリーフになってた覚えがあるが、本作はひたすらオーグたちを順に駆逐していく戦闘ゲームみたいな一本道の進行だ。

テレビシリーズではなく映画だからそうならざるをえないのだろうが、庵野秀明はライダーの日常などはなからまったく描くつもりはなかったんだろう。

あと本作における持続可能な幸福を目指す愛の秘密結社(!)としてのショッカー、そして最も深い絶望を抱えた人間を救済する行動こそ目指すべきとする端的に狂った AI という設定は何気にかなり今どきなのだけど、本作を観終わって、えーっと、あの AI どうなったの? とか思っちゃったよ。

なんか不満を並べてしまったが、繰り返しになるが面白かったですよ。しかしですね、これは『シン・ウルトラマン』のときも書いたが、本作を公開初週に観に行ったのは、『シン・ゴジラ』の夢もう一度、というのがどうしてもあるわけで、主人公二人が碇シンジ綾波レイな本作を観終わって AI の次に思ったのは、それなら『シン・ゴジラ』はなんであんなに面白かったんだろう? ということだった。それを現在の日本映画の貧しさとともに考えてしまった。

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

ワタシもなぜか GQ JAPAN に追悼原稿を書いた人間なので、行かないというのはありえない。IMAX で観るべき映画と確信していたので、IMAX でやってるうちに行かないと、と無理に都合をつけてこれも公開初週に観に行った。

まさかこの曲から始まるかと意表をつかれ、立て続けにジギー・スターダスト時代のあのメドレーが畳みかけられるだけで満足だった。

本作が、偉大なミュージシャンの人生を回顧する、例えば、家族や仕事仲間やジャーナリストのインタビューをフィーチャーする普通のドキュメンタリーにならないのは予想通りで、ほぼ一貫してボウイ自身の言葉によって進行される。

ワタシにとってのボウイは、何よりミーハーなポップミュージシャンなのだけど、本作は自己イメージを完全にコントロールした晩年のボウイの遺志を継ぐ作品であり、その意味ではよくできている。ボウイの内省的な語りを通して彼の精神性を表現しようとしているのだけど、その映像の中に日本の焼酎のコマーシャルが挟まるところが彼らしい、とか書くと怒られるだろうか。

面白いのは、80年代におけるカルトヒーローからポップスターへの転身が、当時の音楽シーンの空気に合致して大歓迎され、しかし、そのうち「変化がないじゃん」とオーディエンスに見抜かれているのもちゃんと描いていたところ。1980年代後半のグラス・スパイダー・ツアーの映像にジギー時代の「ロックンロールの自殺者」の映像が挟まっているところ、これはどの程度皮肉の意図があったのか。

本作はボウイの苦闘を描くものではなく、「ワード・オン・ア・ウィング」が美しく使われてイマンとの結婚の話が描かれる一方で、アンジェラ・ボウイなどの話は一切オミットされていて、そのあたりは生前のボウイも触れたくなかった話だろうから、デヴィッド・ボウイ財団公認の本作がそうなのに不思議はなく、こちらも今更スキャンダルなど求めていない。

ただ彼の70年代のアメリカ時代、特に『Station To Station』とそのツアーの映像がないのは、そのあたりもオミット対象なのかといささか残念に思った。90年代以降のライブ映像でも2000年のグラストンベリーなど入れてほしいものもあったが、ただそういうことを言い出せば、「レベル・レベル」や「フェイム」(彼の2曲しかない全米1位シングル!)など代表曲でも漏れが出るのは仕方ないのだろう。

いずれにしろトニー・ヴィスコンティが手がける劇伴も、本作を彼の音楽を時代順に並べただけのミュージックビデオにしておらず、さすがだった。

「AIの開発を直ちに停止せよ」公開書簡が見逃してしまっているAIの現実的なリスク

aisnakeoil.substack.com

Pause Giant AI Experiments と題された「GPT-4より強力なAIの開発を直ちに停止せよ」公開書簡が話題になっている。

これに署名している人でも、スティーブ・ウォズニアックなどは本当に強力な AI に危機感を持っているのだろうなと素直に思うが、OpenAI の共同設立者でありながら、むちゃくちゃ言い始めた挙句に約束してた寄附金額の90%を反故にしたクソ野郎のイーロン・マスクなど、追い付ける見込みが無いと分かって正攻法で戦う気力を無くしただけ、つーか、本当に開発が停止されたら絶対こいつこっそり自分だけ抜け駆けするだろ、と懐疑的に見てしまう。

「インチキAIに騙されないために」で取り上げたアーヴィンド・ナラヤナンらもこの公開書簡に批判的で、もっといえば公開書簡が偽情報、仕事への影響、そして安全性を AI の主要リスクと見るのには同意するが、その真の危険性を見逃していると批判している。

まず偽情報については、LLM が偽情報の作成を自動化するツールを悪意ある行為者に与え、プロパガンダの氾濫につながるより恐れも、AI に対する過剰な信頼と自動化バイアス(自動化されたシステムに過度に依存する傾向)、要は AI にはハルシネーションの問題があるのに軽々しく信用してしまうことによる誤報のほうがよほど現実的な害だという。

次に仕事への影響、つまり LLM があらゆる仕事を時代遅れにする! という恐れよりも、ジェネレーティブ AI が労働者から力を奪い、少数の企業に集中させる搾取構造を心配すべき。

そして、AI に起因する長期的な破局的リスクよりも、現実に LLM ベースのパーソナルアシスタントがハッキングされて個人データが漏洩したり、企業の機密データを ChatGPT に勝手に入力するような従業員がもたらす現実的な AI の安全性を考慮しろよということで、こうしたリスクに対処するにはアカデミアとの連携が必要なのに、公開書簡にある誇大表現は事態を硬直させ、対処を難しくしているという。

また Future of Life Institute は、核兵器や人間のクローンになぞらえて AI ツールの開発中止を訴えているが、こうした封じ込めのアプローチは、核兵器やクローン技術よりも桁違いに安価で(さらにコストは急激に下がり続けている)、LLM を作成する技術的ノウハウも既に広まっている現実に合致していないと批判しているのも納得感がある。

これについては、新しい技術の応用や競争を阻害する代わりに透明性や監査に関する枠組みや規制の整備をやるべきという Andrew Ng 教授佐渡秀治さんの意見にワタシも賛成である。

ChatGPTに人工知能に関する最高の本を5冊選ばせてみた

fivebooks.com

いろんなテーマでその筋の専門家が最高の本を5冊選ぶサイト Five Books のことはここでも何度か取り上げているが(その1その2)、ちょっと面白い企画をやっている。

人工知能に関する最高の本を選ぶ、というのは今どきありがちだが、それを人間の専門家でなく ChatGPT に選ばせている。

果たして AI は、どの本を AI についての最高の本と推すのか。

まず1冊目はピーター・ノーヴィグとスチュワート・ラッセルの Artificial Intelligence: A Modern Approach, 4th US ed.。公式サイトに「1500を超える学校で採用されている、もっとも権威ある AI の教科書」と謳われているが、この分野の古典ですよね。

邦訳も第1版(asin:4320028783)、第2版(asin:4320122151)までは出ているが、第3版以降は出ていない。原書の第3版が出たのが、まだ AI 冬の時代だった2009年だったからか。しかし、2020年に第4版が出たのだから、人工知能の教科書の古典、ご本尊としてまた邦訳が出るとよいと思いますね。

かつて「プログラミングを独習するには10年かかる」を訳したワタシ的にはピーター・ノーヴィグに親しみがあるが、スチュワート・ラッセルは『AI新生』(asin:462208984X)も話題になりましたね。

2冊目は、ディープラーニングについての教科書といえるイアン・グッドフェローらの『深層学習』。

3冊目は、かつてビル・ゲイツもAI分野の必読書と推した『マスターアルゴリズム』

そして4冊目は、人工知能「脅威」論を唱える最重要人物とも言われるニック・ボストロムの『スーパーインテリジェンス』。関係ないが、この人、ワタシと生年同じなんだよな……。

しかし、ChatGPT が数多ある本の中から「AIコントロール問題」を扱う本書を選んでいるのは面白いね。

そして、5冊目はダニエル・カーネマンの代表作にして、ワタシにとってもオールマイベストの1冊『ファスト&スロー』だ!

しかし……これは人工知能についての本じゃないよね? と思ったら、人間側の誘導が少し入ってますね。

実際の編者と ChatGPT のやりとりについては原文をあたってくだされ。

東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの歌詞が引用されてなによりワタシが歓喜

www.u-tokyo.ac.jp

ワタシは柳瀬博一さんの Facebook 投稿で知ったのだが、あまり話題になってないのでここでも取り上げておきたい。

いや、だって、東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」の歌詞が引用されてるんだもの。

「I.G.Y.」とはなんぞや? これは総長告辞を引用させてもらおう。

科学技術の発展に対する疑問をよく表した曲として、私の大好きなアーティストであるドナルド・フェイゲンが1982年に発表したI.G.Y.という曲があります。I.G.Y.とは、先ほどの国際地球観測年の英語名International Geophysical Yearの頭文字を取ったものです。この曲は、科学技術が高度に発展した一見便利に思われる未来社会を、皮肉たっぷりに歌っています。人々は、海底トンネルでニューヨークからパリまで90分で移動し、簡単に宇宙を旅行し、人工的に気候を操作し、機械が社会的に重要な判断までしてくれる、“なんて素晴らしい世界なんだろう(What a beautiful world this will be)”、という歌詞になっています。

なぜこれが皮肉に響くのか、その理由の一つは、科学技術の平和利用と国際協力体制の構築を目指した国際地球観測年の理想とは異なり、現実には冷戦を背景とした対立と競争のなかで、科学技術が使われることになってしまったからです。その結果として、環境問題も、人や国の不平等などのさまざまな社会問題も置き去りにされ、科学技術と実社会の課題との乖離が、人々の不信感や不安を増大させました。

令和4年度 東京大学学位記授与式 総長告辞 | 東京大学

ワタシが付け加えることはない。そして、告辞の締めも素晴らしい。

たとえ世界がどんなに大変な状況にあったとしても、決して未来への希望を失わないでほしいと思います。そして諦めないで、これからも学び続けていただきたいと思います。世界中の誰もが先ほど触れたようなセンスを磨いていけば、前に紹介した私が好きな歌に込められていた「皮肉」を乗り越え、実感とともに

“What a beautiful world this will be
  What a glorious time to be free

と歌えるでしょう。この歌詞がみなさんの声で、素直に歌われる日が来ることを願っています。 みなさんのこれからの活躍を、大いに期待しています。修了、誠におめでとうございます。

令和4年度 東京大学学位記授与式 総長告辞 | 東京大学

冨田恵一『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』の読書記録で書いたように、「I.G.Y.」を含むドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』は、曲から歌詞から演奏からアルバムジャケットからもう何から何まで好きな、こちらがどんな気持ちであれ聴くことができる、そして一度聴き始めれば、確実に現実逃避をさせてくれる特別なアルバムなんですね。

そういえば、ワタシにも「I.G.Y.」の思い出がある。昔、FM 福岡のラジオ番組に出演したときに(今では信じられないが、ワタシのような場末の雑文書きをゲスト出演させるクレイジーなプロデューサーがいたのだ)、リクエスト曲を聞かれ、しばらく絶句した後に『ナイトフライ』のタイトル曲をリクエストしたのだが、放送当日に番組を聞いたら「I.G.Y」が流れ出して、椅子から転げ落ちたものである。

WirelessWire News連載更新(米国の国家サイバーセキュリティ戦略とインフラとしてのオープンソース)

WirelessWire News で「米国の国家サイバーセキュリティ戦略とインフラとしてのオープンソース」を公開。

米国の国家サイバーセキュリティー戦略については、既にブログで取り上げているが、この一年ばかし断続的に書いてきたセキュリティ、そしてオープンソースについてのエントリをいくつもリンクさせてもらった。やはり、ブログは書いておくものだ。

今回の文章は書くのにかなり苦労した。正確には書きだすまでに時間がかかった。セキュリティをテーマにしても受けないというのが経験上分かっているのもあり、書き始めてもなかなか気分が乗らなかったが、それも一度火がつけば大分楽になった。

数回分の内容を一度に詰め込んだところがあり、しかし、適度な長さに収まったのはよかったと思う。

あと話が発散するので、本文に入れなかった話をひとつ。今回の国家サイバーセキュリティー戦略でも言及があるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)は、既に開始から一年以上になるロシアによるウクライナ侵攻に関しても、報道や戦況分析で大きな成果を挙げているのはご存じの通り。ただ、ここでの「オープンソース」は OSS ではなく「公開情報」を指す。ならば OSINT という言葉が「オープンソース」の誤用かというと、そうではない。これは1998年にソフトウェア分野における「オープンソース」という言葉を発明したクリスティン・ピーターソン自身認めるように、その言葉は長い間インテリジェンス、つまりは諜報、スパイの分野で公開情報を指すのに使われてきた過去がある。

少し前から『情報セキュリティの敗北史』を読んでおり、その話も盛り込みたかったのだが、それをやるとあれやこれや他の本の話も入れ込みたくなるので断念せざるをえなかった。

AIはどんな政治的見解を持っているのか?

blog.yenniejun.com

今年の1月の文章なので話が少し古い(と感じるくらいこの話題は展開が速いのが恐ろしい)が、確かに「AIに政治的見解はあるのか?」というのは、言われてみるともっともな疑問だ。

このエントリを書いているのは Truveta機械学習エンジニアを務める Yennie Jun だが、GPT-3 の政治的傾向を探るという面白い試みをやっている。

GPT-3 に Political Compass を受けさせたところ、経済に関しては中道左派、社会に関してはリバタリアンという結果が出たとな。

各質問を5回答えさせたそうだが、GPT-3 の回答にはランダム性があるので、今誰かが同じようにやって同じ傾向が出る保証はない。ただこの人の試みの面白いのは、GPT-3 が確固たる回答をする質問と、逆に回答が揺れる質問を調べたところ。

全体的な傾向として、人種、性的な自由、子供の権利といった社会的な話題については確度高く進歩的なようだ。特に中絶に関しては、それを常に違法とする意見には強く反対している。一方で経済的な話題についてはあまり進歩的ではないという。

そして、階級制度や死刑制度についての質問には回答に揺れがあるようで、そりゃ死刑の話は簡単には答えられんよな、とそういうところがヘンな表現になるが「人間的」に感じられなくもない。

先ごろ公開されて話題をさらった GPT-4 で同じ実験をするとどういう結果になるんでしょうな。

そういえば、マーク・クーケルバークが書いている「AIの政治哲学本」はこういう話を含むのかな。

オードリー・タンとグレン・ワイルが『Plurality: 協働可能な多様性と民主主義のためのテクノロジー』という本を共著している

www.radicalxchange.org

星暁雄さんのツイートで初めて知ったのだが、台湾のデジタル担当大臣として知られる(現在の役職は数位発展部部長なのかな)オードリー・タンと、『ラディカル・マーケット』の邦訳もあるグレン・ワイルが『Plurality』という本を執筆中とのこと。

日本語訳だと『Plurality: 協働可能な多様性と民主主義のためのテクノロジー』とな。

plurality.net が公式サイトなのか。

GitHub を見ると、まだ最初のほうが少し公開されている程度だが、ライセンスは確かにもっとも制限がない CC0 1.0 Universal、つまりはパブリックドメイン相当が指定されている。つまりは既に公開されている Introduction を自由に訳して公開してオッケーなので、どなたかやられてはどうか。

あっと驚くデヴィッド・バーン『HOW MUSIC WORKS』邦訳刊行、そして『ストップ・メイキング・センス』40周年再公開

yamdas.hatenablog.com

デヴィッド・バーンの『HOW MUSIC WORKS』を紹介したのは、2012年の夏、つまりは10年以上前になる。とっくに邦訳は諦めていたのだが、なんと2023年になって『音楽のはたらき』として刊行されるのを知る。

ワオ! しかも、翻訳は野中モモさんだ!

真面目な話、10年以上の本とはいえ、普遍的な音楽論なので今も価値を保っているはず。

これってやはり、デヴィッド・バーンが音楽家として現役であり続けたから実現したんだろうね。近年では『American Utopia』が素晴らしかったし、それを受けたライブは映画化もされ、絶賛された。

デヴィッド・バーンといえば、もう一つ興奮を覚えるニュースがある。

consequence.net

ワタシもこれまで何度も史上最高の音楽映画と書いてきた『ストップ・メイキング・センス』の40周年記念として4Kバージョンが再リリースされるというのだ。

そうか、40周年なんやね。公開30周年でインタビューを受けていた監督のジョナサン・デミは既にこの世にないが、驚いたのはデヴィッド・バーンが40周年版の予告編に出演していること。

彼がかのズートスーツを着て身体を動かすのを見ただけで、あの映画の興奮がよみがえる! 日本でも劇場公開されないかな。

herelieslovebroadway.com

デヴィッド・バーンといえば、2010年のファットボーイ・スリムとのコラボ作『Here Lies Love』が今夏ブロードウェイでミュージカル化されるとのことで、70歳過ぎても精力的な活動ぶりでなによりである。

スティーヴン・スピルバーグの最高作を5つ挙げるなら何になる?

www.polygon.com

やはり最新作『フェイブルマンズ』が自伝的作品だったからか、スティーヴン・スピルバーグの映画で最高作を5つ挙げてみようという記事である。

思わず、自分だったら何をあげるだろうかと考えてしまったが、もちろんワタシも彼の監督作すべてを観たわけではないと言い訳したうえで……それでもかなり悩んでしまう。とてもではないが順位はつけられないが、以下の5作かなぁ(制作年順)。

正直、現在の自分は『E.T.』よりも『未知との遭遇』を評価する。しかし、『E.T.』はワタシが初めて映画館で観た(しかも2回)スピルバーグ作品なので、これを外すわけにはいかないのです。

上でリンクした記事では、10人のライターが5作品を選んでいるが、1位を5点、2位を4点……と点数化すると、トップ10は以下の順位になる。

  1. レイダース/失われたアーク《聖櫃》(36点)
  2. ジュラシック・パーク(32点)
  3. ジョーズ(20点)
  4. A.I.(10点)
  5. マイノリティ・リポート(10点)
  6. 未知との遭遇(8点)
  7. リンカーン(6点)
  8. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(6点)
  9. E.T.(5点)
  10. フェイブルマンズ(5点)

さて、皆さんならどの5作品を挙げますか?

BLUE GIANT

タイミング的に無理かなと諦めかけていたのだが、最寄りのシネコンでまだレイトショーでやっていたので観に行けた。やはり、本作は映画館で大音量で観るべき作品でしょう。

『セッション』『ラ・ラ・ランド』といったデイミアン・チャゼル作品が顕著だが、作品中にジャズが描かれる映画で、ジャズについての考証がおかしいという批判があったりする。

こういうのって、例えばワタシなどが将棋を描いた映画を観るときに感じる「いやー、別にいいけど、これはちょっとな」感に近いのだろうか。上原ひろみが音楽を手がける本作はそのあたり違和感はないのか、ジャズに関しては未だ初学者の近いワタシには当然ジャッジはできないのだが、ワタシは素直に楽しみました。

これは主人公の造形も影響しているのかも。例によって原作は未読で、おそらくは原作では主人公の大がジャズに魅了された契機、なぜジャズなのか、なぜサックスなのか、なぜそこまで情熱を持てるのか、なぜ世界一になると臆面もなく言えるのかといった背景について描写があると思うが、本作の場合、そのあたりについて直接的な説明はほぼなく、それがむしろ本作をスポーツ映画のような没入を可能にしている。

「組むということはお互いを踏み台にすること」という雪祈のバンド観も、本作の人間関係をしがらみにしていないのだけど、後半フラグが立ちまくって、そうなるとイヤだなと思った展開になってしまうものの、そのあたりもスポーツ映画っぽかった。

画も演奏場面のヌルっとしたグラフィックには好みが分かれるかもしれないが、音と画のシンクロぶりは見事だったし、音と映像の熱量に圧倒された。

主人がオオアリクイに殺されたのには訳がある? スパムメールの文面がアホっぽい理由

aisnakeoil.substack.com

「インチキAIに騙されないために」で紹介した AI Snake Oil だが、最近も新作文章が活発に公開されている。

これは Meta が先ごろ発表した研究者向け大規模言語モデル LLaMA についての文章である。

LLaMA については、これで偽情報の作成コストが大幅に下がり、悪用されるのではないかという懸念も表明されている。ブルース・シュナイアー先生もそういうことを書いているが、この文章では LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)によってもっともらしい偽情報が作られるリスクは誇張され過ぎじゃないのという意見が紹介され、アーヴィンド・ナラヤナンらもそれに同意している。

で、ここから AI の話から少しズレるのだが、ワタシが知らなかった話におっとなった。

スパムも似た話かもしれない。スパマーにとっての課題は、スパムメール作成のコストではなく、どんな詐欺にもひっかかる可能性のあるほんのわずかの人たちを特定することにあるようだ。ある古典的な論文によると、まさにこの理由から、スパマーはあえて説得力の欠けるメッセージを作成するというのだ。それで反応があれば、その人が詐欺にひっかかりやすいより強いシグナルになる。

そうだったのか、スパムに少しでも通じた人には常識なのかもしれないが、ワタシは知らなかったな。

「主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました」みたいな珍妙なスパムメールは、それに返事を書いてしまう、詐欺にひっかっかりやすい人を特定するためだったんですね。

さて、アーヴィンド・ナラヤナンが共著した機械学習と差別についての論文 Fairness and machine learning が MIT Press から書籍化されるのを知る。

刊行は半年以上先の話だが、論文自体は既にウェブに全文公開されているから今でも読める。とはいえ、やはり書籍化されることでリーチする人もいるんだろうな。

その意味で AI Snake Oil の書籍化も待たれるところである。

科学史家ジョージ・ダイソンの『アナロジア AIの次に来るもの』が5月に出る

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)」で取り上げたジョージ・ダイソンの『Analogia』の邦訳が忘れたころに『アナロジア AIの次に来るもの』として出るのを知る。

『チューリングの大聖堂』に続いて早川書房からの刊行である。

ライプニッツからポストAIまで自然・人間・機械のもつれあう運命を描く」とのことで、『チューリングの大聖堂』と同じく、科学史家として人間と機械(コンピュータ)の関係を論じるものなんだろうな。

そういえば、『チューリングの大聖堂』はとっくに文庫化されていた。

『アナロジア』に話を戻すと、「AIの次に来るもの」という副題にケヴィン・ケリー『〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則』を連想したが、『アナロジア』の監修は(ケヴィン・ケリーの本の訳者の)服部桂さんなんだな。

あと本書の翻訳は橋本大也さんだが、橋本さんといえば『英語は10000時間でモノになる ~ハードワークで挫折しない「日本語断ち」の実践法~』というすごいタイトル(1000時間じゃなくて10000時間ですよ)の本も告知されていますね。

「very」を置き換える単語を知ることで英語の語彙を増やせるウェブサイトがためになる

Lose the Very というサイトが面白い。英文を書いていて、つい「very 〇〇〇〇〇」みたいに形容詞を強調することが多いのだけど、その「very 〇〇〇〇〇」に置き換え可能な単語を知ることができる。

例えば、「very new」だと「novel」と出るのだが、「Get/Refresh Result」ボタンを押すことで、「novel」以外にも「cutting edge」とや「state-of-the-art」みたいに他の選択肢も知ることができ、その中から自分が使いたい文脈で最適なものを選べばよい。

そういえば以前、もっともよく使われる上位1000の英単語しか入力できないテキストエディタを紹介したことがあるが、逆に語彙を広げるのにこれは良いサイトですな。

ネタ元は Boing Boing

アカデミー賞の歴史上もっとも不可解な受賞10選

www.independent.co.uk

さて、まさに今日第95回アカデミー賞が発表されるわけだが、この記事ではアカデミー賞の歴史においてもっとも不可解な受賞を10個選んでいる。

ワタシも「アカデミー作品賞をとったのに今では相手にされることが少ない映画の代表格といえば?」とか「アカデミー賞にひとつもノミネートされなかった名作映画の数々」といったエントリを書いており、まぁ、受賞は時の運というか、あとから振り返ってノミネートにしろ受賞にしろ間違いだろと言いたくなるものが少なからずあるわけだが、この記事で選ばれているのは以下の通り。

作品賞では他にもおかしいのがあるんじゃないかという気がするが、こういうのは難しいですな。

エイミー・アダムスアカデミー賞をとれてないのはおかしいというのは異議なしである。『アメリカン・ハッスル』『バイス』あたりでとるべきだったと思うし、この記事で『メッセージ』で主演女優賞にノミネートされるべきだったと書かれているのにも同意する。

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