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WirelessWire News連載更新(沈鬱な黒い毒と小さな希望)

WirelessWire Newsで「沈鬱な黒い毒と小さな希望」を公開。

少し早めの公開になるが、早く書かないとこの後いろいろ用事が立て込んできて、時間が割けなくなるのが読めていたので急いだのだが、今回は書くのにとにかく疲弊した。正直、どうなることかと思った。

今回の文章の BGM は、最後に歌詞を引用したこの曲ですね。ちょっとクリスマスソングっぽい雰囲気もありますし。

ヴァージニア・アストレイデヴィッド・シルヴィアンのデュエットで、この曲を初めて聴いた頃は、ラブソングなんでしょ? と思い込んでいたので、後で歌詞を知ってその文句なしの暗さにたじろいだものである。

例によって今回の文章も豊富なリンクを含んでいるが、それでもどうしても入れ込むことができなかった文章があるので、ここで紹介しておきたい。

まずは柴那典さん(id:shiba-710)の「【ポップの羅針盤】第9回 ポップスターの敗北とポッドキャスターの勝利」だが、以下のポイントは言われてみれば当たり前だけど、盲点だった。

そして、ここが大きなポイントなのだが、少なくともSpotifyというプラットフォームにおいて、音楽とポッドキャストは直接的な競合関係にある。トークと曲のどちらを聴くか、どちらに耳を傾けるか、日々ユーザーはアプリの中で選択しているわけなのだから。

【ポップの羅針盤】第9回 ポップスターの敗北とポッドキャスターの勝利 by 柴 那典 – No Music, No Life.

関連して、「「マノスフィア」の勝利──トランプを大統領にしたインフルエンサーたち」も参考になる。

あと、「若者の経済的不満による「テストステロン投票」がトランプに勝利をもたらした」を読むと、世代間問題など意外に日米で共通する問題があるんだなと思ったりした。

そして、実は今回の文章は、モリー・ホワイトの最後の XOXO Festival での講演を中心に書く予定だった(けど、全然変わっちゃった)。

英語の講演を聞き取れないという方は、文字起こしである「我々のウェブのために戦う」を見てください。

そうそう、この文章にはコリイ・ドクトロウ「みんな! RSSはいいぞ!」で物言いをつけている。

あと今回の文章では、タイトル並びに本文で珍しく小説から引用させてもらった。

来年の2月にビル・ゲイツの回顧録『Source Code: My Beginnings』が出るとな

courrier.jp

ビル・ゲイツの最新インタビューだが、写真を見ると髪がもう真っ白で顔のしわにもお爺さん感が出ている。

それはともかく、これを読んでいて、彼の回顧録 Source Code: My Beginnings が来年2月に出るのを知った。

近年、彼は『地球の未来のため僕が決断したこと』(asin:4152100435)や『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』(asin:415210144X)といった本を続けて出しているが、回顧録を出すのは初めてである。

表紙を見ても分かるように小さい頃からの自分を振り返るもので、現在の財団の活動についてではなく、マイクロソフト創業の頃あたりまでの話になりそう。『ソースコード』という題名は、ワシはプログラマーやで! という自負だろうか。

まぁ、ポール・アレンが死んだら彼の持ち株をどうしようとスティーブ・バルマーと密談していた話「悪の帝国」視された頃のマイクロソフトの話は期待できないだろう。

そういえば、来年はマイクロソフト創業50周年なんだね。

ビル・ゲイツのことは昔から好きだし、『天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する』Netflix で観た。コロナ禍最初期あたりが彼に対するリスペクトがもっとも強くなったが、その後ジェフリー・エプスタインとの関係が取りざたされ、メリンダ夫人と離婚にいたってイメージダウンになっちゃった。

また(反ワクチンなどの陰謀論者をのぞけば)これまで賞賛の対象だったビル&メリンダ・ゲイツ財団についても『The Bill Gates Problem: Reckoning With the Myth of the Good Billionaire』といった問題点を問いただす本が出ていたりする。

そうした意味で、彼のキャリア初期を回顧する本は、そのあたりを浄化する作用を持ったものであってほしいと勝手に思ったりする。

マーク・クーケルバークの今年2冊目の邦訳となる『デジタルテクノロジーと時間の哲学』が出ていた

yamdas.hatenablog.com

先月、マーク・クーケルバーグの『ロボット倫理学』が出ていたことについて書いたのだが、その後調べものをしていて、彼の現時点での最新作となる Digital Technologies, Temporality, and the Politics of Co-Existence の邦訳である『デジタルテクノロジーと時間の哲学』が出たばかりなのを知った。

うーん、なんで先月のエントリを書いたときにこれに気付かなかったのだろうと思ったら、↑でリンクしている Amazon のページ、(本文執筆時点で)訳者名はあるのになぜか著者のマーク・クーケルバークの名前がないんだな。だから彼の名前で検索しても出てこなかったのか。

それにしてもマーク・クーケルバーグの邦訳は今年2冊目となる。『AIの倫理学』が出てから4年足らずで5冊(!)の邦訳が出て、これで2020年以降に刊行された彼の著者はすべて邦訳が出たことになる。

それだけタイムリーな題材について書いていたということだろうが、すごいねぇ。

韓国は労働者の一割をロボットに置き換えた最初の国になった?

www.tbsnews.net

今、韓国というとなんといっても、尹錫悦大統領が12月3日に戒厳令を発令した後の展開に注目がいっているが、たまたまその直前に読んだこの記事はインパクトがあった。

韓国は労働者の10%をロボットに置き換えた最初の国になったというのだ。これはすごいことじゃないか。

本邦も人手不足がずっと言われており、効率化の面でも必要なところはロボットに置き換えていくべきであり、これについても韓国に見習うべきところは見習うべきだろう。

しかし、それで思い出したのは、以下の投稿である。

そう、人間の労働者が低賃金だと機械化のインセンティブがないんだよね。日本の現状は、これまでちゃんと最低賃金をあげてないツケとも言えるのかもしれない。

ネタ元は Slashdot

2024年に初めて起きた24のこと

www.nytimes.com

なるほど、こういう切り口があるのか。

2024年に初めて起きたことを24個挙げている。個人的におっと思ったのは以下のあたり。

  • 学校での銃乱射事件で犯人の両親が起訴され、有罪判決を受けた
  • 豚の腎臓が人間に移植される
  • メキシコのタコススタンドがミシュランの星を獲得
  • サウジアラビアで水着ファッションショーが開催
  • 米大統領が重罪で有罪判決(……で、その重罪人がまた米大統領になるんだからねぇ)
  • サムスンの従業員がストライキを決行
  • 英国が先進国で初めて石炭発電所を閉鎖
  • 親子で NBA の試合に出場

確かに今までなかったんだ! と思うものもいくつかあるねぇ。すべての項目を知りたい方は原文をあたってくださいな。

ネタ元は Boing Boing

2024年に素晴らしい仕事をした1973年組の翻訳家たち

さて、2024年も残りひと月を切ってしまった。2024年を振り返るというわけではないが、今年はワタシと同じ1973年生まれの翻訳家の仕事が充実していたのでまとめて取り上げておきたい。

一人目は野中モモさんだが、今年はナージャ・トロコンニコワ『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』を訳している。

東京藝術大学教授の清水知子氏による解説文がオンライン公開されており、これを読めばこの本の性質が分かるだろう。

そして、カイ・チェン・トム『危険なトランスガールのおしゃべりメモワール』を訳している。

野中モモさんの仕事は2021年にも讃えているが、訳する本に訳者の強い意志を感じるところに変わりがない。そのあたりについては、ウェブ平凡に寄稿した「聞こえているから自分も言える」を読めば分かるように思う。

二人目は堀越英美さんである。彼女の仕事は2021年2022年にも取り上げているが、今年の仕事量もすごいものがある。

まずはフィリップ・バンティング『自分の言葉で社会を変えるための 民主主義入門』である。とても教育的な仕事だと思う。

堀越さんは今年も自閉スペクトラム症に関係する本を精力的に訳されている。まずは、デヴォン・プライス『自閉スペクトラム症の人たちが生きる新しい世界 Unmasking Autism』

そして、ピート・ワームビー『世界は私たちのために作られていない』が出たばかりである。

訳書3冊だけでもすごいのだが、さらには『ささる引用フレーズ辞典』の刊行が今年末に控えているのだから、ものすごい仕事量ではないか。

そして、三人目は小林啓倫さんである。

先日速水健朗さんが、「あなたが手に取り損ねた本 Book Diggin by速水健朗」の配信で、「この人の訳した本を何冊も持ってるよ!」と語っていたが、本当にこの人はワタシにとって重要な仕事を押さえていてすごいなと思うのだ(速水さんはポッドキャストでもこの本を紹介している)。

今年は何といってもマイケル・ルイス『1兆円を盗んだ男 仮想通貨帝国FTXの崩壊』を訳している。

この本はワタシもご恵贈いただいたのでもちろん読んでいるのだが、マイケル・ルイスの本だから面白いに違いないのだが、独特の不愉快さがある本だった。当たり前だが、それは訳者の責任ではない。このあたりについてうまく説明できる自信がないのでここには詳しくは書かない。

そして、もうすぐモーリッツ・アルテンリート『AI・機械の手足となる労働者』が出る。

これを知ったときは、なんで原著を紹介してなかったんだと地団太を踏んでしまった。

またしても小林啓倫さんは重要な仕事をものにしたようだ。

ソフトウェアエンジニアの10%近くは実質何の仕事もせずに10万ドル超の年収を得ているというシリコンバレーの不都合な真実?

www.404media.co

先月の話だが、スタンフォード大学の研究者のツイートが波紋を呼んだ。彼の主張によれば、100社以上で5万人を超えるエンジニアのパフォーマンスに関するデータを分析した結果、「ソフトウェアエンジニアの9.5%は事実上、何の仕事もしていない」というのだ。

彼が調査したアルゴリズムによって決定された、ソフトウェアエンジニアの中央値の10%以下のパフォーマンスしか示さないエンジニアを「ゴースト・エンジニア(Ghost Engineers)」と呼んでいる。

もちろん、彼の研究にはすぐにいくつか疑問点が浮かぶ。この記事を書いたジェイソン・コーブラーも、コードコミットやコード分析だけで判断できない貢献をしている人の仕事はどうなのか、また意味のないアップデートをプッシュしたりすれば簡単にごまかせるのではないかと研究者に質問している。

この研究の詳細はまだ発表されておらず、査読も経ていないのには注意が必要だが、近年のテック企業における大規模なレイオフ、労働者を監視するツール(一分以上マウスやキーボードの動きがないアイドル状態を検知ようなヤツですね)の需要、そして在宅勤務を止めてオフィス通勤を強いる方針は、この種の疑いを反映したものと言えるだろう。

そういえば、やはり先月イーロン・マスクが政府効率化局(DOGE)の仕事に関連して、オフィス勤務完全復帰方針(RTO: Return to Office)の義務化は職員を自主的に辞めさせるためであることを明言しているが、こういう研究によって、ソフトウェアエンジニアに対する締め付けが厳しくなるのではという危惧はありますわな。

Software Engineering Productivity Research というズバリな名前のサイトが、この研究プロジェクトのサイトである。

組み込みシステム用LinuxディストリビューションOpenWrtに特化した初のルータOpenWRT Oneが発売開始

sfconservancy.org

組み込みシステム用の Linux ディストリビューションとして知られる OpenWrt だが、これに特化した初のルータ製品 OpenWrt One が89ドルで販売開始とな。

「ソフトウェアの自由と修理の権利を念頭に置いて設計、構築された初めてのワイヤレスインターネットルーター」が謳い文句だが、そう、これは「修理する権利」に関する成果と言えるわけだ。

gigazine.net

この OpenWrt One プロジェクト自体は今年のはじめに発表されていたが、正直、本当にできるのかいなと思っていた。

しかし、ちゃんと今年のうちに、しかも100ドル以下という条件もクリアしての発売なのだから偉いねぇ。

ネタ元は Slashdot

長年の誤ったパスワードポリシーが推奨された原因はあの偉人の論文だった?

stuartschechter.org

米国立標準技術研究所(NIST)の認証に関するガイドライン「NIST SP 800-63」が改訂され、「パスワードは「複雑」より「長い」が重要、定期的な変更を義務付けてはならない」というのがようやく周知された。

しかし、「複雑なパスワード」と「定期的なパスワードの変更」が長年推奨されてきたのか。この文章は、その原因を偉大な科学者たちが過ちを犯したことに理由を求めている。

その科学者とはロバート・モリスとケン・トンプソンの二人である。ケン・トンプソンについては説明は不要だろうが Unix の開発者ですね。ロバート・モリスは暗号学者で、Y Combinator の共同創業者であり「モリスワーム」の作者として知られるロバート・タッパン・モリスの父親である。

この二人が1979年に実際のユーザパスワードを調査して発表した Password Security: A Case History という論文が後に大きな影響を及ぼし、何十年もパスワードの改良に進歩を妨げることになったという。

この論文が犯した過ちは二つがあり、一つ目は複数の文字種(小文字、大文字、数字、記号)を含めることがパスワードの安全性を高めるというパスワードの複雑化の推奨で、現実には「p@ssword」や「Password1」といった推測しやすいパターンはセキュリティ向上にはつながらなかった。

二つ目は、パスワードをハッシュ化して保存する方法を提案したことで、結果的にこれがが研究者によるパスワードの実態調査を著しく困難にしてしまい、結果として、パスワードに関する知見の蓄積が停滞しまった。

まさか二人も自分たちの論文がここまで長く影響力を持ってしまうとは思わなかっただろう。一見有用そうなポリシーが長い目で見れば悪い影響をもたらすのだから難しいものである。

ネタ元は Schneier on Security

世界最凶のスパイウェアであるペガサスについての本が年明けに出るぞ

調べものをしていて、来月に早川書房から『世界最凶のスパイウェア・ペガサス』という本が出るのを知った。

スパイウェアのペガサス(Pegasus)については、今年「BS世界のドキュメンタリー」で取り上げられているのを見て、その凶悪さに震えあがったものである。

元番組は PBS で放送された Global Spyware Scandal: Exposing Pegasus なのだが、今回邦訳が出る本の著者二人は、この番組のプロデューサーでもある。

ならば、これは読み甲斐がある本だと期待できるな。

トム・ヨークの福岡公演に行ってきた

www.setlist.fm

思えば福岡でブラーを観たのが1997年、オアシスが2000年、それからおよそ四半世紀の時が流れ、2024年になってトム・ヨークを福岡で観れるとは思わなかった。

ゼロ年代前半あたりまでは、洋楽アクトの来日公演に福岡が入るのが割と普通だったが、この国が経済的に落ちぶれるにいたり、そうでなくなって久しい。

レディオヘッドのライブに行ったことがないワタシにとって逃せない機会である。今回はレディオヘッドでもザ・スマイルでもなくソロ名義だが、それでもバックバンドを連れて来るのかなと思っていたら、完全にトム・ヨーク単独のステージだった。

今ではラップトップさえあればそういうライブも可能だが、彼の場合、単独でもかなり躍動感があって、本当に観れてよかった。MC もほぼなしのタイトな構成だったが、はじめあたり「コンバンハ」の声にエコーがかかっていたのが笑えた。

ローリングストーンのライブ評が参考になるが、事前に予想していたよりもレディオヘッドの楽曲(主に『Kid A』期以降)が多い印象があった。レディオヘッド6割、ソロ3割、そして残り1割がザ・スマイルなど。

ライブに足を運ぶの自体、キング・クリムゾン以来3年ぶりだったが、オールスタンディングのライブがワタシ的にはかなり久しぶりだった。どれくらい久しぶりかというと……2002年のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ以来って20年以上ぶりかよ!

足腰が持つだろうかという不安を抱えてのライブとなったわけだが、ステージ上でうねうね踊るトム・ヨークを観ているうちにこっちも気がつくと踊りながら観ていた。前の座席を掴みながら(ジジ臭くてゴメン)。

そうした意味で、ダンサブルな曲がより楽しめた。本編ラストの "Idioteque" とか。あと "Atoms for Peace" もホントに素晴らしかったな。

もちろんレディオヘッドはワタシにとってとても大事な存在だし、近年のザ・スマイルまでずっと追いかけてきたわけだけど、彼のソロ作はあんまりちゃんと聴いておらず、今回のソロ来日公演に行くとなって初めてちゃんとそのあたりまで聴く機会が作れてよかった。

さて、通常であればここでワタシが客席から撮影した写真なりを載せたいのだが、前述の通りライブ勘がすっかり鈍ってたのもあり、後から自分が撮った写真を見なおしても、まともに撮れてるものがほぼなかったりするのが情けない……。

なぜFAANGは採用面接でLeetCodeに頼るのか?

mastermentee.substack.com

FacebookAppleAmazonNetflixGoogleの頭文字を組み合わせた造語である FAANG、まぁ、要は米ビッグテックのことだが、なんで彼らが採用者の面接で LeetCode に載ってるようなプログラミング問題を使ったコーディング面接をするのかについての文章である。

そうしたコーディング面接には批判の声もあるが、この文章も「現実の仕事には使えるわけでもない LeetCode の問題に頼るのか?」というそうした批判を踏まえた上で、ビッグテックにおけるソフトウェア開発エンジニア(Software Development Engineer、SDE)に何が求められているのかという観点からこの問題を考えている。

FAANG の SDE に必要とされるスキルは何か? まず、求められる技術スキルは以下になる。

そりゃそうだよね。そして、求められるソフトスキルは以下になる。

  • 効果的なコミュニケーション
  • コラボレーション
  • 適応性
  • 細部への配慮

ビッグテックが人を募集するとなると大変な数の履歴書が届くことになる。その面接者をスクリーニングするために、一時間以内にその人の日々のスキルを測る必要があるわけだ。面接者に以下を促す問題を出すことになる。

  • 効果的にコミュニケーションを行う
  • 批判的に考える:問題解決能力や細部への配慮を評価
  • 技術的知識を明示する:適切なデータ構造とアルゴリズムを選択できるか
  • 柔軟性:適応性とシステム設計スキルを評価
  • 解決策を示す:日々やっているコーディングの知識を見せてもらい、プログラミングスキルを評価

LeetCode が面接者の SDE スキルをアピールできるコラボレーションと有意義な問題解決を面接で示すのに良い、という結論でいいのかな?

でも、この文章の最後で、SDE の面接の形式は、AI の進歩にともない変わる可能性が高く、AIコーディングアシスタントが実用的になれば、プログラミングスキルの評価が面接の中心ではなくなるかもしれないという予測が書かれている。ふーむ。

Craigslistの創業者クレイグ・ニューマークが対米サイバー犯罪対策に2億ドル(!)の寄付を行う

it.slashdot.org

Craigslist の創業者クレイグ・ニューマークは既に会社からは身を引いており、篤志家としての活動が主なのは知っていた。例えば、2018年にはニューヨーク市立大学にジャーナリスト養成のために22億円を超える寄付をしたことをここでも取り上げているが、今回は2億ドルで桁が違う。すげぇなぁ、おい!

今回の寄付の対象は対米サイバー犯罪対策で、特にアメリカの重要インフラをサイバー攻撃から守るプロジェクトに投資されるとのこと。具体的な寄付先については、craig newmark philanthropies のリリース文を参照ください。

クレイグ・ニューマークは、彼の父親が第二次世界大戦で戦ったことに触れており、現在のサイバー戦争をそれになぞらえており、「サイバー民間防衛」が必要と考えている。

ワタシも昨年「米国の国家サイバーセキュリティ戦略とインフラとしてのオープンソース」という文章を書いているが、トランプ政権下でそのあたりが手薄になる可能性も出てきたので、「サイバー民間防衛」の重要性も増すとニューマークは考えているのかもしれませんな。

あと本題からずれるが、クレイグ・ニューマークってもう71歳なんだね。およそ30年前に Craigslist を立ち上げた時点で40代だったのか。実際、Craigslist にアクセスするとその地味さというか簡素さというか、前時代なデザインに驚くわけだが、それで2億ドルも寄付できるくらいの富を築いたのだから、どんだけ Craigslist が化け物サイトかの裏返しでもある。

ジェフ・ジャービスが早くも出す新刊であえてインターネットを擁護する

buzzmachine.com

えーっ、ジェフ・ジャーヴィスって昨年2冊本を出していて、精力的やなと思ったのだが、今年も先月 The Web We Weave という新刊を出しているのを知る。

『我々が作るウェブ:なぜ我々はインターネットを権力者、厭世家、そしてモラルパニックから取り戻さなければならないのか』という書名から彼の強い決意が伝わってくる。

例えば日本でも、兵庫県知事選挙後にネットの(ネガティブな)影響力が取りざたされたが、やはりインターネットは我々を愚かにしているとか、分断しているとか、子供に悪影響があるといった理由で、インターネットにより大きな規制と管理を求める声は全世界的に強まっている。

ここでジャーヴィスは、インターネットについてもっと健全な対話ができるし、メディアがインターネットに押し付けている問題の多くは、我々自身の失敗の結果であると主張する。つまり、安易にインターネットの規制して捻じ曲げようという試みは往々にして見当違いだぞ、とネットを擁護する本なんですね。

インターネットが話題になる場合、悲観的な見方のほうが正しそうというか頭が良さそうに見えるところがあるが、ジャーヴィスはこの本で悲観論への解毒剤の提供を目指しているようで、今どきの流行りの論調に背を向けるところが彼の気骨なんでしょうな。

ドリーム・シナリオ

金銭的苦境が噂され、なんでそんな作品に出演するかという時期が続いたニコラス・ケイジだが、2020年代に入ってからは、『PIG/ピッグ』でキャリア最高の演技と絶賛され(未見なんだよな)、『マッシブ・タレント』で自己のパブリックイメージを見事パロディ化し(Netflix で観た)、そして本作と好調が続いており、彼のファンとして嬉しい限りである。

『セブン・サイコパス』クリストファー・ウォーケン『グラン・トリノ』という意味で、本作はニコラス・ケイジ『TAR/ター』である、と書くと怒られるだろうか?

なぜかケイジ演じる主人公が多くの人の夢に出てくるようになって時の人となり、しかし、それが暗転してしまう展開となるわけだが、キャンセルカルチャーの暗喩なのは間違いないでしょう。

理不尽な状況の描き方が、本作のプロデューサーがアリ・アスターと聞いて納得なのだが、本作は2時間未満でかっちり作られており、クソ長い『ボーはおそれている』なんかより良かった、と書くとまた怒られそうだが。

本作はまさかのトーキング・ヘッズ映画なのだが、クライマックスで笑いだしたのが、ワタシ以外では同じ列にいた女性だけで、果たして他の客が理解してたかは不明だが、エンドロールであの曲が流れ出したとき、不覚にも少し泣いてしまった。理不尽さを描く本作の結末が、苦くも心温まる着地点を見出していたからだろう。ニコラス・ケイジ、よくやった!

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