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ウィキペディアの「2022年以降に不審死を遂げたロシア人実業家」まとめが50人を超えていた……

yamdas.hatenablog.com

これがおよそ一年半前のエントリだが、ウィキペディア英語版における「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」を取り上げたものである。

en.wikipedia.org

あのページどうなっているのかなと思い久しぶりにアクセスしたら、当然ながら2022年の後もロシア人実業家で不審死を遂げた人は出ており、それを踏まえたページ名になっていた。これも一種のウィキペディアの「珍項目」と言えるだろうか。

で、数えてみたら、全部で50人を超えていた。マジかよ……。

ここで挙げられている人の中で、最近の大物となるとエフゲニー・プリゴジンになるんでしょうね。アレクセイ・ナワリヌイはリストに入っていないが、「実業家」ではないという判断か。

ウィキペディアの幹線道路ページの編集者が「出口ランプ」を目指した理由

slate.com

ウィキペディアで幹線道路(ハイウェイですね)についてページ情報をコツコツ貢献してきたウィキペディア編集者が、一部編集者に攻撃されて敵意に直面し(たと感じ)、ウィキペディアのハイウェイ愛好家たちがウィキペディアを離脱して、AARoads というサイト、並びに AARoads Wiki という Wiki を立ち上げるにいたったという話である。

「この一見愉快なオタク同士の衝突の背後には、20年にわたるウィキペディアの基本理念や価値観を、現状における需要といかに調和させるかというはるかに差し迫った問題がある」とこの記事は分析している。

そしてこの記事では、ウィキペディア編集者でも鉄道オタクと道路オタクの気質の違いについて書かれていて、鉄道オタクは公共交通機関に関する記事を充実させる傾向にあり、道路オタクは題材の即時性に惹かれる。また、アメリカでは車社会なので、鉄道よりも道路に惹かれる人のほうが多い。

そして、ウィキペディア執筆で重要な信頼できる情報源の解釈が、道路ページの編集で問題となった。ウィキペディアの道路オタク編集者が運輸局のページを情報源として使用しようとすると、これは一次資料(一次情報源)だからと他の編集者に拒否されてしまう傾向にあり、軋轢が生じた。

ウィキペディアの記述は新聞など信頼できる二次資料に基づくべきだというけれど、地方紙が弱体化してしまった現在、それを言ってたら他に情報源はほとんどないじゃないの、というのが道路ページ編集者だった人たちの言い分である。

政府機関からの情報をソースとしてはいけないというのは、例えば中国のような権威主義国家を考えればもちろん根拠がある話だし、独自研究禁止のポリシーも、疑似科学が入り込むのを防ぐ意味で重要なのは分かるが、道路ページ編集者たちの不満とは折り合わなかったようだ。

かくして AARoads Wikiウィキペディアから分離独立したわけだが、現状はウィキペディア英語版における道路ページのフォークがほとんどである。また、離脱先でもこのプロジェクトがハイウェイだけにフォーカスすべきか、もっと幅広く道路を網羅すべきか論争が起きているとのことだし、AARoads Wikiウィキペディアの両方に参加するユーザも残っており、一筋縄にはいかないようだ。

この記事は、「隣の芝は青い(The grass is always greener on the other side)」にかけて、「隣の舗道が平らとは限らない(The pavement isn’t always smoother on the other side)」という文で終わっている。

そういえば、日本では先ごろ「アニヲタWiki(仮)」に“怪しい広告”で騒動なんて話があったが、Wiki をめぐってトラブル(やフォーク)が起きるジャンルにもお国柄がありますな。

ネタ元は Boing Boing

2023年末になってウィキペディア(ン)の本が2冊刊行されている

open.spotify.com

初回から聞いているポッドキャストで知ったのだが、最近になってウィキペディアについての本が刊行されている。

ウィキペディアについての本というと、ウィキペディア自体を研究し、論評する本は過去にあり、しかし、そういう本が出ていたのは随分前の話である。

今年末になって刊行されている本は、そうしたウィキペディア研究本ではなく、ウィキペディアン自身が書いた、ウィキペディアへの貢献についての本である。

まずは門倉百合子さん『70歳のウィキペディアン』が先月出ている。

門倉さんの場合、司書としての経験がバックボーンとしてあり、その上でウィキペディアを敵視するのではなくウィキペディアをより正確な情報源にしたいと考え、2016年からウィキメディア編集に関わるようになった、つまりはウィキペディアの執筆ももう7年ほどやられているベテランなんですね。

関連イベントへの参加も旺盛で、いろんな人のロールモデルになりうると思うのである。

そして、伊達深雪さんの『ウィキペディアでまちおこし - みんなでつくろう地域の百科事典』がちょうど出たばかりである。

この本は、ウィキペディアタウンについての世界初の書籍と言ってもよいだろう。

著者は京都府立高校の学校図書館司書で、この方のお名前は少し前に「図書館にゲーム置いたら… 最先端の高校、表現力や知識量アップにも」という記事で見かけた覚えがある。

今回立て続けに出た2冊のウィキペディア本とも著者が司書の方で、知的好奇心に裏打ちされたウィキペディアンとしての活動力と筋の良さは、そこから来ているのかなと思ったりする。

ウィキメディア財団が10年以上ぶりに新たに手がけるWikifunctionsプロジェクト

wikimediafoundation.org

以前、ウィキメディア財団が手がけるプロジェクトが13個であることを取り上げたが、ウィキメディア財団が2012年以来、10年以上ぶり(!)に新たにプロジェクトを立ち上げた。

それが Wikifunctions で、世界中の自然言語プログラミング言語ウィキメディア財団のプロジェクトを支援するコード関数ライブラリを共同で作成、維持するプロジェクトとのこと。

うーん、分かったような分からん感じなので、これを7分で解説する動画を見てみましょう。

関数の Wiki、つまりはオープンなコードレポジトリということだが、これを作ることで何が嬉しいのか。

Wikifunctionsは、広く再利用できる定義された関数の共通カタログと、その場で素早く関数を組み合わせて実行できる環境の両方を作ることを目的としています。Wikifunctionsは、開発者にとっては外部ライブラリのようにこのリポジトリに依存することができ、エンドユーザにとっては必要に応じて関数を呼び出すことができるようにすることを目指しています。

ウィキファンクションズ:概要 - Wikifunctions

Wikifunctionsは、より多くの計算処理をWebに移行し、以前は利用できなかった機能へのアクセスを民主化するという伝統を継続しています。同時に、「StackOverflow」からの回答を適切にコピーして貼り付けることに依存する代わりに、大規模なコードライブラリを使用できるため、あらゆる場所の開発者の生産性が向上します。

ウィキファンクションズ:概要 - Wikifunctions

実際の Wikifunctions への貢献方法については「Wikifunctions:はじめに」が参考になるでしょうな。

ライセンスが気になるところだが、FAQ によると、テキスト部分は(ウィキペディアなどと同じく)CC BY-SA 4.0、コード実装部分は Apache 2.0 ライセンスになるとのこと。

マルウェアもWikiの時代なのか(違います)

thehackernews.com

旧聞に属するし、大した話ではないのだが、セキュリティに関する記事を読んでいて、WikiLoader という見慣れない名前を見かけて気になった次第である。

最初、ワタシの知らないセキュリティ系 Wiki サイトの名前かと思ったら、そうではなく、この WikiLoader が新種のマルウェアの名前とのこと。でも、なんでそんな名前がついたのか?

WikiLoader is so named due to the malware making a request to Wikipedia and checking that the response has the string "The Free."

Cybercriminals Renting WikiLoader to Target Italian Organizations with Banking Trojan

このマルウェアは、Wikipedia にリクエストを投げて、そのレスポンスに「the free」という文字列があるかをチェックすることからこの名前がついたという。

どういうことかというと、Wikipedia 英語版のトップページの title が「Wikipedia, the free encyclopedia」なのを指しているのだと推測する。つまりは、Wikipedia 英語版のトップページにアクセスすることで、インターネットの導通を確認しているわけですね。

Malpedia(まさにこれぞマルウェアウィキペディア)や MalwareBazaar を見ても、7月半ばに登場して以来大した情報が出ていない。

少し前に icanhazip という接続元のIPアドレスを返すサイトへのアクセスの大半はマルウェア由来という話を読んだばかりだが、いずれにしても迷惑な話やで。

ActivityPubの原作者のEvan Prodromouは、Wikitravelの創始者でもあったんだな

scripting.com

デイヴ・ワイナーのブログで、オープンな非中央集権型のソーシャルネットワーキングプロトコル ActivityPub の原作者として Evan Prodromou の名前が挙げられており、あれ? この人の名前なんか記憶あるな……と自分のブログを検索したところ、この人、旅行ガイドを Wiki 上で作る先駆けとなった Wikitravel の共同創始者だったと思い出した。

そうそう、ワタシはこの人の「Wikitravel:旅行者の役に立つコピーレフトなコンテンツ」という文章を訳しているんだよね。偉いぞ、昔のオレ! ……って、19年以上前かよ!

その後もオープンソースのマイクロブロギングスタートアップをやってたところまでは追っていたが、この2020年代になって非中央集権型のソーシャルネットワーキングプロトコルでまた重要な仕事をしているのは天晴なり。

インターネットにおいて、一発当てるだけでもすごいことだが、ActivityPub が Evan Prodromou にとって二発目のヒットになりそうで(もうなっていると言えるか?)、これはなかなかすごいことだと思う。

ウィキメディア財団のCPO兼CTOが「生成AI時代におけるWikipediaの価値」を訴える文章を訳したぞ

Technical Knockout「生成AI時代におけるWikipediaの価値」を追加。Selena Deckelmann の文章の日本語訳です。

このブログでも、ウィキペディアと AI の関係について扱ったエントリをいくつか書いている。

特に後者のエントリを読み、そしてワタシ自身、「ウェブをますます暗い森にし、人間の能力を増強する新しい仲間としての生成AI」を書いたのもあり、ウィキメディア財団の人から公式的なステートメントはないのかなと思っていたら、ウィキメディア財団の CPO 兼 CTO の人が、題名みて分かる通りズバリな文章を書いていたので訳してみた。

なんでそれを勝手に公開できるのかというと、ウィキメディア財団のブログのライセンスが CC BY-SA 4.0 だからなんですね。

公開用の翻訳自体久しぶりにやるので、思ったよりも時間がかかった。誤記、誤訳などありましたらメールなりで教えてください。

そういえば少し前に清水亮氏が「GPT以後「知識の集積地」としてのネット空間は汚染されていく。私たちはいつまでWikipediaを信用できるのか」という文章を書いていたが、果たして Selena Deckelmann の文章は、その答えになっていますでしょうか。

あと関係ないが、ウィキメディア財団といえば、およそひと月前のブログエントリで、お懐かしや Rebecca MacKinnon が現在ウィキメディア財団に属しているのを知った。

ウィキペディアを支える非営利団体ウィキメディア財団も設立20年を迎えている

wikimediafoundation.org

Wikipedia は2021年に20周年を迎えており、ワタシもそれに合わせて書かれた本から2つ文章を訳している。

さて、今ではその Wikipedia をはじめとする13のプロジェクトをまとめる Wikimedia 財団が設立20年になるのを受け、その歴史を振り返る文章である。

Wikimedia 財団の創始者はもちろんジミー・ウェールズだが、財団設立当時、Wikipedia はたった2台(!)のサーバで運営されていたとか、当時は有給のスタッフがいなかったので、現在も財団の要職にある当時学生2人がボランティアとして多大な時間を費やしたといった話は隔世の感があるが、じきに Wikipedia が世界有数の人気サイトになったために、彼らはその対応を通じてコンピュータ工学の学位に匹敵するだけの経験をしたそうな。

現在、Wikimedia 財団は300人をこえるスタッフを雇用し、彼らは月間180億件ものアクセスに対応し、セキュリティの維持や新機能の追加で新たなニーズに取り組んでおり、オープンソース開発者の参加を歓迎しているとな。

その後は、Wikipedia 編集のユーザビリティを高めた VisualEditor の導入の話、モバイルへの対応、翻訳ツールなどの話が続くが、その後に続く「知識の共有を阻む政府や法律の障害を排除する話」は、かつてのオンライン海賊行為防止法(Stop Online Piracy Act、SOPA)国家安全保障局NSA)との闘い、そして最近のトルコでのブロッキングなどの事例が挙げられているが、特に権威主義国家で Wikipediaブロッキングされたというニュースは珍しくなくなっており、これ関係の問題に対する透明性の確保は、財団の目下の(そしてこれからも)重要な課題に違いない。

そうしてウィキメディア財団は長期的視点でウィキペディアをはじめとするプロジェクトを持続させながら、自由な知識の創造と共有を可能にしながら信頼できる情報源としてインターネットユーザのニーズに応えるという重要な役割を果たしている。

そういえば、今年の3月にワタシは(ジミー・ウェールズからの強い調子のメールに気圧されて)ウィキメディア財団に少額ながら寄付をさせてもらっている。

無形文化遺産を祝うWiki Loves Living Heritage(がもうすぐ終わる)

ich.unesco.org

ゴールデンウィーク前に Creative CommonsYouTube チャンネルに Ethics of Open Sharing with Creative Commons & Wiki Loves Living Heritage という動画があがっているのに気づき、「Wiki Loves~」というキャンペーンが過去にもあったので、今回もそれかと調べたら、ユネスコのサイトに告知があがっていた。

Wiki Loves Living Heritage日本語版)とは、UNESCO の無形文化遺産の保護に関する条約署名20周年を記念し、無形文化遺産への関心を促すキャンペーンだったのね。

5月4日から5月18日までということで、ほとんど終わりかけの紹介となって申し訳ないという感じではあるが。

そういえば「Wiki Loves~」のキャンペーンって他に何があったっけと調べたが、以下のあたりかな。

少なくともこれらはウィキメディア財団が関わり、成果となる画像などは Wikimedia Commons に保存される……という理解でよいですよね?

AIがウィキペディアを引き裂きつつある?

www.vice.com

ひと月前に「ウィキペディアはAIによって書かれるようになるかジミー・ウェールズが考察」なんてエントリを書いたのだが、既に現実には AI に生成されたコンテンツと誤情報の増加にどう対応するかを巡り、ウィキペディア編集者の間で意見が割れているとな。

AI によって生成された一見正確そうに見える文章が、よく読むとと存在しない情報源や学術論文を平気で引用してたりするハルシネーションの問題があるのは既に知られているが、それをオンライン百科事典に載せてしまっては、完全な情報の捏造になってしまう。

ウィキペディアについての著者があるジョージア工科大学教授のエイミー・ブラックマン(Amy S. Bruckman)は、結局は大規模言語モデルを使おうが事実と虚構を見分ける能力を持ってないといかんだろ、ちゃんと人間が確認しないとウィキペディアの品質を低下させる可能性があるので、とっかかりとして利用するのはいいとして、ちゃんと全部検証されなければならない、と指摘する。

ウィキメディア財団もただ手をこまねいているだけではなく、ボット生成コンテンツを特定するツール作成を検討しており、大規模言語モデルを使ったコンテンツ生成に関するポリシーの策定にも取り組んでいるとのこと。

一方で、大規模言語モデルウィキペディアのコンテンツを学習に使うのを許可すべきかについてもコミュニティで意見が分かれているようだ。オープンアクセスはウィキペディアの設計原則の基盤だが、OpenAI などの AI 企業が開かれたウェブを悪用し、自社のモデル用に閉じた商用データセットを作り上げるのを危惧する人もいる。

オープンアクセスと責任ある AI 利用のための行動制限を組み合わせたライセンスのもとで公開された大規模言語モデル BLOOM の利用も提案されているとのことだが、大規模言語モデル向けライセンスがオープンコンテンツ方面で求められているのかもしれませんね。

過去にも機械翻訳や荒らしの除去などの目的で、自動化システムはウィキペディアで既に利用されてきたが、AI 自体の利用を好ましくないと考えるウィキペディアンがいる一方で、ウィキメディア財団は AI をウィキペディアなどの傘下のプロジェクトにおけるボランティアの作業をスケールアップするのに役立たてるチャンスととらえているようだ。それでもウィキメディア財団の広報担当者は、人間の関与がもっとも重要な要素であることは変わらず、飽くまで AI は人間の作業を補強するもの、とも語っている。

最後にまたエイミー・ブラックマンによる、もはや「使うな」とは言えないのだから、使う以上はできるだけコンテンツ(が正しい引用がなされているか)をチェックするしかない、とやはり穏当なコメントで記事は締められている。

こないだ「Wikipedia公式の「不毛なWikipedia編集合戦」事例集」なんて記事を読んだが、これからは AI 同士の編集合戦ならぬ編集戦争に人間の編集者が付き合うことになり、人間による不毛な編集合戦が懐かしいよ、と思う時代がくるのかもね。

ウィキペディアのどちらのページが長いかを当てる(だけの)ゲームWhichipedia

whichipedia.com

Wikipedia を使ったゲームというと、目的のページにいかに早く到達するかを競うゲーム WikiWars(Wikiracing)とかウィキペディアの項目を時系列で並べるゲーム Wikitrivia などここでもいくつか紹介してきたが、Whichipedia はもっと単純で、2つの Wikipedia のページのどちらが長い(分量が多い)かを当てるゲームである。

やってみると、これが一目でこっちだろと即断できるものもあるが、意外に当たらなかったりする。

そうそう、ウィキペディアの編集への参加自体をロールプレイングゲームとしてとらえる見方もありますな(笑)。

ネタ元は Boing Boing

ウィキペディアはAIによって書かれるようになるかジミー・ウェールズが考察

www.standard.co.uk

まったく猫も杓子も AI に関する話題ばかりだが、Wikipedia も ChatGPT によって書かれるようになるんだろうかという疑問を、その共同創業者であるジミー・ウェールズにぶつけた記事である。

当然、ウェールズも真っ先に「ハルシネーション」の問題を、要はそれは「ウソ」だ、と挙げている。

少し面白いのは、Wikipedia のボランティア貢献者が白人男性に偏っていることを指摘した上で(これについては、ワタシも「ウィキペディアにはバイアスの問題がある」という文章を訳している)、それによる内容の偏りが AI によって是正されないか聞いているところ。ウェールズの答えは否定的だ。

「AI の仕事に急速にバイアスが流れ込んでいることが分かっていて、というのも偏ったデータを AI を訓練すると、その偏りに従ってしまうからなんだ。AI の世界では、多くの人がこの問題に焦点を当てるので、周知されているんだ」

ただ AI によって Wikipedia の項目数が3倍になってもランニングコストは大して増えないとも語っているが、そんなものなのか。

そうそう、少し前にジミー・ウェールズに根負けして Wikimedia 財団に少額ながら寄付をさせてもらった。

ネタ元は Slashdot

イーサン・ザッカーマンが序文を書いている本が2冊出るので紹介

何か面白い洋書を知りたい人全般におススメできるかは分からないが、自分が信頼する人が序文を書いている本という切り口はあるかもしれない。普通の推薦文でもよいのだけど、正直それだと濫発している人もいるのでねぇ。

イーサン・ザッカーマンといえば、彼の本を取り上げた「「閉じこもるインターネット」に対するセレンディピティの有効性」を書いたのがおよそ10年近く前になるんやね。

最近では「世界を変えた26行のコード」の本にも寄稿しているが、最近、彼が2冊の本に序文を書いているのに気づいたので、それを紹介しておきたい。

まずはヘザー・フォードWriting the Revolution。これは昨年秋に出ていた。

ウィキペディアにおけるエジプト革命に関する記述(の10年に及ぶ変化)を調査取材することで、ウィキペディアの内容が「デジタル時代における事実の定義そのものをめぐる長引く権力闘争の結果」であることを批判的に考察したもので、歴史は今やアルゴリズムによって書かれるのかという疑問に答えるものみたい。

本の情報については著者によるページも参照くだされ。

Wikipediaエジプト革命の関係については、ワタシも「ネットにしか居場所がないということ(前編後編)」で取り上げているが(特に前編)、Wikipedia について論じた本は久しぶりな印象があるのでとても気になるが、これはさすがに邦訳は難しいだろうな。

もう一冊はレスリー・ステビンズBuilding Back Truth in an Age of Misinformation。こちらは来月出る。

どうすればネットに真実と信頼を取り戻せるのかについて、やはりソーシャルメディア・プラットフォームを批判的に考察した本みたい。プラットフォーム企業が公共の利益を優先し、ジャーナリズムを修復し、信頼できるコンテンツを促進し、新たに健全なデジタル公共広場を作るべくキュレーションを強化することを謳っている。

今年に入って著者が Salon に寄稿した記事が本の内容なのだろう。

そういえばここで取り上げた本の著者はいずれも女性だが、イーサン・ザッカーマンはそういうフックアップを自分の役割と課しているのかもしれない。

ウィキペディア的に信頼できる/信頼できない情報源一覧が壮観だ

Wikipedia 英語版にはよくこんな情報をまとめているなと思うものがあったりするのだが、そうしたものをまた一つ知ってしまった。

Wikipedia:Reliable sources/Perennial sources だが、北村紗衣さんも書かれている通り、ノートでのディスカッションに沿ってまとめたリストなんですね。いわゆる一般的なニュースソースだけでなく、テック系、エンタメ系など網羅されていて壮観である。

基本的に歴史のあるニュースソースは信頼できることが多いが、いくら歴史はあってもデイリーメールや Sun はダメとか、まぁ、そうでしょうねという感じ。いわゆる CGM の点は総じて辛いが、これは百科事典の情報源としては構造上仕方ないよね。

よく見ると細かい分類がなされていて、Guardian 本体は信頼できるけど、Guardian のブログはそうじゃないよとか、ハフポストは政治以外では信頼できるけど、政治に関しては留保がいるし、寄稿ものはダメよとか区分があるものもある。

ワタシもデマサイトにひっかかったことがあるし、英語圏以外のニュースサイトは知らないことが多いので、例えばウクライナ方面の話題とか Twitter で取り上げる際にはこのページで参照したほうがいいのだろうな。

そういえば日本ファクトチェックセンターとやらが開設早々いろいろツッコミを受けているが、オカルト検証番組化するくらいなら、この「信頼できる/信頼できない情報源一覧情報」の日本語版のほうが意味があるのではないか。でも、それを作ろうとすると、それはそれでまた血を見ることになるかもしれないが。

今も開発が継続しているオープンソースのWikiソフトウェアは何があるか

少し前に仕事場のローカルに立てている、今や主力でなくなったウェブサーバに久しぶりにアクセスしたら、WikiPukiWiki なのに懐かしくなってこれまた久しぶりに公式サイトを見てみた。すると、今年バージョン1.5.4がリリースされており、開発は継続しているのに少し感動した。

かつてはそれこそ雨後の筍のごとく開発されていた Wiki ソフトウェア(エンジン、クローン)だが、Wiki が広義の開発環境の一つに統合されているのもあり、単体のソフトウェアとして今も開発が続いているところはだいぶ少なくなった印象がある。

果たして今も開発が継続しているオープンソースWiki ソフトウェアに何があるか、ざっと調べてみた。

具体的には、WikipediaComparison of wiki software に名前があるもので(それくらいの知名度があり)、オープンソース、なおかつ安定最新版が2022年中にリリースされたものである。

これは少し厳しい基準かもしれないが、もう今年も10月だしねぇ(早い……)。Wikipedia の情報が古いところもあり、だいたい以下の感じになる。

ソフトウェア名 最新版リリース日 ライセンス 言語
BlueSpice MediaWiki 2022-01-20 GPLv3 PHP
BookStack 2022-09-20 MIT PHP
DokuWiki 2022-07-31 GPLv2 PHP
Foswiki 2022-03-28 GPLv2 Perl
MediaWiki 2022-06-30 GPLv2 PHP
PhpWiki 2022-01-24 GPL PHP
PmWiki 2022-09-25 GPL PHP
PukiWiki 2022-03-30 GPLv2 PHP
Tiki Wiki CMS Groupware 2022-03-02 LGPLv2.1 PHP
Wiki.js 2022-05-23 AGPLv3 JavaScript
XWiki 2022-08-29 LGPL Java

というわけで、PukiWiki を含めて10個程度になるが、これを少ないとみるか、結構残っているとみるか。

この中で世界的にもっとも利用者が多いのは、Wikipedia でも利用されている MediaWiki に違いないが、それを除けば日本ではやはり PukiWiki だろう。この中で新興勢力と言えるのは、ワタシも2年前にブログで取り上げた Wiki.js ですかね。

プログラミング言語では、ウェブアプリなので PHP が圧倒的に優勢なのは予想通りだが、Python で書かれたものが皆無なのは意外だった。

そういえば今から20年前(!)、『Wiki Way コラボレーションツールWiki』刊行を受けて、ワタシは日本発の wiki クローンリスト日本発の wiki クローンリスト2を書いているが、そこで取り上げた中で今も開発が継続しているのは、PukiWiki を除けば WiLiKiGitHub)だけのようだ。

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