- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2004/11/26
- メディア: DVD
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映画館の大画面、大音量で観たいと思いながら都合がつかなかった映画である。なかなか楽しめたが、ただこれなら DVD でよかったかも。
本作は1990年のスパイク・アイランドでのストーン・ローゼズから始まり、オアシス、ブラー、パルプ、マッシヴ・アタックといったバンドに代表されるブリット・ポップの勃興、隆盛、そしてブームの終焉までを描いたドキュメンタリー映画。ブリット・ポップと今言うとバカにされるが、上に挙げたバンドはどれもワタシは現在も大好きである。
シェフィールド、コルチェスター、マンチェスターの町並みの映像とそこが生んだバンドの音を重ねるだけで背景を説明してしまうなど、本作はイギリスの階級社会についても最低限知識(鈴木あかねの『現代ロックの基礎知識』かその類書レベル)がないとピンとこないところがあるだろう。
11年に及んだサッチャー政権による沈滞とそれに対するブレア率いる労働党のイメージ戦略の話などある程度知っていた話が出てくるが、やはりノエルとリアム(雑誌で読んだ本作の監督のインタビューによると、インタビューにこぎつけるまでも、インタビューの現場でも一番苦労したのが奴らしい)のギャラガー兄弟、デーモン、ジャーヴィス・コッカーといった当事者が語る話は面白い("Live Forever" のイントロがストーンズの "Shine a Light" を参考にしてたのは知らなかった!)。
当時のラッド文化を牽引した雑誌 LOADED の初代編集長ジェームズ・ブラウン(彼はNMEの副編集長だった)が、あれさえうまくいけばと愚痴るのが英国人だが、あのときはそれが不思議なくらいうまくいった時代だったと回想している。
その彼が「俺たちは戦争に勝った」と感極まってアラン・マッギーに語りかけたオアシスのネブワースでの英国史上最大のライブでブリットポップは頂点を迎えるが、ヴァニティ・フェアの取材の場面にかかるレディオヘッドの "No Surprises"、ブレア政権とのかかわりに流れるパルプの "Glory Days" など音楽の使い方がいかにもで、物語も最後まで皮肉を感じる。
個人的にはスリーパーのルイーズ・ウェナーの毒舌に笑った。首相公邸に招かれたノエルに対して「あのとき彼はタマを切られたの」、ロビー・ウィリアムズの "Angels" を聴いて「あのときオアシスは終わったの」と言いたい放題。彼女は現在は音楽活動は止めて小説家に転身してるみたい。
ブリットポップというとオアシス vs ブラーの話題に触れざるをえないわけだが、パブでワインを飲みながら苦々しげに語るデーモンと、豪勢な椅子に座って「俺たちは労働者階級だから魂が純粋だ」とほざくノエルは見事な好対照をなしている。上記の通り、ワタシは彼らの両方とも好きなのだが、後世では現在とは違った評価が下されるだろう。いずれにしても、例のシングル戦争自体はブラーが勝ったことをこの映画だけ見たのでは分からないのはフェアじゃないと思った。