当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その14

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』については、もうそろそろ反応も出尽くしたのかもしれない、それならこのブログもまた無期限更新ステータスに戻ることになるのかなと思っていたのだが、いくつか新たに反応を見かけたので、宣伝のためにしつこく紹介させてもらう。

まずは Kenichi Murahashi さんのコメント。

もうすぐ絶滅するという開かれたweb〜 長く積んでたの読み始めた おもしろい こういうのかけたらかっこいいよなー

https://twitter.com/sanemat/status/1001727892257062912

いやー、書けてもうだつのあがらないこのザマですよ。コードで世界を変えるほうがどれだけ尊いか。

wired的な文章を読まなくなって久しいけどrssリーダー使わなくなってからそんなもんだよなあ

https://twitter.com/sanemat/status/1001732646068568064

グッドバイルック最後まで読んでしまった 読みふけってしまった

https://twitter.com/sanemat/status/1001975483066699776

この「最後まで読んでしまった」「読みふけってしまった」の「しまった」の繰り返しにいわく言いがたい感じが出ているようで、著者としては嬉しい(笑)。

続いては @eusuke さん。

これは僕ら世代にはどストライクに郷愁を誘うんだよなあ

https://twitter.com/eusuke/status/1002537524080795649

おそらくはボーナストラック「グッドバイ・ルック」のことを指していると思われる。「郷愁」と言われるとちょっとワタシもびびりますが(笑)。

言うの忘れてたけど、あとがきだけは読んどけよー

https://twitter.com/eusuke/status/1002544351723917314

そうです、本文→あとがき→ボーナストラックという順路に従って読むと、なにかしらの驚きがある、かも。

もうすぐ絶滅するという…を改めて読んでると、当時ダナ・ボイドには代表となる著書がなかったのだよなとか、色々思うとこはある

https://twitter.com/eusuke/status/1002552088889458689

確かに何年も連載やっていると、単著もなかった人が気鋭の存在になっていたり、その逆もあったりで、人に歴史ありとか思ってしまいますね。

今こそブラウザをChromeからFirefoxに乗り換えるべき理由

私はブラウザを Chrome から Firefox に乗り換えた。あなたたちもそうすべきだ、という文章だが、その根拠は何か?

ここでも持ち出されるのは、ユーザのデータを握るプラットフォーム企業の監視資本主義の話である。Chrome の開発元である Google もいうまでもなくプラットフォーム企業の一つであり、そこにインターネット利用におけるキンタマ握られる状態はまずいんじゃないのかというわけ。

その点、Mozilla 財団という非営利組織が開発元である Firefox は、プライバシーとセキュリティ重視の姿勢が、Chrome のプライバシーポリシーなんかと比較すると好ましいとのこと。

とはいえ、Firefox のデフォルトの検索エンジンGoogle であり、Mozilla はそれにより Google から資金を得ているわけだけど、それでもプライバシーファーストな姿勢を評価している。

この文章でも、Chrome の市場シェアが大きいため、ブラウザ拡張も Chrome 中心になってしまう Firefox 採用の難点に触れているが、Firefox のアドオンについては、ちょっといろいろ言いたくなるところがあるわな(ところで、Tab Mix Plus 使ってた人って何に乗り換えたのかな?)。

うーん、ワタシはいまどきかなりな少数派(現在のブラウザのシェアは、Chrome が約6割で Firefox は約1割らしい)の Firefox ユーザである。が、それは開発元が非営利組織というのもないわけではないが、正直に書けば、ワタシが長年の Firefox ユーザである理由は、一言で言えば、ワタシが極度のものぐさ、怠惰だからだったりする。

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)でも、「四天王」GAFA に代表される、プラットフォームを握るテック大企業の脅威についての本が完全に一つのトレンドであることを書いたが、果たしてその問題意識からブラウザを乗り換える人ってどれくらいいるんだろうねぇ。ワタシは Firefox ユーザだけど、そのあたり懐疑的である。

メアリー・ミーカーのインターネットトレンド報告によると、「自分のメリットになると分かれば消費者の79%は喜んで自分の個人情報を提供するそう」らしいしね。

ネタ元は Slashdot

ブラウザハック

ブラウザハック

ブロックチェーンと法の関係についての本が面白そうだ

ハーバード大学のバークマン・センターで、Blockchain and the Law という新刊についての共著者による講演会が行われているのを知る。

ここで講演している共著者の Primavera De Filippi が CoinDesk に寄稿した No Blockchain Is an Island をざっと読むと、この人もローレンス・レッシグ以降の研究者であることが分かる。ブロックチェーンの技術的な解説やビジネスの可能性についての本は既にいくつもあるが、「ブロックチェーンと法」という切り口は面白そうだ。

Blockchain and the Law: The Rule of Code

Blockchain and the Law: The Rule of Code

Blockchain and the Law: The Rule of Code (English Edition)

Blockchain and the Law: The Rule of Code (English Edition)

上で名前を挙げたローレンス・レッシグをはじめとして、『協力がつくる社会:ペンギンとリヴァイアサン』の邦訳があるヨハイ・ベンクラー、そして意外なところではブルース・シュナイアーといったビッグネームが推薦の言葉を寄せている。これは邦訳出るんじゃないかな。

ブロックチェーンと法」という切り口で本が書かれるのは初めてかと思ったのだが、調べてみると久保田隆『ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法』という本があるみたいね。

ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法

ブロックチェーンをめぐる実務・政策と法

ローレンス・レッシグ久方ぶりの新刊『America, Compromised』が今秋出る

上で Primavera De Filippi について「ローレンス・レッシグ以降の研究者」と書いたが、そういえばコリィ・ドクトロウが O’Reilly Fluent Conference での基調講演を前にして受けたインタビューで、今一度ローレンス・レッシグの教え、すなわち『CODE』で彼が規定した、以下の4つの人を動かす力を思い出すことを勧めている。

  1. アーキテクチャ(コード)
  2. 規範
  3. 市場

それが、コリィ・ドクトロウが言うところの「設定可能で自由なインターネット(configurable and free internet)」のために闘う上で必要という認識で、それは『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』とも共通する問題意識である。それはともかくとして、そういえばそろそろレッシグ先生の本とか出ないのかなと調べたら、今年の秋に出るようだ。

America, Compromised (Randy L. and Melvin R. Berlin Family Lectures)

America, Compromised (Randy L. and Melvin R. Berlin Family Lectures)

『Republic, Lost』の第二版から3年になるが、純粋な新刊となるとかなり久方ぶりである。シカゴ大学Randy L. and Melvin R. Berlin Family Lectures の依頼を受けて書いた本みたい。

残念ながら、と書いてはいけないのだろうが、「Five Studies in Institutional Corruption」という副題を見ても分かる通り、本の主題はデジタルフリーダム周りではなく、彼の現在の研究テーマである「(特にアメリカにおける)腐敗と民主主義の危機」である。『Republic, Lost』同様、この本も邦訳は難しいのでしょうな。

さて、レッシグ先生の最近の講演となると、TEDx でいくつか行っている。いずれにも日本語字幕版はないようだが、レッシグ先生は講演の名手で聞きやすいし、字幕をつければなんとかなるでしょう。



いずれにしても民主主義と平等がテーマであり、新刊の内容にも反映されているのだろう。しかし、レッシグが「ネットはいかに民主主義を破壊したか」というタイトルの講演をやるとは! これだけ見るとアンドリュー・キーンの本のタイトルみたいやないか。

犬ヶ島

ウェス・アンダーソンのストップアニメーション映画というと、『ファンタスティック Mr.FOX』がすごく評価が高いのだけど、ワタシはなぜかあれが肌に合わなくて、正直彼のストップアニメーション映画はパスしたかったのだが、当代最高の映像作家の一人である彼の新作はやはり映画館で観ようと足を運んだ次第である。

ウェス・アンダーソンというと、強力なヴィジュアルコントロールで知られ、前作『グランド・ブダペスト・ホテル』はその一つの極みともいえるし、それがパロディの対象にもなってからかなり経つくらいである。本作では、作品のこぎれいさにつながりがちなヴィジュアルコントロールは排されており、美しさが失われたヴィジュアルの中で作品が展開するところに、紛れもなく彼の映像作品でありながら、さらに上を目指す感じがあってすごいなと思った。

多分映画としては、『ファンタスティック Mr.FOX』のほうが上なのかもしれないが、個人的には題材的にも本作のほうがよかった。ただし、ワタシが観たのが字幕版なこともあってか、劇中頻繁に登場する日本語を英語字幕で読み、さらに頭の中で日本語にまた訳してしまうような感じがあって(ちょっと説明しにくいですが)、観ていてヘンに疲れたところもある。

本作については、描かれる日本がステレオタイプだとか「ホワイト・ウォッシング」といった批判があるそうだが……バカですか? つーか、本作に描かれる「日本」が実在しない、監督の頭の中にある架空の存在であることが分からない人は映画鑑賞自体に向いていないのではないか。くだらない。この手の指摘って、最終的に自分たちの首を絞めることになるのが分からないのかな。

むしろ本作を観ていて、ウェス・アンダーソンは日本の現在の政治状況について特に知識がないはずだが、そういうのにリンクして観てしまう自分にいささか当惑した。これこそ(監督の)想像力の力だと思う。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2023 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)