ちょー有名な映画であるが、実はちゃんと観たことがなかった。大体アカデミー賞8部門受賞とかさ、大作に対する名誉賞みたいなもんだろ。モーツアルトの映画? つーことはリチャード・アッテンボローのような伝記ものかい? …とナメていたのだ。また「ディレクターズカット」が一般公開版よりも良いことは少ないものである(もちろん例外もいくつもあるが)。
しかし、何より本作の元となった戯曲がそんな単純なものでないことも知るところとなり、昨年公開されたディレクターズカットの評判を聞いていたところにたまたま Amazon.co.jp で DVD が15%割り引き対象だったので購入したのだが、これは確かに傑作である。映画というものの頂点の一つじゃないかしら(と書くと映画フリークに笑われるかもしれんが)。
前述の通り、当方は劇場公開版より20分長いディレクターズカットしか観ていないわけだが、ワタシからすれば、これの一体どこをカットしたんじゃ、どこにも余計な場面などなかっただろうが! という感じである。180分ひたすらスリリングで、少しも冗長や退屈を感じない。個人的にはあと30分ぐらいあってもよかったくらいだ(無茶か)。
主役の二人、モーツアルト役のトム・ハルス、サリエリ役のF・マーレイ・エイブラハムの演技が良いわけだが、ハルスの耳に残る笑い方に代表される下品な役作りは度胸がいったろうね。そのせいでオスカーをエイブラハムに持って行かれたのだろうけど、もちろんエイブラハムの演技も特に老人の演技が良い。目の動き、仕草、喋り方のいずれにも老人独特の嫌らしさが出ていて、特殊メイクに頼りっきりじゃない。当たり前だけどそれが役者の仕事なんだよね。
見所満載の映画だが、やはり最終盤のレクイエムを二人で完成させる場面は、メイキングで原作者、脚本のピーター・シェイファーが、下手すれば映画をぶち壊しにする可能性があったと語るところで、トム・ハルスが語るアドリブの駆け引きも含め、皆が全力を尽くしたのだと分かる。しかし、それでも一番の主役はモーツアルトの音楽だったりする。
疲れたので今日はここまで。