帰ってきた「Amazon980円劇場」。
本作は、ロキシー・ミュージックのラストアルバムにして、有終の美を飾る最高傑作である。バンドのキャリアを頂点でキレイに終わらせるというのは相当に難しいもので*1、そうした意味でもフェリーさんは見事だった。
ただ、はじめてロキシーを聴く人には、本作はお勧めしない。
アルバムを順番に買えというのもふざけた話だし、第一ワタシだって全作聴いてやしない(笑)。はじめての人はとりあえずベスト盤から入り、自分の好みに合う時代のディスクを聴けばよいのではないだろうか。要は、ロキシーは初期と後期では表面上かなり振幅があるということである。
初期のアヴァンギャルドさを知るものからすると、本作の破綻のなさに物足りなさを感じるかもしれない。アルバム全体の整合性が重視され、前作の "Oh Yeah" のように激烈に酔える情緒的な曲にも欠ける。しかし、本作はフェリーさんが一貫して追求してきたものの極点には違いない。アーサー王が死後赴いた地の名をタイトルに冠し、冒頭を飾る "More Than This"*2において、"More than this - there is nothing" と宣言していることからも、フェリーさんの自信が伺える。実際、本作の音は緻密なだけでなく、伸びやかさと瑞々しさがあり素晴らしい*3。
もっともサウンドが洗練されるにつれ、バンド的にはアンディー・ニューマークをはじめとする達者なセッション陣のスリックさと、フィル・マンゼネラとアンディ・マッケイのオリジナルメンバー組のアイデア勝負加減のバランスがギリギリになっており、別の意味でも飽和状態だったのかなとも思う。
個人的にはやはりタイトル曲が一番好きで、好きな女性にテープを作って送るときによく入れたものである*4。そして本作の最後をしめるマッケイのサックスソロ "Tara"*5にもお世話になったなぁ。ああしたテープの場合、時間いっぱい入れたいわけで、ちょうどテープの最後に2分程度の小品は便利だったわけである。
さて、以前にも書いたが、アナログ盤サイズだと息を呑むほど美しいジャケットに写っているのは、本作発表前後にフェリーさんと結婚したルーシー・ヘルモア嬢で、顔を出さなかったのは、ジェリー・ホールのときの失敗*6を反省したものと思われる……などと書くとフェリーさんは怒るだろうが、みんな少しは思ったはずだ!