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Talking Heads "Little Creatures"

CDジャケット

WIRED と Creative Commons が主催したチャリティコンサートにデビッド・バーンが登場しているのを見て、久しぶりにトーキングヘッズが聴きたくなった。

何といってもかつてある音楽誌が、「ロキシーミュージック崩壊から、U2『Joshua Tree』を発表するまでの世界最高のバンド」と評したバンドである。この評言はバーンもお気に入りのもので、個人的には(言いすぎ?)を付けてほしいところではあるとしても、80年代を代表するロックバンドには違いない。

正直現在のバーンはポップミュージックの最前線にいる人ではないが、今年になってヘッズのライブ盤が再発され、また新しいベスト盤の邦盤も出るようなので、新しいファンが増えるといいなと思う。

さて、ヘッズのアルバムから何を選ぼうと考え、個人的にははじめて自腹で聴いたアルバムにしてラストアルバムの『Naked』*1も捨てがたかったが、本作にした。

トーキングヘッズというと、「ロック史に残る問題作」などと言われた『Remain in Light』に代表されるインテリ的文脈で語られることが多いが、その本質はやはりバーンの一種ナイーブですらある楽曲であり、ゲストの導入が一段落つきオーソドックスなバンド編成に戻った本作は、そうした意味ではじめて聴くのに適した作品だと思う。ポップ過ぎるという批判もあったが、日本でも確か車の CM に使われた "Road To Nowhere" などやはり良い曲だよ。

しかし個人的には、是非ライブ映画『Stop Making Sense』を観てほしいと思うのですな。これは最もライブバンドとして脂がのっていたヘッズをとらえた映像作品としても素晴らしい*2のはもちろんだが、いきなりバーンがカセットレコーダとアコギで弾き語る "Psycho Killer" のスリリングさには鳥肌が立ち……と『Stop Making Sense』について書き出すと止まらないのだが、一方でこれを観ると、デビッド・バーンという人は、つくづく80年代的なポップスターだったのだなぁと思ったりもする。

こういう粗雑なまとめ方がよくないのは承知しているが、"Once in the Lifetime" の痙攣ダンスなどまさにそういう佇まいだし、バンドのシャープな演奏、素晴らしく工夫に満ちたライティング、そしてバーンのデカスーツが渾然となった "Girlfriend is better" はロックバンドのライブの映像作品の中で屈指のものだと思うが、映画タイトルの『Stop Making Sense』はこの曲の歌詞からとられているが、実際にはこのライブのために振付師がいたという段取り君ぶりとか。

バーンがそうしたポップスター像から自由になれたのはソロ転向後なのだが、そのときにはポップミュージシャンとしての旬も過ぎていた。これもポップミュージックの皮肉である……とは言いすぎか?

*1:ジャケットはジョージ・ブッシュをイメージしたもの……と書くと本気にする人がいそうだ

*2:監督は『羊たちの沈黙』、『フィラデルフィア』のジョナサン・デミ

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