年齢の組み合わせといい、女性の苗字が「翁」がつくことといい、これが CNN でなかったら絶対ネタだと思っただろう(おいおい)。
さて、ノーベル賞受賞者の老いらくの恋というと真っ先に思い浮かぶのは、1950年のノーベル文学賞受賞者バートランド・ラッセル(論理学者、数学者、哲学者)の逸話である。以下、バートランド・ラッセルのページ(分館:Cool Online):加藤尚武「全数学の論理学化」から引用。
...最後の結婚をした時、ラッセルは八十歳だった。相手は大学教授をしたこともあるイーデス・フィンチで、端正な感じの人である。
ラッセルがイーデスと恋をしている頃、ヴィトゲンシュタインは癌の病状が悪化して、放浪生活の足を洗ってイギリスに戻って来ていた。
――ラッセルの『偽叙伝』にはこう書かれている。ヴィトゲンシュタインを見舞ったラッセルは、話のついでに、イーデスとの恋を告白し、そして、
「私はもうそろそろ八十歳だが、二十歳ほど若く見せる方法はないだろうか」
と老いらくの恋の悩みを打ちあけた。病的なほど潔癖なヴィトゲンシュタインは、その言葉をきくと、怒りに燃えたような目でラッセルを見すえた。ラッセルはパイプをくゆらせている。その手には、深いしわが刻まれている。「ああ、ラッセルも老いた。自分も死の床にある。」 ウィトゲンシュタインの心が少しやわらいだ。そして言った。
「貴方は数学者でしょう。答えはすぐに出せるはずです。八十歳の貴方がイーデスに二十歳若く見られたいなら、「自分は百歳だ」と言えばいいのです。」
あ、これラッセルというよりヴィトゲンシュタインの話ですね。デレク・ジャーマンのほぼ最後の映画である『ヴィトゲンシュタイン』におけるラッセルは、さほど精力的な人物に描かれてなかったが。