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「発明と報酬」問題と味の素知財センター長の見解

日経産業新聞に「発明と報酬」という連載がある。内容は職務発明の対価を巡る技術者・研究者と企業の訴訟を含む対立を扱ったものである。

この問題については、今年もいろいろなところで取り上げられた。以前の話になるが、ひらばやしさんのインタビューも掲載されていた月刊化学2004年5月号の特集は「緊急特集「中村裁判」ショック!!」で、それを読んでなんとも切ない心持ちになったのだが、当方は技術者の端くれなので、やはり技術者・研究者側に肩入れしてしまうところがあるだろう。

また個々の事例をひとまとめにできるわけはなく、単純に「企業は研究者にもっと報いろ」式の結論を導き出せるものでもなく、慎重に語らなければならないというのも承知している。

ただそれとは別に、個人的に以前から気になっていることがあり、それは研究者が語れば語るほど DQN に見える場面があることだ。これは中村修二氏に顕著……というか主に彼なのだが、最近になればなるほどその傾向が強まっているように思える。メディアの伝え方の問題もあるに違いないのだが、一体どうしたものかと思うときがある。

12月17日の日経産業新聞は、甘味料「アスパルチーム」の特許の対価を求めた訴訟を取り上げており、味の素株式会社から和解金一億五千万円を受け取った元エンジニアの成瀬昌芳氏のインタビューは、「折り目正しい口調で今の心境を語り始めた」という文章で始まるのだが、これは前述の風潮を踏まえたものかと勝手に気を回したほどだ。

ただ、被告の味の素は、和解金一億五千万円を発明の対価と認めてはいない。まあ、それはよい。しかし、知財センター長杉崎宏光氏の以下の発言は容認しがたい。

彼はこれだけ処遇を受け、長年ご奉公した会社に弓を引くようなことをした。人生も友達も失ったはずだ。もっと不遇な研究者であれば同情されるかもしれないが。まねをするような人は少ないと思う

「長年ご奉公した」とはいったいいつの時代の話か。それとも味の素の社員にとっては、こうした認識がごく一般的なのだろうか。

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