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The Band "Music from Big Pink"

CDジャケット

忘れた頃にAmazon980円劇場。

時の流れを越えた名盤、といった表現を時折見かけるが、真にその形容に足る作品は少ない。実際には、そうした言葉を書く人間が、自身の感性の老化を認めたくない場合もあるのではないか。

The Band の記念すべきファーストアルバム、これも「時の流れを越えた名盤」に入るだろう。しかし、本作をそのような言葉で神棚に奉って終わりにすべきではない。

本作をはじめとする The Band のアルバムは、とっくに「ロックの古典」扱いされており、実際、現在ではそれに違和感はない。しかし The Band の作る音は、本作がリリースされた1968年当時から異質さを持っていたのではないか。前年はサマー・オブ・ラブなどといわれ、翌年の69年には彼らが居を構えていたウッドストックで歴史に残るロックフェスティバルが開かれる。その浮かれた時代にこのハナからクラシックの風格さえ持った音、その深さはボブ・ディランとの交流といった背景だけから導き出せるものではない。クリーム解散後のクラプトンが、真っ先にウッドストックに飛び、彼らに会いに行ったというのも、ルーツミュージック志向と同時にある種の異質さを感じ取ったからではないか。

それそのものは新しさを感じないのに、どこか常にレイテストな音とつながる回路を持った音というのがある。ワタシの場合、それを最も感じるのはライ・クーダーザ・バンドだったりする。これを読んで笑われる人もいるだろうが、実際感じるのだから仕方がない。

ライ・クーダーは、まだそのギターの鋭角さを挙げることで説明しやすい。しかし、ザ・バンドのほうは、自分でもうまく説明できない。実際、ぱっと聴いただけでは古臭くさえある音である。だが、彼らの音には忘れた頃に何度も驚かされてきた。

そうした彼らのアルバムでは、本作とセカンドアルバムが最高傑作とされるが、全曲ロビー・ロバートソンの手によるセカンドよりもまだメンバー間の力関係が定まってなかった本作のほうがワタシは好きだ。

何より一曲目がリチャード・マニュエル(1986年に自殺)とディランの共作 "Tears of Rage(怒りの涙)" というのが卑怯すぎる。そしてこれは確かピーター・バラカンも書いていたと思うが、本作のハイライトである名曲 "The Weight"、ワタシは何度聴いてもこの曲の歌詞の意味が分からない。彼らの作品には、未だ何かしら謎が残っているのだ。

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