それにしても「3大ギタリスト」と称されるエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、そしてジミー・ペイジ(オバQ)が公の場に揃い踏みなんて極めて珍しいことで、何だかんだいって女王陛下ってのはエゲレス人にとって特別な存在なんかいなと思う。
この三人が同じステージで演奏したというと、実際はいろいろあるのだろうけど、1983年に開かれた ARMS コンサートぐらいしかワタシには思い出せない。
これは多発性脳脊髄硬化症(ARMS というのはその略)を患っていた元(スモール・)フェイセズのベーシスト、ロニー・レーンを支援するために開かれたもので、彼の人脈と人柄を反映した同世代ミュージシャンの豪華共演が実現したわけだが、3大ギタリスト揃い踏みには面白い経緯がある。
とある業界のパーティで、「ストーンズ6番目のメンバー」イアン・スチュアートが熱心にジェフ・ベックに出演を依頼したのだが、ベックの隣でその話を聞いていたジミー・ペイジは、思わず腹立たしげに口を挟んだ。
「誰も僕を誘ってくれないんだな。僕が出ると何かまずいことでもあるのかい」
イアン・スチュアートは慌てて言った。「もちろんそんなことはないよ。君も出てくれよ」
これは『レッド・ツェッペリン物語』に出てくる話だが、ジミー・ペイジの仲間内の信望の度合いが分かる。そうしたところも含め、ワタシはこの話もジミーも大好きだ。
でも、ジミーがむっとしたのも分かる気はする。外部のミュージシャンをレコーディングに介在させなかったツェッペリンにおいて、イアン・スチュワートはその数少ない例外だからだ。例えば、彼らの代表曲である "Rock And Roll"(『Led Zeppelin IV』に収録)でブギピアノを弾いているのが彼だし、『Physical Graffiti』にはズバリ "Boogie with Stu" という曲がある。
イアン・スチュワートは、デビュー時に「ルックスが他のメンバーと合わない」という理由でストーンズのメンバーから外され、しかしレコーディング、ツアーに関わり続け、前述の通り「ストーンズ6番目のメンバー」と呼ばれた人である。ストーンズのツアーは彼がゴルフができるようホテルが選ばれたという逸話もあるが、自分の立場をどのように考えていたのだろうか。
ARMS コンサートで支援される側だったロニー・レーンが1997年まで生きたのに対し、イアン・スチュワートが1985年に心臓発作でこの世を去ったのは皮肉である。彼の葬儀にはストーンズのメンバー全員に加え、クラプトン、ベックが参列している。
あ、ジミーさんは……