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宇宙戦争

宇宙戦争 [DVD]

宇宙戦争 [DVD]

スクリーンで観なければ、と思いながらも見そびれていた映画。

いや、これはすごい。こんなに楽しくない娯楽映画の成功作は初めてだ。

ウェルズの100年以上前に書かれた原作を比較的そのまま活かし、しかも冒頭には仰々しいナレーションを入れるなどB級映画的な設定を準拠枠にして、B級映画作家スピルバーグが好きに作っている。

スピルバーグトム・クルーズの組み合わせでは、明らかに『マイノリティ・リポート』(asin:B000BX4AKM)のほうが力が入っていたが、映画としての出来は図らずもさくさくっと短期間で作ったこっちのほうが上。

やはりこの映画にも9.11テロの爪痕が刻まれているわけで、それは主人公の息子の台詞やティム・ロビンスの「世界最強の国が、二日でこのザマだ」といった台詞に出ているわけだが、むしろ本作により仮想体験できるのは、アメリカにより蹂躙された国々の人たちの戦争体験に近いのではないか。

訳の分からないうちに戦争に巻き込まれ、周りで殺戮が行われる中ヒーローはおろか主体的な成果を挙げることすらほとんどなく右往左往し(呆然と見送るしかない燃えながら暴走する電車!)、そして豪勢なスペクタクル展開の後によく分からないままに戦争は終わっているというカタルシスのなさ、それを飽くまで家族からも信頼されない無力な主人公の視点から描いているのだから息苦しさすら感じるほどである。ラストにしても何の説明もなく息子が戻っていたり、別れた妻側の家族は誰も犠牲になっていないなど、スピルバーグの悪意がびしばし決まっている。

しかし、これを映画館で観ていたら打ちひしがれただろうな。DVD で観て正解だったかもしれない。

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