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潜水服は蝶の夢を見る

雑誌 Elle の編集長だった主人公が突然の脳梗塞で Locked in Syndrome となるものの、左目のまばたきだけで自伝を書き上げる……というあらすじは聞いていて、たるい映画なのではないかと予想していた。

しかし、実に質素なオープニングタイトルから受ける印象に反して、観客に主人公の感覚を追体験させながら(右目の縫合にはうわっとなったな)、貧乏くさくなく豊かな気持ちにさせてくれる映画である。

言うまでもなく主人公が置かれた状況は大変なものなのだが、意外にも安心して観ていられた。これがフランスでなくアメリカだったらどうだったろう、と医療福祉との兼ね合いについて後から思った。

想像力と記憶という主人公に残された二つの武器を見事に映像化した作品で、ジュリアン・シュナーベルがこういう映画を撮るところまでくると予想した人はいなかっただろう。他の形態に還元しえない映画的時間を満喫させてもらった。スピルバーグ映画でおなじみヤヌス・カミンスキーの撮影手腕も冴え渡っている。

ただルルド(の泉で知られてますね)の名前が出てきてちょっとアレな感じになったところで、主人公の回想に U2 の "Ultra Violet(Light My Way)" がけたたましく重なったとき、思い切り不快になった。"Ultra Violet" が嫌いならともかく、曲自体はむしろ好きなだけに、自分の反応に驚いた。その後ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの "Pale Blue Eyes" が流れ出したときは一瞬席を立とうかとすら思ったが、シュナーベルはあの曲のメロディーだけが欲しかったようで、歌は使わない節度があってほっとした。一方で、アクが強いイメージがあるトム・ウェイツは映像にしっくりなじんでいて、この違いは何なのだろうと不思議に思った。

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