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レイチェルの結婚

ジョナサン・デミというとオスカーを総なめした『羊たちの沈黙』、そして驚異の『ストップ・メイキング・センス』というワタシも大好きな映画の監督だが、彼の作品を映画館で観るのは今回が初めて。

本作はエンドロールで、ロジャー・コーマンシドニー・ルメットニール・ヤングロバート・アルトマンに感謝が捧げられている(あともう一人名前があったはずだが見逃した。御存知の方教えてください)。

ロジャー・コーマンジョナサン・デミの師匠筋にあたり、『羊たちの沈黙』同様本作にも出演している。シドニー・ルメットの名前は意外だったが、本作の脚本は彼の娘さんが書いてるのね。ジョナサン・デミニール・ヤングのコンサート映画を撮っているし、劇中彼の "Unknown Legend" が意外な形で美しく使われている。そしてロバート・アルトマンの名前が出るのは、本作が彼の『ナッシュビル』や『ウェディング』を意識しているのか。

本作はタイトルの通りレイチェルの結婚式が舞台となるが、主人公はレイチェルではなく、アン・ハサウェイ演じる妹のキムである。ジョナサン・デミはやはり女性ホルモン過多の映画を撮るほうが良いようだ。

本作はキムが姉の結婚式のために「施設」から退院するところからはじまる。迎えにきた父親との車中の会話から徐々に彼女と家族の関係が浮かび上がるのだが、本作の不安定でドキュメンタリータッチのカメラワークは、危ういバランスを保とうとする家族の関係を覗き込むような効果を狙ったものだろう。

上でアルトマンの『ウェディング』を挙げたが、本作のトーンはあれよりシリアスかつフラジャイルで、レイチェルの結婚式の準備と平行として少しずつ明かされるキムの過去があり、また彼女たち家族が結婚式を無事に乗り越えられるかということで最後まで緊張が続く。

レイチェルの結婚相手は黒人で異人種間の結婚なのだが、それ自体が物語にまったく緊張を持ち込まないところが興味深かった。そして結婚式は(上に挙げた "Unknown Legend" を含め)多様な音楽に彩られていて、簡素なオープニングタイトルでロビン・ヒッチコックの名前を見かけたときは何かの間違いだろうと思ったら、本当に彼が出てきて歌いだしたのは驚いた。

ただその音楽劇と家族の物語がうまく相乗効果をあげているかというと正直分からなくて、最後も曖昧な印象があった。

アン・ハサウェイも熱演だったけど、レイチェル、そして何よりお父さん役が個人的には良かった。

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