おじいちゃんの書斎の本にそっとはさまれていた感動のメモの話にはワタシもほろりときてしまったが、それで思い出した話がある。
あるとき井上ひさしが古本屋で一冊の本を買ったときの話だ。その古本を読んでみるといろんなところに傍線が引かれていたというのだ。
それはよいのだが、問題はその傍線がことごとく「見当違い」であること。大事なところに限って線が引かれてないのに、どうでもいいところばかりに傍線が引かれている。
この本を売った奴は馬鹿じゃないか? 何も分かっていない、と呆れながらページをめくったらメモが落ちてきた。その紙片には、「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングの歌詞の草稿が書かれていた。
そう、その本を売ったのは、井上ひさし本人だったのだ!
井上ひさしは、自分はこの本に復讐されたと反省した。この本は、自分に過去の自分自身を馬鹿だと言わせたのだ。
ワタシがこの話を知ったのは、廃墟通信の「処分本の復讐」である。