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中島哲也監督の作品を映画館で観るのは『嫌われ松子の一生』、『パコと魔法の絵本』に続いてで……というより新作が出たら映画館で観ることに決めている監督さんである。かなり良いという話を聞いていたので、公開初日の朝イチから観てきた。結果……絶句というか、凄かった。
まさかいないとは思うが、『松子』や『パコ』の流れから「泣ける映画」とか勘違いして観に行くと大惨事になるので、是非カップルで観に行って気まずい思いをしてください(笑)
湊かなえの原作は未読なので、それと比較した話は書けない。原作の書評も過去いくつか読んでいたが、中学校の女教師が事故死したとされる愛娘が実は自分の教え子に殺されたと告白する、という基本設定以外忘れていた。本作のような作品は事前知識をいれずに観たほうがよいと思うし、ワタシの場合それがよかったと思う。
本作でも中島哲也らしい人工的な映像美は見事である。ただ色彩豊かだった『松子』や『パコ』と対照的に本作は冷たくどんよりとしたグレーが支配的で、しかし邦画にありがちな貧乏臭さは皆無である。不穏なオープニングから最後まで本作は映像的な毒を強く感じる。
前述の通り、ワタシは原作を読んでないので、女教師の森口が犯人を特定するまでが長いのかなと勝手に思っていたがそれはあっさりと語られ、森口は映画から退出する。その後、教え子の美月による彼女への呼びかけの形でストーリーが語られるので、以後は少年たちが主で森口は物語を俯瞰する絶対者の立場なのかなと思ったら、そうではなく彼女は再び登場し、犯人の少年たちへの復讐を完遂しようとする。
その森口を演じているのが松たか子で、彼女の棒読みに近い淡々とした口調は、第二次性徴期に達し、とても教師一人では威圧できない生徒たちが好き勝手に振る舞う中で培われた感じがよく出ていると思った。オープニングの教室の場面は観ていてめまいがしそうだったが、しかしここは下手すれば陳腐になってしまいそうなハードルの高いところでもあり、それを彼女のこの孤独さを湛えた語りが牽引している。
しかし、彼女や木村佳乃といったワタシより年下の女優さんが母親役を演じるのをみると(しかも木村佳乃は中学生の母親役!)自分も歳をとったなぁと思っちゃう。
本作でも『松子』で多用されていた、同じ映像について複数の登場人物に別の角度から語らせる手法が大きな効果をあげているが、『松子』のときよりそれから受ける印象は遥かにブラックで、結果として登場人物の誰にも心から共感できない傑作ができあがっている。
ただ本作で下村についての描写がコミカルになるところがあり、中島監督らしい演出とも言えるが、本作においては余計だったと思う。
- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
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