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望むと望まざるにかかわらず、『デジタル音楽の行方』の方向に進んでいるのだ

メジャーレーベルの一つである EMI が、単なる音楽レーベルから包括的な権利管理企業に生まれ変わる方向に舵を切ったことについての文章である。

『デジタル音楽の行方』を5年前に訳したワタシからすると、ようやくメジャーレーベルがこの本の主張に沿って動きだしたのだなと感慨深いものがある。

以下『デジタル音楽の行方』の191-192ページから引用する。シリコンバレー101の記事で EMI の新 CEO として紹介されている Roger Faxon は、当時 CFO だった。

 ビジネスに精通したレコード会社がいかにして荒海に向かって航行していくかはまだ分からない。うまくやり遂げるところもあれば、そうでないところもあるだろう。一例を挙げれば、EMIは明らかにフレッシュで創造的に未来を考えている。CFOのロジャー・ファクソンはCFO.comで以下のように語っている(二〇〇二年二月)。

レコード産業はこれまで製品だけに注力してきた。しかし、現実にはレコード産業は音楽だけのものではなくなっている。いかにして音楽を消費者に届けるか、いかにして消費者に製品にワクワクしてもらうかが重要だ。それは大きな飛躍には見えないかもしれないが、我々のビジネスのコンセプトの変化は大規模なものになる。我々は消費者に向かい合わないといけないというのが私の考えだ。それは我々がクリエイティブでなくていいということじゃなくて、我々は(自分達のビジネスが)消費者の情況にどのように合致するか理解しなくてはならないということだ。「出来のいい音楽を作れば、お客はやってくる」というのはもう通用しない。

 EMIはかねてより新しいビジネスモデルを開拓しつつあり、新しいデジタル配信に音楽を積極的にライセンスしたメジャーレーベルの一つである。EMIはシンガーのロビー・ウィリアムスと大変独創的な契約を結んだ――従来のレコーディング契約を遥かに越える内容を含む契約である。それにはウィリアムスのツアー、出版、そしてマーチャンダイジング活動への参加も含まれた。EMIはロビー・ウィリアムスのミュージシャンビジネスのパートナーとなり、アジアやその他の地域のアーティストと同様の契約を結ぶ数が増えている。そうすることで、将来の収益を得る道筋をつけておくのに役立っている。

大変恥ずかしい話なのだが、『デジタル音楽の行方』刊行当時、ワタシはこの本がガチで売れると思っていて、版元から送られてきた売り上げデータをみたときは文字通り震え上がり、担当編集者に土下座したくなったものだ。

最近も白田秀彰総統からありがたいお言葉をいただいたが、ワタシの力不足も多分にあるとはいえ残念なことである。

デジタル音楽の行方

デジタル音楽の行方

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