- 出版社/メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
- 発売日: 2004/07/23
- メディア: DVD
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以前ブレイディみかこさんがこの映画を激賞しているのを読んで以来観ようと思いながら、つい最近まで日本でも DVD がレンタルできるのに気付かなかった。
本作は、1972年1月30日に北アイルランドのデリーで起きた血の日曜日事件を描く映画で、この事件については(本作でも最後に流れる)U2 の "Sunday Bloody Sunday" を通して日本でも知られているのかな。
イギリスのアイルランド支配についてのワタシの知識は乏しく、ケン・ローチの映画などにより、その相当なえげつなさを垣間見ている程度だが、この事件もそうした背景についての知識がある程度欠かせないでしょうね(だからワタシが見落としたポイントはいくつもあるはず)。
住民の大半はカトリック系だけどデモを主導した下院議員アイヴァン・クーパーはプロテスタントで、彼自身両方の住民の融和とキング牧師のような公民権運動のヒーローになることを目指す若き野心のある政治家だった。本作は彼と、デリーに住む血気盛んな平凡な若者を中心に、イギリス人のために働く人間への敵視、この話題で欠かせない IRA という存在の絡み合いを簡潔に活写しながら、映画は悲劇の日を迎える。
この映画の優れたところは、北アイルランド側だけでなく、イギリス軍がどういう方針でデモに接し、結果として「ボグサイドの虐殺」に至ったか詳細に描いているところ。
映画は全編通してクレーンなど排した手持ちカメラによるドキュメンタリーのようなザラついた映像でとられていて、臨場感が半端ない。本作を観ると、監督であるポール・グリーングラスが、後に同じく政治的に難しさを孕む問題を扱った『ユナイテッド93』をものにできたのか分かるような気がする。
本作は血の日曜日事件から30年後にテレビ放映されたが、イギリス首相が公式に事件のことを謝罪したのは昨年(!)だったりする。事件による死者の半数は未成年で、バリケードを見て興奮してイギリス軍と小競り合いを起こした血気盛んな若者たちだろう。彼らにはじまり、へっぴり腰のおっさんまでもがぶち殺される場面の容赦なさ、そしてそれが終わった後のアイヴァン・クーパーの顔に浮かぶ喪失感が雄弁だった。