ここで紹介されている元野球選手のカールトン・フィスクとライターのロジャー・エンジェルの会話が面白い。
2000年代のあるとき、エンジェルがフィスクに尋ねる。あなたがプレイしていた頃と野球を変えたものは何だろう? 高給だろうか? 薬物だろうか?
それを否定したフィスクが挙げた答えは意外なものだった。ビデオ再生(instant replay)だと言うのだ。上でリンクした Wikipedia のページにも記述がある1975年のワールドシリーズ第6戦におけるフィスクのホームランは、アメリカのあらゆるスポーツの中で最も記憶されている場面の一つであり、その動画はもっとも多く再生されたものの一つである。
フィスク自身も大リーグ史上語り草になっているホームランの動画を何度も見ているだろうと思いきや、彼自身はそのビデオを一度も見たことがないという。何故か? その当事者である自分の記憶を上書きしたくないというのだ。それを受けて Jon Udell は書く。
我々はビデオ再生なしではいられないし、そうしたいとも思わない。しかし、たとえそれが別のところで記録されているのは分かっていても、あたかも唯一のカメラが我々の手にあるという気持ちで生きるのを忘れないほうがよい。
先月の文化系トークラジオ Life のテーマ「何のためのアーカイブ?」との絡みでちょっと考えてしまう話である。
ネタ元は Rough Type。
[2012年2月6日追記]:八木の野郎の指摘を受け、引用部の訳文を修正。
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