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天才が意図的に作ったクソアルバム5選(でも実はそれほどひどくない)

これは面白い企画である。長いポップ音楽の歴史では(主にレコード会社との軋轢が基で)ミュージシャンが意図して駄作を作る結果となった作品がいくつかある。この記事では、マーヴィン・ゲイが、レーベルと元妻に印税を巻き上げられると分かっていたので『離婚伝説』(このアルバムは邦題で書きたい)を駄作にした都市伝説が紹介されているが、天才が意図的に作ったクソアルバムの代表5枚は以下の通り。

5. Prince, Chaos and Disorder

Chaos & Disorder

Chaos & Disorder

これは殿下がワーナー最後のアルバムで、この何年も前から改名するとかリリース方法で揉めに揉めており、顔に「SLAVE(奴隷)」と描くなどの行為を含め、正直ファンとして当時はうんざりしていた。

ロキノンに載ったワーナーの担当者座談会でも、この当時の来日時はワーナーとの関係が最悪なので、担当者はワーナーの人間と名乗れなかったとか言っていたっけ。

このアルバムは確か非常に短時間のレコーディングで作られたはずで、かなり荒い作品だし、そのあたりタイトルにも出ている。

Lou Reed, Metal Machine Music

Metal Machine Music

Metal Machine Music

えーっと、このアルバムについては「でも実はそれほどひどくない」という但し書きは必要ない、正真正銘のクソだと思います。だって、アナログ2枚組にわたりひたすらギターノイズのみ、ですから。

ただ本人はこのアルバムを会社名にしたり、近年もライブ盤をリリースしたり、リマスターしてオンライン販売したり、愛着があるようだ。困ったオヤジである。

3. Mike Oldfield, Amarok

AMAROK-REMASTERED

AMAROK-REMASTERED

彼がデビュー時から在籍したヴァージンレコードでの最後から2番目のアルバムである。

今では知らない人も多いのだろうが、ヴァージンレコードから最初にリリースされたアルバムがマイク・オールドフィールドの『Tubular Bells』で、この2000回のダビング、5回のリマスタリングを経て偏執狂的に作られたアルバムが世界的に大ヒットしたことでリチャード・ブランソンはでかい顔ができるようになったわけだ。

後にオールドフィールドがロキノンのインタビューで語っていたが、80年代以降彼とヴァージンの関係も悪化の一途で、ヴァージンは彼がアルバムを作るたびに『Tubular Bells II』と名前をつけて売りたがり、彼が完全拒否する、の繰り返しだったようだ。『Amarok』に "fuck off RB" というモールス信号が埋めこれまれているという話はこの記事で初めて知ったな。

で、この後もう一枚出してようやくレコード契約が切れたと思ったら、ヴァージンは契約書の穴を見つけて彼を拘束しようとしたらしい。それに対してオールドフィールドは、記者会見を開いてその場でリチャード・ブランソン人形を機関銃で蜂の巣にするなどありとあらゆる奇行をやらかすと脅し、なんとか身柄解放となったそうな。

で、ワーナーに移籍するとともに晴れて『Tubular Bells II』を出してヒットさせたそうな。めでたしめでたし(?)。

2. Neil Young, Trans

Trans

Trans

70年代の栄光と比較して80年代の迷走が目立ったニール・ヤングだが(当時在籍したゲフィンレコードから「意図的に売れないアルバムを出している」と訴訟を起こされたくらい)、特にこの1982年発表のアルバムは、全ファンを困惑させた。

ニール・ヤングといえばあの震える甲高い声と人を刺し殺すようなむき出しのギターがトレードマークだが、『Trans』ではその両方が排され、ヴォコーダーを通した無機質なヴォーカルと単調なテクノなサウンドに満ちていたからだ。

これには実は理由があって、当時生まれたばかりの息子が脳性麻痺で喋れなかった。このアルバムのヴォコーダーの使用は、この息子から見た世界、彼が感じる世界を表現したものだったのだ(確かその前に生まれた彼の息子もやはり脳性麻痺で、さすがに80年代は世捨て人になりかけた、とインタビューで語っている)。

なので『Trans』を駄作とはヤング自身は考えておらず、実際90年代に入り復活を遂げた後の MTV Unpluggedasin:B000002MKM)でこのアルバムから "Transformer Man" の見事なバージョンを披露してそれを証明し、ファンを「アコースティックでやったら名曲じゃん……なんで当時やってくれなかっただよ」と苦笑いさせた。

1. Bob Dylan, Self-Portrait

Self Portrait

Self Portrait

ディランの場合、80年代にもっとクソなアルバムをいくつも出しているので、長期的に見れば衝撃も薄れているが、70年当時存在が既に神格化されていたディランが、他人の曲やトラディショナルの曲を2枚組にわたってやらかし、そうした何ともディラン色の薄いアルバムに自作の絵をジャケットにして「自画像」というタイトルをつける彼のセンスにファンはひどく当惑したそうな。

数年前に読んだインタビューで、『Self-Portrait』までのキャリアは完璧だったのにというインタビュアーにディランが同意し、ちょっとここらで駄作も出したくみたくなってね、あのアルバムはジョークだ、みたいなことを堂々と語っていて、おいおいおいおい! と驚き呆れたものだ。

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