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her/世界でひとつの彼女

スパイク・ジョーンズがてがけたミュージックビデオがずっと好きなので意識しなかったが、思えば彼の映画を観るのは『マルコヴィッチの穴』以来なので、ほとんど20年ぶり(!)なのに思い当たって自分でちょっと驚いている。

物語はコンピュータのオペレーティングシステムに恋をした男の話で、その主人公をホアキン・フェニックスオペレーティングシステムの声をスカーレット・ヨハンソンが演じている。この世界のコンピュータ(PC とスマートフォンがシームレスにつながっている)の主要操作は音声で行うが、明らかに iPhone の Siri を想起させる道具立てである。

非常に評価が高い作品なのでワタシも楽しみに観に行ったのだが、ちょうど書いている文章のテーマが関係してか、直感的にイヤだなと思うところが多々あって困った。

主人公とオペレーティングシステム(サマンサという名前を自分でつけている)のセックスがあるのはいいのだけど、OS が主人公に了解もとらずに出版社にメールするとかどうなんだ。しかも送ったものは主人公が業務中に作成した手紙であり、なおさら雇用主の了解も得ないでやっていいことじゃないだろ……とかいちいち気にするのは野暮の極みであることは分かっているが、ワタシには本作においてサマンサの行動のいくつもがホラーに思えてならなかった。

そういうわけで正直これはどうよという感じで観ていたが、人間との恋愛がそうであるように、OS との恋愛も OS の成長により関係に変化が生じるというところにグッときて、その愛の終わりにより主人公自身の変化が促されるラストまでくると大分印象を戻した。

本作ではアーケード・ファイアーが音楽を担当していて、両者のコラボレーションは YouTube Music Awards で体験済みだが、期待に応える出来だった。高層ビルが立ち並ぶ近未来のビジュアルもクールでよかったのだけど、これロサンゼルスじゃなくてすべて上海で撮影されたというのを知ってびっくりした。

スパイク・ジョーンズの元妻のソフィア・コッポラは、夫婦で来日したときに放っておかれた体験を元に『ロスト・イン・トランスレーション』を作ったと聞く(実は未見)。本作は、スパイク・ジョーンズがその妻との別れで受けた心の傷に誠実に向かい合うことでできた作品なのではないか。その作品に OS との恋愛という跳躍があるところが彼らしい。

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