今年も昨年に続いて映画館に足を運ぶ機会がなかなか持てず、というか上半期で5本しか映画館で観れず哀しい限りである。
その代わりといってはなんだが、Netflix で映画を観たのでその感想をまとめておく。昨年もそうしたエントリを書いたが、一年分をまとめて書くと、ワタシもジジイのため思い出せなかったりして情けなくなるので、上半期で一度まとめておきたい。
基本的に観た映画でも新作、もしくはそれに近いものだけにさせてもらう。飽くまで Netflix で観た映画ということで、Netflix 制作に限らない。
この茫漠たる荒野で(Netflix)
『キャプテン・フィリップス』以来のポール・グリーングラス監督、トム・ハンクス主演の映画である。
News of the World という原題が、新聞のニュースの読み聞かせをして各地を渡り歩く主人公の立ち位置を表していることを考えると、この邦題が損なっているものもあるが、「茫漠」という単語が邦題に入る映画を他に知らないので、このユニークな西部劇を表現するものとしては悪くない。
ポール・グリーングラスは本作でも器用に西部劇をものにしているし、トム・ハンクスが主人公なので安定感があって、はからずも旅を一緒にすることになる少女との関係を安心して観ていられる。
マ・レイニーのブラックボトム(Netflix)
本作でチャドウィック・ボーズマンのアカデミー賞主演男優賞は堅いと言われていたが、蓋を開けたら『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスがとってしまい、そのまま放送事故のような中継番組のエンディングを迎えるという不幸があった。
『ファーザー』も本作も舞台劇を元にしており、本作はバンドの控室とレコーディングスタジオのいずれかでだいたい話が展開するが、チャドウィック・ボーズマンは熱演で映画をドライブさせている。マ・レイニーを演じるヴィオラ・デイヴィスも負けておらず、個人的にはむしろ彼女がアカデミー賞で主演女優賞をとれなかったのが悔しかったくらい。
本作は音楽劇だけど、音楽はブランフォード・マルサリスが担当してるんですね。
愛してるって言っておくね(Netflix)
『隔たる世界の2人』も短編だったが、こっちは12分とさらに短く、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞している。
痛ましい実際の事件に材をとっているが、その事件そのものではなく、その悲劇がある夫婦にもたらした拭い難く深い傷が簡潔に表現されている。これはワタシがどうこう書いてもしょうがない種類の作品で、10分ちょっとなんだから観れる人は観ろとしか言いようがない。
ラブ&モンスターズ(Netflix)
この映画はまったくノーマークだったのだが、真実一郎さんのツイートを見て、特に The The のあの名曲で始まると知って、俄然観たくなった。
真実一郎さんが書く通り青年の成長物語であり、壊れたロボットと交流の場面で流れるあの曲(タイトルを書けない)にオマージュにグッときたりするが、それならその後の場面で主人公は××に血を吸われているべきだろ、と演出が惜しいと思ったりもした。が、この映画でそれをやるとヤバいということだろうか(なにしろ生物が巨大化しているので)。
離れ離れになった恋人に会いたくて危険を顧みずに旅に出た青年が、果たして彼女に会えたら――だいたい見当がつくんですね。しかし、ここからの展開、そして最後の主人公の選択が良いんですよ。
オクトパスの神秘: 海の賢者は語る(Netflix)
評判になっていたドキュメンタリー映画で、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したことで、ワタシも観てみようかと思った次第である。
確かにこれはよくできている。ワタシはもっぱらタコは食べるほうの専門だが、そんなワタシにも確かに主人公とタコの関係性の不思議さを感じさせてくれた。
しかし……こんなことを思うのはワタシが性格が悪くからに違いないが、ある意味世捨て人的に海に潜りだした傷心の主人公を、なんで最初からこんなしっかり撮ってるんだ? 特に本作のクライマックスであるタコとサメの攻防はどういう体制で撮影したんだろう、本作はどこまでドキュメンタリーなんだろう? とか思ってしまった。