こないだ「直近では『マッチョ』も『グッチ』も観に行けないかも」と書いたが、オンラインで近場のシネコンの予約状況を確認し、公開初日のレイトショーで観てきた。客はワタシを含め5人だった。
一言でいうとどうしようもない映画で、駄作と書いてもかまわない。
早撮りで有名なクリント・イーストウッドのペースを反映してか、物語はたいした葛藤もなくテキパキ進み、例によってライティングは排されているので、野外をのぞけばだいたいが薄暗い室内ばかり、イーストウッドが演じるのは例によって老いてもタフで女にモテるという……もはやこれはイーストウッドの接待映画ではないか。
基本的にロードムービー仕立てだが、主人公が誘拐する、いろいろと鬱屈があるはずの少年の人物造形が薄いので(えっ、お前、そこで後生大事にしてきたそれを他人にあげちゃうわけ?)、『グラン・トリノ』の感動は望むべくもない。同じ公開日の『ハウス・オブ・グッチ』を観ていたほうが、10倍くらいエキサイティングな映画体験ができていたはずだ。
しかし、今、ワタシはこうして極東の島国で公開初日にクリント・イーストウッドの新作を観ている、というのを上映中なんども噛みしめていた。彼の映画はまぎれもなくアメリカ映画だが、ワタシは彼の作品にハリウッドの不文律からはみ出る異物感を求める。確かにそれは、もはや良い映画といえない本作にすらあった。それを観に来たのだから、文句を言うつもりはない。