個別にはドラマ化の話を既にこのブログでも取り上げているが、テック企業の創業物語、並びにそれらの強烈な創業者を題材とするテレビドラマが、ちょうどこの2月から3月にかけて始まっているので、まとめて取り上げておきたい。
Super Pumped(Uberのトラヴィス・カラニック)
これは昨年末に邦訳が出たマイク・アイザック『ウーバー戦記』を原作としている。ドラマを日本で観れれば本のほうも相乗効果で売れるかもしれないが、果たしてどのチャンネルで観れるようになるのか。
Uber の創業者トラヴィス・カラニックをジョセフ・ゴードン=レヴィットを演じており、他にもカイル・チャンドラー、エリザベス・シュー、ユマ・サーマンといった映画スターが共演、しかもナレーションがクエンティン・タランティーノってなんだ!?
しかし、今のところ評価はあんまり芳しくない感じ。
KingInK で「しかしベンチャー企業の成功と失敗の話なんて、みんなそんなに目にしたいかね?」と書いているが、今回取り上げるように、そんなのが3作同時期に放送(配信)開始ということは、確かに需要があるんですよ。というか、(飽くまでテレビ業界から見て)今はテック企業が題材としてホットなんでしょう。
The Dropout(Theranosのエリザベス・ホームズ)
「シリコンバレーの小保方晴子」ことセラノスのエリザベス・ホームズをアマンダ・サイフリッドが演じている。残念ながら Hulu なのでワタシは未見である。『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』が邦題みたいね。
セラノス並びにエリザベス・ホームズについては、昨年邦訳が出た『Bad Blood』が詳しいが、こちらはそれでなくドラマと同名のポッドキャストが原作である。
『Bad Blood』がアダム・マッケイ監督、ジェニファー・ローレンス主演で映画化されるというニュースが昨年あったが、まだ本格制作には入ってない模様で、『The Dropout』の評価が今のところかなり高いのがどう影響するか。
WeCrashed(WeWorkのアダム・ニューマン)
Apple TV+ なので、やはりワタシは観れない(本文執筆時点では第1回の配信もまだ)。
上の Dropout 同様、本作もドラマと同名のポッドキャストを原作としており、またしても KingInK を引き合いに出させてもらうが、ここ数年アメリカで実録(犯罪)もののポッドキャストが大流行りなのを反映してるわけです。
このドラマについては「(ソフトバンクの意外な復活と)WeWork創業者アダム・ニューマークの隆盛と没落を描く本とテレビドラマ」でも取り上げているが、アダム・ニューマン役をジャレッド・レト、レベッカ・ニューマン役をアン・ハサウェイ、と豪華な配役である。
個人的に、孫正義を誰が演じるか興味があったのだが、キム・ウィソンですか。
さて、テック企業の起業物語のドラマ化というと、ニック・ビルトン『ツイッター創業物語』を思い出す。これがドラマ化決定! という話は日本経済新聞出版のこの本の個別ページにも明記されているが、その後話を聞かない。
IMDb のページも未だ具体的な情報が一切なしなので、話が流れてしまったものと思われるが、上で取り上げた三作に刺激を受け、制作が本格化しないかな。
それとは(多分)関係なく、『ツイッター創業物語』の著者ニック・ビルトンは、テック絡みのドキュメンタリーの作り手に軸足を移している。
やはりセラノス(のエリザベス・ホームズ)についてのドキュメンタリー映画 The Inventor: Out for Blood in Silicon Valley をプロデュースし、昨年は Fake Famous というドキュメンタリーを監督し(参考:偽のインフルエンサーをでっち上げるドキュメンタリー映画が浮き彫りにした、「有名である」ことの意味)、Netflix が手がけるビットコインのボニー&クライド「Bitfinexスキャンダル」を描いたドキュメンタリーの製作総指揮を務める模様。