少し前にようやく『ドライブ・マイ・カー』を観た後にまた3時間の映画と考えるだけで萎えるところもあったが、本作は評判も良いようで、またバットマン役のロバート・パティンソンは、『TENET テネット』でワタシの中で株が上がっていたので、3月末になぜか故郷の映画館で観た。土曜昼の上映で客は10人前後。
本当に3時間の映画とかカンベンしてほしい。そうした映画は、劇場公開時にはインターミッションを入れてほしいと切に願うのだが(ディスクや配信ではカットしていいから)、本作はその長丁場を感じさせない膀胱的プレッシャーを忘れさせてくれる出来だった。
しかし、バットマンというのも難儀な存在である。本作でも、事件現場に彼が当然のように入ろうとして、おいおい、なんでこいつがいるんだよ、と止められる場面があるが、本作のノワール探偵としてのバットマンと異形のクライムハンターを絵面的に両立させるのは難しい。
そこで本作では、ノーラン三部作のシカゴ、『ジョーカー』でのニューヨークとも違う、夜と雨の場面ばかりで陰鬱で病んだ暗黒都市としてのゴッサム・シティを再構築するのに時間をかけている。
カート・コバーンのイメージを重ねたという不健康そうなブルース・ウェインだが、探偵としてはビシバシ有能に謎を解決していき……と思ったら、謎解きを思いきり間違えてペンギン(あれコリン・ファレルだったのか!)にどやされてるのが笑えた。未熟なヒーローを描くというのもなかなか難儀ということだろうが、そうしたマヌケさも本作の主人公にエモさを加えている(とか書くと刺されそう)。
本作のバットマン映画としての各要素を見ていけば、正直本作に画期的なところはないのだけど、やはりこれだけ夜と雨を強調した映像を劇場のスクリーンで観れてよかった、と気分良く映画館をあとにできた。続編にも行くんだろうな。