先ごろ、ジョー・バイデン前米大統領が、進行性の前立腺がんと診断され、しかも骨に転移していることを明らかにした。
このニュースに、以下のような反応を見た。
このニュースは、単なる個人の健康問題ではない。2024年大統領選の選挙戦中、バイデンが世論の健康診断要求を事実上無視した結果、そう結果的にではあるが、真実を狡猾に隠し、米国民と世界を欺いた「詐術」ともいえる結末である。この怠慢は、選挙の歴史を歪め、民主主義の信頼を揺るがし、バイデン自身の公衆衛生メッセージを自ら否定した。これを意図的でないとすることはできる。しかし、それが許されてよいはずはない。
バイデンの健康診断の怠慢は何を意味したか: 極東ブログ
これをバイデンに対して不当に厳しいと思う人は、ジェイク・タッパー(CNN キャスター)とアレックス・トンプソンによる Original Sin を読むのがよいようだ。
目を覆うバイデンのモノクロ写真が表紙で、『原罪:バイデン大統領の衰退、その隠蔽、そして再出馬という悲惨な選択』という書名だけで深刻な内容が想像できるが、著者たちは「2024年の大統領選の原罪は、バイデンが再選を目指す決断をしたことだ。それにより、彼の認知機能の低下を隠そうと躍起になった」とまで書く。
最近になってバイデンが選挙集会でジョージ・クルーニーを認識できなかった話が報じられているが、バイデンの認知機能の低下は、彼のとりまきのインナーサークルにより、彼への献金者や政治家にも「隠蔽」され、トンプソンのようにそれを報じようとしたジャーナリストは攻撃された。
大統領選挙への出馬を表明した2019年の時点で、バイデンは76歳だった。それはまだ、「善良なバイデンが老いぼれたバイデンよりも遥かに存在感があった」時代だった。しかし、その「善良」と「老いぼれ」は2023年までに逆転していた、と著者たちは取材をもとに書く。
バイデンの側近は、緊急の用事を午前10時から午後4時までに限定したり、スピーチを短くして立ちっぱなしの時間を短くするなどの策を講じ、ビデオ撮影の際には、スローモーションで撮影し、バイデンがどれほどゆっくり歩いているかをぼかすことさえしたという。
かように家族や側近たちに護られたバイデンだったが、2024年6月27日の夜、ドナルド・トランプとの討論会が破滅的な結果に終わり、大統領選からの退出を余儀なくされたのはご存じの通りである。
この書評の最後を引用する。
タッパーとトンプソンは、2024年の大統領選挙の翌朝、バイデンが目を覚ますと、もし自分が選挙に残っていれば勝てたのにと考えていた様を描写している。「世論調査がそう言っていた、と彼は何度も何度も繰り返した」と著者たちは書く。バイデンの推論にはひとつだけ問題があった。「彼の世論調査担当者は、そんな世論調査は存在しないと我々に語った」
一貫してドナルド・トランプについて批判的なワタシにとっても、この本の内容はショッキングだと言わざるをえない。やはり New York Times には、この本の内容を踏まえて、「民主党は何を知っていたのか、いつ『それ』を知ったのか?」というバイデンの「隠蔽」に加担した民主党の責任を追及する論説記事が出ている。
ネタ元は Pluralistic。


