2021年以来半年ごとにやっている、Netflix で観た映画の感想まとめを2025年下半期についてもやっておく。
ここしばらく Netflix で観た映画が少なくなっているのに気づいており、意識的に観る本数を増やしたつもり。昔の映画は入れず近作(公開から10年未満)だけ取り上げる。
化け猫あんずちゃん(公式サイト、Netflix)
公開時はまったくノーマークだった本作をなぜ観たのかというと、小野マトペさんが Bluesky で名前を挙げてたのが気になったから。
かりんだけでなく、あんずちゃん、それ以外にも何層にも楽しみ方がある作品である。あんずちゃんの登場からして良いんだよな。
後半は一種の地獄めぐりの話になるが、トイレから入っていくところで『トレインスポッティング』を連想したりした。
近年の映画では、『パレードへようこそ』や『ロスト・キング 500年越しの運命』と同じくらい、観ていて泣いた。ボロ泣きだった。
喪う(Netflix)
なんで本作のことを知ったのか? 確か、IndieWire の記事経由かな。
原題の通り、三人の娘が父親を看取る映画なのだが、この三姉妹がそれぞれ父親と母親が違うという設定になっている。
最初、キャリー・クーンが心配性で神経質な長姉、ナターシャ・リオンがざっくばらんとした次姉、そしてエリザベス・オルセンが優等生的な末妹と思ったのだが、リオンが長姉でクーンが次姉なのね。
長姉が父親と住む部屋とその周辺だけで展開する本作だが、この三姉妹のフリクションの描き方で飽きさせない。
この三姉妹がそれぞれ「らしい」役をやっているのだけど、オルセンのグレイトフル・デッド好きという設定だけ正直ピンとこなかった(ジョン・メイヤーの言及はあるけど)。
父親の最期が、実際に親の介護をやったことある人間から観たらありえない……と冷めかけたが、それにもちゃんと仕掛けがある。
ディック・ジョンソンの死(Netflix)
これも娘が父親の死を看取る映画なのだが、こちらはドキュメンタリー映画なのね……と事前知識なしで観だしたら、オープニングの衝撃にひっくり返りそうになった。
ディック・ジョンソン氏がワタシの父親と同年代なので観ていて思うところはあり、日米の文化の違いは気になるものの、もはや驚かされるところはない……と思ってたら、救急車、告別式を経て、そして監督がナレーションを収録撮影するエンディングに再度ひっくり返りそうになった。
木曜殺人クラブ(Netflix)
ヘレン・ミレン、ピアース・ブロスナン、ベン・キングズレーといったシニア世代の名優たちが老人ホームのオーナーの殺害事件に挑む。批評家の評価はあまりよくないみたいだが、とにかく重くならない軽快な作りにワタシは好感をもった。これでいいのだ。
役柄的にジョナサン・プライスは無駄遣いではないかと思ったら、もちろんそうではないところも良かった。
グッドニュース(Netflix)
よど号ハイジャック事件をもとにしたコメディ映画なのだが、「卑しさ」の描き方が良かった。
思えば、よど号ハイジャック事件はワタシが生まれる前に起きたのもあって、通り一遍のことしか知らず、これは事件をデフォルメした設定や描写なんだろうな、と思いながら観ていたいくつものポイントが、実はだいたい史実に沿っているらしいのを知って後からのけぞった(参考:Netflix Freaks)。
月の表側、裏側に関する謎格言も皮肉がきいていてよかった。
役者では、久しぶりに見た気がする椎名桔平が頼りがいのある機長を演じていてよかった。
フランケンシュタイン(公式サイト、Netflix)
ギレルモ・デル・トロが Netflix で作る映画というと2023年の『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』に続いてになるが、本作も良かった。ただ、思えば、ワタシ自身はフランケンシュタイン映画をコッポラのくらいしか観ておらず、それらの古典、何より原作に通じていないので、そのあたりで取りこぼした文脈はあるだろう。
役者的にはオスカー・アイザックはもちろん良かったが、クリストフ・ヴァルツが久しぶりにちゃんとした役で映画に出てるのを見れて嬉しかった(ので、もっと後半まで活躍してほしかったが、それはないものねだりか)。
『バリー・リンドン』、『プロメテウス』(そして、「母の不在」)などいろいろ連想する映画、鏡の使い方など気になるところがいろいろあったが、いずれにしても2時間半が長く感じない。もっと長くやってほしいと思える映画体験だった。
そうそう、ギレルモ・デル・トロと真実一郎さん(!)のスペシャル対談「なぜ私たちは怪獣に惹かれるのか?」がとても有意義だった。
ジェイ・ケリー(公式サイト、Netflix)
当たり前の話だが、本作の主人公とワタシはまったく境遇が異なる。なので、「ハリウッドスターの孤独」とか見せられて、だからなんなの? という心持ちになっても不思議がない。が、ワタシの場合、それはそれと割り切りができるようで、事前に予想していたよりも自分でも驚くほどしっくりくる映画だった。
現時点でのノア・バームバックの監督としての最高傑作は『マリッジ・ストーリー』なのだろうが、ワタシは彼の映画で本作が一番好きかもしれない。
やはり、主演のジョージ・クルーニの力もあるのだろう。彼の主演作を観るのはかなり久しぶりなのだが、15年前の『マイレージ、マイライフ』がそうだったように、実に合った役柄を演じている。
現実には、クルーニがスター街道に乗ったのはドラマ『ER』への出演からで、その時点で彼は30代半ばだったのだが、本作の主人公は23歳で映画スターになるチャンスを掴んでいる設定である。
その出世作の監督であり、しかし、主人公はその晩年に手を差し伸べなかった老齢の映画監督が、別の監督を指して「MTVすぎる」というところがあるが、「MTVすぎる」という言葉を今の映画監督に向けるには明らかにズレていて、つまりはその台詞自体、老齢監督の感覚のズレを表現している。そうした細かいところも意図的に違いない。
役者についてはクルーニ以外にも、アダム・サンドラーも良かった。あと主人公のかつての役者仲間を演じているのがビリー・クラダップとは気づかなかったな。
ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン(Netflix)
ダニエル・クレイグ演じる名探偵ブノワ・ブランが活躍する「ナイブズ・アウト」シリーズの3作目で、過去2作を好きなワタシはもちろん観るわけである。
しかし、本作はブノワ・ブランが登場するまで40分くらいあり、そういう意味でジョシュ・オコナー演じる司祭が主人公とも言える。
3年前の『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』が、全力でイーロン・マスクを罵倒する映画だったが、本作は宗教をテーマに据えていて、本作で描かれる教会はカトリックで、米国で主流のプロテスタント、特に近年政治への関与を強める福音派とは異なるのだけど、やはりこれをテーマに持ってきたところにライアン・ジョンソンらしい嗅覚を感じる。
(なぜカトリック教会が舞台なのかという点について、やはり告解が本作の主要な要素だから、ぐらいは見当がついたが、そのあたりについて詳しく知りたい方は、うまみゃんタイムズを視聴後に読みましょう)。
その教会は、ジョシュ・ブローリン演じる横暴なカリスマの(自身を「モンシニョール」と呼ばせる)司祭を中心として、アルコールに依存する医者、陰謀論に傾倒して落ち目になった SF 作家、政治家に向いてないのに野心を捨てきれない YouTuber といった『グラスオニオン』にも共通するカルトを形成している。
上で本作について、「ジョシュ・オコナー演じる司祭が主人公とも言える」と書いたが、本作は名探偵ブノワ・ブランが真犯人と解き明かして一件落着にはならず、彼の姿勢に変化がある。それに不満を持つ人もいるだろうが、ワタシは2025年を締めくくる Netflix 映画として本作を心から楽しんだ。
あと撮影場所に関するライアン・ジョンソンも認めるトリビアはさすがに気づかなかったぞ(笑)。
2026年は昨年中に見逃がした『トレイン・ドリームズ』あたりからですかね。
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