ジェシー・バックリーが、アカデミー賞をはじめとして主要な映画賞の主演女優賞を総なめした印象がある映画である。彼女がアグネス・ハサウェイ、そしてその夫であるウィリアム・シェイクスピアをポール・メスカルが演じる。
ジェシー・バックリーはアクターとしてもシンガーとしても好きだし、ポール・メスカルについては『aftersun/アフターサン』や『異人たち』でその力量は承知している。身も蓋もないことを書けば、今もっとも演技が上手い30代俳優である二人が共演した映画である。
しかしなぁ、日本公開が米国よりずっと遅れるのはもう慣れたが、どうして日本中の映画館がコナンにジャックされる日に公開なんだ。「つまり配給サイドからも期待がされていない作品だと判断するしかない」という声が出るのも仕方ないだろう。前述の通り、主演女優賞を総なめし、全世界での興行収入が1億ドル突破した本作でもそうなのか。洋画受難の時代ですね。おかげで遅い時間のレイトショーを避けるため、仕事を無理に早く切り上げなきゃならなかったよ。
さて、愚痴はここまでとして、シェイクスピア作品は今日まで舞台にも映画にもなり続けているし、シェイクスピア自体も創作の対象になっている。例えば、映画では『恋におちたシェイクスピア』が有名だが、これに限らずシェイクスピアとその妻の結婚生活は破綻していることを前提に語られることが往々にしてあった。
それを本作は、シェイクスピアの代表作『ハムレット』の誕生を、二人の息子にしてまだ子供のうちに病死したハムネットとの関連で描き出すものである。まぁ、ワタシ自身は、「ハムレット」と「ハムネット」が当時同一の言葉だったというのも知らなかったくらいシェイクスピア研究については門外漢なんですが。
本作のクライマックスは、その『ハムレット』の初演、そしてそれを目の当たりにするアグネスになるのだが、完全に迷惑クレーマー客状態だった彼女が徐々に夫の真意を解し、劇に心を揺さぶられ、そして、その感情が周りの観客に伝わるのがハムレットに差し出される手で表現されるところは感動的だった。
そこで流れるマックス・リヒターの必殺の旋律! しかし、なんで定番曲がここで? どうやらリヒターが書いてきた曲に満足いかず、"On the Nature of Daylight" が使われたらしい。このあたりの安易さにクロエ・ジャオという人の監督としての限界が出ているように思う、と書くと怒られるだろうか。
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