先週公開された WirelessWire 連載の最新回だが、期待したほどのアテンションを得られなかったので、恨みがましくその後の話を書いておく。主に、この文章に入れるべきだったのに、ワタシの観測範囲が狭かったために入れられなかった話である。
MALUS だが、わずかな料金を支払えば、どんなソフトウェアでも元のライセンスから「解放」されたそのソフトウェアの新しいバージョンを AI を使って作成するサービスである。ワタシが文章で書いた「コミュニティを還元することなくOSSを商用化してしまう可能性」を現実のものにし、既に脆弱な OSS のエコシステムを覆しかねないものである。
これは先月には既に話題になっていたようだが、ワタシは 404 Media の記事を読んでようやく知ったくらいで、知っていたら「「Just for Fun」から遠く離れて」で絶対言及していたのに、と悔しく思った……が、これは飽くまで「風刺作品」なのね。
MALUS の共同創業者のマイク・ノーランは、オープンソースソフトウェアの政治経済を研究し、現在は国連で勤務している人物とのことで、OSS に内在する危険性を実感してもらうために MALUS を作ったとのこと。
「私は10年以上、こうした(オープンソース)コミュニティに関する研究を発表してきたが、ソフトウェアアプリケーションの80%か90%が自分たちに依存してるのだから、オープンソースは勝利したとずっと繰り返し聞かされてきた。でも、彼らは巨大な労働者コミュニティの徹底的な搾取に依存しているだけなんだ。Google がオープンソースを利用しているから勝っていると自分を納得させてるけど、自分たちのソフトウェアが特定のライセンスで提供されているから、それが倫理的であるかのように振る舞っているだけだ」というノーランの言葉は辛辣である。
AI Slop 問題について語るのに、それを受けつける側のとても貴重な証言である。せっかく先月には公開されていたのに見逃していた。
和田裕介さん関係では、先週公開されたインタビュー記事「「OSS開発者の憂鬱」のその先へ、AI時代にHono作者が見ている景色」もあわせて読みたい。
プログラマの美徳である怠惰が失われることの危うさについて書いている記事。
— iwashi / Yoshimasa Iwase (@iwashi86) April 13, 2026
・プログラミング言語のPerlの作者は、プログラマーの美徳として怠惰、短気、傲慢の三つを挙げている
・筆者はこの中でも怠惰が最も重要であり、優れた抽象化を生み出してシステムをシンプルにする原動力だと考えている…
「プログラマーの三大美徳」として知られる怠惰、短気、傲慢のうち「怠惰」が失われようとしている話だが、「「Just for Fun」から遠く離れて」の中で、コードのコミット量の観点での AI の人間への優位性の話に関連して取り上げるつもりが、うっかり漏れてしまっていた。
「プログラマーの三大美徳」といえば、先週「なぜ、「プログラマーの三大美徳」は日本でばかり有名なのか?」という文章も評判になった。
この文章の中で著者自身、「日本でばかり有名」という言い方はやや雑と認めているが、ワタシが昔訳した「礼儀正しさ重要」でも「プログラマーの三大美徳」が論じられているのを思い出した。やはり「日本でばかり有名」というのは言い過ぎと思うが、「日本語圏は用途拡張が強かった」というのはそうなのかもしれない。
