今年も私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」を公開する時期となった(過去回は「洋書紹介特集」カテゴリから辿れます)。
過去一年で本ブログでとりあげた洋書(で未だ邦訳が出ていないもの)をまとめるものだが、今回は全30冊の洋書を紹介させてもらう。というか、ちょうど30冊になるよう調整させてもらった。
既に邦訳が出ていたり、またこれから出るという情報をご存知の方は、コメントなりメールなりで教えていただけると幸いです。
アダム・ベッカー(Adam Becker)『More Everything Forever: AI Overlords, Space Empires, and Silicon Valley's Crusade to Control the Fate of Humanity』
- シリコンバレーのSF脳的思想を丁寧に否定していくアダム・ベッカーの新刊 - YAMDAS現更新履歴
- 書評|テック億万長者の偽善を暴く|"More Everything Forever: AI Overlords, Space Empires, and Silicon Valley's Crusade to Control the Fate of Humanity" by Adam Becker - カタパルトスープレックス
これは是非翻訳が出るべき本である。アダム・ベッカーの文章、並びにキャシー・オニールらがやっているポッドキャスト AI Skeptics に彼が出演した回は、「触媒としての人工知能――それを作る前に人類は絶滅するのではないか?」を書く際も重要な意見として参照させてもらった。
Karen Hao『Empire of AI: Dreams and Nightmares in Sam Altman's OpenAI』
- OpenAIとサム・アルトマンに焦点を当てた対照的な内容のノンフィクション本2冊が同日に刊行された - YAMDAS現更新履歴
- 読書メモ:Empire of AI (by Karen Hao)…「OpenAI帝国」の内側を覗く - 重ね描き日記(rmaruy_blogあらため)
- MIT Tech Review: 書評:サム・アルトマンはいかにして「AI帝国」を築いたか
この本はサム・アルトマンについて厳しいが、その見方の妥当性は、「「Just for Fun」から遠く離れて」の最後にも触れた、ローナン・ファローとアンドリュー・マランツによる記事でもある程度裏付けられたと言えるのではないか。
ジェイク・タッパー、Alex Thompson『Original Sin: President Biden's Decline, Its Cover-up, and His Disastrous Choice to Run Again』
- ジョー・バイデンの再選出馬という悲惨な選択、そしてそれが米国にもたらした災厄 - YAMDAS現更新履歴
- バイデン氏の認知機能低下、側近が隠蔽か 全米で話題の内幕本 共著者のCNNキャスターが語った出版の真のねらい | AERA DIGITAL(アエラデジタル)
まぁ、こうやって取り上げておいてなんだが、この本の邦訳は出ないだろう。大統領としてのジョー・バイデン並びにドナルド・トランプの評価とは別に、狂王トランプについての本は、今もこれからも翻訳され続けるだろうが、バイデンの本はそうもいくまい。
それ自体、不幸なことなのかもしれないが、それは少なからずバイデン自身の責任でもある。
スティーブ・ウィルソン『The Developer's Playbook for Large Language Model Security: Building Secure AI Applications』
著者については@IT の(PR)記事がまとまっている。書籍版が出るまで待てない方は、オライリー本家のサイトの AI 翻訳「大規模言語モデルのセキュリティに関する開発者のプレイブック」を読まれるのがよいでしょう。
Jacob Silverman『Gilded Rage: Elon Musk and the Radicalization of Silicon Valley』
- イーロン・マスクを中心とするシリコンバレーの過激化についての本がこれから出る - YAMDAS現更新履歴
- 米テック界はなぜトランプに近づくのか──著者ジェイコブ・シルバーマンが語る「右傾化するシリコンバレー」 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
テック右派についてはぼちぼち出ているが、先鋭化する大富豪の白人男性問題を考える上でも、この本の邦訳は待たれていると思うねぇ。
Daniel de Visé『The Blues Brothers: An Epic Friendship, the Rise of Improv, and the Making of an American Film Classic』
単体の映画についての本の邦訳は難しいと思うが、未だ好きなんだよなぁ、『ブルース・ブラザーズ』。
そうそう、『ブルース・ブラザーズ』といえば、3月には開業25周年の USJ でブルース・ブラザーズが17年ぶりに再登場なんてのもあったらしいね。
Len Noe『Human Hacked: My Life and Lessons as the World's First Augmented Ethical Hacker』
「世界初の拡張現実エシカルハッカー」とか中二病心をくすぐるじゃないですか!
この本の詳しい情報については本の公式サイトをあたってくだされ。
Sam Cole『How Sex Changed the Internet and the Internet Changed Sex: An Unexpected History』
- いかにセックスはインターネットを変え、インターネットはセックスを変えたのか - YAMDAS現更新履歴
- Samantha Cole著「How Sex Changed the Internet and the Internet Changed Sex: An Unexpected History」 – 読書記録。 by @emigrl
これの邦訳はさすがに難しいかなと思うが、そういえば彼女が結婚式をあげるにあたり、結婚式についてネットで調べた途端に「ブライダル・アルゴリズム」に飲み込まれたという記事が面白かったな。
先鋭的メディア404Mediaの記者が結婚式についてネットで調べ出した時、彼女の世界は悪夢のような「ブライダル・アルゴリズム」に飲み込まれた。
— 一田和樹 (@K_Ichida) April 19, 2026
結婚や葬儀は感情を利用するビジネスだ。機能的な選択より感情的な選択が優先される。…
Garrett M. Graff『The Devil Reached Toward the Sky: An Oral History of the Making and Unleashing of the Atomic Bomb』
- ファシズムに傾倒するアメリカ、そしてトランプのファシズムと戦う5つの方法 - YAMDAS現更新履歴
- 『The Devil Reached Toward the Sky』原子爆弾の誕生から実戦投入とその影響を改めて振り返るノンフィクション - バーンズ・アンド・ノーブルで朝食を
これは邦訳が出るべき本だと思いますね。この著者は1980年代生まれなんだね。
ニック・クレッグ『How to Save the Internet: The Threat to Global Connection in the Age of AI and Political Conflict』
- Metaの国際問題担当社長だったニック・クレッグが語るシリコンバレー人種の「自己憐憫」 - YAMDAS現更新履歴
- 「ネット中立性の父」が唱える巨大テック分割論…元メタ副社長は「ユーザーの利益を無視している」と真っ向反論 | スマートニュース
ポジショントークそのものというべき主張とも言えるので邦訳は難しいだろうが、前にも書いたように先進国の副首相と世界有数のビッグテック企業の国際問題担当社長の両方を務めた人物となると他にいないわけでね。
なお、ニック・クレッグは今年3月、英国のデータセンター企業の NScale の取締役会に加わったとな。
ジミー・ウェールズ、ダン・ガードナー(Dan Gardner)『The Seven Rules of Trust: A Blueprint for Building Things That Last』
- ウィキペディア共同創始者ジミー・ウェールズの初めての本が出る - YAMDAS現更新履歴
- 『The Seven Rules of Trust』ウィキペディア共同創設者が示す信頼を築き、維持するための七つの原則 - バーンズ・アンド・ノーブルで朝食を
やはりワタシは Wikipedia のジミー・ウェールズの本ということで注目するわけだが、共著者が『リスクにあなたは騙される』(asin:415050413X)、『専門家の予測はサルにも劣る』(asin:4864101663)の著者であり、また『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』(asin:476314037X)、『超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』(asin:4152096446)と本書のような共著経験も豊富なダン・ガードナーとのことで、かっちり読みやすい本に仕上がってると思うわけです。
マーカス・デュ・ソートイ『Blueprints: How Mathematics Shapes Creativity』
ちょうど今日『世界のエリートが学んでいる数学的思考法』(asin:4815630445)が出たばかりの著者の最新刊で、これは黙っていてもいずれ邦訳が出るでしょう。結城浩さんもそうだが、数学をネタに面白い本を書ける人は強いなぁ。
Dan Wang『Breakneck: China's Quest to Engineer the Future』
これは今、絶賛翻訳中だと期待するが、果たして今年中に邦訳出ますかね。
そうそう、少し前にジョゼフ・ヒースが「文明の2つの極:アメリカと中国は人類の未来を示しているのか」でこの本における米中の比較について、「ワンには最大限の敬意を表したいが、この比較は私には表層的に思える」と率直に書いていた。
ジーン・トウェンギ(Jean Twenge)『10 Rules for Raising Kids in a High-Tech World: How Parents Can Stop Smartphones, Social Media, and Gaming from Taking Over Their Children's Lives』
- 「スマートフォンは不幸を引き起こす」論者の代表的存在の新著『ハイテクな世界で子供を育てる10のルール』 - YAMDAS現更新履歴
- 10 Rules for Raising Kids in a High-Tech World | COLORful Life -カナダ在住
子供のスマホやソーシャルメディアの利用を年齢で制限したいという欲望は世界的潮流で、それ自体は理解できないでもない。ただ、現実には子供たちは抜け穴を見つけるし、年齢確認のために収集した情報もハッカーのターゲットになるなど問題も多いので、難しいには違いない。そうした意味で、親視点に寄り添い、指針を与えるこの本はうまいところを狙ったと思う。
Blaise Agüera y Arcas の本
- GoogleのVP兼フェロ―のブレイス・アグエラ・ヤルカスが問う「知能とは何か?」 - YAMDAS現更新履歴
- AIに魂は宿るのか? グーグルのブレイス・アグエラ・イ・アルカスが語ったKeynote全文公開 | WIRED.jp
彼ぐらいのキャリアの人が『生命とは何か?』、『知能とは何か?』という本質的な主題に見える本を書いたとなると内容が気になるところで、しっかりした翻訳で読みたいところである。
昨年秋に来日した彼が行った講演については、「生命はなぜ、生まれざるをえなかったのか」も参考になる。
ティム・バーナーズ=リー『This Is for Everyone: The Unfinished Story of the World Wide Web』
- WirelessWire News連載更新(AIスクレイパーボットへの対策と開かれたウェブのジレンマ) - YAMDAS現更新履歴
- WWWの発明者バーナーズ=リーはWWWを救えるか | WIRED.jp
Word Wide Web の父の本なんだから、来年には邦訳が読めると期待していいよね?
そういえば、この本についてはニコラス・カー先生が辛辣な書評を書いていて、カー先生らしいなと思ったものである。
Hagen Blix、Ingeborg Glimmer『Why we fear AI: On the Interpretation of Nightmares』
これはブライアン・マーチャントによるインタビューが異様に面白かったので俄然読みたくなった本だが、さすがに邦訳は難しいですかねぇ。
マイケル・ペイリン『Michael Palin in Venezuela』
いや、正直、今更マイケル・ペイリンの旅行本は邦訳が期待できないことくらい分かっていた。が、今年のはじめに米国がベネゼエラを攻撃し、マドゥロ大統領を拘束というビックリな事態になってみると、途端に彼のベネゼエラ旅行本が注目されるのではという気になったわけである。実際、番組撮影中にマイケルは撮影クルーと共に武装民兵に拘束されるといういかにもトラブルに巻き込まれている(なにせ、世界で最も一人旅が危険な国だから)。
しかし……その後、ドナルド・トランプがあっちゃこっちゃと世界にトラブルを引き起こし続けてしまうと、ベネゼエラへの注目も失せてしまった。残念な話である。
ビル・マッキベン(Bill McKibben)『Here Comes the Sun: a Last Chance for the Climate and a Fresh Chance for Civilization』
- 太陽が世界のエネルギーを賄うときが来たが、それに背を向けるアメリカ - YAMDAS現更新履歴
- 初の“電気国家” 中国がクリーンエネルギーの大潮流を生む──特集「THE WIRED WORLD IN 2026」 | WIRED.jp
ビル・マッキベンというと、『ディープエコノミー 生命を育む経済へ』(asin:4862760295)以降15年以上邦訳が出てないが、まさかまた彼の仕事が注目されることになるとはね。しかし、資源に乏しい日本で再生可能エネルギーを巡る状況は明るくないというのは不幸な話に違いない。
デーヴィッド・マークス(W. David Marx)『Blank Space: A Cultural History of the Twenty-First Century』
デーヴィッド・マークスの本となれば、いずれは邦訳が出るのだろうが、まぁ、来年以降でしょうな。
ティム・ウー(Tim Wu)『The Age of Extraction: How Tech Platforms Conquered the Economy and Threaten Our Future Prosperity』
本来ならこの本の邦訳は、コリイ・ドクトロウ『Enshitification』との比較で論じられてほしいので、両方が同じ時期に出てほしいのだが、そう都合よくはいかないだろうな。しかし、『Enshitification』の邦訳の話もまだ聞かないなぁ……。
Keza MacDonald『Super Nintendo: How One Japanese Company Helped the World Have Fun』
- 誕生から30年になるポケモンがポジティブに世界を一つにするヒット作であり続けること - YAMDAS現更新履歴
- 『ゼルダの伝説』はなぜ「手取り足取り」をやめたのか——青沼英二氏と藤林秀麿氏が語る設計思想の転換 | ゲーム情報!ゲームのはなし
著者は Guardian のゲーム担当記者で、任天堂本社に取材して書かれた本ということで邦訳を期待したくなる。ワタシが引用した箇所も感動的ですらあったし。
ジーン・キム、Steve Yegge『Vibe Coding: Building Production-Grade Software With GenAI, Chat, Agents, and Beyond』
書名が直球すぎてたじろいでしまうが、Anthropic のダリオ・アモデイが序文書いているというのもすごいよな。
ただ、この本の邦訳が出るとして、その頃に「バイブコーディング」の意味合いがどうなってるかまったく読めないのはあるわね。
Cindy Cohn『Privacy's Defender: My Thirty-Year Fight Against Digital Surveillance』
- 長年電子フロンティア財団の事務局長をつとめたシンディ・コーンの回顧録『プライバシーの守護者』 - YAMDAS現更新履歴
- シンディ・コーン著『プライバシーの守護者(Privacy’s Defender)』 » p2ptk[.]org
ローレンス・レッシグ、ブルース・シュナイアー、エドワード・スノーデンといったこのブログでもおなじみの面々が推薦の言葉を寄せているが、彼女の仕事を考えれば当然ともいえる。
Paul Fischer『The Last Kings of Hollywood: Coppola, Lucas, Spielberg - And the Battle for the Soul of American Cinema』
これいかにも面白そうな本なのだが、「ハリウッド最後の王たち」が全員生きている間に邦訳が出てくれるかどうか。
コリイ・ドクトロウ『The Reverse Centaur's Guide to Life After AI: How to Think About Artificial Intelligence—Before It's Too Late』
発売は今年6月なので、まだ内容は分からないのだが、そりゃ彼に AI 本の注文は行くわね。でも、それより何より『Enshitification』の邦訳が出てくれ!
Gaia Bernstein『Unwired: Gaining Control over Addictive Technologies』
これは本のテーマ的にとても現在的で重要だと思うのだが、この本についての日本語情報がまったく見当たらないんだよな……。この本については、著者のサイトのページを参照ください。
Shyam Sankar、Madeline Hart『Mobilize: How to Reboot the American Industrial Base and Stop World War III』
- 世界的に存在感を増すパランティアを理解する上で必須の本(邦訳&洋書)が出ていた - YAMDAS現更新履歴
- 米防衛産業の最後の晩餐から30年:異端児たちが国家にもたらす軍需ムーブメント[パランティア CTOインタビュー:前編]|だうじょん
- 米防衛産業の最後の晩餐から30年:異端児たちが国家にもたらす軍需ムーブメント[パランティア CTOインタビュー:後編]|だうじょん
アレックス・カープの『テクノロジカル・リパブリック』がクソ話題になり、パランティア社員の動揺も伝えられているが、CTO が共著したこの本の邦訳話も進んでいるんじゃないかとワタシはにらんでいる。
David Pogue『Apple: The First 50 Years』
- ジョブズがiPodの試作品を水没させた鬼畜エピソードが書籍『Apple: The First 50 Years』で否定される - YAMDAS現更新履歴
- 『Apple: The First 50 Years』神話を解体し、製品から読み解くアップル50年史 - バーンズ・アンド・ノーブルで朝食を
ワタシが就職した30年前、Apple Computer はかなり厳しい状態だったわけで、まさか30年後にこうなるとは夢にも思わなかった。その Apple の多くの関係者に取材しながら書かれたその50年史は、人物伝や権力闘争よりもプロダクトを語るものになってるようで、邦訳が期待される。
この本については書籍の公式ページを参照くだされ。
それでは、皆さん、楽しいゴールデンウィークをお過ごしください。
[追記]:
以下、ここで取り上げた本の邦訳が出たのを紹介するエントリをはりつけておく。






























