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オールド・オーク

ケン・ローチ最後の作品と聞いて、これは見届けないといけないなと観に行った。彼の映画は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』以来になる。

本作は英国の北東部にあるかつての炭鉱の町、そして、そこに一軒だけあるパブ「オールド・オーク」が舞台である。

そのパブは、店主の TJ・バランタインと同年代の炭鉱仲間だった面々が常連である。本作では、住民にとっての公共を担う場所がどんどん閉鎖されてきたことが語られており、オールド・オークは住民にとってある意味最後の砦というかより所のような場所なのだが、町がシリアからの難民を受け入れだしたことで、店が新旧の住民にとっての摩擦の場にもなってしまう。

本作は紛れもなくケン・ローチの映画であり、労働者階級の厳しい環境と生活を描き続けてきた実に彼らしい作品である。今では労働者階級の人たちが、シリア難民に罵詈雑言を投げる姿も描かれているが、虐げられてきた彼らからすれば、難民は下に見れて叩いてもよい恰好の存在なのが分かる。

英国の移民政策に関しては、2025年のスターマー労働党政権による移民白書でも「Britain’s failed immigration system(英国の失敗した移民制度)」と明記されているわけだが、2016年を舞台にする本作にも、そりゃ元からの住民は猜疑心を持つわなという行政の不作為もある。

オールド・オークの店主のバランタインは、苦しい商売の頼りであり、かつて炭鉱の仲間だった店の常連たちと、そのカメラを修理することで知り合ったヤラとその家族をはじめとする難民たちとの板挟みになってしまう。

本当に皆、経済的な弱者であり、暮らしがキツキツなのだ。みんな生活は苦しくて余裕はない。地元の子供たちもろくに飯を食えてない。それなのに分断が進み、排斥の空気がある町にどんな連帯や団結がありうるのか、その中で主人公が閉ざしていた心を開いていくところが描かれている。こういうときに最初に手を差し伸べるのは、やはり女性であるというのも納得感があるが、それでハッピーエンドで終わるわけがないのもケン・ローチのリアリズムなのである。

そこで主人公は、俺達は難民が来る前から負けっぱなしだったじゃないか、難民にその責任を押し付けるな、とかつての仲間にしっかりと一線を引く。

最終的に消極的な融和がもたらされるのが、避けられない究極の不幸、つまり人の死があったからというのはとても悲しいが、そこで終わらず、ローチは一歩踏み込んで団結や抵抗の可能性を見せる。それが彼の最後のメッセージなのだ。

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