日曜夜に先行 IMAX 上映を観た。ご存じの通り、マイケル・ジャクソンの伝記映画であり、ネタバレがあるような種類の映画ではないが、通常の公開日まで予備知識を入れたくない方は、ご注意ください。
恥ずかしながら、アントワーン・フークアの監督作を観るのは初めてなのだが、この手の伝記映画にありがちなもっさり感がなく、シャープな作りになっていて潔かった。
幼少期のマイケルを演じるジュリアーノ・クルー・ヴァルディが見事で、ジャクソン5はモータウンからデビューとともに大成功を収めるが、70年代後半から苦しくなってくるところとかも描くのかなと思ったら、そのあたりはあっさり飛んでジャファー・ジャクソンにバトンタッチする。言うまでもなく彼も良かったのだが、やはりマイケルを演じるとなると「身内」しかその任を負えないのかもな、とも思ったりした。
1973年生まれのワタシにとって、マイケル・ジャクソンはアメリカのポップスターの代表中の代表であり、少年時代に『スリラー』、そして『BAD』、並びに彼のビデオをメディアで享受してきた。80年代、あまりに彼の存在がポピュラーだったから、ロック村の住人になると反動で当たり前のように彼のことを軽んじた時代が確実にあった(アルバム『オフ・ザ・ウォール』を買ってちゃんと聴いたのは、そのずっと後の話である)。
そうした意味でワタシは彼の良い聞き手ではなかったのだが、本作はそういう人間すら魅了する。まさにマイケルが光を放ち、世界を照らすのだ。そして、観終わった後に心に残るのは、マイケルという人に付きまとうなんとも言えない悲しさだった。これは『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を観たときも感じたことだ。
昔、渋谷陽一がポップミュージックは「悲しい」ということをよく語っていたが、本作にもそれがある。マイケルという人に付きまとう悲しさと言うべきか。ファミリーの成功に固執する強権的な父親、その父親から植え付けられたコンプレックス、友達を持てない埋め合わせとしての動物愛、そしてピーター・パン願望――本作ではその歪さも描かれている。そして、いちいち台詞で説明する映画ではないので、映像のちょっとしたところで主人公の変化を描写しており、そのあたり注意が必要な映画でもある。
本作については、朝日新聞に掲載されたレビューが批判を受けた。
本作は『BAD』を受けたワールドツアーの場面で終わるが、既に話が進んでいる続編では、どういうアングルから描くにせよ、性的虐待疑惑にも触れざるをえない。どうしても本作より苦く、悲しいものになると思うのだが、果たしてどうなるか。
あと、『ボヘミアン・ラプソディ』に続いてマイク・マイヤーズがレコード会社の重役を演じているのに笑ったが、これはヒット祈願のゲン担ぎだろうか。
