映画『エド・ウッド』におけるオーソン・ウェルズ登場は、映画ファンの願望の結晶といえる場面である。ウェルズを演じたヴィンセント・ドノフリオも見事で、ワタシも初級映画ファンとして血が沸騰するのを感じたわけだが、彼が『フルメタル・ジャケット』のデブ二等兵と同一人物だというと驚く人も多いだろう。
件の場面でウェルズは、映画会社にメキシコ人の役としてチャールストン・ヘストンをあてがわれたと嘆くのだが、これはもちろん『黒い罠』のことである。が、実際の製作過程を辿る限り、その台詞は事実と反しているように思われる。
そしてそもそも『黒い罠』の後という設定なのだから、ドノフリオ演じるウェルズは、初期ウェルズのイメージであって、当時のウェルズにしては痩せ過ぎ(笑)とも言えるわけだ。
しかし、である。当たり前の話であるが、『エド・ウッド』は史実に則った伝記映画ではない。ドノフリオのウェルズ、彼に啓示を受ける女装姿のウッド(ジョニー・デップ)、そして何より映画そのものが素晴らしいという評価は何も変わらない。