当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その29

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、9月に国立国会図書館サーチに登録されている話まで書いたが、国立国会図書館オンラインに書誌詳細ページができているのに今さら気づいた。

これを見ると、東京本館と関西館の両方に収蔵されているんだね。二冊納本してくださった達人出版会に感謝である。

さて、少し前に『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(asin:4479393196)や『症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る』(asin:4796524207)などの著書で知られるヤンデルさんのツイートに『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』の名前が挙がっていて驚いた。

とても嬉しい話である。感想も書いていただけるとさらに嬉しいのだが、そこまでは期待すまい。

かげやまさん (id:algernon3141) が、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』を参考文献に挙げてくださっている。具体的には、「テクノロジースタートアップは経済的不平等に貢献しているか?」ですね。

ワタシの本、文章が何かを考えるヒントというか材料になるなら、ワタシの文章に好意的/批判的問わず、それだけでありがたいことである。どんどん踏み石にしていただきたい。

ウィキペディアの共同創始者ジミー・ウェールズがFacebook対抗の広告のないSNSを立ち上げ

Wikipedia の共同創始者ジミー・ウェールズが、WT:Social というソーシャルネットワークサービスを立ち上げている。

今さら SNS を始めるからには、既存のサービスと違いがあるはずで、それはやはりビジネスモデルになる。Facebook などと違い、広告モデルに依存しない、というか広告自体を入れない方針を謳っている。しかし、広告なしでどうやって運営できるのか? Wikipedia と同じく寄付に頼るとのこと。

記事を読むと、これはジミー・ウェールズが一昨年フェイクニュース打倒を目指して立ち上げたクラウドファンディングのニュースサイト WikiTribune のスピンオフといえるプロジェクトのようだ。

Wikipedia の現在の成功にジミー・ウェールズという人が果たした役割はもちろんとても大きなものがあると思うが、その後は Google に対抗する検索エンジンをぶちあげたが失敗に終わるなど失敗も少なくない。ソーシャルネットワークというと10年以上前には Wikia でそちら方面に色気を見せたこともあり、ニュース分野と合わせてずっと進出したい分野だったのかもしれない。

サイトは先月から始まっているようで、既におよそ5万ユーザを集め、入会待ちが2万8人いるらしいが、当然ながら既存のビッグプレイヤーの足元にも及ばない。果たして本当にまともな競争相手になれるかというと難しいだろう。

ワタシが知る限り日本語圏で唯一このニュースを報じている Financial Times の記事の邦訳に、「当然、私が望んでいるのは5万人でも50万人でもなく、5000万人、5億人だ」というウェールズの強気な発言が引用されているが、前述の Wikipedia 後のお世辞にも成功していないプロジェクトを見ると、本当かねと思ってしまう。

ネタ元は Slashdot

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

Wikipediaをつくったジミー・ウェールズ (時代をきりひらくIT企業と創設者たち)

イーサリアム本の決定版となるであろう『マスタリング・イーサリアム』邦訳がオライリーから出る

今月末に『マスタリング・イーサリアム――スマートコントラクトとDAppの構築』オライリーから刊行される。

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

マスタリング・イーサリアム ―スマートコントラクトとDAppの構築

ワタシがこれの原書を初めてブログで取り上げたのは、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)」で、そのときに刊行時期を「今年の秋」、つまり2017年秋と紹介していたので、邦訳出るまでえらく時間がかかったものだと思い込んでいたのだが、実はそうではない。

オライリー本家の原書紹介ページを見ると、原書が刊行されたのは2018年12月で、元々の刊行予定より一年以上遅れたことになる(なんで?)。それから一年経たずに邦訳が出るのだから、こちらはかなり頑張った部類だと思う。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』において論じられる非中央集権的、分散的なウェブを考える上でブロックチェーン技術、Ethereum が有望視されている話は「付録A インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」にも書いている。

なんといっても著者に(ワタシも「初心者向けBitcoinガイド」を訳している)Andreas Antonopoulos と Ethereum 自体の共同創始者の一人である Gavin Wood が名前を連ねており、またこの日本語版は日本のコミュニティの全面的なバックアップによって完成したらしいので、これは日本における Ethereum 本の決定版になるのだろう。

平民金子さんの初の単著『ごろごろ、神戸。』が来月出るぞ!

かねてより告知されていた、平民金子さん(id:heimin)の待望の単著『ごろごろ、神戸。』が遂に来月発売になる。

ごろごろ、神戸。

ごろごろ、神戸。

この本は、SUUMOタウンへの寄稿「ごろごろ、神戸」、神戸市広報課のウェブサイトに掲載された連載「ごろごろ、神戸2」「ごろごろ、神戸3」を中心としながら、大幅な加筆と大量の書き下ろし原稿を含むようである。

これについて、著者の平民金子さんは以下のようにツイートしている。単なる連載の書籍化とはまったく違うという強い意志が伝わる。

「狂気の書き直しと書きおろし」という文句の後に引き合いに出すのがはばかられるが、万が一平民金子さんの連載を未読の方は、ワタシの紹介エントリを参考にとっかかりにしていただけると幸いである。

これを書いた後だが、4月に開催された平民金子展「ごろごろ、神戸。」(とトークイベント)、そして7月の岸政彦『図書室』刊行記念トークイベント「ごろごろ、大阪・神戸」にもワタシは出向いているのだが、そこで手に入れたもろもろを合わせたものともまったく違ったものになっているようで楽しみである。

平民さんと実際にお会いしたのは4月が初めてだが、ネットで知り合ってから、長らく同じ時間を別々に生きてきたそちらのほうが重要である。平民さんが書くように、それは「ようわからん関係性」としか言いようがないが、その間ワタシの中で平民さんに対する信頼が失われたことはない。

こうも書けるかもしれない。はてな文化圏から生まれた書き手は何人もいるが、『ごろごろ、神戸。』はその最後の大物の単著である、と。

日本人の「知の巨人」好きすぎ問題――書名から日本版「知の巨人」一覧をざっと挙げてみる

これ以前から思っていたことなのだが、日本人って「知の巨人」みたいに権威を祭り上げて、その人の専門分野でない領域まで意見を頼りがちなところあるよね。

さすがに「知の巨人」扱いされた人の一覧と格付けまとめまでは無理だが、その第一歩として、書名に「知の巨人」の文句があるものを人物別に集めてみた。基本的に「知の巨人」は他称なので、本の帯文にこの文句がある場合も含めてみた。ただし、条件に合っても、一冊で何人も対象になる本は(リストが拡散するので)外した。

ワタシの世代では、この呼称を意識したのは立花隆あたりか。個人的には、この人が「知の巨人」っておかしいだろと思う人もいるが、そういう個人の好みはここでは置く。以下、生年順。

アイザック・ニュートン(1643-1727)

イングランドの自然哲学者、数学者、物理学者、天文学者神学者

コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人 (丸善コミックス)

コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人 (丸善コミックス)

荻生徂徠(1666-1728)

江戸時代中期の儒学者、思想家、文献学者。

木村蒹葭堂(1736-1802)

江戸時代中期の日本の文人画家、本草学者、蔵書家。

木村蒹葭堂―なにわ知の巨人

木村蒹葭堂―なにわ知の巨人

グスタフ・フェヒナー(1801-1887)

ドイツの物理学者、哲学者、心理学者。

生命(ゼーレ)の哲学: 知の巨人 フェヒナーの数奇なる生涯

生命(ゼーレ)の哲学: 知の巨人 フェヒナーの数奇なる生涯

横井小楠(1809-1869)

日本の武士、儒学者

南方熊楠(1867-1941)

日本の博物学者、生物学者民俗学者

南方熊楠 - 日本人の可能性の極限 (中公新書)

南方熊楠 - 日本人の可能性の極限 (中公新書)

柳田國男(1875-1962)

日本の民俗学者、官僚。

テクストとしての柳田国男―知の巨人の誕生

テクストとしての柳田国男―知の巨人の誕生

生田長江(1882-1936)

日本の評論家、翻訳家、劇作家、小説家。

知の巨人: 評伝生田長江

知の巨人: 評伝生田長江

折口信夫(1887-1953)

日本の民俗学者、国文学者、国語学者

折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)

折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)

和辻哲郎(1889-1960)

日本の哲学者、倫理学者、文化史家、日本思想史家。

アルフレッド・シュッツ(1899-1959)

オーストリア生まれの社会学者。

アルフレッド・シュッツ――他者と日常生活世界の意味を問い続けた「知の巨人」

アルフレッド・シュッツ――他者と日常生活世界の意味を問い続けた「知の巨人」

ピーター・ドラッカー(1909-2005)

オーストリア生まれの経営学者。

知の巨人 ドラッカー自伝 (日経ビジネス人文庫)

知の巨人 ドラッカー自伝 (日経ビジネス人文庫)

知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営

知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営

梅棹忠夫(1920-2010)

日本の生態学者、民族学者、情報学者、未来学者。

知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)

知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)

梅棹忠夫---地球時代の知の巨人 (文藝別冊)

梅棹忠夫---地球時代の知の巨人 (文藝別冊)

新・深・真 知的生産の技術―知の巨人・梅棹忠夫に学んだ市民たちの活動と進化 (コミュニティ・ブックス)

新・深・真 知的生産の技術―知の巨人・梅棹忠夫に学んだ市民たちの活動と進化 (コミュニティ・ブックス)

ドナルド・キーン(1922-2019)

アメリカ合衆国出身の日本文学者、文芸評論家。

司馬遼太郎(1923-1996)

日本の小説家、ノンフィクション作家、評論家。

吉本隆明(1924-2012)

日本の詩人、評論家。

大林太良(1929-2001)

日本の民族学者。

渡部昇一(1930-2017)

日本の英語学者、評論家。

「知の巨人」の人間学 -評伝 渡部昇一

「知の巨人」の人間学 -評伝 渡部昇一

立花隆(1940-)

日本のジャーナリスト、ノンフィクション作家、評論家。

立花隆の正体―“知の巨人”伝説を斬る

立花隆の正体―“知の巨人”伝説を斬る

荒俣宏(1947-)

日本の博物学者、図像学研究家、小説家、収集家、神秘学者、妖怪評論家、翻訳家。

橋本治(1948-2019)

日本の小説家、評論家、随筆家。

佐藤優(1960-)

日本の外交官、作家。

ニュートンから佐藤優までと書くとなんだそれはという話だが、何かしらの傾向も見えてくる。まずはっきり言えるのは、書名や帯文に「知の巨人」の文句が入るようになったのは、圧倒的に2010年代に入ってからである(上に挙げた25冊中17冊)。一方で、もっとも古い例は1994年6月1日刊行の『コミック ニュートン―近代科学を築いた知の巨人』で、これの編集者はどこまでこの文句に意識的だったのだろうか。

[追記]近藤正高さんから、「知の巨人」はそもそも南方熊楠の代名詞として言われ出したんじゃないかという指摘があった。

調べてみると、南方熊楠についても条件に合う本を見つけたので、彼もリストに加えた。

文庫もないのに――2010年代の終わりに文化系はてなユーザーの本で文庫化されたものをまとめてみる

一月ほど前に以下のツイートをした。

このツイート自体は、1973年組の星である堀越英美さんの『女の子は本当にピンクが好きなのか』の文庫化を祝うものである。

しかし、ふと「単著もないのに」という煽り文句を思い出したついでに、はてなユーザの本で文庫になったものはどれくらいあるだろうかと調べてみた。

ゼロ年代には「新書バブル」なんて言葉もあったと記憶するが、おかげでいろんな人が単著を出す可能性が広がったのは間違いない。

しかし、例えば子供の頃から新潮文庫の100冊といったものになじんできた人間からすれば、「文庫本」にはまた違った重みがあるのである。まぁ、「重み」は大げさだが、2008年2009年に単著を出したはてなユーザをまとめたワタシが、10年後に文化系はてなユーザーの本で文庫になったものをまとめてみようと思った次第である。

条件としては、今もはてなブログにアカウントがあり2018年以降にブログを更新をしている人(故人は除く)、はてなブログはてなダイアリー)を始めたときには単著がなかった人に限らせてもらう。あと「単著もないのに」に対応する以上(?)単著の文庫本だけを対象とする。あと、文庫となると小説が明らかに多いので、小説に関しては三冊までの紹介とする。

以下、50音順。

雨宮まみid:mamiamamiyaWikipedia

50音順で並べたら、雨宮さんの名前が最初にくる。

このエントリを書く準備にあたり、自分が書いた彼女の追悼文をリンクしようとしてはてなブログを検索して、それが出てこないのに混乱してしまったが、それが『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のボーナストラック「グッドバイ・ルック」に含まれているからだった。

文庫ではないが、12月刊行予定の『わたしの好きな街: 独断と偏愛の東京』(asin:4591164829)に雨宮さんの「都会と下町、まるで違う二つの顔を持つ街「西新宿」」が収録される。

石井てる美id:gotoshin_terumiWikipedia

東京大学を卒業して新卒入社したマッキンゼー・アンド・カンパニーからワタナベエンターテインメント所属のピン芸人に転身された異色のキャリアを持つお笑いタレントだが、この方のインタビューを読んでひどく感心した覚えがある。

伊藤計劃id:ProjectitohWikipedia

伊藤計劃さんが亡くなられて、今年で十年になる。新しい読者は、彼がはてなダイアリーをやっていたことを知らない人が多いのだろう。

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

大野左紀子id:ohnosakiko

大野さんもこうしたエントリの常連であるが、現在は Forbes Japan の連載「シネマの女は最後に微笑む」で健筆を奮っている。

荻上チキ(id:seijotcpWikipedia

今では何より「荻上チキSession-22」のメインパーソナリティーとして知られる荻上さんだが、思えば氏と知り合って随分になる。しかし……そもそもワタシは荻上さんにお目にかかったことってあったっけ? と考えて思い出せないのが恐ろしい。

彼女たちの売春 (新潮文庫)

彼女たちの売春 (新潮文庫)

高世えり子(id:eriko_takaseWikipedia

高世えり子さんがこのリストに入るのは少し不思議な気がするが、上記の条件で見ると合致するようなのだ。現在は cakes で連載「理系クンの日々アップデート育児」をされている。

理系クン (文春文庫)

理系クン (文春文庫)

ちきりん(id:ChikirinWikipedia

ずっと彼女のブログは読んでいるが、現在までブログ執筆の更新ペースがほとんど変わらないのはやはりなかなかできることではない。彼女の著書で文庫になっているのは三冊で、小説を除けばもっとも多い。

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! (だいわ文庫)

戸部田誠(id:LittleBoy

てれびのスキマ(戸部田誠)さんの文章は、cakes などで読ませてもらっているが、この5年間くらい毎年途切れず新刊が出ているのはすごい話である。

葉真中顕(葉真中顕のブログWikipedia

いまや罪山罰太郎id:tsumiyama)といっても通じないだろうが、『凍てつく太陽』(asin:4344033442)が第21回大藪春彦賞第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)のダブル受賞を果たした2019年は、葉真中顕さんにとって飛躍の年となったに違いない。

彼の著作ではデビュー作の『ロスト・ケア』を読んでこれはヤラレタと思ったが、その後の作品も読まないといけない。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

コクーン (光文社文庫)

コクーン (光文社文庫)

pha(id:phaWikipedia

少し前に「ザ・ノンフィクション」の「好きなことだけして生きていく 前編~元ニートの再々再々出発~」「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」が放送されているが、残念ながらワタシは住んでいるところの関係で観れていない。

pha さんも40代になり(ようこそ)、シェアハウスを解散し、一人暮らしを始めるという転機を迎える。これから彼が書くものがどう変わるのか/変わらないのか、やはり興味がある。

しないことリスト (だいわ文庫)

しないことリスト (だいわ文庫)

なお、共著も対象とするならば、円堂都司昭さん(ENDING ENDLESS 雑記帖 @『ディズニーの隣の風景』 by 円堂都司昭)、栗原裕一郎さん(id:ykurihara)、そして速水健朗さん(id:gotanda6)の3人が著者に名前を連ねる『バンド臨終図巻』があるし、栗原裕一郎さん(第二子誕生おめでとうございます)には別の共著もある。

こういうリストには抜けがあるものなので、お気づきの方はご指摘ください。

テクノユートピアニズムの闇をえぐるアンドリュー・マランツの『Antisocial』が面白そうだ

こないだ Rebuild.fm で森田創さんが、また Facebook で八田真行さんがアンドリュー・マランツAntisocial という本を取り上げているのを見て、この本についての記事を以前読んだような……と記憶を辿り、New Yorker の記事を思い出した。

日本語訳もあるので、そちらを読んでいただければ、この本の内容はだいたいつかめると思う。そうか、アンドリュー・マランツは New Yorker の記者なんだね。

この本の推薦者にジャロン・ラニアーが名前を連ねているのが象徴的だが、Facebook に代表されるテクノユートピアニズムを信奉する巨大テック企業らによるソーシャルメディアが民主主義を破壊したと糾弾する本は、それこそ前回のアメリカ大統領選挙以降のトレンドなのだけど、この本はジャーナリストによる一つの決定版なのかもしれない。

著者が TED2019 で行った著書の内容を要約する講演があるのだが、現時点で残念ながら日本語字幕は付いていない。

いずれにしても、これは邦訳が出るべき本でしょう。

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

ジャネル・シェインの新刊が説くAIのキテレツさとブラックボックスなAIの危険性

ジャネル・シェイン(Janelle Shane)というと、やたらと AI にヘンなことをさせてそれが日本語メディアでも記事(参考:ねとらぼGIGAZINEギズモード・ジャパン)になる AI Weirdness の人という印象があるのだが、その彼女が AI についての本を書いたとな。

You Look Like a Thing and I Love You

You Look Like a Thing and I Love You

今の AI の成果ってかなりキテレツなのに過大評価しがちだし、ブラックボックスアルゴリズムに人間の生活に支配されることに警戒しないといけないよねということだが、メレディス・ブルサード『AIには何ができないか』もそうだが、こういう本が出だしたということなんでしょうね。

やはり彼女も TED2019 で著書の内容を要約する講演を行っている(残念ながらこの動画にもまだ日本語字幕が付いていないが)。全体的に話の内容が古いのではないかという疑念が頭をもたげるが、写真からテンチを識別するよう AI に学習させたら人間の指を選択するようになった話など笑ってしまう。

ネタ元は Slashdot

クロサカタツヤさんの初の単著『5Gでビジネスはどう変わるのか』が今週出る

ワタシ的には『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第67回で大変お世話になった(参考:その1その2)クロサカタツヤさんの新刊『5Gでビジネスはどう変わるのか』が今週刊行される。

5Gでビジネスはどう変わるのか

5Gでビジネスはどう変わるのか

調べてみたら、意外なことにクロサカタツヤ名義の単著はこれが初めてなはずである。主題的に今とても求められているトピックなのは間違いないし、クロサカタツヤさんが書くのだから凡百のネット記事な解説本ではないだろう。これは期待の新刊である。

内容紹介を見ると、5G の【黎明期+ピーク期】が今年までで、来年からは【幻滅期】という認識なのが氏らしいと思う。しかし、【安定期】に入るのは2026年からなのかぁ……。

あなたが『シャイニング』について知らないかもしれない25のこと

今月末に日本でも映画『ドクター・スリープ』が公開になるが、Netflix で傑作「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」を作ったマイク・フラナガンの監督作なので、ワタシも楽しみにしている。

『ドクター・スリープ』は言うまでもなく『シャイニング』の続編なのだけど、スタンリー・キューブリックによる映画版は原作者スティーヴン・キングから厳しい批判を受けるなど毀誉褒貶の激しい作品である。映画版についてあなたが知らないかもしれない25のことが記事になっている。

正直、誰でも知っとるわい、というのも多いのだけど、あっと驚く話もあったりする。

  1. キューブリックは『シャイニング』を作る前からホラー映画に関心があった(『エクソシスト2』のオファーがあったため)
  2. 映画『シャイニング』は、1952年にキューブリックが携わったテレビシリーズ Omnibus のあるエピソードがインスピレーションになっている
  3. キューブリックはキングが書いた脚本を読みもしなかった
  4. それなのにキューブリックはキングに質問をしている(朝の7時にキングに電話をかけた有名な話)
  5. 『シャイニング』にはキューブリックの家族が何人も参加している
  6. キングはキューブリックの脚色に「失望」した(これは上記の通り有名ですね)
  7. キューブリックは『シャイニング』のロケーション撮影に参加していない(冒頭の空撮ですね)
  8. 原作では217号室だった部屋が、映画では(オーバールック・ホテルの外観に使用された)ティンバーライン・ロッジの要請で(ホテルに存在しない)237号室に変更されている
  9. 映画に登場する「All work and no play makes Jack a dull boy」は各国でいろんな風に翻訳されている(紹介されているドイツ語版、スペイン語版、イタリア語版、どれも誤訳に思えるのだけど……)
  10. 上記の「All work~」をキューブリック自らが全部タイプしたという噂がある
  11. 映画でPlaygirl誌がこっそり映っている
  12. ダニー役を演じたダニー・ロイドは『シャイニング』が唯一の出演作ではない
  13. ダニー・ロイドは『シャイニング』がホラー映画と知らずに演技していた(彼に恐怖を与えないように、キューブリックが彼を守っていた)
  14. ジャック・ニコルソン「やぁぁぁ、ジョニーだよ」の台詞はアドリブ
  15. ニコルソンはあるシーン全体の脚本を書いている
  16. キューブリックシェリー・デュヴァルの関係はよくなかった(というか、デュヴァルの役柄に合わせてキューブリックが故意に彼女に辛く当たった)
  17. ディック・ハローラン役は(『博士の異常な愛情』で一緒に仕事をしていた)スリム・ピケンズにオファーされていた
  18. オーバールックホテルは、空間的な視点で見ると映画と矛盾する
  19. セットの多くが、撮影の終わり頃に起きた火事で焼け落ちた
  20. 雪の中で迷路の追跡場面のために900トンの塩が要った(あれ塩だったのか!)
  21. 映画の制作に5年を要している
  22. 原作とも違う、独自のエンディングが存在する(参考:シャイニング幻のエンディング
  23. 前作『バリー・リンドン』はキューブリックにとって最も商業的に失敗した映画(だったため、『シャイニング』は当てる必要があった)
  24. 『シャイニング』は多くの陰謀説を生み出すことになった
  25. 『シャイニング』の最も有名なファンサイトの運営者は、後に『トイ・ストーリー3』の監督になった(し、『トイ・ストーリー3』は『シャイニング』へのオマージュがいくつかある)

最後のマジか!

個人的な話だが、少し前に人と『ドクター・スリープ』の話になり、相手は『シャイニング』を観てないというので、DVD を貸すよと安請け合いしたのだが、自分のコレクションを見て、『シャイニング』の DVD を持たないのに気づいた! なんてこったい。でも、『シャイニング』は Netflix で観れるというので事なきをえた。

そういえば、同じくキング原作マイク・フラナガン監督作の『ジェラルドのゲーム』もやはり Netflix で観れるね。

皆さんも『ドクター・スリープ』公開を前に『シャイニング』を観直してみるのはいかがでしょう。

シャイニング [Blu-ray]

シャイニング [Blu-ray]

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その28

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、前回の宣伝をしつこく続けていたら売り上げが伸びたという話のブックマークに id:rgfx さんがありがたいコメントを書いてくださっている。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の宣伝をしつこく続けていたら売り上げが伸びたという話 - YAMDAS現更新履歴

「第50章 ネットにしか居場所がないということ」とか「付録A インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」とか良いよね。

2019/10/29 13:59

特に最新版で電子書籍に追加した「付録A インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」を挙げてくれているのが嬉しい。こう書いてもらえると、がんばって書き下ろした甲斐があるというものだ。

ありがたいことに作家の樋口恭介さんが、ワタシのツイートから辿って「個人ブログ回帰と「大きなインターネット」への忌避感、もしくは、まだTwitterで消耗してるの?」、そして『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のことを紹介してくださった。

個人的には「個人ブログ回帰と――」は思い出深いものがある。この中でいささか冷ややかに言及しているクロサカタツヤさんとサイゾーの『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』で対談したとき(参考:その1その2)、対談記事には含まれていないが、「個人ブログ回帰と――」のことをクロサカタツヤさんと話す機会があったからだ。

樋口恭介さんの note を読めば分かるようにこの文章で書いた問題は文脈を変えながら残っているし、それは対談記事でも言及がある「劉慈欣の話題の『三体』と「暗い森」になりつつあるインターネット」につながっていると思うのだ。

そうした意味で、樋口恭介さんのインスピレーションに何らかの刺激というか、うまいトスを上げられたなら、「捨て石になるのは嫌だが、踏み石なら喜んでなる」がポリシーのワタシとしては満足である。

また、樋口恭介さんが書名を挙げてくださったおかげで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来 』に興味を持ってくれた方もいるようで、ありがたい話である。

もう少しは宣伝ブログを続ける余地があるのかもしれない。感想、書評、まだまだお待ちしております!

TikTokの時代に我々はスローダウンできるのか? 気鋭のヴィジュアルアーティストが説くアテンションエコノミーへの反逆

TikTok の時代に我々はスローダウンできるか?」というタイトルが面白くて調べてみたら、この文章の著者の Jenny Odell はヴィジュアルアーティストにしてライターみたいで、今年の春に本を出していた。

日本でもちゃんと紹介されていた。元掲載サイトである JBPress ではプレミアム会員にならないと読めないが、ちょっと邪道かもしれないが配信先のライブドアニュースで全文読めます。

ジェニー・オデルは、先端技術のメッカ、シリコンバレーのど真ん中で育ち、Google Earth などでデジタルデザイン作品を発表しているネットネイティブなミレニアム世代なのにあえて、ソーシャルメディアが主導するアテンションエコノミーへの反逆を説いているところが面白い。具体的には彼女自身アーティストなので、学生には「クリエイティビティには時間がかかる」ということを説いている。

これを機に調べてみたら、刊行当時コリィ・ドクトロウも書評を書いて推している。

「何もしない方法」という副題は挑発的で、これは邦訳出ると面白いと思うね。

How to Do Nothing: Resisting the Attention Economy

How to Do Nothing: Resisting the Attention Economy

How to Do Nothing: Resisting the Attention Economy (English Edition)

How to Do Nothing: Resisting the Attention Economy (English Edition)

調べてみたら、著者は Google でこの本の講演をやっている。YouTube のコメント欄を見ても、この講演をシリコンバレーの中心地のひとつである Google でやってることに皮肉を感じている人が散見され、「まるで屠殺場でヴィーガンのライフスタイルを勧めるプレゼンをやってるみたいだ」というコメントに笑ってしまった。

さて、実は以上のエントリは2か月近く前に書いていたのだが、なぜか公開し忘れていた。

WIRED.jp の菅付雅信の連載『動物と機械からはなれて』にジェニー・オデルのインタビューが掲載されているのを見て(これもなかなか面白いインタビューである)、自分のブログを検索しても彼女についてのエントリが出ないのに公開し忘れに気づいた次第である。

首席指揮者に就任した挾間美帆を空港で歓迎するデンマーク・ラジオ・ビッグ・バンドの映像がステキ

作曲家、編曲家にして、2016年にはダウンビート誌において「ジャズの未来を担う25人」に選出されてもいる挾間美帆が、2019年10月からデンマークの DR Big Band(The Danish Radio Big Band)の首席指揮者に就任しているのだが、それに先立ちバンドはコペンハーゲン空港に到着した挾間美帆を盛大に歓迎している。

こういうのステキだよね。

挾間美帆の一年前のインタビューを読むと、DR Big Band と初共演だった2017年の東京ジャズのときのことを「デンマークのDRビッグバンドは面識がなくて、リハの時点で私を信用していないことは分かった」と振り返っているが(このインタビューを読むと、オーガナイザーとして彼女が有能なのが分かる)、こういう映像を見るとその後の共演を経て DR Big Band との間に信頼関係も築けているようで素晴らしいことだと思う。

挾間美帆のツイッターを見ると、このときの模様は日テレのニュース番組でも取り上げられたようだが、こんなステキな話が日本のネットメディアで一月以上まったく話題になってないようなのは不思議である。

ダンサー・イン・ノーホエア

ダンサー・イン・ノーホエア

  • アーティスト: 挾間美帆,m_unit,スティーヴ・ウィルソン,ジェイソン・リグビー,アンドリュー・グタウスカス,ジョナサン・パウエル,アダム・アンズワース
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る

A Good Time Was Had By All

A Good Time Was Had By All

映画『ブレードランナー』は2019年の技術をどれくらい予言していたか?

映画『ブレードランナー』は2019年11月のロサンゼルスを舞台しており、つまりは『ブレードランナー』に現実のタイムラインが追いついたというか、『ブレードランナー』の世界は「未来」ではなく「過去」になるわけである。

『ブレードランナー 2049』は、なんで2049年かというと、『ブレードランナー』から30年後ということだったんですね。今さらだけど。

BBC の記事は、『ブレードランナー』は2019年の技術をどれくらい予言していたかを取り上げている。そういえば、『2001年宇宙の旅』にも『HAL伝説―2001年コンピュータの夢と現実』(asin:4152080957)という本があったのを思い出すが、『ブレードランナー』はどうか。

ロボット

まず現在のロボットは、映画における「レプリカント」には及ばない。しかし、AI(人口知能)がどんどん進化しているのはご存知の通りで、「セックスロボット」も現実化が見えてきている。

ビデオ通話

ビデオ通話は既に一般的になっている。しかも、『ブレードランナー』の描写と異なり、ネットサービスを使えばビデオ通話そのものにお金はかからない。

ホームアシスタント

音声操作によるバーチャルアシスタントも Amazon の Alexa などが実現してますな。

嘘発見器

ブレードランナー』ではレプリカントを識別するのにフォークト=カンプフ検査が使われているが、現実の嘘発見器はその信頼性が疑われており、イギリスでは嘘発見器の結果は証拠として採用されないらしい(そうなのか!)。

地球の環境破壊

ブレードランナー』で特徴的だったのは、クリーンな未来を描きがちだったそれまでの SF 映画と異なる、産業公害により荒廃したロサンゼルスの描写である。また地球からの移住を余儀なくされているという設定だが、現実は当然惑星間の移住はまだ実現していない。しかし、昨今の気候変動の行きつく先を、この映画のロサンゼルスの描写になぞらえたくなる人はいるだろう。

写真

記事の「Blade Runner ignores the Instagram generation」という見出しに笑ってしまったが、現実もポラロイド写真はしっかり残っているが、この映画のように捜査には使われない。

しかし、この映画で登場する、写真に写るものをズームしたり角度を変えてみたりするエスパー(Esper)マシンは未だに時代を先んじている。とはいえ、「瞳に映った景色」でアイドルの住所が特定された話を聞いて、エスパーを連想した人は多かったろう。

空飛ぶ車

ご存知の通り、空飛ぶ車はまだ実験段階である。この記事では NEC の「空飛ぶクルマ」試作機が引き合いに出されている。

そういえば、ポリススピナーの展示会亜細亜大学でもうすぐ行われるとな。

ヘアドライヤー

この映画で出てくるような、金魚鉢を逆さにしたような形状の、数秒で髪を乾かすヘアドライヤーは実現してませんな。

こうして映画の細部と現実をいくら比べても、あの映画の偉大さに近づけないというのはその通りなのだけど、あの映画が設定上「過去の世界」になるというのは不思議な気持ちになる。

ネタ元は Boing Boing

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。

公開初日に観たが、ワタシが観に行けるシネコンのレイトショーは吹替版だった。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が面白かったので、主人公たちが大人になった第2章も楽しみだったが、169分という上映時間にはさすがにたじろいだ。膀胱的プレッシャーに弱いワタシだが、近年の映画の長尺化に鍛えられたところもある。実際、本作は膀胱的プレッシャー、というか文字通り時間を忘れさせてくれる作品だった。

前作について、原作者のスティーヴン・キングはあんまり宣伝ツイートなどしてなかった印象があって、時代設定を80年代に変えたのが気に入らんのかなとか邪推していたが、前作の大ヒットに気をよくしたか、しっかりカメオ出演していて、なかなかの芸達者ぶりを見せている。

ワタシはホラー映画は好きだけど、映画館で観るとショック描写にビクッ! となって恥ずかしい思いをすることが多く苦手なのだが、とにかく本作はそのビクッ! の連続な映画なのである。前作にはわずかばかりあった「それ」が来そうで来ないという肩透かしは一切なくなり、なんか来そうと思ったら100%ドギャーン! となる演出なのである。

安くない金出して観に来た客をしっかり怖がらせ、エキサイトさせてくれる映画としては文句なしなのだけど、それこそ『スタンド・バイ・ミー』にもつながるような詩情は失われてしまっているように感じた。事前に予想していたよりも、主人公たちの子供時代も本作でもフィーチャーされていて、それは良かったけれど。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2019 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)