当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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Kieferのライブに行ってきた

livepocket.jp

Kiefer の来日公演があること自体、しかもその中に福岡公演が含まれることを柳樂光隆さんによるインタビューを読んで初めて知った。

一昨年にトム・ヨークの福岡公演に行ったときにも散々愚痴っているが、洋楽アクトの来日公演に福岡が入らなくなって久しい。

たまにそういう機会があっても、こちらの都合が合うとは限らない。例えば、先月 Mei Semones の福岡公演があったのに行けなくて悔しく思っていたので、Kiefer の福岡公演と聞いて、半ば仕事をぶっちして行ってきた。

もちろんハコの関係もあろうが、福岡公演が SOLD OUT と聞くと客の側も嬉しいよね。

今のところもっとも最近のアルバムとなる『Something for Real』を聴いて、Kiefer って結構喋る人だなという印象があったのだが、このライブでも曲間にいろいろ喋ってくれ、彼の陽性の人柄が伝わってよかった。

本編が少し短いかなという感じだったが、アンコールを2回やってくれて、全体として満足いくライブだった。

ワタシはジャズを語るボキャブラリーを持たないので、福岡でいいライブ観れて良かったー、といったレベルでしか書けないのだが、本当にありがたく思った。"Be Encourged" とか良かったな。

フォーブスが毎年選ぶ「30歳未満の30人」は「刑務所へのパイプライン」なのか?

techcrunch.com

毎年フォーブス誌が「30歳未満の特筆すべき30人」を選んでいて、2026年版も既に選出されている(2025年の日本版)。

しかし、この TechCrunch の記事で、「30歳未満の30人」リストについて、「その選出者の多くが後に詐欺罪で起訴されることで今や悪名高い存在になっている」と書いていて笑ってしまった。

この記事で取り上げられているのは Kalder の創業者で CEO の Gökçe Güven が証券詐欺や個人情報窃盗などの罪で米司法省に起訴された件だが、「選出者の多くが後に詐欺罪で起訴される」話を少し前にどこかで読んだ気がする……と記憶を辿ったら、「シリコンバレーの技術解決主義を斬る『フィンテック・ディストピア』」で取り上げたヒラリー・アレン『フィンテックディストピア』の第1章だった。

メディアは時々「フォーブスから刑務所へのパイプライン」と揶揄するが、バンクマン=フリードは2021年にフォーブスの「30歳未満の30人」リストに選ばれていた。FTX 傘下のヘッジファンド「アラメダ・リサーチ」の CEO を務めていたキャロライン・エリソンも、2022年の同リストに名を連ねていた(エリソンは一時期バンクマン=フリードと恋愛関係にあった。FTX 崩壊の予期せぬ副産物として、私たちは皆、ポリキュールという関係性を知る羽目になった)。エリソンは2022年に詐欺罪で有罪を認め、バンクマン=フリードのぼさぼさの髪とカーゴショーツの風貌が、彼をいいヤツに見せるため意図的に作り出されたものだったことも認めた。2023年末、フォーブスは「恥の殿堂:30歳未満の30人リストに選ばれた史上最も疑わしい10人」と題した反省記事を掲載した。バンクマン=フリードとエリソンの両名が、記事に名を連ねた。

やはり、サム・バンクマン=フリード方面でこの評判は決定的になってしまったんでしょうな。そして、今回の Kalder もフィンテック企業なんだよね。フィンテックディストピア

でも、Forbes が反省記事をちゃんと出したのは偉いと思う。

あと、↑の引用中に出てくる「ポリキュール」って何? と思ったが、港区女子のことらしい(違います)。

これを書くために Wikipedia の Forbes 30 Under 30 のページを見てみたら、ちゃんと "Forbes-to-fraud pipeline" という小見出しがあった(笑)。これを読んで、エリザベス・ホームズが意外にも「30歳未満の30人」に選ばれていないのも知った。

ネタ元は Slashdot

高須正和さんらの論文がIEEE Xploreに掲載されている

高須正和さんが告知している通り、彼が筆頭著者である論文が、IEEE が提供する電子ジャーナルのプラットフォーム IEEE Xplore に正式掲載されている。ワオ!

ハードウェア分野、特にマイコンボード市場における開発者中心のアプローチ(これを toDtoB:to Developer to Business と呼ぶのか、知らなかった)の有効性について、日本市場における M5Stack と Arduino の販売・利用データを比較して評価し、ソフトウェア分野で長年実証されてきた開発者ファースト戦略が、アジャイルな製品リリースとコミュニティエンゲージメントと組み合わせることで、産業用ハードウェアの採用促進にも寄与し得るという結論を示唆している。

高須正和さんというと、スイッチサイエンスでオープンソースハードウェア M5Stack に携わってきた人だが、とにかくメイカーフェアのために世界中を飛び回っている人という印象が強い。その彼がこういう論文もちゃんと形にしているのはすごいと思う。

著者の並びに『感電上等! ガジェット分解のススメ HYPER』の共著者である秋田純一金沢大学教授もいますな。

高須さんといえば、彼へのインタビューを記事化した「だからトヨタ、ユニクロ、無印良品は何が起きても強い…日本人が気づいていない「日本メーカー」の世界の評価 「PDCAの病」が日本の停滞を招いている」も読んだばかりだが、お元気そうで何よりである。

Literary Hubが選んだこの10年における最高の書籍カバー

lithub.com

ブックカバーデザイン(本の装丁)についての記事をここでも何度か取り上げてきたが、文学ウェブサイトの Literary Hub が毎年選んできた最高のブックカバーを10年分、全75冊をまとめている。

上記の通り、このサイトは文学寄りなので、ワタシが買ったことのある本はまったく入っていないのだが、見ていくと何冊か日本文学の本(の英訳)が入っていておっとなった。

まずは2019年に First Place として選出されているのが小川洋子『密やかな結晶』(asin:4065214645)の英訳『The Memory Police』。なお、この本は全体の Second place にも選ばれている。

続いては2020年に First Place として選出されている柳美里『JR上野駅公園口』(asin:4309415083)の英訳『Tokyo Ueno Station』。

同年には、小山田浩子『穴』(asin:4101205418)の英訳『The Hole』も Second Place として選出されている。

The Hole

The Hole

Amazon

なるほど、こういうデザインが良いものとされてるんだな、と納得するものもあれば、例えば柳美里『Tokyo Ueno Station』など、そんなに良いデザインか? と思うものもあったりする。

ネタ元は kottke.org

HELP/復讐島

サム・ライミといえば、高校時代に『死霊のはらわた2』を観てノックアウトされて以来、好きな監督である。「ホラー映画ベストテン」に『死霊のはらわた2』を選んでいるが、『ダークマン』や『スパイダーマン』シリーズはもちろん、『シンプル・プラン』のような映画も好きだ。

しかし、思えば彼の監督作を観るのは『スパイダーマン3』以来で、これは主に彼が2010年代主にプロデューサー業中心だったからだが、随分間隔があいたことになる。

本作についてとても良いという評判を小耳に挟んでいたので、公開二週目だが口コミ効果で客が増えてないかなと思ったが、レイトショーはワタシ含め3人での鑑賞だった。洋画厳しいっすね。

飛行機事故に離れ小島に流されてしまった男女、これが昔なら必ず入るであろうラブコメ要素は排除されていて、それが今どきである。

構図的に、権力にふんぞり返るディラン・オブライエン演じる社長に侮辱されてきたレイチェル・マクアダムス演じる女性主人公を応援したくなるのだが、単純にそういう構図で女性が男性権力者に復讐するだけの映画になってない。自己啓発書大好きな女性の主人公にも実に意地悪な視点が光っている。

ディラン・オブライエンというと、Netflix 映画の『ラブ&モンスターズ』では好青年だった彼が、ここでは俺様なパワハラ社長を演じている。

それよりレイチェル・マクアダムス『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』でヒロインを演じていた彼女が、『ヘレディタリー/継承』トニ・コレット……まではいかないが、振り切った顔芸をやっていて、それだけでも一見の価値がある。

ランニング・マン

公開初日に行ってきたが、上映時刻の関係で吹替版の鑑賞となった。

エドガー・ライトの新作はスティーヴン・キングの『バトルランナー』の二度目の映画化で、ワタシはアーノルド・シュワルツェネッガー主演の一度目の映画化は観ていないので、そちらとの比較はできない。原作のうぃきっぺのページを読むと、本作は原作に忠実な映画化に見える。だから、飽くまで主役がテレビなんですね。エンドロールまで印刷物が幅を利かせているところもそうだろう。

で、キングの原作における時代設定は2025年(!)、荒廃し、管理国家となったアメリカなのだが、そういえばキング原作といえば、やはりディストピアなデスゲームものである『死のロングウォーク』が昨年映画化されており、やはりこれは現実のアメリカの反映でしょうか。

本作の主演が『ツイスターズ』『ヒットマン』に主演するなどノッてるグレン・パウエルと聞いて、エドガー・ライトとグレン・パウエルなら、これは絶対面白くなる組み合わせやろ! と確信したのだが、米国での批評家受けは芳しくない。

どういうことかと思ったが、うーん、これは雑だろというところが確かにあるし、設定がうまく機能していないところもいくつかある。この雑さは意図的なものだろうか?

パウエルが演じる主人公のベン・リチャーズの造形、その負けん気の強さが本作の核になっている。彼が見せる怒りも、コメディリリーフの役割のマイケル・セラも良かったと思う。エドガー・ライトらしいコメディ味はもちろんあるし、観ててエキサイトさせられた。映画としての性質がまったく異なるはずの『エディントンへようこそ』に通じる分断の風刺もあった。

しかし……映画総体としてすごく良かったというと、もにょもにょとなるところが残っている。番組側に人格を歪められて伝えられている主人公に説得される人たち(視聴者)に説得力が足らなかったか。

ウィキペディアの「自分の発明で死亡した発明家の一覧」が趣深い

先月、開設25年を迎えたウィキペディアには、意図せずしてなんとも趣深い情報源となったページがいくつもある。

このブログでも過去、「社名の由来一覧」「長期にわたり荒らし行為を行っている利用者リスト」、そして「2022年以降に不審死を遂げたロシア人実業家」のページなどを取り上げてきた。

今回 Boing Boing が取り上げているのは、List of inventors killed by their own invention自分の発明で死亡した発明家の一覧)のページだ。

はてなブックマークを見ると、2011年にバズっている歴史のあるページなのだが、知らない人も多いだろう。

日本語版ページには鈴木嘉和(通称「風船おじさん」)が載ってるとか、もっとも最近このリストに加えられたのが、潜水艇タイタン沈没事故で死去したストックトン・ラッシュだといった発見がある。

これだけだとウィキペディアをダシにふざけていると思われそうなので、過去ワタシがウィキペディアに関係して行った翻訳を宣伝させてください。

ジミー・ウェールズアーロン・スワーツの文章はもはや歴史的価値しかないと思うが、ともかくワタシも真面目に Wikipedia を取り上げてますよ、ということで。

NTT出版のDISTANCE.mediaからオードリー・タンやテッド・チャンのインタビューを収録したzineが二冊出ていた

DISTANCE.media のことを知ったのは……確か昨年だったかな。このサイトのコンテンツを一通り読んでいる、とまではいかないが、興味ある人のインタビューや対話がいくつもあって気になっていた。

で、そこのコンテンツから zine が2冊刊行されていたのを偶然知った。

まずは『DISTANCE.zine 01 〈WE〉の時代のテクノロジー』で、オードリー・タンとユク・ホイのインタビューが目玉ですね。

そして、もう一冊は『DISTANCE.zine 02 AIは生命に近づくか』。こちらはテッド・チャンのインタビューと対話が収録されている。

上で「偶然知った」と書いたが、これには理由がある。サイトのコンテンツの書籍化となれば、普通 DISTANCE.media のトップページで告知するじゃないですか。しかし、ワタシの見落としでなければ、先月刊行された2冊の zine について、サイトのどこにも記述がないようなのだ。これは少し不思議に思う。

収録内容はサイトで読めるものだと思うが、こうして zine の形となることで、DISTANCE.media は知らないがオードリー・タンやテッド・チャンに興味ある人にリーチするのかもしれない。

ボイジャーのnoteでダグラス・ラシュコフについての連載が始まっていた(のを今更知る)

note.com

昨年10月末の投稿を今更取り上げさせてもらうが、株式会社ボイジャーの note でダグラス・ラシュコフをめぐる新連載が始まっていた。しかも二つ。

ダグラス・ラシュコフの『デジタル生存競争』のことは、ワタシも「テクノ楽観主義者からラッダイトまで」で取り上げているが、2万5000部を超える売上を記録していたとは!

始まっていた連載だが、まずは北沢栄氏の「ラシュコフをもっと知る」。

そして、伊藤明彦氏の「ラシュコフは発信する」。

取り急ぎ紹介まで。

GPS開発の礎を築いた黒人数学者の先駆者グラディス・メイ・ウェストが95歳で亡くなる

www.openculture.com

1950年代に米海軍兵器開発研究所に入って地球の測位研究を行い、GPS全地球測位システム)の誕生に大きな貢献をした数学者グラディス・メイ・ウェストが95歳で亡くなった。

Open Culture の記事によると、彼女はバージニア州の田舎で生まれ、タバコ農場で働きながら育ち、そこから逃れるために高校の卒業生代表となってバージニア州立大学への奨学金を獲得し、数学で修士号を取得した。そして、しばらく教師を務めた後、バージニア州ダルグレンの海軍基地に職を求めた。

彼女は爆撃表の精度を電卓で検証することでまず頭角を現し、その後、コンピュータープログラミングチームに昇進した。彼女の仕事が現在の GPS の礎を築いたわけだが、彼女はダルグレン海軍基地で働いていた4人の黒人数学者の一人であった。

と聞くと、誰もが映画『Hidden Figures』(邦題『ドリーム』)を連想するわけだが、これが公開された2016年であっても、ウェストの子供たちすら、軍により機密扱いされた彼女の重要な仕事について何も知らなかったという。2018年、大学の女子学生社交クラブが主催したイベントのために彼女が経歴書に記入した情報によって初めて、彼女の仕事は公になった。

それでようやく彼女の仕事に脚光があたったわけだが、GPS について聞かれると、彼女は昔ながらの紙の地図の方が好きだと答えたらしい。

5年ほど前にアマチュア天文家から世界的な太陽観測者となった小山ひさ子を取り上げたことがあるが、このように歴史に埋もれ(かけ)たマイノリティの仕事ってあるのだろうな。

気が赴くままに書いていく(『編集の明暗』オンラインイベント、2009年のウィキメディア・カンファレンス、ウィキペディア25周年)

「未知へのアプローチは、まだ可能か?|『編集の明暗』の使い方、もしくは参加者のお悩みオンライン相談会」は、普段であればまだ帰宅しておらず参加できない時間帯に開催されたオンラインイベントなはずが、たまたま家にいたために聞かせてもらった。

ワタシ的には柳樂光隆さん経由で知ったイベントだが、基本的には黒鳥社から出た『編集の明暗』についてのものであり、イベントに参加してから、この本について少し前にモーリさんが書いていたのを思い出した。

mohritaroh.hateblo.jp

ワタシにしても津野海太郎と聞くと真っ先に浮かぶのは『本とコンピュータ』なのだが、モーリさんが最後にリンクしている「ウィキメディアンのイベント日本初開催、国会図書館長ら講演」を読んでいて、長尾真国立国会図書館長(当時)の講演のくだりで、あれ? ワタシ、この話聞き覚えがあるな、と思い当たった。

yamdas.hatenablog.com

自分のブログを検索して、Wikimedia Conference Japan 2009 に参加していたのを思い出した。ならば当たり前の話である。

2009年というと15年以上前、ワタシもまだ30代半ば、土曜日に上京して WCJ2009 に参加し(その夜は確か yomoyomo 飲み会をやっている)、日曜深夜には文化系トークラジオ Life を観覧し、そして月曜(祝日)には Make: Tokyo Meeting 04 を見て回ったんだから、元気よね。

この当時、年に数回文化系トークラジオ Life をスタジオ観覧していたというのは今では信じられない話である。これから16年経って、文学フリマ東京41で岡田育さんと再会したというのもなかなかである。

www.kokuchpro.com

そういえば、やはり今週参加したオンラインイベントで、WCJ2009 における長尾真氏の講演で、「詳しくはウィキペディアを調べてください」という一言に会場がどよめいた話を日下九八氏がしていたが、ウィキペディアの認知も当然かなり違いがあるわけだ。

そのウィキペディアも今月25周年を迎えた。

wikipedia25.org

20周年のときに Wikipedia @ 20 という本が編まれているので、それからまだ5年ではそういうのはなかろう。でも、昨年出たジミー・ウェールズの初めての本の邦訳を出すには25周年の今年はタイミングがよいのではないでしょうか。

オープンソース開発は「フォークしたら忘れてAIに委ねる」時代になるか

medium.com

「フォークして忘れるディケイド」とはなんだと思うが、ティム・オブライエンが書くオープンソース開発の変遷の話である。

1990年代は舞台が整った10年である。1990年代前半まではプロプライエタリな OS が主流だったが、ウェブ(WWW)が立ち上がると、そのサーバを担ったのは Apache だった。が、そのバックエンドは Oracle などの商用エンジンに依存しており、初期のウェブはオープンソースなしにありえなかったが、中核はクローズドなままだった。

それでも LinuxFreeBSD がウェブと出会った瞬間が、次のディケイドのオープンインフラ基盤を築いた。

で、2000年代は「オープンソースの10年」だったとオブライエンは書くが、このディケイドでオープンソースは主流となった。

ApacheEclipseMozilla のコミュニティは単にコードを書いていただけでなく、一種の評判ゲームを構築していた。「私はコミッターだ」という肩書きが、スタートアップの資金調達や就職を可能にしたのである。コミッターであることが社会的資本になったわけだ。

そうして当時は、マスターレポジトリへの貢献がプロジェクト支配につながり、フォークは協力ではなく反抗とみなされ、オープン性に捧げられた運動の中で、権威は集中していた。

そのパラダイムを変えたのは分散型バージョン管理システムであり、およそ20年前にリーナス・トーバルズが開発を始めた Git だった。

かくして2010年代は「大いなる分散化の時代」だったとオブライエンは書く。Git は Subversion を押しのけ、フォークを日常的な行為に変え、GitHub はバージョン管理をソーシャルネットワークへと変貌させた。

しかし、摩擦が消えたことでフィルターも失われた、とオブライエンは書く。Git はコードを分散化しただけでなく、注目そのものを分散化したというのだ。

そして、もう折り返し地点を過ぎた2020年代をどう呼んだものか。それがこの文章のタイトルにある「フォークして忘れるディケイド」なのだが、生成 AI がオープンソースを再び変容させているとオブライエンは書く。

ゼロ年代、必要な機能を備えてないライブラリをどうにかしようと思ったら、メーリングリストに参加し、コミュニティで信頼を築いてコミッターになる必要があった。それには時間がかかるし、政治的な立ち回りも必要だった。

それが今では、フォークして修正したい内容を AI に説明すれば、5分後には次の作業に移れるとオブライエンは書く。レビュー待ちの行列に並ぶ必要も、メーリングリストでコーディングスタイルの議論をする必要もない。

そして、オブライエンは、生成 AI を利用して開発する、しかし生成したコードを読めない人のための愛称が生まれると予測している(将棋における「観る将」みたいな感じか?)。

もちろん大規模プロジェクトでは人間の開発者が求められ続けるが、AI 生成のオープンソースの貢献が急増し、エコシステムに影響が出るのは間違いない。

cURLtldraw など「AI 生成のオープンソースの貢献」と人間の開発者の摩擦が生じているが、かつてオープンソースを結び付けていた社会的接着剤(メンターシップ、議論、協働メンテナンス)は薄れていくとオブライエンは見ている。そして、彼はそれが必ずしも悪いことではないと考えている。

フォークし、忘れ、機械に記憶を委ねる自由こそ、オープンソースにおける新しい自由というわけである。

パランティアCEOのアレックス・カープ曰く「AIは大規模な移民を時代遅れなものにする」

www.mercurynews.com

パランティア・テクノロジーズの CEO であるアレックス・カープが、AI により、極めて専門的技能を持たない限り、大規模な移民を受け入れる必要性はなくなるという見通しをダボス世界経済フォーラムで語ったとな。

パランティア・テクノロジーズは防衛分野で米国政府と緊密な関係を築いており、要はアレックス・カープ監視国家化・権威主義化する米国における最重要なキーパーソンである。

アレックス・カープは自身のことを“card-carrying progressive”と表現しており、明確にプログレッシブと言っているが、彼がドナルド・トランプの政策に共感を示しているのもご存じの通りである。「AIは大規模な移民を時代遅れなものにする」という認識は、現在の米政府の認識にも沿ったものであろう。そして、ちゃっかり高度技能を持つ移民の例外扱いを望むところも、現在のシリコンバレーの本音なんだろう。

今やパランティアは英国など西側諸国にも監視技術を「輸出」して影響力を増大させており、彼の共著の邦訳が望まれるところである。

ネタ元は Slashdot

ブライアン・イーノの『アートにできること』が刊行される

wired.jp

これは昨年10月の記事だが、ブライアン・イーノ先生とソニーグループのクリエイティブセンターでセンター長を務める石井大輔氏との対談が掲載されているが、例によってイーノ先生がいいこと言っている。

では、大人はどうでしょう? わたしは、大人は芸術を通して“遊ぶ”のだと思います。芸術とは、大人の遊びなのです。例えば、わたしがこのスタジオで作品の制作をしているとき、心から遊びを楽しんでいるというのが事実です。そしてこの遊びとは、心を解放する方法であり、心を鍛える方法です。走り回ることで体を鍛え、健康を維持できるのと同じように、アートも精神に健全な働きかけを行なうのです。

ブライアン・イーノは言った──「世界に溢れるクリエイティブの力がよりよい未来を築く」と | WIRED.jp

で、この記事の末尾に、ワタシも今年のはじめに紹介しているイーノ先生の共著『What Art Does』の邦訳についての記述がある。

正直、2025年3月に出た本の邦訳の話がその年のうちに聞けるとは思わなかった……のだが、その後、実際に出るという話がなく、ちょっと忘れかけていた。

nme-jp.com

2026年に入って『アートにできること その終わりのない思索の旅』として遂に邦訳が出るのが分かった。

しかし、イーノ先生のドキュメンタリー映画『Eno』、ワタシの住む街でも上映されたのだが、結局見逃しちゃったな……。

『ライフ・アクアティック』で知られるセウ・ジョルジが没後10年を記念してデヴィッド・ボウイの曲を再演

www.openculture.com

セウ・ジョルジというと、ウェス・アンダーソンの映画『ライフ・アクアティック』に出演し、デヴィッド・ボウイの曲をポルトガル語で歌ったサウンドトラックアルバムがヒットしたことで知られる。

で、ボウイの没後10年を記念して、彼の曲を再演している。

www.youtube.com

やっている曲は彼のアルバム『The Life Aquatic Studio Sessions』とほぼ同じで(ジギー・スターダスト期中心)、リラックスして聴ける。

野中モモ『デヴィッド・ボウイ 増補新版——変幻するカルト・スター』を読む際の BGM にいかがでしょうか。

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