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著名な起業家をインタビューするデヴィッド・センラの人気ポッドキャスト Founders Podcast の第391回に音楽プロデューサー、インタースコープ・レコードやビーツ・エレクトロニクスの共同創業者として知られるジミー・アイオヴィンが登場し、Spotify や Apple Music について「ストリーミングサービスは、私から見れば、廃れるまであと数分といったところだ」と断言したという。
この言葉に Joel Gouveia は衝撃を受けたが、アイオヴィンの話を聞くうちに彼の主張は完全に正しいと気づいたという。
まず、最初に率直に語るのは、音楽業界のほぼ全員が(そこで働く人々を除いて)Spotify を嫌っているという事実である。このプラットフォームはアーティストからあらゆるものを搾り取り、コミュニティ形成を積極的に阻害している。なのに、健全な利益率を維持するのに苦戦している。
ストリーミングビジネスモデルは根本的に破綻しているというわけだが、その終焉がなぜ避けられないのかについて解説している。
まず、かつて20世紀は、RCA、ポリグラム・レコード(親会社はフィリップス)、CBS(親会社はソニー)といったメジャーレーベルは、著作権だけでなくハードウェアも所有しており、音楽の消費手段の全てを支配していた。
しかし、今日では Apple、Google、Amazon、Spotify などのテック大手企業が流通網、ハードウェア、そして最も重要な顧客データを握っている。確かに主要メジャーレーベルは早期に Spotify の株式を取得する契約を結んだが、エコシステムを支配できるわけはなく、レーベルは流通経路を失い、ダニエル・エクのサーバー上でコンテンツを提供する存在へと格下げされてしまった。
レーベルがフォーマットの支配権を失うと、テック企業は製品をコモディティ化し始めた。
ここが動画配信との違いで、例えば Netflix における『ストレンジャー・シングス』のような他社との差別化になる武器が、音楽配信には欠けている。アイオヴィンは「今の音楽ストリーミングは公共サービスだ」「どのサービスも同じで、もし一社が価格を下げれば、他は終わりだ。独自の提供価値がないから」と語るが、今や音楽は水道水や電気と区別がつかないという。
そうなると、消費者は無意識にその価値を低く見積もるようになると Gouveia は書く。
そして、通常のテックビジネスは、固定費が比較的安定しているため、加入者が増えれば利益率が指数関数的に上昇するが、音楽配信は収益の約70%を権利者(レーベルや出版社)に支払うため、コストがユーザー数に比例して増加するという逆の仕組みになっている。
アイオヴィンは「ストリーミングサービスは厳しい状況だ。利益率はゼロで、まったく儲かっていない」と述べている。
このモデルを成立させられるのは、音楽配信がプライム会員を継続する道具になる Amazon や、スマートフォンを売るための手段である Apple や Google だけであり、一方で Spotify や独立系音楽ストリーミング企業はかなり厳しい状況にある。そして、プラットフォームの利益率が構造的に圧迫されると、アーティストが真っ先にその被害を被る。
アイオヴィンの音楽ストリーミングサービス批判の主眼は、それがアーティストとファンが交流できる「文化の拠点」となることに完全に失敗している点である。現実には、Spotify はアーティストがファンと関係を築くことを望んでいない。Spotify が望むのは、リスナーが Spotify と関係を築くことだけなのだ。
だから Spotify はリスナーデータを死守するし、アーティストは、スウェーデンのテック企業にとって無給の従業員に過ぎない、と Gouveia は辛辣に書く。
さらに悪いことに、音楽ストリーミングサービスの財務メカニズムは、中堅ミュージシャンに不利にできている。
現行の「比例配分」支払いシステムでは、すべてのサブスクリプション収入が巨大なプールに集められ、市場シェアの合計に基づいて分配される。そして、その大半は、単に世界で最も多くの再生数を誇るという理由だけで、トップ1%のポップスターに流れ込む。
本当にアイオヴィンが語るように Spotify が廃れる寸前であり、ストリーミングが最終形態でないというなら、何がそれに取って代わるのか?
音楽ストリーミングサービスが一夜にして消えるなんてもちろんありえないが、進化する音楽経済で生き残ろうとするアーティストやマネージャーにとっての答えは直接所有(direct ownership)だと Gouveia は書く。そして、ファンと直接つながる独自の「文化的拠点」を築くこと。
Spotify のプレイリスト掲載でわずかな収益を期待するのではなく、ファンを非公開 Discord サーバーへ誘導するなりして、高利益率のグッズやレコードやライブの指定席券で ARPF(ファンあたりの平均収益)に注力することですね。
我々は「マス・オーディエンス」の終焉と「マイクロ・コミュニティ」の誕生を目の当たりにしている、と Gouveia は書く。
音楽業界は過去10年、100万人に一度曲を聴かせるやり方に固執してきたが、次の10年は、1000人に永遠に愛される方法をアーティストが模索する時代となるだろう、と Gouveia は記事を締めているが、うーん、それ「千人の忠実なファン」論で、着地点自体は以前から言われている話ではある。
この記事で少し軽蔑的に語られる「音楽=水道水」という話は、およそ20年前に「水のような音楽」を唱えた『デジタル音楽の行方』を訳した人間として、複雑な気持ちにさせられるものがある。
ネタ元は Slashdot。