当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみる「オルタナメディア」の可能性」のフォローアップ

wirelesswire.jp

先週公開された WirelessWire News 連載記事だが、これを再度掲げるのは、言うまでもなくこの文章が期待したほど評判にならず悔しく思っているからである(笑)。この文章のフォローアップをさせてもらう。

ありがたいのは、この文章に触発されて、404 Media の創始者4人が在籍していた Vice の終焉についてコリイ・ドクトロウが書いた文章を heatwave_p2p さんが訳してくれたこと。

p2ptk.org

これを読むと 404 Media の4人が感じた怒りが分かるように思う。

この文章の後半に書かれる、Vice の経営陣が最後あたりに考えた「ウェブサイトを捨てて」「ソーシャルメディアで発信する」という新しいビジネス戦略(?)の逆をやったのが、「Googleからウェブサイトへのトラフィックがゼロになる日」で取り上げた The Verge の「ホームページに多額の投資をし、ウェブサイト自体をダイナミックな目的地とすることを目指した大規模な再設計」だったのだなと思い当たる。

text.baldanders.info

文章公開時にも書いたが、元々は WirelessWire News 連載に Google について書くつもりでいたのが、heatwave_p2p さんが「脱メタクソ化か、死か」を訳しているのを読み、それはもういいかと思った経緯があり、実はお互い影響を与え合っているのですね。

ワタシが WirelessWire News 連載に書いた他の文章でも、「ティム・オライリーとシリコンバレーの贖罪」もドクトロウのメタクソ化(enshitification)論を前提にしているわけで。

www.theverge.com

これは8月に公開されたポッドキャストだが、目を通したのは WirelessWire News 原稿を書いた後だった。インターネットを代表する風刺サイト、嘘ニュースサイトとして知られる The Onion が所有者を転々とした後、ある意味 404 Media のように当事者たちの手で復活し、紙メディアにまで再進出するという驚きの話が読める。

当然ながらというべきか 404 Media など、ワタシの文章でも取り上げた「新たなオルタナメディア」への言及がある。具体的には Dropoutサブスクリプションで成功しているのに言及した後である。

それに彼らだけではない。このモデルの先駆者だったのが、DefectorAftermath404 Media だ。我々も、購読者にかなり依存して、彼らを本当に喜ばせ、メールで何か送ることができるが、他のことだってできる。動画を作ってもよい。昔ながらのやり方で広告を売ることもできる。それが我々がやろうと決めたことだ――人々をだまして始終何かをクリックさせるのじゃなくて、我々のコンテンツを純粋に好きな人たちを基盤にする会社を立ち上げることで、そこが我々の現在地なんだ。

The Onion も Defector 以降の独立系メディアのモデルを多いに参考にしているわけだ。

frontlinepress.jp

日本のオンラインジャーナリズムを考える場合、どういうプレイヤーがいるかというのでいくつか名前を挙げたが、ワタシ自身そのあたりに特に知識があるわけがないので抜けてないかなというのは心配であったのだが、少し前に X で FRONTLINE PRESS のアカウントからフォローされたのは、そのあたりの意思表示だと解釈した。

案の定、恥ずかしながら知らなかったので、読ませていただきます。

ポスト・オープンソース時代には契約がライセンスにとってかわる?

www.linux-magazine.com

長年、フリーソフトウェアオープンソースソフトウェア(以下、FOSS)を追っかけてきたジャーナリストの Bruce Byfield の文章である。

FOSS はプロプライエタリなソフトウェアのオルタナティブを作る取り組みとして始まったが、当初 FOSS 開発者はプロプライエタリ・ソフトウェアの不信感を抱き、一方で企業は FOSS を否定してきた。

今では FOSS は、先駆者たちが想像した以上の成功を収めたが、未だ完全に自由なソフトウェアを夢見る開発者は少数で、今ではプロプライエタリ・ソフトウェアとの共存を受け入れることに重点が置かれるようになっている。

その例として Byfield は、標準インストールにフリーでないファームウェアを含むことを票決した Debian、独自のドライバやゲームアプリを含めた Fedora ベースの Nobara Linux ディストリビューションの人気、GNU GPL に例外条項を加えた SCM ライセンス、そして Red Hat Enterprise Linux (RHEL) へのソースコードへのアクセス制限を挙げている。

つまり、FOSS それ自体が目的ではなくなっており、FOSS コミュニティの大部分は現実的になっている。プロプライエタリ・ソフトウェアをすべて置き換えるのではなく、FOSS がプロプライエタリ・ソフトウェアやビジネス慣行とどう折り合っていけるかに重点が移っている。

そして、FOSS の理念は弱体化しているのかもしれないと Byfield は書く。2006年から2007年にかけての GNU GPLv3 の議論をしていた頃がフリーソフトウェア財団(FSF)の権威のピークであり、その後リチャード・ストールマンが解任されたし(後に理事に復帰)、Linux Foundation は元から企業重視で、FSF の代わりにはなれない。

www.theregister.com

Open Source InitiativeOSI)の共同創始者のブルース・ペレンスは、「ポスト・オープンソース時代」が来るという見立てで、彼によれば FOSS ライセンスはもはや本来の目的を果たしておらず、一般ユーザの利益にもなってないという。

オープンソースはまったく普通の人の役に立っていない。大抵の場合、彼らはプロプライエタリなソフトウェア企業のシステムを通してオープンソースを利用する。Apple iOSGoogle Android のどちらもインフラはオープンソースを利用しているが、アプリの大半はプロプライエタリだ。普通の人はオープンソースについて知らないし、我々が推進する自由についても知らない。実際、オープンソースは今日では、普通の人を監視したり、抑圧するためにさえ使われている。

そこでペレンスは、ライセンスを契約に置き換えるべきと提案する。企業が FOSS を使用して得る利益の対価を支払わせ、その支払いは FOSS の開発資金に充てられるわけですね。個人や非営利団体はこれまで通り無料で FOSS を使用できる。

ペレンスは、今年の3月に Post-Open License の最初のドラフトを公開している(本文執筆時点で、8月に更新されたバージョン0.07が最新)。

ペレンスの提案が法律的に問題ないかはまだ不確かだが、対価の徴収が早期に実現することはないだろう。現在の FOSS 利用は広く多様なため、その黎明期のようにはいかない。草案が公開されて5カ月間、ほとんどそれが注目されていないのも、参加を促すのがいかに難しいかを示しているかもしれないと Byfield は書くが、そうよね。恥ずかしながらワタシもこの記事読んで初めて知ったし。

ワタシも昨年末「オープンソースの失われた10年と「オープンソースAI」の行方」という文章を書いている。そこでもオープンソース・ライセンスが、特にクラウドとモバイルの分野で有効性を失っているのではないかという問題意識について取り上げている。

だからといって、「オープンソースのライセンス戦争は終わった」というマット・アセイのポジショントークには賛同しないのだけど、ブルース・ペレンスがそういう提案をしているのは重い。記事は、「ポスト・オープン契約が唯一の解決策ではないにしろ、少なくとも、一朝一夕で解決しそうもない問題への対処に向けたスタートにはなるだろう」と締めている。

ネタ元は Slashdot

「修理する権利」人体版? 薬の安価なDIY自作を目指すアナーキスト集団

www.404media.co

せっかく「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみる「オルタナメディア」の可能性」で取り上げたんだから、404 Media の記事を取り上げておきましょう。

Four Thieves Vinegar Collective というグループの Mixæl Swan Laufer という人を取り上げた記事なのだが、このグループはこの記事のタイトルになっている「Right to Repair for Your Body」というスローガンを掲げている。

「あなたの身体の修理する権利」とは何か?

彼らは、高価な医薬品をほんのわずかのコストで DIY 自作する方法を教えているアナーキスト集団なんですね。

例えば、C型肝炎を治療するソフォスブビル(ソバルディ)は1錠1000ドルするが、それを3ドル57セントでの自作を目指している(これはまだ成功していない)。

なんでそんなに薬の値段が高いかというと特許の存在があるのは間違いない。このグループはそれを DIY で乗り越えようとする。

ここが重要だが、他の医療自由団体と異なり、Four Thieves はイベルメクチンで COVID を治療するのを人々に勧めているのではないし、適当なサプリメントを売り込んでいるのでもないし、商業部門も持ってはいない。そうでなく彼らは、前駆体の成分を採取し、化学反応を起こして薬を作ることで、実証済みの医薬品と同等の海賊版を自作する手助けを行っているのだ。

実は彼らのことを Motherboard(404 Media の創業者は皆ここで働いていた)が2018年に記事にしており、そこではハッカーのカンファレンスで Laufer が、満員の観衆に数千ドル相当の薬を投げ込むという派手な場面が描かれているが、手法は当時と変わっていない。

しかし、前述の通り、特許で保護されているものを自作し、それを公開するのは違法の可能性が高い。

Four Thieves Vinegar Collective の活動がこの記事の著者であるジェイソン・コーブラーに響くのは、嚢胞性線維症だった彼の親友が、当時承認されたばかりの Kalydeco という薬が年間31万ドル以上もしたため使用できず、25歳で死んでしまった経験があるからだ。

その話を聞くと、Laufer は Four Thieves のツールを使って Kalydeco の DIY 版を作れると請け合うのだが、マジかよ。ともかく、この集団は口だけでなく、実際に需要の高い高価な薬の自作にいくつか成功しており、そのためのツールを公開している。

特許制度自体を悪とワタシは言わないし、特許で守られた利益があるからこそ製薬メーカーは新薬の発明を行えるんだという意見ももちろんある。ただ COVID のときも明らかになったように、誰しもかかった病気の薬価の問題にいきなり直面する可能性があるのだ。

「何か薬が会話に出てくれば、誰もが『替わりになるものを 3D プリントすればいいか』と言えるくらい DIY 医療という概念が一般的になって、我々の存在が必要でなくなることが我々の究極の望みだ」と Laufer は言う。自宅で薬を 3D プリントする時代が来るかねぇ。

レイ・カーツワイルの『シンギュラリティは近い』の続編の邦訳『シンギュラリティはより近く』が早くも出る

wirelesswire.jp

この文章の中でさらっと紹介していたレイ・カーツワイルの新刊にして『シンギュラリティは近い』(asin:414081697X)の続編 The Singularity is Nearer の邦訳『シンギュラリティはより近く』が11月に出るのを SZ Newsletter で知った。

11月なので邦訳の発売日までまだ間があるが、原書が出たのが今年の6月末なのを考えると、相当に速い仕事に違いない。

この本については、やはり WIRED の著者インタビュー記事が参考になる。

この記事タイトルには「レイ・カーツワイルが(またしても)正しければ」とあるが、10年以内に脳はリバースエンジニアリング可能になるという2010年の予測など、レイ・カーツワイルが正しくなかった例などいくらでもあるし、彼のシンギュラリティ論については、昔「特異点、精神的麻薬、社会的余剰(前編)」でも引用したダグラス・ホフスタッターのコメントが今でも正しいと思っている。

レイ・カーツワイルは、自分が死ぬ運命にあるのを恐れるあまり、死を避けたくてたまらないのだと思う。彼の死への執着は私にも理解できるし、そのものすごいまでの強烈さには心動かされもするが、それが彼の洞察力をひどく歪めていると思うんだ。私の見るところ、カーツワイルの絶望的な望みは、彼の科学的客観性を深刻に曇らせている。

つまり、ワタシはカーツワイルのシンギュラリティ論をずっと bullshit と思っていたわけだが、ご存じの通り ChatGPT の登場以降は、そんなワタシですらシンギュラリティとやらを考慮に入れるようになった。

もちろんカーツワイルはこの本でイケイケさを加速しており、そうした論ということで彼の新刊は読んでおく価値はあるのだろう。

日本の職人による「手技」が注目されている

www.openculture.com

伝統工芸 青山スクエアYouTube チャンネルの動画が取り上げられている。

いずれも日本の職人による「手技」を撮影した動画である。

yamdas.hatenablog.com

それで思い出すのは、日本のものづくり動画が静かに海外で受けている話である。

このあたり、受ける日本のコンテンツを考える上で示唆的なのだが、それがもはや最先端のデジタル技術でないところにワタシなど一抹の哀しさも覚えてしまう。

これこそ日本のものづくり? 海外で注目されるプロセスXの動画 - YAMDAS現更新履歴

かつてこう書いたが、こちらの「手技」は完全に伝統技術、伝統工芸ですね。

動画は本編もだいたい5分前後で見やすい長さになっている。最初から英語字幕がついており、やはり英語圏への発信を意識したつくりになっている。

果たして「tewaza」が海外の辞書に載る日が来るのでしょうか。

WirelessWire News連載更新(ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみるオルタナメディアの可能性)

WirelessWire Newsで「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみるオルタナメディアの可能性」を公開。

まだ9月になったばかりだが、今月2回ある三連休のいずれも原稿を書く時間が取れないのが見えているため、前倒しして月はじめに今月分を公開させてもらう。その代わり来月分の公開は来月後半になるかもね。

さて、今回は実は Google をテーマに書こうと準備を進めていたのだが、コリイ・ドクトロウのメタクソ化(enshitification)論の総決算といえる「脱メタクソ化か、死か」を読み、もうこれがあれば十分じゃん、という気になってしまった。

そこで少し前にちろっと予告した 404 Media の話を中心に書かせてもらった。

長くなるので原稿では端折った話を紹介したい。あるとき、ジョゼフ・コックスからメールが来た。そこにはこういう話が書いてあった。

それでは、はじめに我々が 404 Media を立ち上げた理由をお伝えしたい。我々は何年も VICE のテクノロジー部門の Motherboard で働いていた。2023年半ば、私は仕事の一環として裁判記録を取り寄せようとしていた。これには10セントしかかからないはずだった。なのに、VICE が支払いを怠っていたため、必要な書類をダウンロードできないことが分かった。後に私は VICE の重役どもがどれだけ稼いでいるかを知った。60万ドルから90万ドルという途方もない給料、さらには6桁(10万ドル単位)のボーナス! 自分は調査報道を続けるのに必要な裁判記録ひとつダウンロードすらできないのに!

私は怒った。給料のスクリーンショットをツイートした。それからジェイソン、サム、エマニュエルと私は、新しいアイデアについて話を始めた。もし自分たちで責任をもって持続的に成長できる調査報道のエンジンとなるメディア企業を作ったらどうだろう。ジャーナリストが責任者となり、自分たちの仕事を最優先する。その結果が 404 Media であり、その基盤には有料購読者がいる。

有料購読は年100ドルだが、年90ドルにまけとこう――要は有料購読者になってくれというお願いなのだけど、分かった、分かったから、とワタシも有料購読者になったのである(笑)。

彼の文章を読んでも、高給をとる重役連への嫌悪が相当に伝わってくるよね。

今やテレビはデジタル広告塔となり、売り切りの製品ではなくなった

arstechnica.com

テレビのソフトウェアには広告が満載されるようになり、テレビを所有することの意味が変わってきているという記事である。

近年テレビメーカーは、視聴者に広告を表示し、その反応をデータ収集してトラッキングすることで、テレビから継続的な利益を求めるようになっているそうで、よくインターネットはテレビみたいになってしまったみたいな意見を目にするが、逆にテレビのほうが広告の面でインターネットに近づいているようだ。

つまり、スマートテレビが一般的となり、テレビは売り切り製品ではなくなっているということ。

昨年の OMDIA のレポートによると、ネット接続されたテレビプラットフォームの新規ユーザ一人の四半期あたりの広告収入は5ドルくらいとのことで、それだけ見ると大した額ではないが、こういう広告表示&データ収集&トラッキング機能がデフォルトでオンになっている場合が、Roku や Vizio といった格安テレビでは多く、しかも LG や Samsung といった世界的なテレビメーカーもこの広告事業に前のめりらしい。

記事中の「この場合、『スマート』とはインターネット接続ではなく、テレビがどれだけ視聴者の情報をつかんでいるかを意味する」という文章が象徴的よね。

確かにテレビは毎年買い替えるような製品ではなく、広告表示&データ収集&トラッキングによる販売後の継続的な利益というのは、メーカーから見てとてもオイシイ話に違いない。この記事では、テレビを使いながら買い物ができる「ショッパブル広告(shoppable ads)」が紹介されているが、そりゃそういう方向に行くでしょうな(Hulu などのストリーミングサービスでは既に実現済)。

データが収集され、トラッキングされているのを理解したうえで、広告が表示される格安のテレビを買う人はいいだろうが、広告機能のオフ設定をちゃんと用意してほしいところよね。

ネタ元は Schneier on Security

ワタシが何度も推してきたシャノン・マターンの邦訳『スマートシティはなぜ失敗するのか』が10月出るぞ

ということで、シャノン・マターン『A City Is Not a Computer』の邦訳が出るとのこと。

ワタシは2021年末に「シャノン・マターン『都市はコンピュータではない』で考えるスマートシティ的発想の限界と都市の多様性」を書き、翌年には「シャノン・マターン『都市はコンピュータではない』はやはり邦訳が出るべきではないか」と改めて邦訳を待望する文章を書き、さらには WirelessWire News 連載の「クリストファー・アレグザンダーと知の水脈の継承」でもこの本を取り上げている。

これくらい継続的に(しつこく)シャノン・マターンの本を取り上げ、推してきた人間は日本ではワタシくらいではないか? ハヤカワ新書での邦訳刊行はめでたいことである。

Amazon Japanが洋書の取り扱いを止めてしまうと何が困るのか

internet.watch.impress.co.jp

先週、話題となったこの記事には、このブログでも頻繁に洋書を紹介し、年に一度洋書紹介特集記事にまとめているワタシもいささか動揺した。

Amazon Japan が洋書の取り扱いを止めてしまうことの何が問題なのか? 以下のばるぼらさんの投稿に賛同する。

なんというか、昭和の時代にダイエーが個人商店をつぶしまくり、平成になってそのダイエーが経営危機になって撤退した後には焼野原だけが残ったみたいな話の令和版というか……たとえが古すぎるか。ともかく、今 Amazon に手を引かれてしまうと、洋書の入手が一気に昔に逆戻り、というか昔よりもはっきり悪くなってしまう。

また「文化的に日本はますます閉じこもってしまう」という危惧があったからこそ、ワタシもアフィリエイト収入は期待できないのに意地でも洋書を紹介してきたわけで、でも、今の日本でその主要な入手先である Amazon が取り扱いを止めてしまったら、それも強まるのは確実である。

Kindle があるからそれで洋書買えばいいじゃんという向きもあろうが、Kindle のソフトウェアはバグが多くなりどんどん悪化しているという指摘を知ると、電子書籍プラットフォームとしての Amazon もあまり信頼できないのよね。

オアシス再結成について思うところは特にないので、1994年のインタビュー記事を振り返る

nme-jp.com

さて、先週はオアシス再結成が正式発表されたわけだが、それについてワタシが思うところは特にない。

自分のブログの過去ログを探すと、2009年のオアシス解散時にワタシは辛辣なことを書いているが、2000年のオアシス福岡公演でリアムが数曲で退場したときに受けた心の傷が、当時まだ癒えてなかったようだ。

しかし、ここにも書いているが、ワタシはオアシスの全アルバムを買ってたんだよね。アルバムを全部持ってたバンドって、(ストーン・ローゼズのようにアルバム2枚とかそういうのは別として)ワタシの場合、オアシスしかいないのである(ま、『Standing on the Shoulder of Giants』と『Dig Out Your Soul』はもう売り払ってしまったけど)。

いくら好きと言っても、ストーンズも、ツェッペリンも、スティーリー・ダンも、キング・クリムゾンも、デヴィッド・ボウイも、プリンスも、ルー・リードもアルバムすべては持っていない。オアシスの同時代のバンドにしても同じで、ブラーもレディオヘッドもアルバム全部は買ってないんだよね。

彼らの解散時点でワタシは既にストリーミング配信サービスを利用していたが、当時はまだ CD をそれなりに買っていた。しかし、2010年代になると、どんどん CD を買わなくなる。今の若い人に「アルバムを全部持ってた」とか言っても「は? 意味分からん」という感じだろう。

これだけだとなんなので、今から30年前、1994年のデビュー当時に rockin'on に掲載されたインタビューを引用したい。

まずは1994年8月号(表紙はローリング・ストーンズ)のインタビューだが(インタビュアーは増井修)、インタビューの前日にクリエイション・レコード10周年記念イベントがあり、そこで喉をつぶしていたリアムに代わって3曲一人でアンプラグドライブを披露したはいいが、その後のパーティで飲み過ぎて朝10時帰りのため二日酔い状態のノエルの反応は鈍く、途中から登場のリアムの受け答えが印象的である。

●じゃ貴方個人が理想とする本物のロックンロール・スターってどういう連中なんですか。
L「そうだな…シド・ヴィシャスみたいな奴とか」
●(笑)マジで、ですか。
L「そりゃ奴は人間的にはどうしようもないオメデタ野郎だったかも知れないけど。でも俺個人にとってはシド・ヴィシャスは感情移入しやすかった。特に自分の信じる事以外はそれこそ自分の命さえ関係ないって面がね。そりゃ確かにやたら自虐的で白痴的な奴ではあったけど、常にある種のクールさに裏付けされたらし」
●彼みたいな最期を迎える事さえいとわない、って意味ですか。
L「(笑)いや俺は性格的にもシド・ヴィシャスとは似ても似つかないから、まずそれはないよ。でも徐々に燃え尽きていくより、瞬発的にパッ!と燃焼するほうが性に合ってるのは事実だけどさ。と言っても別にニルヴァーナの奴みたく銃口を自分に向けたがる衝動に駆られてるって意味じゃないんだぜ。だたその日その日を瞬間的に燃焼させていくって生き方には賛同できる、って意味であって、毎朝、目を覚ます度にまるで今日生まれたばかりなんだ!みたいな気分で毎日生きていくのが俺の理想なんだよね」

実にリアムらしいと思う。そして、以下のインタビューの最後のやりとりは、当時読んでて大笑いした覚えがある。

●そうなんですか。じゃ9月に初来日が決まったところで日本のファンに対してそれぞれのメッセージを。
N「ああ。じゃ待ってろよな」
●たったのそれだけ?
N「じゃ、近いうちに必ず上陸するからさ、ってのも加えとくよ」
●(笑)ったくもう、何なんですか貴方達は。
L「じゃ俺は…君達のメシが美味くて、ブルース・リーは最高にカッコイイ奴だから楽しみにしてる、ってのも加えとこうか」
●貴方、ブルース・リって中国人なんですよ。日本人じゃなくて。
L「えっ? そうだったけ。でもそんな細かい事どうでもいいじゃん。カッコイイ奴には違いないんだからさあ」

続いて、1994年12月号(表紙は R.E.M.)に掲載された、彼らの初来日時にインタビュー(インタビュアーは増井修)。

●じゃあ、最初の質問。アルバム『ディフィニットリー・メイビー』は何と全英初登場一位! 「やったぁ! 念願叶ったぞ」、それとも「あったりめーだろが、こんなのはぁ。いまさら気にしてるんじゃねぇよ、馬鹿野郎」。どっち?
リアム(以下L)「俺は嬉しかったけど」
ノエル(以下N)「俺はどこかほっとしたなぁ(笑)。いやぁ、だって二位のアルバム自慢したってしょうがねぇじゃん」
L「そっ、二位じゃたりねぇよ、やること何でも一位じゃなくっちゃ。なれなかったらなれないで、それでまたいいんだけど、でもいかなきゃなぁ……だから、俺はさっぱり驚きもしないよ、こんなの。(中略)これは一位に値するアルバムだし、何も俺は傲慢さからそう言っているんじゃないんだぜ。これは一位にふさわしい作品だったんだ」

増井修のべらんめえ口調がうざい。次のリアムの受け答えも実にらしくて良い。

●(笑)さて僕はステージでリアムが笑顔を見せているところを一度も見たことがないんだけど、あれはいつでも喧嘩の臨戦態勢に入っているという表示でしょうか?
L「バカモノ。とにかく、俺は笑わないんだ。微笑まなきゃいけないとか、そんなきまりはないだろう? 微笑みたくなったら、その時は微笑むよ。だけど、したくなければしない。あいつは全然微笑まないからギグも失敗だった、なんて思ってギグから帰る奴なんざいねぇんだからさ。これで一番重要なのは単純に音楽だけなんだから」

その後、当時バンド(というかギャラガー兄弟)について評判となっていた、しょっちゅう喧嘩沙汰を起こす話についてリアムが説明しているのだが、目の前で取っ組み合いの喧嘩をされた NME の記者も驚いただろうな(笑)。

L「大体、あの喧嘩云々っていうのは、NMEで最初にやったインタビューのせいだったんだよな。ノエルがよ、いちいちかんに触ること言ってるから、それで頭に来たから、『やる気か? NMEの前で』と訊いたら、『やる』って言うんだもん。で、そのまま取っ組み合いになっちゃった。それで、喧嘩をおっぱじめると確かにすんげぇビッグ・ストーリーになるってことはわかったんだけど、やっぱ、喧嘩は人のいないところでやった方がいいんだってわかったよ」

続いて、当時のローリング・ストーンズについての質問の流れから、どれくらいバンドをやることになろうかという質問についてのリアムの答えはこう。

L「とりあえず、契約では六枚のアルバムを作ることになっているから、その先どんなことができるか、それを俺としては見てみたいんだよな。ひょっとしたら、四枚で終わりっていうことになるかもしれない。でも、六枚作って、また新しい契約にありつけるかもしれない。でもって、五十になってもこれを続けてるようだったら、それならそれでさらに続けていくだけだ。でも、そんなことより今だよね。(後略)」

現実には、オアシスは7枚のアルバムを作って解散した。そして、彼は50代になって、「これ」を続けている。

このインタビューで笑えるのは、ギャラガー兄弟以外のメンバーも欠かせないものなんですよねという質問の流れで、唐突にノエルが「ドラマーは除いての話だけど。あのまんこ野郎の」と罵倒し出し、それにリアムも「あのドラマーだけは交換がきく人間なんだ」「くそ変人野郎」と断言しているところ。

その後語られる、ロック・バーの「ローリング・ストーン」来店時、皆がセックス・ピストルズキンクスやフーの曲をリクエストしてるのに、そのトニー・マッキャロルが「リヴ・フォーエヴァー」をリクエストしてギャラガー兄弟が呆れた事件だが、当時その店で DJ をやっていた梯一郎が、このときのオアシス御一行の話を後に本文原稿で書いていた覚えがある(わざとブラーの「ガールズ&ボーイズ」をかけると、リアムが『ファック!』と叫んだとか)。

今、「リヴ・フォーエヴァー」のビデオを見ると、これはトニー・マッキャロルの葬式ごっこいじめを撮影したものではと思えてしまうのだが、案の定、翌年に彼はバンドから解雇されてしまう。

その1995年にもオアシスは二度目の来日公演をやっているが、この時に行われたインタビューを引用したのが、「【職場では】真説ボンベイ・ロール【閲覧注意】」だったりする。

ともかく、現時点ではしっかりライブをやってくれること、そしてツアーを待たずにまた大喧嘩なんてことにならないのを祈るばかりである。

ワタシがNetflixで観たドラマをまとめておく(2023年秋~2024年夏編)

yamdas.hatenablog.com

ここ5年ばかり定期的にやってきた Netflix で観たドラマ(Netflix 独占配信でないものも含む)の振り返り企画を、もう夏も終わり近いということで、またやらせてもらう。基本的に新しく見始めたものだけ取り上げ、シーズン継続のたびには書かない。

しかし、同じく Netflix で観た映画の振り返りについては年2回やっているが、それよりも本数が多いドラマが年1回なのはバランスが悪いのだけど、どうしたもんかねぇ。

トップボーイ(Netflix

このドラマに興味を持った理由は、ブライアン・イーノが音楽を手がけていることを知ったからだけだったりする。

一応最初から観ようとシーズン1、2まで観たところでもういいかなとなり、Netflix 制作となったシーズン3まで行きつかなかった。面白くはあったが、タフなストーリーを観るのがしんどくなってしまった。

マスクガール(Netflix

これは安田理央さん(id:rioysd)が Facebook で推してたので興味を持ったのだけど、面白かったな!

てっきり、主人公の正体がバレるバレないでひっぱるラブコメだと思ってたんですよ。それがあっさり ep2 でギャーーっ! な事態になり、あとは怒涛の展開。

観始めたときは、安田さんが韓流ドラマに求める「復讐」はあんのかねと思ったくらいだが、こってりあるんですな。というか、後半は息子を殺されたおばさんの復讐が物語をドライブさせる原動力になる! 女たちそれぞれの復讐のドラマである。


アッシャー家の崩壊(Netflix

Netflix に新作が入れば必ず観るマーク・フラナガンのドラマだが、ひとつ前の『ミッドナイト・クラブ』で出演した若いキャストと、フラナガン組というべきおなじみのメンツが総出演で(そして、主に後者がバンバン死んでいく……)、既に Disney+ と契約しており、残念なことに本作で Netflix とは契約満了となるフラナガンが有終の美を飾っている。

『アッシャー家の崩壊』ということで密室的なゴシックホラーかと思っていたら、エドガー・アラン・ポーの作品をいくつも取り入れた『ペインキラー』+『サクセッション』という感じの筋立てだった(実はワタシはいずれも未見なのだけど)。

フラナガンさん、いつか『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』観なおすので、どうかそのときまで Netflix に残しておいてください。


PLUTO公式サイトNetflix

見応えありましたね。原作が書かれたときに作者の念頭にあったのはイラク戦争だが、結果的に2023~2024年に観ても響く内容になっている。


TOKYO VICE(特設サイトNetflix

ずっと観たかったので、Netflix に入ったのでこれ幸いと鑑賞。90年代末の東京を舞台にしたドラマとして及第点だと思うが、コロナ禍という制作時期に現地ロケにこだわったのを考慮すれば、よく作られたものだと思う。

楽しんで観たが、ストーリー的にはようやく本題、というところでシーズン1が終わっちゃうので、シーズン2も早く Netflix 入りしてくれないものか。

葬送のフリーレン(公式サイトNetflix

原作も知らないくらいだったが、話題になっているので観てみたら良かったですなー。

魔王討伐の偉業を成し遂げた後の、長命種のエルフである魔法使いの主人公の旅という設定がいい塩梅だった。続きも見ます。

大奥(Netflix

NHK での実写版の評判が良くて、でも、見逃してしまい残念に思っていたので、Netflix にアニメ版があるならこっち観てみようかと思った次第。

原作未読なので驚いたのだが、こんなエグいドラマだったんだ……いや、続きも見ますよ。


少年は世界をのみこむ(Netflix

まったくノーマークだったが、arton さんが Facebook で推していたので観てみた。

オーストラリアのホワイトトラッシュ家族のドラマだが、主人公の少年が小汚いのがリアルでよかった。現実に即した貧乏くさいドラマかと思いきや、想像力の強度を感じるドラマチックな展開を迎えるのである。

三体(Netflix

原作三部作を堪能した人間として、テンセント版を見られない環境なので、Netflix 版の制作に歓喜したものだが、まるで『ブレイキング・バッド』な毒殺殺人というとんでもない事件が裏では起こっていたという……。

テンセント版は(文化大革命以外は)原作忠実準拠らしいが、こちらはかなりストーリーにアレンジが入っており、このシーズン1の時点で第三部の話まで入ってくる感じだけど、これはこれでよくアレンジされていたと思う。なるほど、ここにそれが来るかの連続で飽きさせない。シーズン2ももちろん観ますよ!

史強役に「アニキ感が足らない」という不満があるようだが、ワタシ的には『トップボーイ』に出てた悪い人だ! とオッケーでした(?)。


リプリーNetflix

主人公のリプリーを演じるアンドリュー・スコットを最初に意識したのは、やはり『SHERLOCK』のモリアーティ役だったかな。今年は『異人たち』もあったが、今リプリーを演じるならこの人よね、という納得感がこの上ない芸達者ぶりを存分に見せてくれる。

太陽がいっぱい』よりもずっと原作に近いと思うが(つまり、原作読んでない……)、イタリアが舞台で何度も階段を上り下りする主人公が印象的だった。

私のトナカイちゃん(Netflix

ストーカー被害者が、自身の実体験をもとに執筆した戯曲を、やはり自身が主人公を演じたドラマという珍しい制作過程をもつ。

このドラマは全7エピソードで、各エピソードがだいたい30分前後で、これはサクサク観れるかと思いきや、これが毎回1時間前後だったら精神的にズタズタになっていたかもと思うくらいの心的負荷があった。

本作が世界的に人気になるにつけ、ストーカー加害者本人が名乗り出て、マスメディアに登場といった騒動もあった。なにせ題材が題材だけに下手なことは書けないのだけど、(中間点におけるエピソードでいろんな反転がある)このドラマの作者が被った性被害を踏まえたうえで、本作におけるストーカー加害者へのいくつもの対応が、やはりどうにも理解できないと思ってしまった。


エリック(Netflix

ベネディクト・カンバーバッチが、彼の十八番といえる、仕事人としては有能だが他人を苛立たせてやまないろくでもない主人公をまたしても演じている。

1980年代初期のニューヨークが舞台だが、『ジョーカー』あたりと同じ感じだろうか。本作のサイドストーリーはかなりシビアなものばかりだけど、主人公はもはや妄想にとりつかれた状態で失踪した息子を探し求めるが、自分自身の中にある悪魔と対峙する過程で、自らが生み出したその妄想、怪物が現実に一太刀浴びせる助けとなるところがいいんですね。


地面師たち(Netflix

やたらと周りで話題になっていて、しかし、ワタシの好きでないタイプのドラマに思えてスルーするつもりだったのだが、やはり SNS でしょっちゅう名前を見かけ、我慢ならなくなってみた。確かにこれは評判になるよな。

大根仁が手がけた作品は、ドラマ・映画とも観たのは『モテキ』くらいで、それ以外はあまり縁がなかったのだが、これは昨年の『エルピス』に続いてとても優れた仕事で、この二つの仕事で彼はある種の信頼を勝ち得たのではないか。

似たことは、これまで役に恵まれない印象のあった池田エライザにも言え、本作でもドラマ版『舟を編む』に続いて好演している。

石野卓球が手がける音楽もよかった。

しかしトヨエツ、いくらなんでも人を殺しすぎ(小並感)。

利用者が増えることでサポートの負担が増す話の2024年版の主役はAIプログラミングツール

medium.com

「顧客が AI で生成したコードを修正するのにウンザリ」と題されたブログエントリだが、「これはアンチ AI 投稿じゃないからな――Copilot は素晴らしいし、オイラもいつも使ってる」という断り書きから始まる。

この方は、今年のはじめに個人的な利用のため、そして Rust プログラミングの経験を積むために、暗号通貨取引とデータ収集ツールをいくつか作った。そのうち、多くの人が同様のツールを求めており、そのためにお金を払ってもよいと思っているのに気づく。そこで、API エンドポイントをいくつか設定し、無料でデータにアクセスさせる代わりに、少額の手数料で取引を行えるようにした。

自分が作ったソフトウェアでお金を払ってもらうのが初めてだったので、これはクールな経験だった。機能のアナウンスやサポートのために Telegram チャンネルを立ち上げ、最初はうまくいった。が、利用者が増えるにつれ、サポートに時間がとられるようになった。けど、それ自体はよくある話なので驚きではない。問題は、この方が受け取るサポート依頼の「質」だった。

どういうことか?

この方は API エンドポイントについてちゃんとドキュメントを書いており、POST リクエストの送り方が分かれば、どんなプログラミング言語でも問題なく使えるはずだった。でも、実際にサポートチャンネルに「僕の取引ボットが動かないんです!」と助けを求める利用者のコードを見ると、ほとんど問題ないのに、一目おかしい間違いがある。多くの場合、存在しないエンドポイントにアクセスしようとしていたり、存在しない API レスポンスからプロパティを読み取ろうとしている。

つまり、プログラミング経験がほとんどないと思しき顧客は生成 AI を使ってコードを作成したが、そのコードにハルシネーションが紛れ込んでしまってるというわけ。簡単なスクリプトならハルシネーションを修正してあげるのだけど、多くの顧客は複雑なアプリケーションを想定しており、そうなるとプロの開発者を雇ってくださいと言わざるをえない。ひどいのになると、最初は単純なのでハルシネーションを直してあげると、どんどん顧客が期待するロジックが複雑になり、こっちが無制限の無料サポートをやってくれると期待されてしまうこともあった。

ここまでの話も SaaS ビジネスのサポートではよくある話なのだろうが、AI プログラミングツールがこの問題を悪化させているというのがこの方の見解である。顧客の課題解決を支援すること自体はとてもやりがいのあることだ。が、顧客に基本的な課題解決能力がなく、ソフトウェアエンジニアリングを AI に委ねてしまうと、AI が生み出すバグを修正する開発者が必要となり、その役目を自分が負わされるのは真っ平ということだ。

この方も何度も書いているように、利用者が増えることでサポートの負担が増す話自体は昔からずっとあるものだけど、その主役というか問題の源が AI プログラミングツールというところが2024年なんでしょうな。

あと余談ながら、サポートプラットフォームが Telegram というのも今どきなんかねぇ。そういえば Telegram というと、CEO のパーヴェル・ドゥーロフがフランスで逮捕されちゃった

ネタ元は Hacker News

Amazonは生成AIアシスタントで開発者4500人年の工数を節約し、年間2億6000万ドルもの効率向上を実現したって?

Amazon のアンディ・ジャシー CEO の以下の投稿が話題になっている。

ソフトウェア開発チームにとってもっとも退屈な、でも重要な仕事のひとつが、基盤ソフトウェアのアップデートだ。新しい機能ではないし、エクスペリエンスを前進させる実感もないんで、この仕事は嫌われるし、もっとエキサイティングの仕事にために後回しにされがちである。

我々の生成 AI アシスタント Amazon Q はこれに光をもたらそうとしています、というのがアンディ・ジャシーの売り口上で、これを社内システムに統合して Java のアップグレードに適用したところ、以下のことが分かったという。

  • アプリケーションの Java 17 対応にかかる時間を開発者50人日からたった数時間に削減。開発者4500人年の工数を節約
  • 半年足らずで本番 Java システムの過半数を、通常の何分の一かの時間と労力でアップグレード
  • アップグレードによりセキュリティが強化され、インフラコストが削減されたため、推定年間2億6000万ドルの効率向上が実現

マジかよ! と言いたくなる話だが、詳しくは元投稿を読んでくださいな。

一つ前のエントリとは違った生成 AI アシスタントの威力を見せつけているが、この投稿とほぼ同じくして AWS のマット・ガーマン CEO が、いずれ AI が仕事を引き継ぐので、ほとんどの開発者はコーディングを止めるだろうという予測を社内で語った音声がリークされて話題となったが、アンディ・ジャシー CEO の投稿もそのあたりを踏まえたものなんだろうな。

ネタ元は Slashdot

ピーター・ティールが裏で糸を引きGawkerを閉鎖に追いやった顛末の映画化をマット・デイモンとベン・アフレックが手がける

variety.com

旧聞に属するが、『AIR/エア』を手がけたマット・デイモンベン・アフレックの製作会社 Artists Equity が『Killing Gawker』の脚本を買い上げたという話だが、このタイトルをみただけで何の話か分かる人も多いだろう。

そう、こないだ共和党大会にも登場していたプロレスラーのハルク・ホーガンの人妻とのセックステープを公開したことで、彼から訴えられた Gawker が、1億4000万ドルもの賠償金を認める判決に閉鎖に追い込まれた話である。

記事でこれを「悪名高い法廷闘争(infamous legal battle)」と表現しているのは、この裁判のためピーター・ティールがホーガンに多額の資金を支援していたから。なんで支援したかというと、裁判の数年前に Gawker でティールが同性愛者なのを暴露されたのを恨みに思っていたから。

Gawker(Valleywag)は本当にしょーもないゴシップメディアだったので、ニック・デントンは穴の毛まで抜かれればよいと思っていた人はワタシを含め多いが、そういう人たちも、ピーター・ティールが裏で糸を引き、ホーガンの裁判を利用して Gawker への復讐を完遂したという真相を知って呆然となったものである。

この作品の監督は、デイモンとアフレックをスターダムに押し上げた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』ガス・ヴァン・サントとのことだが、正直、こんなアレな話で彼らのタッグが再び実現するのもどうかと思ってしまう。

なお、この映画脚本は、『グロースハッカー』(asin:B00TQMA8I2)、『苦境を好機にかえる法則』(asin:4775941585)、『エゴを抑える技術』(asin:4775941690)、『ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術』(asin:477594178X)、『Perennial Seller 稼げる定番商品の作り方』(asin:B0CWR7KGKS)の邦訳で知られるベストセラー作家ライアン・ホリデイが2018年に刊行した Conspiracy が原作なのね。「権力、セックス、そして億万長者のメディア帝国を破壊する秘密の策略の実話」との副題だが、今からでも邦訳出ないかな。

ネタ元は TechCrunch

ジェイソン・ライトマンの新作は『サタデー・ナイト・ライブ』誕生秘話

kottke.org

ジェイソン・ライトマンというと、『マイレージ、マイライフ』が傑作で、その後も『ヤング≒アダルト』あたりまではよかったが、それ以降新作の良い評判を聞かず、観そびれたままになっている。

近年は『ゴーストバスターズ』の続編を手がけてそこそこやっているが、飽くまで彼の父親であるアイヴァン・ライトマンの遺産の継承の意味合いが強いように思う。

果たして彼はどうなるんだろうと思っていたら、新作は現在まで続く人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の初放送までの90分間の舞台裏を描く伝記コメディ映画 Saturday Night とな。

イトマンが脚本も製作も手がけるのだから、これは彼の本気の企画だろう。しかも、『サタデー・ナイト・ライブ』が始まった1975年に彼は生まれてもいないので、ノスタルジーのための映画でもないはずだ。

サタデー・ナイト・ライブ』誕生なのだから、この番組の生みの親であるローン・マイケルズをはじめ、チェビー・チェイスダン・エイクロイドジョン・ベルーシ、アンディ・カウフマン、ビリー・クリスタル、ポール・シェーファーといった人たち(を演じる役者)が映画に登場するわけだ。(ローン・マイケルズをのぞけば)彼らはだいたい皆、当時20代半ばやったんやね……。

これは期待したくなる。本国での公開日が『サタデー・ナイト・ライブ』初放送と同じ10月11日なのもニクい。日本でもちゃんと劇場公開されるといいんだけど。

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