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新聞のデジタル版購読先を朝日新聞から毎日新聞に乗り換え(られなかっ)た話

まあ何事もちゃんとトレーニングしなければダメで、将棋ならたとえば詰将棋を相当コンスタントにこなさないと強くはなれないのだが、強くなったところでyomoyomoさんのように性格がひん曲がって寂しい人生を送るのがオチなので、暇つぶしと割り切って楽しくやっている。

Masayuki Hatta a.k.a. mhatta | すぐ勝てる!急戦矢倉 / 及川拓馬

すいません、上の引用は以下の内容に(あまり)関係ありません。

digital.asahi.com

srad.jp

今年の6月に、朝日新聞デジタル版のサービス内容変更の告知があった。

ワタシは紙の新聞は長らくどこもとっていないが、デジタル版は朝日新聞を購読しており、まさにサービス変更の対象となるシンプルコースの加入者だった。

これまでは月300本、だいたい1日10本の記事を閲覧可能で、気分的には読み放題というか、少なくともこれまで制約を感じたことは一度もなかった。それが月50本、1日あたり2本未満に減るのだから、壮絶なサービス内容改悪である。1日2本で済む人が元から月額980円の有料会員になっているか疑問だし、将棋ファンのワタシは毎日将棋欄で1本枠を使っているので、それを除けば変更後は読める記事は1日あたり1本未満になってしまう!

朝日新聞デジタル版には、昔も無料会員が読める本数が激減するサービス改悪をやられた恨みがあるが、あのときは無料会員なんだから文句は言えないと諦めがついた。しかし、今回は正規の有料会員へのサービス提供枠を6分の1にするのだからベラボウな話である。

この発表の少し前には、朝日新聞社3月期決算、11年ぶり赤字というニュースもあり、経営の厳しさを反映した改定なのは容易に想像がつく。実際、紙版の購読料値上げの発表も続いたが、そういうことだろう。

ワタシは昔から朝日新聞嫌いを公言している人間だが、なんでそのデジタル版に課金しているかというと、単に日本の新聞社のデジタル版サービスの中で一番リーズナブルに思えたから。実はこの時点で間違っていたのだが、それついてはここでは置く。要はワタシがケチの貧乏人だからと思っていただければよい。

なお、アメリカの新聞社では New York Times のデジタル版も購読していて、通常は週2ドルのはずが、75%オフの週0.5ドルの割引価格が常態化しており、ワタシもそれで加入したので、こちらはおよそ月2ドルの料金になる。世界中に購読者を見込める英語圏の新聞社と日本のそれを単純比較するのが酷なのは承知しているが、片やおよそ月2ドルで過去記事含めあらゆる記事にアクセスできるのを思えば、月額980円で月50本の制限はあまりにもお粗末に思える。

朝日新聞のデジタル版でも、スタンダードコースに乗り換えれば、文字通り無制限に記事を読めるようになる。しかし、それには月額1980円と現在の倍の料金になる。さすがに単に値段倍ではまずいと思ったか、スタンダードコースなら連載フォローやレコメンドといった新たな機能も使えると謳っている。が、ワタシはデジタル版をパソコンのブラウザからしか見ない人間なので(スマートフォンには朝日新聞のアプリもインストールしていない)、現状の使い方のままではそれらは乗り換えの訴求ポイントにはならない。

yomoyomoは激怒した。必ず、かのぼったくりの朝日新聞を除かなければならぬと決意した。yomoyomoには新聞経営がわからぬ。yomoyomoは、工場のライン工である……かはともかくとして、いくらなんでも客の足元見すぎだろう。こんなアコギな値上げには、サービス解約で抗議の意思を示す必要があると決意した。

しかし、朝日新聞のデジタル版のサービス内容自体には実は文句はなかった。ちゃんと新聞社の有料サービスを購読し、いろんな記事を読む利点は日々実感していた。今回の実質値上げにしても、元が安すぎたからやむなしという意見があるのは理解する。

さて、朝日新聞のデジタル版を解約するとして、同じくらいの値段でデジタル版を購読できる他の新聞社はあるかという話になるが、毎日新聞デジタルのスタンダードプランが月額980円で、朝日新聞デジタル版のシンプルコース(改めベーシックコース)と同額なので、受け皿になりそうだ。

毎日新聞デジタル版のスタンダードプランは記事閲覧無制限だし、ウォール・ストリート・ジャーナルとの提携もある。そして、個人的には一つ大きな利点があった。将棋の名人戦である。

これを米長邦雄永世棋聖の功績とは言えないだろうが、現在、将棋名人戦朝日新聞社毎日新聞社の共催である。それにより、将棋名人戦並びにその名人戦への挑戦者を決めるA級順位戦の観戦記は朝日新聞毎日新聞のいずれでも読める。将棋欄の内容に差異がないというのがワタシ的にはかなりでかかった(伏線)。

もちろん失われるものもある。朝日新聞のデジタル版で愛読していた連載、具体的には三谷幸喜のありふれた生活ブレイディみかこさんの「欧州季評」平民金子さんの「神戸の、その向こう」、他にも柳下毅一郎さんの映画評も読めなくなる。

そういうのを考え出すと気持ちが揺れもした。何度もここに書いている通り、ワタシは病的なものぐさで、こういう購読サービスひとつ変えるのも億劫な人間なのである。そもそも毎日新聞に対して特に好意的ではない。というか、過去の『ネット君臨』(asin:4620318361)や毎日デイリーニューズWaiWai問題などで、はっきりマイナスイメージもあった。

しかし、それも10年以上前の話である。周りで毎日新聞デジタルを購読する人に聞いても特に悪評はなかった。朝日新聞デジタル版の購読コース名と内容が変わる9月8日の近くまで悩んだが、ここは決断のときと毎日新聞デジタルに加入した。そこでケチの血が騒いで、少しでもお得にと、月あたり700円になる12か月コースを選択した。

これでむしろ出費を減らして新聞のデジタル版を無制限に読めるようになったわけだ。心機一転、ざまぁみろ朝日新聞

……で話は終わらなかったのである。

今のところ毎日新聞デジタルの大部分のサービス内容に不満はない。まぁ、こんなものでしょうという感じである。そのうち、毎日新聞ならではの面白い連載なども見つけるだろう(おススメのコンテンツをご存知の方は教えてください)。

しかし……ワタシ的にとても大きな落とし穴があった。将棋欄である。

これは手っ取り早く朝日新聞毎日新聞両方のデジタル版の将棋欄を画像で見ていただこう(正直意味ないとは思うが、棋譜部分は少し網掛けさせてもらった)。

まずは朝日新聞の将棋欄だが、棋戦名などが入った記事タイトル、対局者の名前と先後、局面図、棋譜、そして観戦記が続く。局面図はその日のはじまりの場面と終わりの場面の二つが見れる。内容的に紙の新聞の将棋欄と変わりがない。というか、これ以外の形式の将棋欄があるとは思わなかった。

続いて毎日新聞の将棋欄である。ある一点を除いて内容的には朝日新聞とだいたい変わりない。そう、局面図がない。その一点が致命的なのだ。棋譜だけ載ってても、その始まりの場面も、またその日の棋譜でどの場面まで行ったのか分からないのだから、これでは新聞の将棋欄の意味をなしてないだろうが!

何かワタシが見ているものがおかしいのかと思ったのだが、毎日新聞デジタルの将棋記事は、日々の将棋欄に限らず、どうもすべて「局面図」が省かれている。それでいて記事中には普通に指し手の記述があるのだから呆然となってしまう。これ……将棋ファンの読者から抗議はないのだろうか? それともデジタル版で将棋欄を見ている人間など全国で10人足らずなんだろうか?

そんなわけはなかろうが、なんかこれでワタシは一気に気持ちが萎えてしまった。今のところ他でこういう萎えポイントには行き当たってないが、他にもデジタル版が平気で粗末にされているところがないとも限らないではないか。

(一応言い訳しておくと、朝日新聞デジタル版の将棋欄は無料会員でも上掲画像の局面図と棋譜までは見れる。毎日新聞デジタル版の将棋欄は観戦記の最初の段落まで見れる。その下の有料部分に当然局面図があるに違いないと思い込んでいた。購読前には、この問題は分からなかったのだ)

将棋重視というワタシのニッチな嗜好が災いしてしまった形だが、これが月単位での購読だったらひと月で解約していただろう。しかし、既に年払い契約してしまっている。

不幸中の幸いと言えるかは知らないが、朝日新聞デジタル版の料金支払いがワタシの場合月末のため、9月8日前に解約せずに放置していた。現コースの月980円を払い続ければ、将棋のA級順位戦名人戦の観戦記は読める。将棋欄で1日1本、あと上で挙げた連載など個別記事を読むのに枠を使えばよいとも言える。しかし、それで毎日新聞デジタル版にもお金を払うなら、はじめから朝日新聞デジタル版でスタンダードコースに乗り換えたほうがすっきりしたじゃないか!

実際には、毎日新聞デジタル版は年払いなので、単に朝日新聞デジタル版でスタンダードコースに乗り換えるよりも出費自体は少なくて済んでいる。しかし、個人的な話になるが、先月ぐらいからネット通販での買い物で失敗のやらかしが続いたのもあって、今回の一件はその内実以上に凹んでしまったところがある。

さて、ここまでの話にもいろいろツッコミどころはあるだろう。普段はこの手の失敗話は書かないのだが、ワタシもそれなりに「パソコンの先生」というか「ネットにいっぱしに詳しい」と自負していたのが、上にも書いた今回の件を含む失敗続きで、ああ、こうして年寄りは苦手意識を増幅させていくのだな、と悟ったところがあり、他の人に何かの教訓となるかも思い、恥を忍んで書かせてもらった。

スタンフォード大の3人の教授がビッグテックがどこで間違ったか、どうやって政治が未来を変えられるかを説く『System Error』

新山祐介さんのツイートが目をひいた。

リンク先を見ると、オンラインインタビューを受けている三人が共著者の新刊 System Error: Where Big Tech Went Wrong and How We Can Reboot のプロモーションのようだ。

このインタビューの冒頭、限定された単語数で難しい質問に答える The Last Word というゲーム(この呼び名は一般的に使われるかは知らない)として、10語で新刊の内容を表現するように言われ、共著者の Rob Reich は、以下のように答えている。

ビッグテックにしかるべき規制をして民主主義の制度を再活性化する(Reenergizing democratic institutions through the sensible regulation of Big Tech)

この数年のトレンドである、ビッグテックは民主主義を毀損しているという認識を前提としたビッグテックの規制論ですね。

書籍の公式サイトの宣伝文句を訳すると以下の感じである。

数十年にわたり技術革命の最前線で取り組んできたスタンフォード大の三人の教授たちによる、いかにビッグテックの最適化と効率への執着が基本的な人間の価値を犠牲にしてきたかを明らかにし、我々が方向を転換し、民主主義を取り戻し、我々自身を救うためにできることをまとめた前向きなマニフェスト

もう少し詳しく書くと、テクノロジーは我々を解放する的なナイーブな楽観主義は、偏ったアルゴリズム監視資本主義仕事を奪うロボットといったもののディストピアな強迫観念にあっという間にとってかわっちゃったよね。でも、テクノロジーの進化を受け入れる以外の選択肢って実質ないじゃん? そうして、テクノロジストと彼らに金を与えるベンチャーキャピタリスト、そして連中に自由裁量権を与える政治家にデザインされた未来をただ受け入れているわけだ。でも、それじゃいかんでしょというわけ。

この本は、ビッグテックが差別を強化し、プライバシーを侵害し、労働者を追い出し、情報が汚染された未来を推進するビッグテックに反旗を翻す本ということですね。

著者の Rob Reich は、最近慈善活動に関する記事で名前をみかけて記憶に残っていたが(その1その2)、こういう本を書く人とは思ってなかった。同じく共著者の Mehran Sahami は、スタンフォード大学に来る前は Google で上級科学研究員だったとな。

ビッグテック支配がいかに間違っていたかについての本は既に多く出ており、この手の本では上でもリンクしたショシャナ・ズボフ『監視資本主義』が決定版ともいえるが、結論に具体的に対処する処方箋が書かれていないという批判もあったので、ビッグテック支配に対して政治が何ができるか、どう現状を正せるかをデザインする提言まで踏み込んだ内容なのが重要なんだろう。

Maker Faire Tokyo 2021を前にアナログMake本(?)を出してくれるオライリー・ジャパンを称えたい

makezine.jp

昨年に続き、今年も Maker Faire Tokyo が10月初旬に開催される。

今年はオンサイト(対面)イベントが行われないことが発表済で、それはもちろん残念に違いないのだけど、状況が状況だけに仕方がない。ワタシのように首都圏に住まない人間もオンラインで参加できると頭を切り替えていくしかない。

こんな状況下でもできる限りの Maker Faire Tokyo を続ける努力をするオライリー・ジャパンに感謝なのは当然として、加えてイベントだけでなく、地道に Make 分野の本の翻訳を出し続けているのもとても偉いと思う。

特に今月は、いわゆるデジタル工作や IoT プログラミングから離れた、「アナログ Make 本」なんて言葉があるか知らんが、Make の裾野を広げる(原書がオライリー本家から出たわけでもない)翻訳書が出る。尊い

makezine.jp

まずは5年前の『発酵の技法』に続くサンダー・キャッツの発酵本『メタファーとしての発酵』である。

サンダー・キャッツというと、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2021年版)」で取り上げた『サンダー・キャッツの発酵世界旅行』(勝手邦題)はまだ原書も出ていないのにと驚いたが、その前の著書の邦訳なのか。

監訳者が Wired で「発酵メディア」研究連載をやっていたドミニク・チェンなのもピッタリだ。

makezine.jp

続いては、『段ボールで作る! 動く、飛ぶ、遊ぶ工作』である。段ボール工作本か!

よくこんな本を見つけてきたものだと思うが、こうしたアナログ工作分野もまぎれもなく Maker Faire がカバーする領域なんだよね。こうしてメイカーの裾野が広がるわけだ。ここまでくると、そろそろ手芸関係の本もいいかもしれない。

ジェニー・オデルのアテンションエコノミーへの反逆を説く本の邦訳『何もしない』が来月出る

yamdas.hatenablog.com

およそ2年前にジェニー・オデルの本を取り上げたときは、「何もしない方法」という奇妙なタイトルの本の邦訳は難しかろうなと正直思っていたが、『何もしない』として早川書房から10月に出るのを知った。木澤佐登志さん推薦とな。ワオ!

『監視資本主義』を引き合いに出すまでもなく、アテンションエコノミーに対する反感がそれだけ高まったのもあるし、インターネットが生活に欠かせないインフラになって久しいが、気が付けばネット全体が残念なノリになってるよねという意識の反映なのかもしれない。

さて、著者のジェニー・オデルは「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2021年版)」で紹介した新刊も出たばかりだが、こちらはページ数が70ページ程度の薄い本なので、本格的な第二作が出るのはまだ先の話だろう。

少し前にフランスの公共放送に出演して、取り残されることへの不安を指す「FOMO」の向こうを張って、NOMO(The necessity of missing out:見逃すことの必要性)を説いているあたり、さすが「何もしない方法」の著者らしいと思った。

その仕事が大いに教育的な役割を果たす堀越英美さんの翻訳本がこの秋二冊出る

堀越英美さんというと、ワタシにとっては1973年組の星の一人なのだけど、この秋彼女の翻訳本が二冊出る。

一冊目は、ギタンジャリ・ラオ『STEMで未来は変えられる』

著者のギタンジャリ・ラオ(Gitanjali Rao)については、版元関係のサイトに掲載されているインタビュー記事に詳しい。

「米TIME誌の表紙を飾った15歳の科学者」という謳い文句も目を惹くが、彼女が開発したものを見ると、水中に含まれる鉛探知機にしろ、オピオイド(鎮痛剤)の依存症状の早期診断デバイスにしろ、ネットいじめを防止するために AI を活用したアプリにしろ、いずれも今のアメリカの社会問題を反映したものなのがすごい。

STEM 教育の重要性は以前から言われているが、最低レベルともいわれる日本の STEM 教育の重要性がこの本で認識されるとよいと思います。

そうそう、今月末に大分県がギタンジャリ・ラオの特別講演会を行うみたい。

さて、二冊目はサラ・ヘンドリックス『自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界』である。

著者のサラ・ヘンドリックス(Sarah Hendrickx)は、自閉症などを対象とした訓練やコンサルティング、ビジネスをサポートする団体を運営する研究者にして、自らも自閉症スペクトラムの診断を受けている。

確か堀越英美さんの次女さんも自閉症スペクトラムの診断を受けていたと記憶する。そうした意味でこの本の翻訳は訳者自身にとっても実用性があり、切実な内容を含んでいたと推測する。

紹介した2冊とも教育的な本であるが、思えば堀越英美さんが昨年出した2冊の本も娘さんを持つ母親として、とても教育的な本であった。

『スゴ母列伝』が特にそうだが、堀越英美さんは女の子、そして娘を持つ母親の両方に力を与える教育的な仕事をずっとやっていることに気づく。しかもその仕事に説教臭さは微塵もなく、何より著者自身が刺激を受け、楽しんでいるのが分かる。今回紹介した翻訳書二冊もそういう仕事に違いないし、そのように仕事に一貫性というか、貫くものを持っている人をワタシは尊敬する。

追悼チャーリー・ワッツ ~ かつてワッツ夫人が語った「ローリング・ストーンズ」に対する深い怒り

rollingstonejapan.com

もはや説明の必要はないが、チャーリー・ワッツが亡くなった。ワタシが節約打法と呼ぶ、ハイハット抜きに特徴のある彼のドラミングを愛する者としてとても悲しい。ピーター・バラカン「チャーリーがいなければ、ストーンズはもう終わりでしょう。それとともに、あのロックの時代、僕らの時代の終わりを感じる」と言うのはよく分かる。

折角なので少し毛色の変わった記事を紹介しようと考え、rockin' on 1990年1月号(表紙はストーン・ローゼズ)に掲載された、「メンバー全員の妻たちが語るローリング・ストーンズ」という非常に珍しい企画を思い出した。というわけで、久方ぶりに、かつて読者だった雑誌ロッキング・オンのバックナンバーを引用する企画「ロック問はず語り」である。

時期的にはアルバム『Steel Wheels』をリリースし、久方ぶりの全米ツアーに出る前に取材されたもので、元々は Vanity Fair に掲載された記事の翻訳で……と調べてみたら、ちゃんと元記事が全文ウェブに公開されていた!

archive.vanityfair.com

以下の引用は飽くまで rockin' on 1990年1月号から。何しろ30年以上前の記事なので、現在一般的なジェンダー観からすれば問題になりそうな記述があることは予めお断りしておく。

Vanity Fair の記事の写真は、ロンドンのスタジオで撮影されたジェリー・ホール(当時のミック・ジャガーの内縁の妻)、パティ・ハンセン(キース・リチャーズ夫人)、ジョー・ウッド(当時のロン・ウッド夫人)、そしてシャーリー・ワッツ(チャーリー・ワッツ夫人)である。

記事の最初で、撮影スタジオに現れたジェリー・ホールが、ネックレス類を何本かわしづかみにして言う言葉が奮っている。

「でも、撮影は、ほら、あの人達から始めたらどうかしら。マリアンヌ・フェイスフルとか、アニタ・パレンバーグ、それとアストリッド・ワイマンとかね。で、タイトルは、そう、『ストーンズが捨てた女たち』でキマリ」

最終的にミック・ジャガーと4人もの子供をもうけることになるジェリー・ホールは自信満々の様子で、この翌年の1990年には電撃的に結婚式を行う。が、後に破局し、彼女も『ストーンズが捨てた女たち』に名前を加えたのはいささか皮肉である。

そういえばこのインタビューで、ジェリー・ホールはミックのことを「彼ほど読書量の多い人は見たことない」と称えているが、後にミックのソロ作発表を受けたインタビュー時、児島由紀子が「ジェリー・ホールさんが、あなたほど読書量の多い人を見たことがないと言ってましたよ」とヨイショしたところ、ミックの答えは「へぇ、ブライアン・フェリーってそんなに本を読まない男だったのかね」で、当時既に囁かれていたこの夫妻の不仲を裏付けた形となった。

この記事でも、アンディ・ウォーホルの日記(asin:4167309726asin:4167309734)に出てくるジェリー・ホールのゴシップ話などなかなかすごい内容もあるのだが、そのあたりは割愛する。

面白いのは、この記事におけるメンバーの妻たちとストーンズという集団の関係性についての分析である。

 ただ、いくら妻たちが夫たちを支えたところで、ロックンロール女房の生活というものが夫達の職業的な性格からして非常に孤独なものであることに変わりはない。そして、それに輪をかけるように、ストーンズという集団自体、元ジャガー夫人のビアンカジャガーがインタビューでかつて強く語ったように、全くの「男性秘密結社」なのだ。いつでも、ストーンズでは「バンド」が全てを優先してきたわけで、そうした時、妻たちとしては孤独を紛らわしてくれるのは自分達の家族以外誰もいないのだ。

「ロックンロール女房」って……。

 そして、こういう対応の仕方こそ、「ストーンズの女たち第一世代」――つまり、キースそして、ブライアン・ジョーンズの愛人だったアニタ・パレンバーグやミックの初代愛人マリアンヌ・フェイスフルやビアンカには全く欠けたものだった。あれほどこの世の春を謳歌したアニタ、マリアンヌ、そしてビアンカが犯した決定的な間違いは、自分達こそもストーンズの一員だと錯覚してしまったことなのだ。今日のストーンズの女たちと違って、アニタもマリアもビアンカも自分達の家族との繋りを持たない孤独な存在だったわけで、そうした自分達の孤独をストーンズで埋め合わせようとしたところに彼女達の悲しい結末が待っていたのだ。

なかなかキツいですな。この記事では、ここで名前が挙がっているアニタ・パレンバーグにも取材していて、彼女の証言もこの分析を裏付けている。

ロックンローラーと暮らすなんて、こんな孤独なことはないんだから。彼がどれほど自分のことを愛してくれようと、音楽に対する愛が絶対にそれに勝っているものなのよ。そして、キースが音楽に取り組み始めるとそれ以外のことはもう何も関係がなくなってしまう。(中略)女がもし、ロック・スターなんかと暮らすんだったら、彼とは全く関係のない自分の生活というものを持ってなきゃ絶対にやっていけないものなのよね

この記事において、そうしたロックスターである夫とは「全く関係のない自分の生活」をもっとも確かに持った人は、ジェリー・ホールやパティ・ハンセンではなく、ツアーへの帯同を宣言するジョー・ウッドでもなく、ましてや当時ビル・ワイマンと結婚したばかりだった当時まだ十代のマンディ・スミス(ビルより34歳年下でスキャンダルとなった)でもなく、チャーリー・ワッツ夫人のシャーリーだったと今になって分かる。そして重要なのは、その佇まいがチャーリー自身にも重なることだ。

キースをはじめとしてストーンズの面々が麻薬中毒から脱しクリーンになった後、1980年代にチャーリーがひっそりヘロイン中毒に陥っていたことは知られるが、この頃には夫妻の確固たる生活を取り戻しているのが記事を読むと分かる。

 別々で眺めているとチャーリーとシャーリーは非常にキリッとした感じのカップルなのだが、二人一緒に並ぶとおそろしくセクシーな雰囲気だ。まるで、50代を迎えるのが待ち遠しかったかのようだ。

そしてシャーリーは、チャーリーについて「でも、考えてみるとチャーリーはいつだって50男だったというような気がするのよね」と語っている。当時の彼は48歳。思えば、もう少ししたらワタシその48歳になり、当時の彼に追いつく。この記事を読んでいた、当時高校生だったワタシは、自分がそんな年齢になるなんて想像もできなかった。で、その歳になってみたら、当時のチャーリーが持っていた気品、落ち着き、セクシーさを自分はまったく持ち合わせていないことに情けなくなる。

さて、ワタシの泣き言はどうでもいいとして、ロックンロールライフから完全に離れた生活を貫いたシャーリーの発言は、今読んでもとても重いものがある。

「だからそんな感じでチャーリーの趣味はいつも他の誰とも違っていたわ。それに、正直言って、いつだってチャーリーがあのバンドの一員だなんてとても信じられなかった。大体、突然ローリング・ストーンズの生活の中に放り込まれた日には私、もう愕然としてしまったわ。もう、何が何だか全くわからなくなってしまった。それも25年ズーッとよ。で、未だに、あの生活をどう考えていいのかわからないもの。当然、私としては怒りを感じたことが度々あったわ。それもすごく深いところでね。バンドの人達に関して言えば、皆好い人だとは思うの。ある限界を越えなければの話だけど。でも、私なんかはロックと音楽業界そのもの、その中でも特にストーンズの女性に対する扱いというものが許せないと思ってきたのよ。侮辱してるとしか思えないのよね」

1964年に結婚した二人は、このとき結婚生活25年、日本風(?)に言えば銀婚式ですか。そして、この夫妻はその後チャーリーの死が二人を分かつまでまで夫婦であり続けた。

この記事は、他の妻たちの証言にしろ、ビル・ワイマンの性豪伝説にしろ面白い話が他にもあるのだが、それはまた後の機会に紹介したい。

rollingstonejapan.com

『Tatoo You(刺青の男)』から40年になるんだな(来月には40周年記念エディションが発売される)。"Start Me Up" は、ワタシが初めて聴いたストーンズの曲であり、今なお彼らの曲で一番好きなのだけど、あのキースのギターリフこそがあの曲の最大の美点と思ってきたのだけど、チャーリーのビートもそれと同じくらいの美点なのだなぁ。

「プロモーションビデオの中でドラムを叩くチャーリーは、目の前のロックスターたちがどんなに激しくポーズを取ろうが、無表情を貫いた。むしろ、ミックのダンスに困惑の表情すら浮かべている」ってホントそうだよね。

そういえばこのアルバムのラストは "Waiting On A Friend" で、この曲はソニー・ロリンズのサックスソロが印象的だけど、彼を推薦したのも確かチャーリーだったはず。

これは個人的な思い出話になるが、ワタシがストーンズのライブを見たのは、1995年3月の福岡ドーム公演一度きりである。ライブ中のメンバー紹介で、チャーリーに対する声援がずっと止まず、そのときにもチャーリーは控えめに困惑の表情を浮かべていたっけ。

本当にストーンズのドラムがチャーリー・ワッツでよかった。彼に改めて感謝したい。

Tattoo You

Tattoo You

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フィリップ・グラスが人工知能と芸術について語る

auderdy.com

現代音楽の巨匠、あるいは『めぐりあう時間たち』や『あるスキャンダルについての覚え書き』などの映画音楽でも知られるフィリップ・グラス……といいつつ、ワタシのようなロックリスナーが最初に触れた彼の作品は、デヴィッド・ボウイの『Low』や『"Heroes"』のシンフォニー化なのだけど。その彼が OpenAI と提携したプロジェクトに取り組んでいるのか。80代半ばにして、すごいねぇ。

フィリップ・グラスの作品をコーパスニューラルネットを訓練したもので、このプロジェクトの目標は、アートの新しい媒体としての人工知能の能力を見極め、ひいてはフィリップ・グラスと共同で作曲を行うことだそうな。

グラスは現時点の成果として作られた音楽、そして作曲や芸術についてもコメントしている。30分弱の文字起こしはかなりな分量になるので、グラス先生が AI や芸術の創造について語る言葉を少しだけ引用しておく。

私が感心するのは、我々人間が行う判断を機械がしないことだ。我々は「ああ、そのパートいいね。もう一度聞けるかな?」と言うだろう。機械はそれをやらないけど、作曲家はそれをやる。この曲の弱点は、誰もそれを聴いていないということだ。でもね、それは重要な部分なんだ。これが機械と人間の違いなんだよ。人間には記憶があり、好みがある。人間は「それもう一度聴きたいね」と言うが、機械はそんな判断はしない。機械がやってるのは、最初にやったもののバリエーションを生み出すだけで、それだけでは満足な音楽は作れないんだよ。

ほら、ダンス作品を観ていても同じように分析するだろう? 音楽を聴くでも、詩を読むでも、同じように分析するわけだ。感情面と構造がつながっているんだよ。

作品を聴いて、人間の感情面に照らして分析・評価することの重要性である。AI はそれをやらない、と。グラスはこの後、「これがアートと感情的な方向性を持たない一連のアイデアとの違いなんだ」「機械はとても役に立つものだが、あなたが見せてくれたものは、機械の限界も示している」と語っている。

yamdas.hatenablog.com

このあたりのテーマについて、ワタシも少しブログに書いたことがあるが、果たして人間と AI の共同作業はどんな新しい作品を生み出しうるのだろうか。

グラスと @auderdy のやりとりはその後も続くので、詳しくは原文をあたってくだされ。

ネタ元は kottke.org

ドン・タプスコットのブロックチェーン三部作の最後を飾る(?)『Platform Revolution』が来月刊行される

ドン・タプスコット(Don Tapscott)というと、『ウィキノミクス』『マクロウィキノミクス』は今や昔、近年は『ブロックチェーン・レボリューション』をブチ上げ、Blockchain Research Institute を立ち上げるなど、すっかりブロックチェーンにご執心である。

邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)で、『ブロックチェーン・レボリューション』の続編と言える『Supply Chain Revolution』を紹介したが、今年10月に『Platform Revolution』という彼の編著が出るのを知る。

既に同じタイトルの本があったりするが(asin:4478100039)、こちらの副題は「デジタル時代のオペレーティングシステムとしてのブロックチェーン技術」なので、やはりブロックチェーン本であり、前二冊と合わせてドン・タプスコットの「ブロックチェーン三部作」といってよいのではないだろうか。

彼も今年で75歳だが、その歳まで新しいテクノロジーに首を突っ込めるのはすごいよな。

『Platform Revolution』の推薦者を見ると、Brian Behlendorf の名前が一番上にあってのけぞる。ワタシの世代にとって、彼はなんといっても Apache ウェブサーバの開発者なのだけど(というか、彼はワタシと同い年なんだな)、現在は Linux Foundation でブロックチェーンにも噛んでいるようで、なるほど、この本に推薦文を寄せるのも不思議でないわけだ。

天才ネイサン・ミアボルドの驚異の料理科学本第三弾はピザがテーマ

yamdas.hatenablog.com

yamdas.hatenablog.com

ネイサン・ミアボルドの驚異の料理科学本をここでも取り上げてきたわけだが(第一弾はコンパクト版の邦訳が出てるよ)、調べものをしていて、その第三弾となる Modernist Pizza が10月に出るのを知った。

前作はパンがテーマだったが、今回はピザがテーマとな。全3巻(+キッチンマニュアル)、1700ページ超、そして日本円で5万円超という例によってとんでもないボリュームで、ピザの製法を科学的に解明するだけでなく、(東京を含む)世界中のピザ探訪もやっており、金持ちの豪快な道楽ぶりである。

それでは予告編動画をどうぞ。

フリー・ガイ

また映画館に行くのに二月ほど空いてしまった。まだ安心できる状態にはほど遠いが、本作はワタシの周りで評判が良かったので観たかった。一日一回の上映になってようやく観れたが、観客は(一つ空けとはいえ)かなり埋まっていた。

ライアン・レイノルズの製作、主演作で、『デッドプール』シリーズで彼に対する信用が高まっていたので期待値が上がっていた。

ゲームの NPC(字幕では「モブキャラ」)が主役になったらという映画で、前半は『パーム・スプリングス』を連想するが、ゲーム世界の映画化という意味で、やはり『レディ・プレイヤー1』が一番の比較対象になるだろう。あれはあれでワタシも楽しんだけど、ゲーム世界の描写がミームを過去のみに準拠する現役感のない、映像ももっさりした中年オタク接待映画な『レディ・プレイヤー1』より本作のほうが優れていると思う。

個人的に本作で一番良かったのは、キーズを演じるジョー・キーリーで、彼が想いを伝える場面で自分でもまったく思いもよらず泣き出してしまい(しかし、その時点で相手に伝わっていないのにあとで驚いてしまうのだけど)、あとは後述するある場面を除いてだいたいずっと泣いてた。

ジョー・キーリーを知ったのはご多分に漏れず『ストレンジャー・シングス 未知の世界』だが、以前書いたようにこれのシーズン3が、彼が演じるスティーブのシーズンだと断言したくなるほど彼が良かった。その記憶が、彼に対する好感に間違いなく影響している。

ストレンジャー・シングス』のキャストも、フィン・ヴォルフハルトが『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』二部作、ミリー・ボビー・ブラウン『エノーラ・ホームズの事件簿』など映画にも進出しているが、ジョー・キーリーも本作のような優れた作品で活躍できてよかった、よかった。

最新のゲームについての知識が疎いワタシでも、ゲームのヴィジュアル、オーディオがもはや映画だろというところまできていることは知っている。しかも、本作でも揶揄されるように違法なことでもやりたい放題で楽しめる自由度もある。本作におけるオンラインゲームのルックは最新という感じではないが、ゲームの NPC が映画の主人公になるところまできた。

果たして映画にゲームにないものはあるのか? 本作は、主人公を固唾をのんで見守るしかないことでその答えを一つ出しているのかもしれない。

このように観てよかった作品だけど、終盤の本来ならドッと盛り上がるガジェット登場の小ネタの場面で、あー、マーベルもスターウォーズもディズニーのものなんですね、とそこだけ急に冷静になってしまった。

21世紀最初の20年にリリースされたワタシが愛する洋楽アルバム40選

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今から13年前に公開したエントリだが、見直すと頭を抱えてしまうところがある。今選定をするなら、どう考えても10枚以上は入れ替えになるに違いないからだ。

なんでそれを今更持ち出すのかというと、少し前に課金するストリーミング音楽配信サービスを Apple Music から Spotify に変更したのだが、その際に自分の好みの音楽を配信サービスに分かってもらうのにどうしたらよいかと思ったところで、このエントリを見直す機会があったからだ。

そして、これ以降の21世紀に入ってからのアルバムから選んだらどうなるだろう? と考えたのわけだ。前回は1951~2000年の20世紀後半の50年間で100枚選んだので、2001~2020年までの20年間なら40枚ということになろうか。それを言うなら、もう5年以上待って25年間で50枚選んだほうがよりキリが良いように思える。しかし、アルバム原理主義者のワタシですら、プレイリスト単位で曲を聴く機会が明らかに増えており、悠長に待っていたらアルバム単位のリストが作れなくなるのではないかという危惧がある。

選定基準はワタシが愛する洋楽のアルバムというだけである。とはいえ、前回のリスト作成時は、どうしても「名盤リスト」を作るという意識がなかったとは言えない。今回は、とにかく自分が聴いた記憶を優先したので、一般的にははっきり評価が低かったものや、他で絶対誰もこの手のリストに入れないような作品も入っている。

以下、発表順。

アーティスト アルバム 発表年 国内盤 輸入盤 Spotify Apple Music
Arab Strap The Red Thread 2001 Amazon Amazon Spotify Apple
The Strokes Is This It 2001 Amazon Amazon Spotify Apple
Maroon 5 Songs About Jane 2002 Amazon Amazon Spotify Apple
Red Hot Chili Peppers By the Way 2002 Amazon Amazon Spotify Apple
Steely Dan Everything Must Go 2003 Amazon Amazon Spotify Apple
Morrissey You Are the Quarry 2004 Amazon Amazon Spotify Apple
U2 How to Dismantle an Atomic Bomb 2004 Amazon Amazon Spotify Apple
Kanye West Late Registration 2005 Amazon Amazon Spotify Apple
Amy Weinhouse Back to Black 2006 Amazon Amazon Spotify Apple
White Light Riot Atomism 2007 - Amazon Spotify -
Stars of the Lid And Their Refinement of the Decline 2007 - Amazon Spotify Apple
Radiohead In Rainbows 2007 Amazon Amazon Spotify Apple
Nick Cave and the Bad Seeds Dig, Lazarus, Dig!!! 2008 Amazon Amazon Spotify Apple
The Roots How I Got Over 2010 Amazon Amazon Spotify Apple
Arcade Fire The Suburbs 2010 Amazon Amazon Spotify Apple
Adele 21 2011 Amazon Amazon Spotify Apple
Frank Ocean Channel Orange 2012 Amazon Amazon Spotify Apple
Daft Punk Random Access Memories 2013 Amazon Amazon Spotify Apple
D'Angelo and the Vanguard Black Messiah 2014 Amazon Amazon Spotify Apple
Kendrick Lamar To Pimp a Butterfly 2015 Amazon Amazon Spotify Apple
Kamasi Washington The Epic 2015 Amazon Amazon Spotify Apple
David Bowie Blackstar 2016 Amazon Amazon Spotify Apple
Anderson .Paak Malibu 2016 Amazon Amazon Spotify Apple
Chance the Rapper Coloring Book 2016 - - Spotify Apple
Bon Iver 22, A Million 2016 Amazon Amazon Spotify Apple
Solange A Seat at the Table 2016 Amazon Amazon Spotify Apple
Leonard Cohen You Want It Darker 2016 Amazon Amazon Spotify Apple
Lorde Melodrama 2017 Amazon Amazon Spotify Apple
Calvin Harris Funk Wav Bounces Vol. 1 2017 Amazon Amazon Spotify Apple
Courtney Barnett and Kurt Vile Lotta Sea Lice 2017 Amazon Amazon Spotify Apple
Charles Lloyd, The Marvels, and Lucinda Williams Vanished Gardens 2018 - Amazon Spotify Apple
Mitski Be the Cowboy 2018 Amazon Amazon Spotify Apple
The Magic Lantern To The Islands 2018 - Amazon Spotify Apple
Loyle Carner Not Waving, but Drowning 2019 Amazon Amazon Spotify Apple
Jamila Woods Legacy! Legacy! 2019 Amazon Amazon Spotify Apple
Michael Kiwanuka Kiwanuka 2019 - Amazon Spotify Apple
Dua Lipa Future Nostalgia 2020 Amazon Amazon Spotify Apple
Haim Women in Music Pt. III 2020 Amazon Amazon Spotify Apple
Fleet Foxes Shore 2020 Amazon Amazon Spotify Apple
Bruce Springsteen Letter to You 2020 Amazon Amazon Spotify Apple

正直に書くと、100選で漏れてしまったのでこちらで入れた人のアルバムは確かにある。いつの日かそうしたしがらみをすべて取っ払ったリストを作るべきなのかもしれないが、それができる日まで自分がブログやってるとは思えない。

あと発表年が偏らないようにしたところはある。ニック・ケイヴは本当は『Skeleton Tree』にするつもりだったが、なぜか2016年のアルバムが異様に多かったため、(ミック・ハーヴェイに対する敬意もこめて)変えさせてもらった。

これも後になって、なんでこれを入れた/入れなかったと後悔するに決まっているが、現時点で愛聴した記憶を優先した。

「新たなウィキリークス」としてのデータリークサイトDDoSecrets

newrepublic.com

DDoSecrets の略称で知られる Distributed Denial of Secrets 自体について取り上げる記事は初めて読んだかも。

記事タイトルが「新たなウィキリークス」で、サブタイトルが「透明性の共同体 DDoSecrets はいかにしてジュリアン・アサンジを凌駕したか」なのに明らかだが、DDoSecrets は WikiLeaks の後継と見られているわけですね。

実際 DDoSecrets は、Wikileaksジュリアン・アサンジのエゴ(と彼のトラブル)のために残念な感じになり、データ公開を実質止めた2018年12月に、それと入れ替わるように立ち上がり、以降透明性の追求を担ってきた。

japan.zdnet.com

ワタシが DDoSecrets の名前を意識したのは、アメリカの警察や法執行機関の270GBもの機密文書が大量に漏洩した BlueLeaks 事件が最初だったと思う。

gigazine.net

今年に入り、1月にアメリ連邦議会議事堂の占拠事件の後、極右に人気の Gab の漏洩データを公開して注目を集めた。

wired.jp

そして今年夏のアメリカのインフラ企業に大きな被害をもたらしたランサムウェア攻撃に関しても、「公衆の精査を受けるに値すると考えられるデータを暴露するというミッションの一環として」「潜在的にセンシティヴな可能性のあるソフトウェアデータとコードについては、慎重に編集を加え」た上で流出データを公開している。

BLM 運動や議会議事堂襲撃事件へのシンクロなど、リークするデータもタイムリーだが、Wikileaks がダメになっても、その意志を継ぐ動きが出てくるところが面白い。

If the work of DDoSecrets has the whiff of the illicit, it’s because official secrecy, mass surveillance, threats of prosecution, and big tech’s cooperation with censorious authorities have impeded the ability of journalists and publishers of leaked data alike to operate.

DDoSecrets Is the New WikiLeaks | The New Republic

DDoSecrets の活動に不正の匂いがするなら、それは公務上の機密、大量監視、訴追の脅威、そして検閲当局に協力するビッグテックが、ジャーナリストや漏洩データの発信者の力を妨げているからだ、ということか。

この記事の最後にあるように、「世界はもはや、ハクティビストやリークティビスト(leaktivists)を排除できない。人々がそれを望む限りは」ということであり、DDoSecrets もいずれは Wikileaks みたいに失速する可能性も高いのだけど、それに代わる存在はこれからも生まれるということだろう。

ネタ元は Slashdot

携帯電話の位置情報プライバシーを高めるPretty Good Phone Privacy

www.wired.com

携帯電話の位置情報が携帯電話事業者に渡るというのは仕組み上当たり前で、これをどうこうするのは無理だとばかり思い込んでいたのだが、そうでもないらしい。

プリンストン大学Paul Schmitt南カリフォルニア大学Barath Raghavan が発表した Pretty Good Phone Privacy(リンク先 PDF ファイル)という方式によれば、端末側の簡単なソフトウェアの改修で、携帯事業者の技術インフラには手をつけることなく携帯電話の位置情報プライバシーを高められるという。もちろん 5G にも適用可能である。

この Pretty Good Phone Privacy(PGPP)という名称は、実は今年が誕生30周年である Pretty Good Privacy(PGP) を踏まえているのは言うまでもない。

その詳しい実現方法は論文を読んでいただくのがよいが、携帯電話は今や誰もが持っているわけで、この PGPP が採用されれば、それこそ30年前に PGP がもたらした以上のインパクトを持ちうるのではないか。

ネタ元は Slashdot

ロバート・クワインの貴重なインタビューに見るルー・リードとの関係

どういう経緯だったか忘れたが、ロバート・クワインの貴重なインタビューの日本語訳が公開されているのを知り、興味深く読んだ。

www.yamdas.org

ロバート・クワインについてはワタシも文章を書いているが、やはり、ルー・リードとの関係性については気になるところである。

note.com

1997年のインタビューだが、ロバート・クワインの音楽的な志向、そして彼がニューヨークパンクにヴェルヴェット・アンダーグラウンドに通じるものを感じたのが分かる。

ニューヨークパンクについては、昨年20周年版増補を加えて復刊されたレッグス・マクニール&ジリアン・マッケイン『プリーズ・キル・ミー』がもっとも優れた証言集で、この本にもクワインの発言は収録されている。

クワインは、ルー・リードとの演奏について聞かれ、以下のように答えている。

音楽的には、4年間の中で最初の1週間半は本当に素晴らしかった。『The Blue Mask』をやったんだ。本当に誇りに思うレコードだよ。リハーサルもオーバーダブもなく、ミスのためのパンチインもなかった。ヴォイドイズとは正反対だ。俺は彼を鼓舞し、またギターを弾くように励ました。彼と一緒に楽しむことはできなかったけど、少なくともそれは音源に残ってるし、それを誇りに思うよ。

ロバート・クワイン ロングインタヴュー(November 1997)|kido hideaki|note

ルー・リードの復活作『The Blue Mask』は、クワインの存在なしにはありえなかった。

クワインルー・リードの人間評はとても興味深いし、おそらくは正しいのだろう。

どんな個人的な問題があっても我慢してたけど、いまだに残念ではある。でも、彼はいい人じゃない。ある意味では、彼は私を尊敬していた。怒鳴られたら、怒鳴り返すし、俺は率直で、人をバカにしない。彼の問題は、彼に媚びる「イエス」の男性に囲まれるのが好きなくせに、彼は頭がいいからそのこと(媚を)知っていて、そのために彼らを嫌うという問題だな。だから彼はたくさんのハックミュージシャンのうちの一人で終わってしまうということだ。

ロバート・クワイン ロングインタヴュー(November 1997)|kido hideaki|note

ルー・リードのライブ盤の中でもっとも優れていると思う『Live in Italy』クワインが評価していないのは残念だが、その前段で書かれるリードの非道な仕打ちの悪印象が影響していないわけはない。

note.com

こちらは友人だった音楽評論家のレスター・バングスについてロバート・クワインが語るインタビューだが、最初を読むだけでクワインの気難しさ、というかプライベートに踏み込む人間に対する容赦なさがよく伝わる。

インタビュアーは Jim DeRogatisWikipedia)で、この人がライアン・アダムスのライブに厳しい評を書いたところ、ライアン・アダムスが彼の留守番電話に怒りのメッセージを残した一件でワタシはその名前を認知したっけ(なお、その留守電はリンクはしないが YouTube で今も聞ける)。

このインタビューで触れられるレスター・バングスの伝記は、以下の本ですね。

レスター・バングスもある意味伝説的な人物だが、映画『あの頃ペニー・レインと』フィリップ・シーモア・ホフマンが演じたことで知られる。

レスター・バングスもルー・リードとはひと悶着もふた悶着もあったのだが、そのあたりはこのインタビューを読んでも分かるだろう。

『The Blue Mask』をバングスが死ぬ直前に聴き、素晴らしいと思っていた話は知らなかった。

ルー・リードとはこの時点ではまだ仲が良かった。『ザ・ブルー・マスク』をやっている間は、実はしばらく友達だったんだ。それは大きな勘違いだったんだけどさ。

「俺は愛すべき天才なんだ!」友人レスター・バングスについてロバート・クワインが語る|kido hideaki|note

クワインルー・リードについて語る言葉にはどうしても苦々しさが残る。

だからレスターが亡くなる半年ほど前にルー・リードと友達になっていて、なんとか二人を会わせようとしていたんだけど、レスターはちょっとばかし羨ましがっていた。レスターは俺がルーと突然映画を見に行ったり、食事に行ったりしていることをね。でも俺は本当にバカだったよ。君が聴くことができない『ブル-・マスク』の最初のヴァージョンはもっと良かったんだ。同じレコードなんだけど、彼のヴォーカルが生々しくて、クロングをしようとしていないし、レイプのこととかにふれた「The Gun」は迫力があって、本当にヘビーな猥褻表現を使っているんだ。彼はその多くをきれいに取り払った。当時は俺の疑り深い友人への忠誠心があったから、俺はレスターに聴かせてあげれなかった。けど、やっとルーは感謝祭の時に、レスターにミックスを聴かせてもいいと言ってくれたんだ。彼はヘッドフォンをつけてそこに座っていて、(作品を)気に入ってくれた。ルー・リードがどう思うかと聞いてきたので、俺は「彼は本当に気に入ってくれたけど、歌詞が弱いと言っていた」と答えたんだ。それはおそらく最悪のことを言ったんだと思う。俺のヒーローである彼と一緒にいられることでのぼせていたんだ。彼とは良いレコードを作ったんだけどね。

「俺は愛すべき天才なんだ!」友人レスター・バングスについてロバート・クワインが語る|kido hideaki|note

この『The Blue Mask』の「最初のヴァージョン」が公になる日は来るのだろうか? 来年あたり、40周年記念盤にボーナスとして収録されたりしないものか。

偶然だが、ルー・リードとの友情はレスターの死で終わった。前置きは省略するが、金曜の夜、レスターが死んだとのニュースを聞いた。次の日、俺はショックを受けて朦朧としていたんだ。(中略)それからルー・リードの家に行った。レスターが死んだと話した時、彼は俺を信じなかった。それがルー・リードとの友情の終わりとなったんだ。彼は「お友達は気の毒に」と言いやがった。それから奴はレスターを45分間も攻撃した。彼は自己中心的で、それが友達がいない理由なんだ。もしあなたがイエスマンでなければ、あなたは彼の友人ではない。彼は俺がイエスマンじゃないことを尊重してくれていたが、最終的には俺は去るしかなかった。

「俺は愛すべき天才なんだ!」友人レスター・バングスについてロバート・クワインが語る|kido hideaki|note

これも読んでてなんとも哀しい気持ちになる。クワインはその後でリードのことを asshole とまで罵っているが、その率直さこそがパンクであり、まただからこそイエスマンを好む(多かれ少なかれロックスターはそうなのだろうが)リードには耐えられなかった。

人は死に、音は残る。若き日のリードの演奏をクワインが録音した『The Quine Tapes』、そしてリードとクワインがタッグを組んだ『The Blue Mask』は不滅である。

Blue Mask

Blue Mask

  • アーティスト:Reed, Lou
  • Sbme Special Mkts.
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デジタル時代の音楽著作権についてのガイド本が来月出る

調べものをしていて、Music Copyright: An Essential Guide for the Digital Age(音楽著作権:デジタル時代の必須ガイド)というズバリなタイトルの本が9月に刊行されるのを知る。

著者の Casey Rae は現在 Sirius XM の音楽ライセンス部門のディレクターで、Future of Music Coalition の CEO も務めていた人で、なるほど、それならば音楽著作権に精通しているわけだが、彼は著述家としても活動しており……おいおい、ワタシは彼の本を一昨年にブログで紹介してたやないか。

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ウィリアム・バロウズとロックスターとの関係を本にしていた人か。というかこの人、ワタシよりも若いのな。

ページ数の割に値が張る本なので、前著に続いて邦訳は難しいだろうが、音楽著作権について最新の認識をインプットするにはこういう本を読んでおかなくてはならんのだろうな。

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