パイソンズとも非常にゆかりの深いデヴィッド・フロスト卿が亡くなった。テリー・ギリアム を除くメンバー5人が最初に顔を合わせたのが彼の「フロスト・レポート」だったのだが、せっかくなので小林恭子 さんが書かないフロストの一面について、過去ログから引用させてもらう。
モンティ・パイソン に「ティミー・ウィリアムスのコーヒータイム」というスケッチがある。エリック・アイドル が演じる、愛想は良いがひたすら自己中心的で軽薄で自己宣伝にしか興味がない業界人ティミー・ウィリアムスのモデルは、本作の主人公デヴィッド・フロストである。
フロストはそのアイドル、グレアム・チャップマン 、ジョン・クリーズ といったケンブリッジ 派の先輩筋にあたり、実際若き彼らを自分の番組で起用しているが、その後輩達がモンティ・パイソン としてイケるとみるや、フロストはクリーズに電話をかけ、「今から僕もパイソンズに加わりたいんだけど、もちろんOKだよね?」と擦り寄ったという。それに対してクリーズは "No! Piss off!" と言い放ったそうだ(出典:モンティ・パイソン大全 (映画秘宝コレクション) )。
自分を取り立ててくれた先輩に対して断固とした態度をとったクリーズ先生は偉いが、「出世の手段にコメディを利用した人」と評価されるフロストという人をよく表したエピソードである。
『フロスト×ニクソン』 〜 成功に執着した二人を分けたもの - YAMDAS現更新履歴
さて、今回の訃報を受け、クリーズ先生は "I was very, very sad to hear of David's death. I had known him for 52 years and I was extraordinarily fond of him." と語っていて 、上記の逸話を踏まえると、本当に感動的である。これは嫌味でなく、コメディアンとしてはどうであれ、それだけフロストのなした仕事が大きかったということだ。
[追記] :エリック・アイドル も、サタデイ・ナイト・ライブでフロストのニクソン インタビューをパロディにした後、フロストにばったり会ったとき、「お前の物真似大好きだよ!」とフロストに言われた話をツイートしている。そういう度量のあった人だった。
そういえばその晩年、フロストがアルジャジーラの番組を司会し、そこにマイケル・ペイリンがゲスト出演しているのを見た ときは不思議な気持ちになったものだ。
マイケル・ペイリン が第一次世界大戦 時代を描く BBC のドラマに出演するとのことで、彼のテレビドラマ出演はおよそ20年ぶりだそうだが、あなた旅行番組を除く映画やテレビからの引退 を表明してませんでしたっけ? 折角なんでまた映画にも出演してほしいところだ。
もう一つマイケル・ペイリン の話題だが、Spamalot (まだ続いてるんだ!)において神の役を演じるとのこと。しかし、以前はジョン・クリーズ が神の声をやっていて、エリック・アイドル に降ろされて二人の関係が悪化した んだったよな。これはアイドルによる他のメンバー懐柔策か?
[追記] :……と思ったら、エリック・アイドル のツイートをみるとエリックとジョンは仲直りした模様。よかった、よかった。
ここでも何度も取り上げているグレアム・チャップマン の偽自伝映画だが、来年のディスク化の前に劇場公開もやるらしい。ワタシが住む街でやってくれなさそうなのが残念だが……。
最後はなんといってもテリー・ギリアム の新作『The Zero Theorem』である。
ベネチア国際映画祭 でプレミア上映され、早速批評が出ている。本人は『未来世紀ブラジル 』の21世紀版と語っていて、ワタシが観たクリストフ・ヴァルツ が出てる映画がどれも良いのでどうしても期待してしまうが、近作に比べれば大分戻ってきているものの、『未来世紀ブラジル 』の夢再びとはいかないかも。
YouTube の公式チャンネルに映画からのクリップが公開されている。
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