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『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その13

ようやく正式版が出た『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、正式版が出たというので購入いただいた方もいるようである。

そういう方の感想ツイートを取り上げさせてもらう。

もう絶こと「もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて」、Beta取れたので買ってぼちぼち読み始めてんだけど、先に追加コンテンツを斜め読みしてしまったら何なんですかこれ…という気持ちだ…

https://twitter.com/cetacea/status/998551206388682754

そういう重い話を読もうとは思っていなかったわけだが…という気持ち…

https://twitter.com/cetacea/status/998551314626891776

とんでもないものを読ませてしまい、申し訳ない(笑)。

いや、笑ってはいけないのだが、やはりこういう反応をいただくと、「ボーナストラック書きますので」とだけ伝えられ、電子書籍化のための作業が佳境に入ろうかというところで、いきなり「グッドバイ・ルック」を読まされた達人出版会の高橋さんの困惑はいかばかりだったかと思ってしまう。

ただ、このボーナストラックを読んでから、また本編を読み直すと、これはそういうことだったのかと作者について合点がいくところがいくつもあったりするのです。

「バーチャルリアリティの父」ジャロン・ラニアーが「今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除しよう」と呼びかける新刊を出している

最近なぜか GDPR について Wired で面白い文章を書いている武邑光裕やはり GDPR についての文章経由で、ジャロン・ラニアーの新刊が出るのを知る。

Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now (International Edition)

Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now (International Edition)

Ten Arguments For Deleting Your Social Media Accounts Right Now

Ten Arguments For Deleting Your Social Media Accounts Right Now

Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now (English Edition)

Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now (English Edition)

でも、ちょっと待った。ジャロン・ラニアーって、「バーチャルリアリティの父」の面目躍如な本を昨年刊行したばかりじゃないか。

それから半年で新刊なのだからペースが早い。今回は160ページの分量ということで可能だったのだろうが、よほど書きたいテーマだったのだろう。

で、書きたいことは何かというと「今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除しよう」というのだから、『人間はガジェットではない』(asin:4153200166)やワタシも WirelessWire 連載1回目「インターネットによる中流階級の破壊をマイクロペイメントが救うか」で取り上げた当時の新刊のインターネット批判を先鋭化させている印象がある。

ジャロン・ラニアーのサイトにこの新刊のサポートページができているが、そこに真っ先に書かれている注記に笑ってしまった。

No, Jaron does not have a Twitter account. No Reddit account. No Facebook account. They're all fake fake FAKE!

Web resources related to the book Ten Arguments for Deleting Your Social Media Accounts Right Now by Jaron Lanier

いやはや、徹底してますな。このページを見ると、「お前は自由意志を失おうとしている」に始まり、「ソーシャルメディアはお前の魂を嫌悪している」にいたる、この本の主張である10の議論が読めます。

Linuxとオープンソースのファン(の子供たち)が読むべき本のリスト

Linuxオープンソースのファン向けの17冊とのことで、明らかに古い本が入ってるのが気になるが、面白いのは無料で全文読める本がそこそこあること。そういえば、ワタシも昔「無料で読めるLinux本ベスト20」というブログエントリを書いたことがあるが、それとの重複はいくつかあるね。

邦訳があるのは以下のあたりか。

ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!

ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!

それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実 (小プロ・ブックス)

それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実 (小プロ・ブックス)

オープンソースソフトウェア―彼らはいかにしてビジネススタンダードになったのか

オープンソースソフトウェア―彼らはいかにしてビジネススタンダードになったのか

これは日本語訳が全文オンライン公開されている。

オープンソースソフトウェアの育て方

オープンソースソフトウェアの育て方

こちらも日本語訳が全文オンライン公開されている。

プログラミング言語AWK

プログラミング言語AWK

ステーション・イレブン (小学館文庫)

ステーション・イレブン (小学館文庫)

この本だけフィクションである。

こちらは子供を Linuxオープンソースを好きになってもらうための15冊のリストである。Al Sweigart の本が何冊も入っているのが印象的である。彼の本ってどれも全文をオンラインで読めるんだな!

それにしても子供向けのプログラミング本っていろいろ出ているんだね。邦訳があるのは以下のあたりか。

Pythonからはじめる数学入門

Pythonからはじめる数学入門

ローリーとふしぎな国の物語 ~プログラミングとアルゴリズムにふれる旅~

ローリーとふしぎな国の物語 ~プログラミングとアルゴリズムにふれる旅~

たのしいプログラミング Pythonではじめよう!

たのしいプログラミング Pythonではじめよう!

Linuxがifconfigやnetstatといった昔からおなじみのネットワークコマンドを置き換える本当の理由

もはや Linux で ifconfig や netstat といった昔からある(つまり Unix 由来の)ネットワークツールを非推奨にして、ss や ip といったものに置き換えているという話をワタシが知ったのは……記憶を辿ると、どうやら山形浩生経由らしい。

この方針に対し、古手のシステム管理者には、なんで安定して動いているものを置き換えなければならないのかとイライラする向きもあるのだが、それが必要な理由について解説している。

まず一つには、/proc 配下のいろんなファイルを読む ifconfig や netstat は、iproute2 の一部であり netlink ソケットを利用する ss や ip よりもコマンドの実行が非効率というのがある。これが大規模なシステムだと問題になるというのだ。

そしてもう一つには、古いコマンドはある意味板ばさみにあるということ。つまり、片方ではこうしたネットワークのコマンドは、Linux カーネル自身のネットワーキングの有様を知りたいから利用するのだが、もう片方ではこれらのコマンドは、コマンドラインからの出力という伝統的なインタフェースでの利用を想定しており(追記@takeh_t さんからご指摘いただいているが、ここは誤訳っぽくて、問題はコマンドラインという形式ではなく、コマンドラインの出力内容が実態と乖離していることが問題ということです)、それがカーネルのネットワーキングの現実を反映できなくなっているとのこと。

そして、カーネルの現実にコマンドを合わせようとすればするほどスクリプトを破壊することになってしまう。このように不正確だし修正するのが大変な ifconfig や netstat といったプログラムの置き換えは誠実なアプローチとのこと。

ふーむ、そうなのか。ネタ元は Slashdot

Linuxネットワークプログラミング

Linuxネットワークプログラミング

「オーケストラ・ヒット」の歴史を辿る動画がよくできていた

河村奨さんの「30代から始めるYouTube入門」がとてもためになるのだが、その中でも YouTube のジャーナリズムとして見逃せないと紹介されている Vox チャンネルの Earworm シリーズで取り上げられている「オーケストラ・ヒット」の歴史の話が面白い。

そもそもワタシは「オーケストラル・ヒット」として記憶していたのだが、原語では Orchestra hit が正しいらしい。

要は、オーケストラが一斉に「ジャンッ!」とやる感じの音を指すのだが、アフリカ・バンバータが1982年に「プラネット・ロック」で採用し、以降80年代にやたらと流行した手法である。

Vox の動画でも出てくるが、再結成イエスの「ロンリー・ハート」が、個人的には当時もっともインパクトがあったな。

Vox の動画を観ると、スミスのような一見こういう手法を使わなそうなバンドも使っていたのに気づかされて驚いてしまう。

そのように80年代一世を風靡した手法なのだが、そういえば山下達郎は以下のように語っていたっけ。

あとは流行の楽器や流行のミックス手法といった「時代の音」というのがあって、刺激的なものほど陳腐化も早いので、そういうものになるべく手を出さない。80年代にゲートリバーブをついに一度も使わなかった。オーケストラヒットなんてもってのほかだった(笑)。

山下達郎「OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~」特集 (5/8) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

つまりはあまりに流行ったがために、山下達郎のような音楽職人は意識して避けていたし、90年代以降はそれを使うのがだんだん恥ずかしくなっちゃったわけだが、近年ブルーノ・マースのような人が、オーケストラ・ヒットにまつわるノスタルジーを意識的に利用しているというわけである。

オーケストラ・ヒットというと、上記の通りアフリカ・バンバータあたりが一番最初と言われるが、この Vox の動画が面白いのは、その始祖をイーゴリ・ストラヴィンスキーの「火の鳥」に求めているところ。そして、ハービー・ハンコッククインシー・ジョーンズピーター・ガブリエル、そしてフェアライトCMIといった欠かすことのできない人や楽器が網羅されていて、よくできていると思った。

ネタ元は kottke.org

ストラヴィンスキー:火の鳥

ストラヴィンスキー:火の鳥

ロンリー・ハート

ロンリー・ハート

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