週刊朝日「ハシシタ・奴の本性」連載中止後に佐野眞一の過去の盗作疑惑が噴出し、それを受けたガジェット通信の連載が始まったのは知っていたが、ワタシ自身佐野眞一の読者ではなかったので追ってなかった。
しかし、宝島社から『ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相』なる本が出ることを知ったとき、ワタシが真っ先に知りたかったのは、『<盗作>の文学史』の著者である栗原裕一郎さん(id:ykurihara)の感想だった。
すると栗原さんから、依頼に応じて長めの原稿を書いたものの、中立的に事件を評価したがゆえに掲載拒否されてしまったことを Twitter で教えていただき、恐縮するとともに何じゃそりゃとも思ったものである。
そして今回栗原さんの問題の文章がウェブ公開されたので読んでみたが、極めて穏当な栗原さんらしい文章で、これが「他の執筆者への仁義にもとる」という先方の主張の意味が分からない。
もちろんここで「穏当」というのは、腰が引けているという意味でなく、一方的でも扇情的でもなく冷静という意味である。冒頭に置かれた盗作事件報道の変遷の話も『<盗作>の文学史』を読んでない読者にも分かりやすいまとめだし、何より「盗作」「剽窃」と指弾される案件に著作権法とは無関係な場合が多いという話が強調されている点において、佐野眞一に興味がない人にも一読をお勧めできる文章である。
ここで我田引水させてもらうと、これはワタシが訳した『3Dプリンティングと著作権を考える』に通じる話で、ブツがなんでもかんでも著作権法で守られるわけではないのである。
しかし、こうして栗原さんの文章を読むと、宝島社の判断はなおさら不可解に思えるよなぁ。
ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相 (宝島NonfictionBooks)
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