[追記はじまり]
予想通りと言うべきか、はてなブックマークにてリストから抜けた方を何人も紹介いただいた。中には、何で自分で入れなかったのか不思議になる人も含まれており、5人だけ追加させてもらった(タイトルも人数を変更した)。それでもまだ足らないと思うが、一応ここまでとさせてください。
2021年7月にこれの続編となるエントリを公開しました。
[追記おわり]
少し前に、本の編集者らしき方の「はてなブログにはあんまりおもしろい人がいない」という文章を読み、論旨には特に文句はないのだが、そもそもはてなブログやはてなダイアリーの書き手から物書きになった人って誰がいたっけと疑問が湧いた。
ワタシは過去はてなダイアラー単著紳士録なんてものを書いており、これを書いた2011年以降に出てきた人も含め、はてなブログ/はてなダイアリーを踏み台にして物書きになった代表的な人をまとめてみた。
条件としては、何よりはてなブログ/はてなダイアリーをメインのブログとしており、単にブログをやってるだけでなくそれなりに人気記事があり、それが書き手としてのその人のフックアップになったであろうと思われる人になる。ただ元から著名人であったり既に専門分野で一家をなしていた人はもちろん、基本的にはてなでブログを始める前に単著があった人は外させてもらった。あと単に本が出たというだけでなく、現在も物書きとして活躍されている方だけにさせてもらう。
以下、あいうえお順に並べた。敬称略。
雨宮まみ(id:mamiamamiya、Wikipedia)
日記鯖でウェブ日記を書いていた頃から知っているので、雨宮さんのことを「はてな出身」と呼んでよいのか躊躇する気持ちもあるが、現在の彼女のブログは、戦場のガールズ・ライフとamazonでなにが買えますか?、そして「東京を生きる」期間限定ブログとすべてはてなブログになっている。
ワタシは雨宮さんが好きなので、主著の文庫化、そして新刊が二冊出た2015年が彼女にとって幸多い年であったことを願う。今年のはじめにお会いした際、「今年は『丁寧な暮らし』がしたい」と語っておられたが、果たしてそれは実現しただろうか。
伊藤計劃(id:Projectitoh、Wikipedia)
本リストにおける唯一の故人になるが、この人を入れないわけにはいかない。現在の公式サイトは「Project Itoh」になるのかな。
伊藤聡(id:zoot32)
伊藤計劃の本名が氏と同じなのは偶然である。
cakes における連載「およそ120分の祝祭」を楽しく読ませてもらっているが、『下北沢の獣たち』のような小説集もまた読みたいな、と伊藤さんの文章のファンとしてわがままなことを考えるのである。
岩崎夏海(id:aureliano、Wikipedia)
既にブログ「ハックルベリーに会いに行く」はブロマガに移転済だが(公式サイト)、はてなユーザ史上最高のベストセラー作家としてこの方を入れないわけにはいかない。
ハックル先生とはてなというと「はてなに行ったらお茶すら出して貰えなかった」事件が知られる(?)が、ワタシも二度目のはてな来訪時、社員の方では伊藤直也さんくらいしかほとんど口をきいてくれず殺伐とした気分になったもので、当時バイトで後に正社員になった神原啓介さんと数年後に再会したときに、そのときの記憶がフラッシュバックし、「なんであのとき口きいてくんなかったんだよぉぉぉぉ」と泣きながら飛び蹴りしたことがある。もてなしなど期待するほうが間違っているのだ。
大野左紀子(id:ohnosakiko)
大野さんの文章ははてなダイアリー移転前(ブログ名に「2」が入るのはそのため)から好きだったが、ブログの内容も氏の生活にあわせた自然な変化があり、それが原稿につながっている好例ではないか。近年の連載では「あなたたちはあちら、わたしはこちら」が良かった。
荻上チキ(id:seijotcp、Wikipedia)
かつては「トラカレ」というニュースサイトをやられていたし、現在は言うまでもなく SYNODOS の人であり人気ラジオパーソナリティだが、彼も古手のはてなダイアリーユーザなのである。著書の数は、今回リストにした方々の中でトップクラスである。
海部美知(id:michikaifu、Wikipedia)
既にブログははてなから移転されているが(移転先に飛ぼうとすると、「安全でない可能性があります」とウィルスバスターの警告画面が出たが大丈夫でしょうか……)、彼女が発明したパラダイス鎖国というタームが評判となり、そのまま新書執筆につながった例としてリストに入れさせてもらう。
熊代亨(シロクマの屑籠)
はてな界隈ではシロクマ先生の名前でおなじみ精神科医ブロガーだが、この方は長年続けているはてなダイアリー(はてなブログ)の文章の面白さが書籍執筆にダイレクトにつながった好サンプルではないか。
ココロ社(id:kokorosha)
最近ではブログ更新頻度がさがって読者として寂しくもあるが、既に5冊も単著を出されていることに今更気づいて驚いた。その著書の内容が、単純にブログから連想されないところに氏の書き手としての矜持を感じる。
小島アジコ(orangestarの雑記、Wikipedia)
はてな出身の漫画家と言えば、何よりアジコ先生になるだろう。今年は「はてな村奇譚」シリーズで楽しませてくれた……と調べてみるとあれは昨年に始まっていた連載だったんだな。
栗原裕一郎(id:ykurihara、Wikipedia)
栗原さんも古参はてなダイアリーユーザだが、始めた時点でそれなりにキャリアのある書き手だったわけで、こういうリストに入れられて不愉快かもしれない。ただ、「単著」という言葉がはてなで話題になることが多かった理由の何割かが氏のおかげであるということで含めさせてもらった。
近藤正高(id:d-sakamata)
「大正生まれの30代」の異名を持つ、調査力とそれで得られた素材を文章にまとめる力に定評のある方である。「ブログの人気記事が書き手としてのその人のフックアップになった」という条件からすると厳しいのだが、何より2015年が、『タモリと戦後ニッポン』という優れた本を上梓しヒットした、近藤さんにとって記念すべき年となったお祝いとして勝手に入れさせてもらった。
庄司創(id:sugio、Wikipedia)
はてなダイアリーの古参ユーザである sugio さんが庄司創として漫画家になっていることは、昨年の夏休み自由研究で把握していたはずだが、見落としていて申し訳なし。
ちきりん(id:Chikirin)
好むと好まざるとに関わらず、この方のブログ記事に多くの人たちの人目を惹く力があるのは間違いない。現在までブログ執筆の更新ペースがほとんど変わらないのはすごいことである。
寺地はるな(悩みは特にありません。)
2年以上前にはてなダイアリーユーザ文学賞受賞歴不完全一覧というエントリを書いたことがあるが、寺地さんははてなブログユーザ初の文学賞受賞者(第四回ポプラ社小説新人賞)ということになるのではないか。
戸部田誠(てれびのスキマ)
この方もブログの抜群の面白さが原稿仕事につながり、遂には書籍執筆にいたったパターンだろう。気がつくと、日刊サイゾー連載は100回超えである。
先ごろいわきから上京されたそうで、今後文筆家としてますますの活躍が楽しみである。
Hagex(id:hagex)
修羅の国が生んだ武闘派カリスマイケメンブロガーとしておなじみ Hagex さんだが、今年は『角川インターネット講座』への寄稿で yomoyomo と Hagex という異人感のある名前が並ぶ珍事態となったのは記憶に新しい。
葉真中顕(葉真中顕のブログ、Wikipedia)
個人的には未だ罪山罰太郎(id:tsumiyama)時代の印象が強いのだが、それが今では気鋭の小説家なのだからすごい話である。『ロスト・ケア』は文庫本になっているのを見かけて買っているので、早く読まないといけない。
花房観音(id:hankinren、Wikipedia)
今回のリストの中で、最も単著が多いのは花房さんであった。今では彼女がはてなダイアリー出身であることを知らない人のほうが多いのかもしれない(公式サイト)。
最初彼女の文章を読んだときの禍々しいとすら言いたくなる強烈な印象は忘れがたく、今では官能小説やホラー小説の強力な書き手であるのも何の不思議もない。
速水健朗(id:gotanda6、Wikipedia)
現在ではブログの更新がA面を含め頻度が落ちてしまったが、ブログに力を入れることでライターとしてのプレゼンスを高めることに意識的であり、実際にそれに成功した代表例だと思う。
そのように速水さんは物書きとして稼ぐという意味で自身の方向性について自覚的な人であり、もはやブログをあまり更新しないのも、彼のブログのファンであるワタシにとっては寂しくもあるが、それが氏にとって自然な展開なのである。2015年は単著がなかったが、そろそろ次のネタを仕込んでいると予想する。
暇な女子大生(暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ)
今回リストを作ったところ、はじめからはてなブログだった書き手は(多分)2人だけで、ブログの書籍化となるとこの方だけになることに気づいた。書籍化の次の展開がどうなるか気になる。
pha(id:pha)
pha さんの場合、そのライフスタイル自体がコンテンツとなり、書籍化されるまでにいたった人である。そのライフスタイルは、例えばワタシのそれとはまったく違うわけだが、pha さんのような人がマイペースで活躍できる世の中のほうが、そうでない世の中よりより良いものなのは間違いない。
深町秋生(id:FUKAMACHI、Wikipedia)
深町さんの場合、デビュー作が刊行された直後からはてなダイアリーを始めており、自分が掲げた基準には正確には外れるのだが、ブログの面白さに惹かれてその人の小説を買ったというのが、ワタシの場合深町さんが初めてだったので。実際そういう人は多かったのではないか。
星井七億(ナナオクプリーズ)
はてなブログの書籍化というのではこの方もいたのを見落としていた。現在は note で健筆を奮っており、ねとらばで連載「ネットは1日25時間」もやられている。
松谷創一郎(id:TRiCKFiSH)
2年以上はてなダイアリーの更新がないのでリストに入れたものか迷ったが、やはり彼も古参はてなダイアリーユーザで後に単著を書くまでになった人の1人なのは間違いない。現在の主戦場はYahoo!個人になるのだろうか。
真魚八重子(id:anutpanna)
ワタシ自身は浅い映画ファンだが、「映画系女子がゆく!」連載を毎回、自分には思いもつかない映画についての文章をとても楽しみに読んでいたので、それが単著刊行まで至ったのは嬉しかった。昨年からはてなダイアリーの更新がないのは寂しいが、そうして優れたライターは仕事が忙しくなり、はてなを卒業していくのだろう。
峰なゆか(id:minenayuka、id:nayukamine、Wikipedia)
指摘されて峰さんをリストに入れてないのに気づいて自分でも驚いたのだが、恐らくは「元から著名人であったり既に専門分野で一家をなしていた人」として除外していたのだろう。しかし、彼女を面白い書き手として認知させ、何よりテレビドラマ化もされた「アラサーちゃん」が生まれたのははてなダイアリーだったわけである。
メレ山メレ子(id:mereco、Wikipedia)
大分前になるが、メレ子さんの初期のテキストサイトっぽい文章も好きで、たまにはそうしたのもまたやってもらえないかと書いた覚えがあるが、そんな与太めいた期待など関係なしに、執拗な旅行記から昆虫方面を経由し、現在ウェブマガジン「あき地」の連載「メメントモリ・ジャーニー」でメレ子さんは新たな話法を確立しようとしている。正直よく分からない回もあるのだが、新作を読むたびにその不穏さにどきどきしてしまう。
吉田アミ(id:amiyoshida)
吉田アミさんが「はてなクイーン」と呼ばれた頃を知るユーザももはや少ないのだろうか。吉田さんの場合、文筆家としてよりも前衛的な即興音楽家としての活動が本領なのかもしれない。それでも、吉田さんの筆力が前衛家としての活動を大きく支える役割を果たしているところがあるのではないか。
こういうリストを作ると、必ず「なんで○○さんが入ってないんだ!」というお叱りを受けるし、今回も例外でないだろう。ただその「○○さん」は、多分はてなでブログを始める前から単著があった、言わばはてなと関係なくキャリアがあった人であることが多いはずだ。あるいはメインの場が別であったり、その人自体は著名でもはてなのブログに人気記事があまりなかったとか。岡田育さんなどリストに含めようか悩んだ人もいるし、仲俣暁生さんなどのように id を既に削除されているため入れられなかった方もいる。
ただワタシはライトノベル作家や漫画家のユーザには疎いので、その方面で取りこぼしている人が多いことも考えられる。そういうのが不満な方は、是非その観点でリストをお作りいただきたい。