- 出版社/メーカー: 東北新社
- 発売日: 2004/11/25
- メディア: DVD
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映画館で観ようと思いながら行きそびれた映画をようやく DVD で観た。
素晴らしかった。
素晴らしかった……のだが、残念なことにモータウン・ミステリーを読んだ後では、無邪気に本作を楽しむことができないのも確かである。
本作は「ファンク・ブラザーズという神話」、特にドラムのベニー・ベンジャミン、そして何よりベースのジェイムズ・ジェマーソンの偉大さを強調するものである。「モータウン・ミステリー」を読んでしまっていては、本書の作りに作為を感じるのは仕方ないところである。
しかし、基本的にはセッションミュージシャンだった彼らからしてみれば、(ロサンゼルスへの移転話の唐突さも含め)本作のインタビューで語ることが彼らにとっての真実なのだろう。本作には黒人であるミシェル・ンデゲオチェロの人種問題についての質問に、ファンク・ブラザーズの白人メンバーが、答えと裏腹に心底辛そうに言葉を詰まらせる場面があるが、やはりこういうのを第三者が正義面してやりこめたりはできないよな。
ファンク・ブラザーズにジャズ畑出身の人が多かったことがモータウンの音のユニークさにつながったことは言われるが、本作における彼らのもはや夢のアメリカを体現した輝きはないものの、それでもしっかり年季の入った演奏を聞いて感じるのは、非常にオーソドックスなブルース・フィーリングである。モータウンというと、ソウルミュージックの中でも軽く見られがちだが、本作により認識を新たにする人は多いだろう。あとブーツィ・コリンズがいかにも彼らしい派手な衣装で登場しているのはちょっと笑ってしまったが、考えてみればジョージ・クリントンだってモータウンに所属していた時期があったというのは意外に知られていないトリビアかも。
またモータウンのレコードの音の特徴として、ベリー・ゴーディの趣味でタンバリンの音が大きくミックスされたことが挙げられるが、本作を観て、嗚呼、あなたがあのタンバリンを叩いていたのですかと感動してしまったな。最後に残るのは音楽、それも素晴らしい音楽だった。
本作の政治的意図について詮索するのは止め、何よりファンク・ブラザーズにスポットライトをあてた映画が作られたことに感謝したい。