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Peter Jennerは「音楽税」とは言っていないし、その主張は別にバカげてはいないのではないか

The Register における Peter Jennerインタビューを知ったのは digg だったか Slashdot だったか、これは取り上げようと思いながら時期を逸してしまっていた。

……と思ったら TechCrunch でボロクソに書かれていてチャンスができた。ありがとう。

件のインタビューを読んだ最初の感想は、最近では Lessig Blog でも忌々しげに名前が挙がっていた Andrew Orlowski って Wikipedia 叩きじゃない普通のインタビューもやるんだなということなのだが(笑)、それはともかくワタシは Peter Jenner の話はそんなにバカげてはないと思うのだが。

メジャーレーベルは音楽産業の現実を見失っている、iTunes などの曲単位でちまちま売っててもダメだ、ましてや DRM なんて論外、もっと薄く広くお金を取って資金プールを作らな……これって『デジタル音楽の行方』における「水のような音楽」モデルにとても近いのですな。

それにさ、Peter Jenner は「音楽税(Music Tax)」なんて言ってないんじゃん(日本版は引用部の訳文に勝手に「税」と補ってる)。「税金」と書くといきなり印象が悪くなってしまうし、インタビューでは(BBC のような)テレビ料金よりも安価でよりフェアにって言ってるじゃない。

Peter Jenner にしても別にレコード会社を救えと言いたいわけじゃない(と思う。ワタシが読み落としているトンチキな発言があるのかもしれんが)。「イノベーションへの意欲は無くなる」こともあるまい。共産主義じゃあるまいし、人気のあるミュージシャンはより多くの取り分が与えられるだろうに。

ここで『デジタル音楽の行方』の訳者あとがきを引用する。これは Peter Jenner の議論にもある程度あてはまる話だと思う。

 本書の原書はiPodの画面を模した表紙デザインになっており、iPod世代のマニフェストとも言えるが、本書のすごいところは、現在デジタル音楽配信サービスを主導するアップルの戦略のさらに先を論じていることである。それが本書で何度も登場する「水のような音楽」モデルである。レコード産業の死が音楽産業の死ではないと冷徹に語りながら、音楽ファンとして闇雲に自由を求めるだけでなくテリー・フィッシャーの『Promises to Keep』を援用して音楽産業に対する代替補償システムの経済合理性を論じ、また必要に応じた行政の介入の必要性を説く議論は本書の白眉と言える。(273ページ)

現在 YouTubeMySpace が直面している問題がまさにそうだが、それなりの規模になれば、後は代替補償システムや強制ライセンスにより「取り分」の落としどころをどうするかが重要であり、企業の論理だけで解決できなければ(例えば過去ケーブルテレビがそうであったように)議会や政府が介入するというのは別におかしな話ではない。

ただこの議論を日本に当てはめると、資金の共有プールの管理は J で始まる例の団体が第一候補となるし、あそこは透明性とはほど遠いところでもあるので、音楽ファンにはとても受け入れられないというのも確かだが。

もっといろんな論点を整理すべきなのだけど、疲れちゃったのでここまでにしておく。TechCrunch にも「本件については、また取り上げる予定」とあるので、またここで取り上げる機会もあるだろう。

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