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米国のクリーンエネルギー移行に現実的なヴィジョンを示すソール・グリフィス『Electrify』

doctorow.medium.com

コリイ・ドクトロウの書評で知ったが、Rewiring America の共同創始者として知られる発明家、起業家ソール・グリフィス(Saul Griffith)が Electrify という本を出していた。

タイトルの "electrify"は、「電力を供給する」の他に「あっと驚かせる」という意味もあり、おそらくはそのダブルミーニングを狙ったものでしょう。気候変動と戦う楽観主義的な、しかし同時に現実的で地に足のついた行動計画を示しながら、新たな雇用とより健全な環境を創出しながらすべてを電化していこうというわけですね。

今年はとにかく気候変動や、それに起因するエネルギー問題についての報道を目にすることが多かった。その潮流を受けた科学本は既にいくつも出ているが、本書は我々が抱える問題の技術的なパラメータやいろんな解決策を提示し、妥当っぽいものからバカげたものまでを選別し、その中で最良の提案を達成する実用的なプランを明確にする工学書だとコリイ・ドクトロウは評価している。

yamdas.hatenablog.com

ワタシのブログでグリフィスの名前が出てくるエントリとなるとこれで、要は彼はティム・オライリーの義理の息子になるんですね。「今後20年間に生まれる気候変動億万長者は、インターネットブームで生まれた億万長者よりも多いだろう」と予言するオライリーのエネルギー分野のブレーンなんだろうな。

以下、ティム・オライリー『WTF経済』の426-427ページから引用する。

 これは工学や材料科でも成り立つ。ソール・グリフィスの発言を思い出そう。「我々は物質を数学に置きかえるんだ」。ソールの会社のひとつ、サンフォールディング(Sunfolding)社は、大規模ソーラーファームに太陽追尾システムを販売している。これは鋼鉄、モーター、歯車を、ペットボトルと同じ産業グレードの材料から作られた重量も費用もはるかに小さい空気圧システムで置きかえるものだ。別のプロジェクトは、天然ガス備蓄用の巨大なカーボンタンクを小さなプラスチック細管からできた腸管のようなものに置きかえ、天然ガスのタンクをどんな形にもできるようにして、タンク全体が一気に破裂するリスクも減らす。物理学をきちんと理解するなら、確かに物質を数学に置きかえることは可能なのだ。

このあたりを読むと、確かに理論的、工学的な裏付けのある本を書ける人だろうなと思う。

マリアナ・マッツカートやケヴィン・ケリーといったこのブログでもなじみのある人も推薦している。

ただまぁ、当然ではあるけれども、この本の議論は基本的にアメリカを対象としており、極東の島国の状況とは前提から規模から違う話が多いから、そのまま翻訳しても難しいかもしれない。

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