よくまとまっていて参考になるが、これを読んで思い出したのは、ワタシが『Make: Technology on Your Time』Vol.02 のために翻訳したコリィ・ドクトロウの「歴史への裏切り者」である。
かなり長くなるが引用させてもらう。
現在グリニッジ天文台は、かつての名工たちの独創力の歴史を辿る素晴らしい博物館になっている。そこには最高に精巧な真鍮時計、数世紀前に亡くなった王立天文台長による判読が難しい手書きの業務日誌、あと手で磨かれた光学機械や木製の堂々たる望遠鏡がある。
そしてそこで入り口のドアを通り抜けると最初に目にするのは、「撮影禁止」の張り紙である。赤字の円にバッテンが書かれたカメラの絵まで付いている。
計測の殿堂が、計測をしてはいけないという。若い世代の科学者を鼓舞するために作られた博物館が、最も基本的な科学の道具――記録装置――はポケットにしまっておけというのだ。
僕は館長のところに出向き、その理由を尋ねた。写真撮影時にフラッシュを焚くことで展示品が色あせするのを心配して撮影を禁じているのですか? それはない――どんなに正確に記録しようが、光子が古い真鍮を傷つけることはないのだ。館長曰く、グリニッジ天文台で写真撮影が許可されないのは、著作権のためだというのだ!
著作権? なんだってそんなものが? 時計に著作権なんてものはない。数世紀前の業務日誌に著作権があるわけもない。事実は著作権保護されないし、それに著作権は数百年のうちにちゃんと切れる――しかも、業務日誌の1ページを撮影するのは、イギリスにおいてアメリカのフェアユースにあたるフェアディーリングの範疇に確実に入る。
その通りだと館長は認めた。それ自体には確かに著作権はないが、我々は写真や絵はがきなどの独占的な供給者でありたいというのだ。さらに重要なことに、展示品の中には写真撮影の禁止を約束した上で第三者から借りているものもある。
どうしてそんなことが言えるのだろう。展示品に対しこうした姿勢を取る博物館の館長は、歴史、文化遺産、そして科学に対する裏切り者である。博物館の存在理由は文化を広めることであって、取るに足らない絵はがきで商売するために文化を制約することではないのだ。(中略)
しかし、館長のこの姿勢は急速に当たり前になりつつあり、決して例外ではない。
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