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はてなブックマークのネガコメを原稿料に変える方法

はてなブックマークのネガティブなコメントが云々、運営元はもっと云々といった話題が時折持ち上がる。ワタシ自身に関して言えば、それほどひどいコメントをつけられたことがないためか、どちらかというとはてなブックマークのあり方にこだわる人が過剰反応に見えてしまう(はてなに関してはいろいろ不満もあるが、それは別の話)。オーストラリアの美しい自然でも見て、リラックスしなさいよ、と。

もっともワタシにしても、以前 id:kozai とか言うよく知らない人に「死ねばいいのに」タグをつけられたことがあり、このときはその圧倒的な言葉の暴力を前に泣き崩れ、寝込んだものである。

冗談はともかく、要はワタシにしてもネガティブなコメントをつけられることはある。しかし、そのすべてに不愉快になるわけではない。ワタシが好きな(!)ネガコメは、せいぜい皮肉の一つでも書いてやる的なもので、そういうコメントを見るとニヤニヤしてしまう。

ただ当方の文章の趣旨を完全に取り違えたコメントをみると、えー、そりゃないよー、と悲しくなるのも確か。対処に困るのが、意図が分からなく、しかもそれが単なるメモ書きでなくワタシに向けられたコメント。最近では、以下のようなものがあった。

akamakura id:yomoyomoさんでも権威に弱いのね……

はてなブックマーク - YAMDAS更新(ピーター・バラカン『魂(ソウル)のゆくえ』) - YAMDAS現更新履歴

id:akamakura さんがわざわざidコールしてくれたのに申し訳ないが、元エントリに対してこういうコメントがつく理由がさっぱり分からず、どう反応していいものか困った。

ロクに面識もない人間に対し、根拠も示さずに「権威に弱い」とネガティブな言葉を言いっぱなしにするのは、実世界であれば紛れもなく失礼にあたる行為だと思うが、ワタシ自身それをネットでまったくやっていないと言い切れる自信は正直ない。この場合、当方は不愉快に思うというよりただ困惑した。

ワタシ自身が権威に強いか弱いかは別として、そもそもピーター・バラカンは権威だろうか。「音楽評論家」といった肩書きを絶対に名乗らない氏はそうした扱いを多分嫌うだろう。それに彼は『魂(ソウル)のゆくえ』の中で、アフリカ・バンバータ以降のヒップホップにあまり興味がもてなくなった理由、最近のネオ・ソウルについてもなじめない理由を取り繕うことなく書いていて、そうした言葉とは遠い人と思うが。

例えばワタシが「ドストエフスキーの『罪と罰』が好きだ」と言ったからといって、いきなり「お前は(ロシア文学の)権威に弱い」と言われることはないだろう。そう言われても仕方ないのは、以下の二つのうちのいずれかではないか。

  • 対象が権威でなかった頃は冷淡だったのに、それが権威になった途端に尻尾を振って誉める
  • 対象の中身を理解しないまま、それが権威だからという理由で付和雷同して誉める

百歩譲ってピーター・バラカンが権威だとしても、ワタシにいずれも当てはまらないだろう。この本が最初に刊行された昔から、この本の「ゴスペルにつながる高揚感」でソウルミュージックを語るという切り口を理解したうえで愛読し、その後復刊を望んできたのだから。

ここで id:akamakura さんが当方の読書記録ではなく、それを告知するはてなダイアリーのほうにブックマークしていることに意味があるのだろうか、と考えた。そして、自分の文章を読み返したのだが……もしかして以下の文章を指して「権威に弱い」と言っているのだろうか。

やはりワタシはこれまでロック中心できたので、ソウルミュージックに関しては未聴の重要アルバムなどいくらでもあるので、本書のディスクガイドに載っているアルバムを Napster で探して聴いているところである。

……そりゃないよー! 何かを起点にして、自分が知らない音を辿ることは、普遍的な音楽との出会い方じゃないの?

それこそ『魂(ソウル)のゆくえ』でピーター・バラカンが書くように、ビートルズストーンズが、インタビューで自分たちが影響を受けたブルース、R&B について隠すことなく語るのを読んだことが、著者がルーツミュージックを辿るきっかけになったように、ソウルミュージックの入り口に適した本があり、そのディスクガイドに自分が知らないディスクがあるからそれを聴いてみる。それの何がおかしいのだろう。

もちろん聴いたものをワタシが気に入るかどうかは別問題だ。何も考えず「さすが、ピーター・バラカン様の勧めるディスクはどれも素晴らしいでスイーツ」とでも書いてるなら謗られても仕方がないが、実際は違う。

ここまできて、ワタシには件のコメントがかわいそうに思えてきた。折角だから、『魂(ソウル)のゆくえ』を読まなければ出会わなかった可能性が最も高いディスクを紹介しよう、と思い書いたのが「The Hard Way 〜 ソウルミュージック捜査線」である。ジェームズ・ハンターなんぞをまがいなりにも商業ウェブ媒体に嬉々として紹介する人間なんてワタシくらいのものだろう。楽しいじゃないか。

かくしてワタシは id:akamakura のブックマークコメントを Wired Vision の原稿料に変えたのである。

もっともその原稿料は大した額じゃないのだが、それはここでの問題ではない。

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